外国人雇用状況届出を忘れずに!記入例や申請方法を解説【行政書士監修】

濵川恭一
濵川恭一
外国人雇用状況届出を忘れずに!記入例や申請方法を解説【行政書士監修】

外国人を雇用した事業主は、ハローワークで「外国人雇用状況届出」を行う必要があります。外国人の離職の際も同様です。これらは日本人の雇用では発生しない手続きなので、忘れないようにしましょう。
この記事では、外国人雇用状況届出の提出期限や記入項目をできるだけ分かりやすく解説。さらに、24時間申請できて便利な電子申請の方法も紹介しています。外国人雇用状況届出の方法を把握して、スムーズに提出できるようにしましょう。

目次

  1. 外国人雇用状況届出について
  2. なぜ外国人雇用状況届出が必要なのか
  3. 外国人雇用状況届出の方法【雇用保険加入の有無別】
  4. 外国人雇用状況届出書の提出前に確認すべきポイント
  5. 外国人雇用状況届出に必要な個人情報の取り扱い方法
  6. まとめ

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外国人雇用状況届出について

外国人雇用状況届出は、外国人の雇用離職があった事業主が氏名や在留資格などをハローワークへ届け出る制度です。2007年に義務化された制度で、正しく届け出なければ罰金刑に処せられる場合があります。

外国人を雇用した際は必ずハローワークに提出する

労働施策総合推進法第28条により、外国人を雇用した企業は外国人雇用状況届出を行うように定められています。届出の提出先は、事業所の所在地を管轄するハローワークです。外国人の離職があったときにも同様に届出が必要となります。ただし、雇用・離職するのが以下に当てはまる外国人の場合、外国人雇用状況届出は不要です。

  • 在留資格「外交」「公用」を持つ外国人:国や政府の仕事に関わる在留資格を持つ外国人なので届出不要

  • 特別永住者:入管法とは別の法律により運用されている在留資格を持つ外国人のため届出不要

上記以外の在留資格を持つ外国人を雇用したら、必ず外国人雇用状況届出を行いましょう。就労に制限のない身分に基づく在留資格を持つ外国人やアルバイトといった非正規雇用の外国人でも届出が必要です。なお、派遣社員として外国人を雇用する場合は、派遣元が届け出ると決められています。

期限までに正しい内容を届け出なければ罰金刑となる

外国人の雇用・離職が発生した際に外国人雇用状況の届け出を怠ると、30万円以下の罰金が科せられる場合があります。うっかり出し忘れてしまった場合は、気付いた時点ですぐに届出を行えば処罰を受けなくても済む可能性も。出し忘れに気づいたら、まずは事業所の所在地を管轄するハローワークへ相談しましょう。
また、虚偽の申告を行った場合も同様に罰金が科せられます。必ず雇用する外国人の個人情報や雇入れ日に誤りがないか確認したうえで届け出を行いましょう。

関連記事:「在留資格認定証明書の役割とは?交付の流れや有効期限について解説

参照元
出入国在留管理庁「外国人雇用状況届出」
e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律

なぜ外国人雇用状況届出が必要なのか

政府が外国人雇用状況届出を義務付けている理由は、日本で働いている外国人労働者の雇用状況を把握するためです。

また、ハローワークは外国人雇用状況届出に基づいて事業主へ助言や指導を行うことで、外国人労働者の雇用環境の改善を目指しています。離職した外国人への再就職支援も、外国人雇用状況届出に基づいて行われるのです。外国人労働者が安心して働ける社会のために、企業は外国人雇用状況届出をしっかりと行う必要があります。

なお、厚生労働省は各社から提出された外国人雇用状況届出書の結果をまとめて、毎年10月に分かりやすいレポートを公表しています。このレポートには、国籍別の外国人雇用状況、前年比で増加率が大きい国、外国人労働者が多い都道府県、業種などが記載されています。ざっと目を通すだけでも、今後の外国人採用の参考になるはずです。

参照元
厚生労働省「外国人の雇用

外国人雇用状況届出の方法【雇用保険加入の有無別】

外国人雇用状況届出の方法は、雇用保険加入の有無によって異なります。雇用保険の加入条件は日本人と同様で以下のとおりです。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること

  • 31日以上の雇用見込みがあること

なお、外国人雇用状況届出は、オンライン上での電子申請も可能です。

雇用保険加入者でない場合

雇用する外国人が雇用保険の加入条件を満たさない場合、ハローワークで「外国人雇用状況届出書」を提出します。「外国人雇用状況届出システム」での電子申請も可能です。届出期限は、雇用・離職の場合ともに翌月末日まで。勤務時間が少ないパートやアルバイト、雇用保険への加入条件を満たさない派遣社員として働く外国人が該当します。

ハローワークで届け出る場合

窓口で手続きする場合は、ハローワークにある外国人雇用状況届出書に記入して提出しましょう。なお、外国人雇用状況届出書は厚生労働省のWebサイトでもダウンロード可能です。Webサイトからダウンロードして印刷する場合は、1ページ目の記入面を用紙の表に、2ページ目の注意を用紙の裏に印刷しましょう。
ハローワークで届け出る場合の画像
雇用時は外国人雇用状況届出書の上部の「雇入れ」に丸を、離職時は「離職」に丸をして、赤枠で囲んだ部分を記入します。記入項目は以下のとおりです。

  • 外国人の氏名(アルファベット表記)(1欄):在留カードどおりに記入する

  • 在留資格(2欄):在留カードまたはパスポート上の上陸許可証印に記載されたとおりに記入する

  • 在留期間(3欄)

  • 生年月日(4欄)

  • 性別(5欄)

  • 国籍・地域(6欄)

  • 資格外活動許可の有無(7欄):在留資格「留学」「家族滞在」など、資格外活動許可を受けている場合は記入する

  • 在留カードの番号(8欄)

  • 雇入れ年月日:外国人の離職で外国人雇用状況届出書を提出する場合も記入する

  • 離職年月日:離職時のみ記入する

  • 雇入れ又は離職に係る事業所:外国人が実際に就労する事業所の情報を記入する

  • 主たる事務所:雇入れ・離職に係る事業所が支店や店舗、工場などである場合は、本社や雇用保険適用事業所を記入する

  • 事業主の氏名

外国人の在留カードやパスポートをよく確認しながら記入しましょう。

外国人雇用状況届出システムを利用する場合

インターネット上で電子申請する場合は、厚生労働省の外国人雇用状況届出システムを利用します。初めて利用する場合は、新規ユーザID登録が必要です。

 

外国人雇用状況届出システムを利用する場合の画像

ユーザー登録をしてログインしたのち、雇用情報メニューから「外国人雇用情報新規登録」を選択して必要事項を入力します。入力する項目は、ハローワークで届け出る場合と同様です。

なお、過去にハローワークで外国人雇用状況届出書を提出した企業は、外国人雇用状況届出システムからの新規登録ができません。この場合は、以前届出を行ったハローワークへの問い合わせが必要です。

雇用保険加入者の場合

外国人が雇用保険加入条件を満たす場合、「雇用保険被保険者資格取得届」もしくは「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出することで、外国人雇用状況届を行ったとみなされます。雇用保険被保険者資格取得届の提出期限は、雇用した日の翌月10日まで。雇用保険被保険者資格喪失届の提出期限は離職の翌日から起算して10日以内です。手続きは、ハローワークの窓口や電子申請で行えます。

ハローワークで届け出る場合

ここでは、ハローワークへ届け出る方法を解説します。

【雇用時】

雇入れる外国人が雇用保険加入条件を満たす場合、雇用保険被保険者資格取得届を提出することで外国人雇用状況届を行ったとみなされます。
直接窓口で申請する場合は、事業所を管轄するハローワークへ行きましょう。雇用保険被保険者資格取得届が置いてあるので記入し、雇用保険に関する手続きを扱っている窓口に提出します。
ハローワークへ郵送する場合は、Webサイト「ハローワークインターネットサービス」で様式をダウンロードしましょう。様式のみダウンロードする方法と、必要事項を記入してからダウンロードする方法が選べます。

ハローワークで届け出る場合【雇用時】の画像

記入項目は日本人の場合とほとんど同じですが、外国人労働者の場合は以下の項目も記入が必要です。

  • 被保険者氏名(ローマ字)(17欄)

  • 在留カードの番号(18欄)

  • 在留期間(19欄)

  • 資格外活動の許可の有無(20欄)

  • 派遣・請負就労区分(21欄)

  • 国籍・地域(22欄)

  • 在留資格(23欄)

外国人労働者の在留カードを確認しながら、ミスがないように記入しましょう。

【離職時】

雇用保険加入者である外国人が離職する場合、雇用保険被保険者資格喪失届を提出することで外国人雇用状況届を行ったとみなされます。雇用保険被保険者資格取得届と同様にハローワークの窓口や郵送での届出が可能です。ハローワークインターネットサービスからも様式をダウンロードできます。

雇用保険加入者の場合【離職時】の画像

記入項目は日本人の場合とほとんど同じですが、外国人労働者の届出の際は以下の項目も記入します。

  • 被保険者氏名(ローマ字)(14欄)

  • 在留カードの番号(15欄)

  • 在留期間(16欄)

  • 派遣・請負就労区分(17欄)

  • 国籍・地域(18欄)

  • 在留資格(19欄)

ほかには、事業主の氏名・住所・電話番号といった項目も記入が必要です。雇用保険の資格取得年月日や離職等年月日なども正確に記入しましょう。

e-Gov電子申請を利用する場合

雇用保険被保険者資格取得届と雇用保険被保険者喪失届は、e-Gov電子申請からも手続きできます。なお、電子申請には電子証明書アカウントの登録アプリケーションのダウンロードが必要です。電子証明書は認証局(電子証明書を発行している機関)に発行を依頼しましょう。

【雇用時】

e-Gov電子申請を利用する場合【雇用時】の画像

雇用保険被保険者資格取得届は「雇用保険被保険者資格取得届」から手続きできます。記入項目は、ハローワークに届け出る場合と同様です。提出書類がある場合は、ファイルを指定し、最後に提出先を選んで届け出ましょう。

【離職時】

e-Gov電子申請を利用する場合【離職時】の画像

雇用保険被保険者資格喪失届は「雇用保険被保険者資格喪失届」から手続きできます。1〜19欄と事業主の情報を記入して提出しましょう。

関連記事:「外国人の雇用保険の加入手続き【添付書類や適用除外者も解説】

参照元
厚生労働省「Q&A~事業主の皆様へ~」
厚生労働省「外国人雇用状況届出システム」
厚生労働省「新規ユーザID登録」
厚生労働省「雇用保険被保険者資格取得届」
厚生労働省「雇用保険被保険者資格喪失届」
e-Gov電子申請「手続検索」
e-Gov電子申請「電子証明書のご案内」
e-Gov電子申請「e-Govアカウントの登録方法」
e-Gov電子申請「2.アプリのインストール」
厚生労働省「e-Gov電子申請利用マニュアルの紹介」
e-Gov電子申請「雇用保険被保険者資格取得届(令和4年6月以降手続き)」
e-Gov電子申請「雇用保険被保険者資格喪失届(離職票交付なし)(令和4年6月以降手続き)

外国人雇用状況届出書の提出前に確認すべきポイント

外国人雇用状況届出書の提出前に、外国人の在留資格や在留期間が適切か確認しましょう。また、アルバイトとして雇用する際は、資格外活動許可を受けているかを確認する必要があります。

外国人の在留資格や在留期間は適切か

外国人の採用が決定したら、在留カードに記載されている在留資格や在留期間、就労制限の有無などを確認しておきましょう。在留資格や在留期間、就労制限の有無は在留カードの表面に記載されています。ただし、在留カードの確認は能力や適性に関係ない国籍といった事項の把握に繋がるため、採用決定前は行えません。面接時の在留資格や在留期間の確認は口頭で行い、採用を決定してから在留カードを提出してもらいましょう。

なお、就労不可の在留資格を持つ外国人や在留期限が切れている外国人を雇用すると、事業主は「不法就労助長罪」に問われます。3年以下の懲役または300 万円以下の罰金、もしくはその両方が科されるので、必ず雇用する前に外国人の在留資格や在留期間の確認が必要です。

資格外活動許可を得ているか(アルバイトの場合)

就労ができない「留学」や「家族滞在」などの在留資格を持つ外国人をアルバイトとして雇用する場合は、資格外活動許可を得ているか確認しましょう。資格外活動許可を得ている留学生は、風営法に関わる仕事以外であれば、週に28時間以内のアルバイトが可能です。

資格外活動許可を得ていない外国人をアルバイトとして雇用した場合も、事業主は不法就労助長罪に問われます。前述したように、ハローワークへ届け出る外国人雇用状況届出書にも資格外活動許可の有無を記入する項目があるので、必ずチェックしましょう。

関連記事:「就労ビザ(在留資格)は難しくない!全19種類のうち外国人採用に関わるビザはどれ? 在留資格
関連記事:「【記入例】在留資格変更許可申請書の書き方は?就労ビザごとの必要書類も紹介

参照元
出入国在留管理庁「在留カードとは?」
厚生労働省「不法就労に当たる外国人を雇い入れないようにお願いします。」
出入国在留管理庁「資格外活動許可について」
出入国在留管理庁「「留学」の在留資格に係る資格外活動許可について

外国人雇用状況届出に必要な個人情報の取り扱い方法

外国人の個人情報を適切に管理することは、トラブルなく働いてもらううえで欠かせません。個人情報が記載されている在留カードやパスポートの扱いにも注意が必要です。

本人確認書類の原本は預からない

在留カードやパスポートなどの本人確認書類は、原本を預かるのではなく、写しをもらうかその場でコピーするようにしましょう。外国人は在留カードの携帯を義務付けられているため、返し忘れるとトラブルに発展する可能性があります。

また、個人情報保護法では、「個人情報を取得する場合はあらかじめ本人に利用目的を明示しなければならない」とあります。そのため、在留カードやパスポートの写しを取得する際は、ハローワークへ提出する届出作成のためである旨を外国人に伝えましょう。なお、各種書類の写しは厳重に管理し、紛失や情報漏洩に注意しなければなりません。

個人情報を管理するシステムを導入する

外国人を複数人雇用する場合は、個人情報を管理できるシステムを導入するのがおすすめです。ExcelやGoogleスプレッドシートを用いて、外国人の個人情報を管理するシートを自社で作成することもできますが、セキュリティには十分注意してください。氏名や在留資格、在留期間、就労時間の制限などを一覧にしておくと、外国人の労務管理を行いやすくなります。

在留カード確認アプリを利用するのも一つの手です。在留カードを読み取ると、在留資格や在留期間などの情報が自動で登録されるアプリがあります。転記する際の入力ミスや工数を削減できるのがメリットです。

まとめ

外国人を雇用する際は、ハローワークへの外国人雇用状況届出が必要です。離職するときも同じように届出が必須で、虚偽申告をしたり提出を怠ったりすると30万円以下の罰金を支払わなければなりません。届出期限が設けられているので、忘れずに行いましょう。

濵川恭一

監修:濵川恭一

外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net