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近年、日本ではさまざまな職種で外国人の受け入れが進められています。外国人雇用が促進されている大きな理由は、少子高齢化と労働人口の減少によって、多くの企業で人手不足が起きているからです。特に人手不足が深刻な業界では、「特定技能外国人」の受け入れによって人材を確保しようという試みが進められています。
「特定技能」の在留資格には「1号」と「2号」の2種類があり、自社の「特定技能1号」の外国人が「2号」に移行した場合、実質的に無期限で就労してもらうことが可能です。この記事では、「特定技能1号」と「2号」の知識や技術、取得方法の違いについてまとめているので、ぜひご覧ください。
目次
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「特定技能」は、人手不足が特に深刻な業界において、外国人労働者の受け入れを進めることによって人材を確保するために作られた制度です。分野に関する技能や日本語能力を測る試験に合格した外国人には、「特定技能1号」の在留資格が付与されます。
「特定技能1号」は、単純労働への従事も可能です。申請する際に必ずしも学歴や職歴が必要とされていないため、ほかの在留資格と比べて取得しやすい点も特徴といえます。「単純労働も含めた幅広い業務を任せられる外国人を雇用したい」「人手不足で多くの人を確保したい」と考えている企業に、特定技能外国人はぴったりといえるでしょう。
参照元
出入国在留管理庁「受入れ機関の方」
「特定技能」には、一定の専門性を有しており即戦力となる「1号」とさらに高度な知識・技術を持つ「2号」があります。「特定技能2号」は、「1号」で就労しながら一定の経験を積み既定の技能試験に合格することで取得可能です。
今後、熟練した技術を持つ「特定技能2号」を採用したい企業は増えると考えられます。人材獲得競争が激しくなる前に採用活動を始めると、より優秀な特定技能外国人を確保できるでしょう。
「特定技能1号」と「2号」では指定されている業界が異なり、「1号」のほうがより多くの分野が対象とされています。自社が該当する分野で、特定技能外国人を雇用できるかぜひ確認してみてください。
特定技能外国人を雇用できる業界のことを「特定産業分野」といい、「1号」では16分野が対象とされています。「特定技能1号」の特定産業分野は以下のとおりです。
介護
ビルクリーニング
工業製品製造業
建設
造船・舶用工業
自動車整備
航空
宿泊
農業
漁業
飲食料品製造業
外食業
自動車運送業
鉄道
林業
木材産業
このうち、「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4つは、2024年に追加された分野です。
2024年12月現在、「特定技能2号」は、「宿泊」「外食業」などの11の分野が対象とされています。以前は、「建設」「造船・舶用工業(溶接区分)」でのみ「特定技能2号」の外国人を雇用できました。しかし、2023年6月に9分野と「造船・舶用工業」のうち溶接区分以外の業務区分を追加する閣議決定が行われました。
なお、「介護」と2024年に追加された4分野は「特定技能2号」の対象に含まれません。「介護」が対象外とされている理由は、「特定技能2号」とは別に「介護」の在留資格があるためです。在留資格「介護」を取得するには、介護福祉士の国家試験を受験し合格することが求められます。「特定技能1号」を修了した外国人に引き続き働いてほしい場合は、在留資格「介護」への移行を勧めてみましょう。
参照元
出入国在留管理庁「特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description)」
出入国在留管理庁「特定技能2号の各分野の仕事内容(Job Description)」
出入国在留管理庁「特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定)」
「特定技能1号」と「2号」には、専門性の高さ以外にも違いがあります。「特定技能1号」の外国人に長く働いてもらいたいと考えている場合は、「2号」への移行も視野に入れて、違いを把握しておきましょう。
【特定技能1号】
在留可能な期間:法務大臣が個々に指定する期間(通算5年まで)
必要な知識や技術:一定の知識が必要
支援計画の必要性:必要。支援計画の策定と実施は企業の義務
技能試験の実施状況:12分野において国内外で実施(出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和6年6月末)参照」)
日本語能力を測る試験の有無:あり
配偶者と子どもの同伴可否:不可
永住申請の可否:不可
【特定技能2号】
在留可能な期間:3年・1年・6ヶ月ごとの更新 (更新回数の上限なし)
必要な知識や技術:熟練した技能と知識
支援計画の必要性:不要
技能試験の実施状況:「航空」を除く10分野で実施中
日本語能力を測る試験の有無:「外食」「漁業」では受験の必要あり
配偶者と子どもの同伴可否:条件を満たせば可能
永住申請可否:将来的には要件を満たせば可能
「特定技能1号」の在留期間は法務大臣が個々に指定します。通算5年までで、この長さを超えての在留はできません。「特定技能2号」の場合は、3年・1年・6ヶ月ごとの更新が必要ですが、何度でも更新できます。そのため、在留状況に問題がなければ、更新を続けて事実上無期限で在留することも可能です。
「特定技能1号」も一定の専門性を持っていますが、上位の在留資格である「2号」のほうがより熟練した知識や技術が求められます。
「特定技能1号」は技能試験と日本語能力を測る試験に合格しており、即戦力として働けるレベルの専門性は有しているとされます。「特定技能2号」を取得する際も、各分野が定めた試験の合格が必要です。さらに、その分野における職歴や他者を指導・管理した経験も求められます。
たとえば、「飲食料品製造業」における「特定技能1号」と「2号」の取得要件の違いは以下のとおりです。
【特定技能1号】
飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験の合格
日本語能力試験(N4以上)の取得、または国際交流基金日本語基礎テストの合格
【特定技能2号】
飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験の合格
「飲食料品製造業」において、複数の従業員を指導しながら業務に従事し、工程を管理する実務経験が必要
以上のように、自分が業務を滞りなく遂行できるだけでなく、ほかの従業員の動きや工程全体を把握しマネジメントする能力が求めらます。外国人が「特定技能1号」と「2号」を取得する方法についてはのちほど解説するので、ぜひご覧ください。
「特定技能1号」を雇用する企業は「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、日常生活や社会生活の支援を行う必要があります。具体的には、事前ガイダンスや住居確保・生活に必要な契約支援、公的手続きへの同行などが必要です。日本語学習の機会の提供や出入国する際の送迎も行わなれければなりません。そして、これらを適正に行っていることを、四半期毎に出入国在留管理局に報告する必要もあります。
一方、「特定技能2号」の外国人を雇用する場合は、支援計画の作成は必要ありません。定期報告も不要です。すでに「特定技能1号」として数年間日本に滞在しているため、日常生活や社会生活の支援が必要ないと考えられるからです。
「特定技能1号」に該当する特定産業分野のうち12分野では、日本と海外で技能試験が実施されています。なお、2024年に追加された4分野では、まだ試験は実施されていません。
海外での技能試験の実施国の数は、特定産業分野によって1~12ヶ国までさまざまです。出入国在留管理庁が発表した「特定技能制度運用状況(令和6年6月末)」によると、「造船・舶用工業分野」はフィリピン、「漁業」はインドネシアで実施されています。「介護」「建設」「農業」の技能試験の実施国は、フィリピンやカンボジア、インドネシアなどの12ヶ国です。外国人の母国で技能試験が実施されていない場合は、在留資格「短期滞在」で来日して受験することもできます。
一方、「特定技能2号」の技能試験は国内のみで実施されており、海外では受験できません。なお、「特定技能2号」の「航空」の試験は、2024年10月時点で国内でも未実施です。
前述したとおり、「特定技能1号」を取得するためには、すべての特定産業分野において日本語能力を測る試験に合格する必要があります。
一方で、「特定技能2号」では、ほとんどの特定産業分野において日本語能力を測る試験を受ける必要がありません。ただし、「外食」「漁業」では日本語能力試験(N3以上)の合格が求められます。日本語能力を測る試験に関してはのちほど詳しく解説するので、ぜひご確認ください。
「特定技能1号」では、配偶者や子どもの母国からの同伴は認められていません。
一方、「特定技能2号」では、配偶者および子どもを母国から呼んで日本で一緒に暮らすことが可能です。なお、配偶者と子どもには在留資格「家族滞在」が付与されます。
「特定技能1号」では取得できない永住者ビザの要件を、「2号」では満たせる可能性があります。
出入国在留管理庁がまとめた「永住許可に関するガイドライン(令和6年6月10日改訂)」では、以下のように定められています。
原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
「特定技能1号」で在留した年月は、永住者ビザを取得する際に条件とされている期間とみなされません。一方、「特定技能2号」で在留した年月は、要件に設定されている期間としてカウントされます。そのため、「特定技能2号」を更新し続け、在留期間が10年を超えれば、永住権の取得要件の一つを満たすことが可能です。
なお、永住者ビザの取得要件には、「素行が善良であること」「独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること」といった要件も含まれています。したがって、「特定技能2号」で在留し続ければ、かならず永住者ビザを取得できるわけではありません。
参照元
出入国在留管理庁「特定技能」
出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和6年6月末)」
PROMETRIC「2号漁業技能測定試験(漁業)」
PROMETRIC「自動車整備分野特定技能2号評価試験」
出入国在留管理庁「飲食料品製造業分野」
出入国在留管理庁「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」
出入国在留管理庁「外食業分野」
出入国在留管理庁「漁業分野」
出入国在留管理庁「在留資格「家族滞在」」
出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年6月10日改訂)」
「特定技能1号」と「2号」の在留資格の取得方法について、要件や試験などについて解説します。「特定技能2号」の場合、受け入れ機関による技能試験の受験申し込みや書類の提出が必要な場合があるので、概要を把握しておきましょう。
「特定技能1号」を取得するためには、技能試験と日本語能力を測る試験に合格するか、「技能実習2号」を良好に修了する必要があります。
技能試験は特定産業分野ごとに設けられており、専門的な知識が問われます。さらに、実技試験もあるのが特徴です。たとえば、「宿泊」の実技試験では、「フロント業務・接客業務・レストランサービス業務に関して、利用者の求めに応じ、適切な対応がとれるか」といった問題が出されます。ただ、実技試験といっても、実際に実技を行う試験ではありません。実技の内容を問う問題が筆記試験で出されます。
「特定技能1号」を取得する際に利用できる日本語能力を測る試験は、日本語能力試験(JLPT)および国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)の2つです。基本的に、日本語能力試験(N4以上)の取得、もしくは国際交流基金日本語基礎テストの合格が求められます。ただし、「鉄道」の運輸係員や「自動車運送業」のタクシー運転手、バス運転手では、日本語能力試験(N3以上)の合格が必要です。
「特定技能1号」は、「技能実習」からの移行も可能です。移行するためには、以下の要件を満たす必要があります。
「技能実習2号」を良好に修了していること
技能実習の職種・作業内容と、移行予定の「特定技能1号」の業務に関連性が認められること
以上の要件を満たした場合、技能試験と日本語能力を測る試験が免除されます。なお、「技能実習2号」を良好に修了した外国人が技能実習時と異なる分野に移行する場合は、日本語能力を測る試験を受ける必要がありません。移行予定の特定産業分野の技能試験のみ合格すれば取得できます。
前述したとおり、「特定技能2号」を取得するためには、特定産業分野ごとに定められた試験に合格しなければなりません。一部の分野では、特定産業分野によっては受験する試験を複数の選択肢から選べます。
就労年数や実務経験の要件を満たすことも必要です。「自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できるか」「監督者として業務を統括しつつ、熟練した技能で業務を遂行できるか」が判断されます。この実務経験を証明する資料も必要です。具体的には、雇用されている企業から在職期間や仕事内容に関する証明書(規定書式)を出してもらいます。
日本語能力試験の受験は、ほとんどの分野において不要です。ただし、「外食」「漁業」においては日本語能力試験(N3以上)の合格が求められます。「特定技能1号」の外国人が「2号」に移行する際に日本語能力試験の合格が必要だと知らなかった場合、勉強が間に合わないという事態に陥りかねません。特定技能外国人をフォローできるように、企業側も試験の概要を把握しておきましょう。
参照元
外務省「特定技能外国人を受け入れるまで」
宿泊分野特定技能1号評価試験実施要領(令和6年1月一部改正)
出入国在留管理庁「鉄道分野」
出入国在留管理庁「自動車運送業分野」
出入国在留管理庁「建設分野」
「特定技能」の在留資格には「1号」と「2号」があります。初めて特定技能外国人を受け入れる企業は、まず「1号」から受け入れることになるでしょう。その後、「2号」に移行すれば長期的な雇用も可能です。「特定技能」は学歴や職歴の要件がないため、比較的取得しやすい在留資格とされています。人手不足に悩んでいて外国人の雇用を考えている企業は、ぜひ特定技能人材の受け入れを検討してみましょう。
執筆:WeXpats
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