海外で暮らす猫好きの中には、「なぜ日本人はペットに猫を選ぶ人が多いのか?」と疑問を持つ方もいるでしょう。猫は世界各国でペットとして人気が高い動物です。特に日本人は猫好きが多く、歴史に名を残す偉人や文豪にもたくさんの愛猫家がいます。そこで、このコラムでは日本人が猫を飼育する理由を紹介。日本人と猫の共存の歴史もまとめています。猫も日本も好きな方は、ぜひご覧ください。
目次
猫好きな日本人は多い
日本で飼育されているペットのうち、最も数が多いのは猫とされています。犬や鳥、うさぎ、ハムスターなどペットとして飼育できる動物の種類はさまざまです。その中で猫をペットに選ぶ日本人が多いことから、猫好きな国民性がうかがえるでしょう。なお、日本人の中には犬好きの人もいます。日本のペットの代表格は猫と犬なので、たびたび「猫派」「犬派」に分かれて、どちらの方が魅力的か議論することもあるようです。
日本では猫はかわいい動物として高い人気を誇っています。「かわいい」とはどのような概念なのか知りたい方は、「かわいい(Kawaii)の意味とは?対象や派生語もあわせて覚えよう」を参考にしてください。
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日本人と猫の歴史
日本人と猫の歴史は古く、始まりは現代から2000年以上前にさかのぼります。ここでは、日本の猫の歴史を時代別にまとめているので、興味がある方はチェックしてみましょう。
猫は弥生時代から日本に存在した
日本に猫が生息するようになったのは、700年代の奈良時代・平安時代以降と長年考えられてきました。しかし、近年の研究により、紀元前4世紀ごろ、弥生時代から猫が生息していた説が濃厚になりつつあります。当時の日本は文明が生まれたばかりで、狩猟中心の生活から農耕・牧畜に切り替わっていく最中でした。収穫した農作物はネズミや虫に狙われやすかったため、被害を防ぐために猫が活躍していたようです。当時の猫は現代とは異なる意味で、生活のパートナーの役割を担っていたといえます。
ペットとして飼育が始まったのは平安時代
現代のようにペットとして猫の飼育が始まったのは、平安時代以降です。ただし、平安時代は高貴な身分の人間しか猫を飼えませんでした。当時は猫が貴重な存在だったため、一部の貴族にのみ許された道楽だったようです。平安時代の天皇の一人である宇多天皇は、自らの日記に飼い猫の記述を残しています。現代でも日記の内容を確認できるので、気になる方は読んでみると良いでしょう。
空前絶後の猫ブームが起きた江戸時代
庶民も猫を飼うようになったのは、江戸時代からです。江戸時代初期、まだ猫が貴重な存在だったころ、日本は深刻なネズミ被害に悩まされていました。そこで、幕府は猫を飼っている貴族に対して放し飼いを推奨し、ネズミ捕りを行わせたのです。当時は首輪や紐をつけて室内で飼育する方法が一般的だったため、放し飼いをきっかけに迷子になったり亡くなったりする場合もありました。しかし、同時に猫同士の交流も盛んになり、繫殖が活発になった結果次第に総数が増えていったようです。猫はネズミ退治に役立つ有益な動物として庶民にも存在が広まり、愛くるしい姿で多くの人々を魅了していきました。実際に、江戸時代には猫をモチーフにした芸術作品が多数発表されています。
現代では猫も家族と考える人が多い
現代日本では、誰でも自由に猫を飼育できます。猫が日本人の生活において身近な存在になったためか、ペットではなく家族として接する飼い主もいるようです。特に、子どものいない夫婦や一人暮らしの若者がQOL(生活の質)向上のために、猫を家族として迎え入れる傾向があります。猫好きの日本人にとって、飼い猫は家族と呼んでも差し支えない大切なパートナーといえるでしょう。
猫好きの日本人の中には、飼育経験がない人もいます。猫を飼うには適切な飼育環境が必要です。金銭的・時間的余裕がなければ、飼育環境を整えるのは難しいでしょう。日本はペット飼育OKの物件が少ないので、住居選びにも気をつかわなければなりません。そのため、猫が好きでも飼えない日本人もいるのです。
日本には、自宅で猫を飼えない猫好きから人気を集める「猫カフェ」という喫茶店があります。猫を飼いたくても飼えない人・飼育できる自信がない人も、気軽に猫とのふれあいを楽しめる空間なので、興味がある方はぜひ足を運んでみましょう。野良猫の保護活動や里親募集を行っている猫カフェもあるので、将来的に猫を飼いたい方にもおすすめです。
猫好きで知られる日本の偉人
ムハンマドやウィンストン・チャーチル、エドガー・アラン・ポーといった海外の偉人のように、猫を愛してやまない人々は日本にも存在します。ここでは、猫好きで有名な日本の偉人や文豪を紹介するので、気になる方はチェックしてみましょう。
宇多天皇
宇多天皇は第59代天皇で、日本最古とされる猫の飼育記録を残した人物です。まだ猫が貴重な存在だった平安時代に、父から譲り受けた黒猫を飼育していました。宇多天皇が書いた「寛平御記」には、当時飼っていた猫の記述もあります。仕方なく面倒を見ているといいつつ、猫に夢中になっている様子が読み取れるでしょう。ほかの歴代天皇の中にも猫好きな人が多いので、気になる方はぜひ調べてみてください。
歌川国芳
江戸時代末期に活躍した浮世絵師の歌川国芳も、猫好きの偉人の一人です。自画像にも猫を書くほどの猫好きで、仕事中は衣服の中に子猫が数匹入っていたとの噂もあります。歌川国芳の猫好きは作品にも現れており、猫が着物を着たり文字をかたどったりと独創的な浮世絵が多いのが特徴です。飼い猫が亡くなったときにはお寺で葬儀を行い仏壇に位牌を飾るなど、猫に対する愛情の深さがうかがえます。
夏目漱石
夏目漱石は『吾輩は猫である』『こころ』などを執筆した小説家・評論家です。日本の文豪には猫好きが多く、夏目漱石も例外ではありません。夏目漱石の作品に登場する猫のモデルは、実際に彼が飼っていた猫だといわれています。「全身黒い猫は縁起が良い」と言われたのをきっかけに、猫を飼い始めたようです。
三島由紀夫
三島由紀夫は小説家・劇作家・政治活動家として活躍した日本人で、無類の猫好きとしても知られています。机の引き出しに煮干しを入れていたり書斎に猫用のドアを設置していたりと、猫を一番に考えた生活を送っていたようです。
夏目漱石や三島由紀夫のように猫愛好家も多かった日本の文学者。その文学者たちが人々を魅了した日本文学の名作については「日本文学とは何かを外国人に向けて解説!有名な作家や各時代の代表作も紹介」で取り上げています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。
現代でも猫を飼う日本人が多い理由
多くの日本人が現在でも猫を飼っているのは、生活を良くするため・癒しを感じるためなどさまざまです。ここでは、日本人が猫を飼う理由の一部を紹介します。日本人が猫のどのような部分に魅力を感じているのか知りたい方は、参考にしてください。
生活を潤してくれるから
生活を良くしてくれる存在として猫を飼う日本人は多いようです。ペットの飼育は、家族間のコミュニケーションを活発にさせたりQOLを上げたりといった効果があります。猫の寿命は約10年から20年です。健康に気をつかえばさらに長生きする可能性もあるので、わが子のように育てる飼い主もいます。
リラックスさせてくれるから
日々の生活に疲れ、癒しを求めて猫を飼う日本人もいます。実際に、近年の研究によって猫とのふれあいは健康促進につながり、幸福を感じるという結果が明らかになりました。そのため、アニマルセラピーの一環として猫の飼育を行う人もいるようです。猫のふわふわした毛並みや鳴き声、仕草などは猫好きな人間に癒しを与えてくれます。
自由気ままな存在だから
猫は、野生で生きていたころの本能を色濃く残す動物です。ときには、人間の想定を超える行動を起こし、飼い主を振り回すこともあるでしょう。エサを選り好みしたり作業の邪魔をしてきたりと、人間の気持ちはお構いなしです。しかし、そんな自由気ままな猫の生き方に可愛いと感じる人もいます。人間相手ならイラッとするような行動でも、猫なら許せるという人は多いようです。
気持ちを通じ合わせられるから
「長期間接することで、気持ちを通じ合わせられるのがうれしい」という理由で、猫を飼う日本人もいます。猫は、人間のようにそれぞれ異なる個性を持つ動物です。長い時間ともに生活するうちに、猫の好みや癖、気持ちが分かってくるようになるでしょう。「言葉は通じなくても、気持ちを通わせられるから猫が好き」という猫好きの日本人もいます。
まとめ
日本人と猫の歴史は古く、紀元前から共存してきたとされています。江戸時代のネズミ捕りをきっかけに庶民にも猫を飼育する文化が広まり、日本人の偉人も猫好きとして歴史に数多く名を残してきました。現代でも猫好きな日本人は多いので、猫を通じて異文化交流を図ってみるのも良いでしょう。