旧暦とは、日本で1872年まで使われていた太陰暦のことです。月の満ち欠けによって一月の長さが決められており、今日使われている太陽暦とずれがあります。
旧暦では、気候や行事にちなんだ月の名前である和風月名が使われていました。季節感や日本人の感性に基づいており、現代でもカレンダーや手紙の挨拶文に使われることがあります。このコラムで旧暦や和風月名について知り、日本の暦に関する知識を深めましょう。
目次
旧暦とは?
旧暦とは、1872年12月2日まで日本で採用されていた太陰暦のことです。太陰暦では、月が見えなくなる新月の日を各月の一日、翌日を二日、翌々日を三日としていました。そして、次に来た新月の日を翌月の一日としていたのです。
太陰暦では一月の日数は約29.5日なので、12ヶ月間でおよそ354日しかありません。一年間は365日あるので、徐々に季節と暦のずれが発生します。そのため、ずれが1月分に近くなった年には閏月を設けて、季節と暦が合うように調整しました。
旧暦に関しては、「和風月名の一覧を外国人向けに紹介! 意味や由来と併せてチェック!」のコラムでも解説しています。
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旧暦は現代の暦とずれがある
現代の日本で採用されているのは地球が太陽の周りを一周する時間を元にしたグレゴリオ暦で、旧暦とは季節感のずれがあります。各季節に該当する月を、旧暦・グレゴリオ暦ごとに示した表は以下のとおりです。
旧暦 |
グレゴリオ暦 |
|
春 |
1月・2月・3月 |
3月・4月・5月 |
夏 |
4月・5月・6月 |
6月・7月・8月 |
秋 |
7月・8月・9月 |
9月・10月・11月 |
冬 |
10月・11月・12月 |
12月・1月・2月 |
たとえば、1月は旧暦だと春ですが、グレゴリオ暦では冬です。このように、旧暦だとグレゴリオ暦より1〜2ヶ月ほど季節が早く訪れます。
旧暦の季節感が感じられるのが、俳句の季語です。季語に興味がある方は、「夏の美しい季語を知りたい!爽やかさや涼しさを表現する言葉には何がある?」や「【秋の季語一覧】美しい言葉やかっこいい表現を解説」のコラムをご覧ください。
旧暦の月の名前一覧
旧暦の各月の名前を和風月名といい、月ごとの季節感や行事に由来する名前があるのが特徴です。以下では、旧暦の12ヶ月の月の名前の読み方や意味を解説します。現代でも、カレンダーに書かれていることがあるので、ぜひ覚えましょう。
1月:睦月(むつき)
旧暦1月の和風月名である睦月の「睦」の字には、「親しくする」との意味があります。「新年の初めの月に親戚一同が集まり仲睦まじくする」というのが、睦月の由来です。ほかにも、1年の最初の月という意味の「元つ月(もとつつき)」が変化した説もあります。
旧暦では、1月を「正月(しょうがつ)」や「初春月(はつはるづき)」ともいっていました。日の出や朝日を指す「初陽(しょよう)」も1月の異称です。
2月:如月(きさらぎ)
旧暦2月の名前である如月は「衣更着(きさらぎ)」とも書き、「寒さが残っており衣を更に着る月」というのが由来です。
一方で、暖かくなってきて陽気が更に訪れることを表した「気更に来る」が由来とする説も。ほかにも、草花の芽が張り出す様子を表現した「草木張月(くさきはりづき)」が変化したという説もあります。
旧暦の2月の異称は、雪が消える季節であることを表した「雪消月(ゆきぎえづき・ゆきげづき)」です。2月ごろに咲く梅にちなんだ「梅見月(うめみづき)」という名前もあります。
3月:弥生(やよい)
旧暦3月の和風月名である弥生の語源は、「木草弥生い茂る(きくさいやおいしげる)月」といわれています。暖かくなって「すべての草木がいよいよ茂る月」という意味です。「弥」は「いよいよ」「ますます」との意味があり、「生」は草木が芽を出すことを表しています。
旧暦3月の名前には、「晩春(ばんしゅん)」「桜月(さくらつき)」「花見月(はなみつき)」などもあります。
4月:卯月(うづき)
旧暦4月の名前である卯月の語源は「卯の花月」といわれています。卯の花は、ウツギともいわれ白い花を咲かせる木です。ほかには、稲の種を植える月を意味する「植え月」が省略された説もあります。
旧暦4月は夏が始まる月だったので、「初夏(しょか)」「夏初月(なつはづき)」なども異称として使われました。
5月:皐月(さつき)
旧暦5月の和風月名である皐月の語源は、「早苗(さなえ)を植える月」です。「早苗」とは田んぼに植え付ける稲の苗のことで、皐月を「早月(さつき)」と表記する場合もあります。
旧暦5月の名前として、「稲を植える月」を意味する「稲苗月(いななえづき)」も使われていました。また、夏の真ん中の月であることを表す「仲夏(ちゅうか)」も5月の異称です。
6月:水無月:(みなづき・みなつき)
旧暦6月の名前である水無月の語源は「水の月」です。「無」は無いことではなく、「の」という意味で使われています。「田んばに水を入れる月」という由来から生まれた和風月名です。
旧暦6月の名前には、夏の終わりを意味する「晩夏(ばんか)」もあります。また、雷の多い季節であることにちなんだ「雷月(かみなりづき)」「神鳴月(かみなりづき)」「鳴神月(なるかみづき)」も旧暦6月の異称です。
7月:文月(ふみづき・ふづき)
旧暦7月を表す文月は、「稲の穂が実る月」を意味する「穂含月(ほふみづき)」が変化して生まれたといわれています。ほかには、7月の行事である七夕にちなんだ「文披月(ふみひろげづき)」を語源とする説も。文披月は、七夕の書物を開いて干す習わしに由来する「文を披く(ひらく)月」から生まれました。
旧暦7月は秋の最初の月だったため、「新秋(しんしゅう)」「秋初月(あきはづき・あきそめつき)」などの名前も使われました。
8月:葉月(はづき:はつき)
旧暦8月の名前である葉月は、「木々の葉が落ちる月」を意味する「葉落ち月(はおちづき)」が語源といわれています。ほかにも、「稲の穂が張る月」という意味の「穂張り月(ほはりづき)」を語源とする説も。「雁がその年に初めて来る月」を表した「初来月(はつきづき)」にちなんでいる説もあります。
旧暦8月の異称には、深まる秋を表した「深秋(しんしゅう)」や紅葉する木々の葉にちなんだ「木染月(こぞめづき)」なども使われました。
9月:長月(ながつき:ながづき)
旧暦9月の和風月名である長月は、「夜が長い月」を意味する「夜長月(よながづき)」が短くなって生まれた名前です。9月の気候の特徴を表した「長雨が降る月」からきているという説もあります。
旧暦9月の名前には、「稲刈月(いねかりづき)」があります。また、秋の終わりを意味する「晩秋(ばんしゅう)」も9月の異称です。
10月:神無月(かんなづき)
旧暦10月の名前である神無月の語源は、「神の月」です。水無月と同じく、「無」は「の」の意味で使われています。なお、10月は全国の神が島根県にある出雲大社に集まるため、「各地の神がいなくなる月」から名づけたという説も。どちらにしても神に関係した名前といえます。
旧暦10月の名前には、「雷のない月」を意味する「雷無月(かみなかりづき・かみなしづき)」があります。冬の始まりを表す「初冬(しょとう)」も10月の異称です。
11月:霜月(しもつき)
旧暦11月の和風月名である霜月は「霜の降る月」から付けられた名前です。旧暦11月は現代の12月ごろにあたり、寒さが深まり霜が降りてくる季節でした。
旧暦11月の名前には、「霜降月(しもふりづき)」「霜見月(しもみづき)」「雪待月(ゆきまちづき)」「雪見月(ゆきみづき)」などがあります。霜や雪にちなんだ名前が多い点が特徴です。
12月:師走(しわす)
旧暦12月の名前である師走の語源は、「仏事で師(僧侶)が忙しく走り回る月」です。また、「年が終わること」を意味する「年果つ(としはつ)」や、「四季の終わり」を表す「四極(しはつ)」を語源とする説もあります。
旧暦12月の異称は、冬の終わりを感じさせる「晩冬(ばんとう)」「残冬(ざんとう)」などです。冬の次にやってくる春を待ちわびる気持ちが込められた「春待月(はるまちづき)」という名前も使われていました。
まとめ
旧暦とは1872年まで日本で採用されていた太陰暦のことで、今日使われているグレゴリオ暦とは1~2ヶ月季節がずれています。
旧暦の各月の名前を和風月名といい、多くがその季節の気候や行事に由来している点が特徴です。旧暦や和風月名を学ぶと、昔の日本人の季節感への理解が深まるでしょう。