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外国人雇用には日本人と異なるさまざまなルールが存在するため、労働時間に関して「日本人社員と同じ規則で働けるのか」「残業や休日出勤は可能なのか」などと疑問を抱く方も少なくありません。
最初に結論を述べると、外国人であっても守るべき労働基準法は日本人と同様です。正社員として働く場合は日本人と同じルールが適用されます。ただし、留学生や外国人の被扶養者がアルバイトとして働く場合、在留資格に応じた労働時間の制限が設けられる場合もあるため注意が必要です。
いずれの場合でも、労働基準法や入管法を遵守しなければ企業もペナルティを受けてしまいます。この記事では、外国人の労働時間のルールや雇用形態別の留意点を雇用企業向けに解説するので、ぜひご一読ください。
目次
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外国人が日本で働く際は、所持している在留資格によって労働時間に関する制限が異なります。外国人を雇用する企業は、在留資格が以下のどちらに該当するのか確認しましょう。
【日本人と同様の労働時間で働ける在留資格】
技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能実習、介護、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者、定住者、特定活動の一部(ワーキングホリデーなど)
【労働時間の制限がある在留資格】
留学、家族滞在、特定活動の一部(有給インターンシップなど)
正社員として雇用できる在留資格は全て前者(日本人と同様の労働時間で働ける在留資格)です。正社員雇用の場合は日本人と同様に労働基準法で定められた労働時間の規定を遵守すれば問題ありません。
一方で、留学生や外国人の被扶養者がアルバイトをする際は日本人雇用と異なるルールが適用されます。詳細は後述しますが、労働可能な時間は週28時間までと定められているためお気を付けください。
「技能実習」は、日本人と同様の労働時間で働ける在留資格とされています。
しかし、技能実習制度の目的は人手不足を補うためではなく、外国人への技術移転です。そのため、時間外労働にあたる残業は原則として認められていません。やむを得ない事情により残業を行わせる場合は、以下の要件を満たす必要があります。
労働関係法令を遵守して行うものであること
技能等の修得等の活動の一環として行われるものであること
技能実習生に対する技能等の修得等に係る指導が可能な体制が構築されていること
技能実習生を雇用する際は、人手不足や多忙を理由に残業を行わせないよう注意しましょう。
参照元 出入国在留管理庁「在留資格「技能実習」」
外国人を正社員雇用する場合、特別な労働時間のルールはありません。日本人と同様に労働基準法で定められた時間を意識することが必要です。
労働基準法で定められている労働時間と休憩時間のポイントは以下のとおりです。
労働時間は休憩時間を除いて1日8時間、1週間40時間まで
労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与える
少なくとも毎週1回の休日または4週間を通じて4日以上の休日を与える
労働基準法によって定められている労働時間は、休憩時間を除いて1日8時間、1週間40時間までです。この時間を超えた場合は時間外労働となり残業時間が発生します。外国人に「もっと働きたい」「残業したい」と言われたときは、労働基準法について説明しましょう。やむを得ず残業をしてもらうときは、次に説明する「36協定」を結ぶ必要があります。
「36協定」とは、企業が労働者に残業や休日労働を行わせる場合に結ぶ取り決めのこと。労働基準法第36条に定められていることからこの通称で呼ばれています。
36協定を結ぶことで「月45時間以内」「年360時間以内」の残業が可能になります。特別な事情がある場合は「36協定の特別条項」に基づき延長できますが、時間外労働の上限規制である「年720時間以内」「月100時間以内」の決まりは必ず守らなくてはなりません。
36協定に関するルールも外国人と日本人で違いはありません。36協定の届出をせずに残業を行わせると労働基準法違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
参照元 厚生労働省「時間外労働の上限規制」
前述した通り、アルバイト雇用の場合は外国人が持っている在留資格によって勤務可能な労働時間が異なります。
身分に基づく在留資格を持つ外国人には、労働時間の制限がありません。そのため、日本人アルバイトと同じ条件で雇用できます。身分に基づく在留資格は、「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の4種類です。
身分に基づく在留資格を持つ外国人は日本人と同様に雇用できるメリットがある一方で、外国籍であるのを理由にシフトを減らしたり長く働かせることは、国籍による差別行為であり労働基準法に反します。
たとえば、「日本語がまだ不慣れで業務を1人で任せられない」「できる業務が限られている」などやむを得ないケースを除いては、休憩時間や労働時間のルールを守って平等にシフトを組みましょう。
「留学」「家族滞在」の在留資格では、原則として就労が認められていません。
留学生や外国人の扶養家族がアルバイトを行うためには、出入国在留管理庁から「資格外活動許可」を得る必要があります。
また、資格外活動許可を得ていても、時間や職種に制限があるため日本人と同様には働けません。以下で詳細なルールを確認しましょう。
「資格外活動許可」とは、本来は就労が不可能な留学生や外国人の扶養家族にアルバイトを認める許可のことです。アルバイトを行いたい外国人本人が出入国在留管理庁に申請を行い取得します。
外国人が資格外活動許可を得ているかどうかは、在留カードの裏面で確認できます。
引用:出入国在留管理庁「在留カードとは?」
留学生からアルバイトの応募があった時は、在留カードの裏面まで必ず確認しましょう。資格外活動許可を持たない留学生を働かせてしまうと、企業側も不法就労助長罪に問われてしまいます。
資格外活動許可を得たうえでアルバイトを行うには、労働時間を週28時間以内に抑えなくてはなりません。月曜から日曜までの一週間ではなく、どの曜日から計算しても週28時間以内にする必要があります。
また、アルバイトを掛け持ちしている場合は、すべてのアルバイト先の労働時間の合計が28時間以内に収まっていなければなりません。複数の勤務先で働いている外国人のなかには、「1ヶ所につき週28時間以内」と勘違いしている人もいます。そのため、留学生を雇用する際は、ほかのアルバイト先のシフト状況を必ず把握しておきましょう。
「自社で働く時間をしっかり確保したい」「うっかりオーバーワークとなってしまうリスクを避けたい」という場合は、アルバイトの掛け持ちを認めない旨を求人に記載し、面接時に伝えるのもおすすめです。
外国人留学生の場合、夏休みや冬休みなどの学校が定めた長期休暇に限り、アルバイトの労働時間を増やせます。そのため、長期休暇中は日本人アルバイト同様、1日8時間以内、週40時間以内の範囲内で働くことが可能です。臨時休暇や休講などは対象外であるため注意しましょう。
外国人の労働時間に関するルールに違反した場合、以下の罰則が科せられます。
労働基準法を守らずに、外国人を長時間働かせたり休憩を与えなかったりすると、企業が罰せられます。
罰則の重さは、犯した罪によってさまざまです。たとえば、36協定を結ばずに長時間働かせた場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。また、企業名が公表されたり悪い評判が広まったりすることで、採用活動や売上への影響も避けられません。
「知らなかった」「うっかりしていた」では済まされないため、注意が必要です。
資格外活動許可で定められた労働時間を超えて外国人アルバイトを雇用すると、企業は出入国管理及び難民認定法(入管法)に違反したとして、不法就労助長罪に問われます。
不法就労助長罪の罰則は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方です。なお、この罰則は、知らずに労働時間の制限を超えてしまった場合でも適用されます。
労働基準法違反よりも、はるかに罰則が厳しいですので、十分に注意してください。
参照元 e-Gov法令検索「労働基準法労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」 e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)」
以下では、労働時間の超過や資格外活動許可の有無により違法となった事例を紹介します。
自社を含め掛け持ちで複数のコンビニに勤務している留学生が、週の合計時間の上限である28時間を超えて働いていた(在留資格:「留学」資格外活動許可あり)
長期休暇期間が終わったにも関わらず、週40時間の上限でシフトを組み留学生を働かせた(在留資格:「留学」資格外活動許可あり)
在留カードを確認せず資格外活動許可を得ていない留学生を採用し、アルバイトとして働かせた(在留資格:「留学」資格外活動許可なし)
正社員雇用した外国人を1日7時間・週6日働かせたため、週40時間の上限を超えた(在留資格:「技術・人文知識・国際業務」)
外国人従業員から「もっと働きたい」と要望があったため「36協定」を結ばないまま時間外労働をさせた(在留資格:「特定技能」)
上記の事例は、すべて違法です。雇用する側が意図せず行ってしまった場合でも、不法就労助長罪に問われるため注意しましょう。
関連記事:「外国人労働者の賃金はいくらが適正?最低賃金や平均金額を参考に解説」
以下では、外国人を雇用する企業が労働時間違反を避けるために、確認すべきポイントを解説します。
外国人を雇用する際は、必ず在留カードを確認しましょう。在留カードを確認する際にチェックする箇所は、「在留資格」と「在留期限」です。
就労が認められていない在留資格の場合には、「資格外活動許可」を得ているか確認が必要です。
また、在留期限が過ぎている不法滞在者を雇用すると企業も罰せられるので注意しましょう。
なお、在留カードの有効期限と在留期限は異なります。在留カードの有効期限は、カード自体が有効とされる期間であり、在留期限はその期間内に滞在が許可されている滞在期間のことです。それぞれの期限を守って更新手続きを行いましょう。
関連記事:「在留カードが期限切れになったらどうなる?罰則や対処方法を解説」
従業員のシフトは、労働時間の上限を守って作成する必要があります。
留学生を雇用する際は、本人の申告のほか学校の長期休暇のスケジュールを提出してもらうと安心です。前述の通り長期休暇中は労働時間の上限が変わるため、雇用する側もスケジュールを把握しておく必要があります。
従業員が掛け持ちで働いている場合は、自社のシフトだけでなくほかの勤務先の労働状況の確認が必要です。
労働時間は、すべての勤務先の合計として計算します。正社員雇用であれば週40時間、アルバイト雇用であれば週28時間を超えないように注意が必要です。
関連記事:「【行政書士監修】外国人採用まるわかりガイド|注意点・メリット・募集・雇用の流れ」
外国人の労働時間は、在留資格によって異なります。日本人と同じ時間働ける外国人もいる一方で、労働時間に制限のある外国人もいます。確認不足や知識不足で違反が発生しないように、雇用前には必ず在留資格の種類を確認し、就労可能かどうかを把握しておきましょう。
特に、留学生や技能実習生などは労働時間に厳しい制限があるため、注意が必要です。外国人労働者の中には、「少しでも長く働いて、できるだけ多く稼ぎたい」と考えている人もいます。たとえ本人から「勤務時間を長くしたい」と申し出があった場合でも、労働基準法や入管法に基づく労働時間の制限を説明し、ルールを守って働いてもらうようにしましょう。
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監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net