仏教とはどのようなもの?基本的な教えや伝説を分かりやすく解説

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2023/03/20

「仏教とは何か?」と聞かれても、自信をもって答えられる人はそう多くないでしょう。仏教はお釈迦さまが開いた宗教で、「仏の解いた教え」「仏になるための教え」を指します。 このコラムでは、苦しみから解放されるための考え方や仏教における4つの苦難などを紹介。日本人にとって最も身近な宗教のひとつである仏教について考えを巡らせてみましょう。

目次

  1. 仏教とは?簡単に分かりやすく解説
  2. 仏教の基本的な教え
  3. 仏教におけるお釈迦さまの伝説
  4. 日本は無宗教の人が多い?
  5. まとめ

仏教とは?簡単に分かりやすく解説

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仏教を簡単に説明すると、人の一生につきまとうさまざまな苦しみから解放され、安らかに生きることを目標とした宗教です。

人には、病気や死、老いなどさまざまな苦しみがあります。こうした苦しみは避けることはできず、思い通りにならないものです。仏教の考えでは、生きることは思い通りにならないことばかりで苦しみに満ちているというのが基本となっています。そこで仏教では、苦しみを解決する方法を説いているのです。

仏教とは文字通り、仏(ほとけ)の教え、つまり「仏の解いた教え」「仏になるための教え」です。仏とは仏陀(ブッダ)のことで、目覚めた人、真理を悟った人を指しています。仏陀は世の中の真理に目覚め、煩悩を消し去って何事にも心を乱されない人のこと。仏陀の説いた教えに従って悟り・解脱を成道し、究極的には「成仏(じょうぶつ)」つまり仏に成るのを目標としているのです。

仏教の開祖はお釈迦さま

仏教は紀元前5世紀~6世紀ごろにお釈迦さま(ゴータマ・シッダールタ)がインドで開祖し、その後世界各地に伝わった宗教です。日本では聖徳太子の精力的な布教活動によって、多くの人々の間に広まったといわれています。仏教は日本や中国、台湾などの東南アジアをはじめ、多くの国や地域で信仰され、今では世界三大宗教の一つとなっています。
なお、お釈迦さま=仏陀(ブッダ)とされることが多いですが、お釈迦さまは仏陀の一人だとする考えもあります。

仏教は2種類に分類できる

仏教にはさまざまな宗派がありますが、大きく分けると「大乗仏教」と「上座部仏教」の2種類に分類できます。それぞれの特徴を解説するのでご参照ください。

大乗仏教(だいじょうぶっきょう)

日本人が信仰している仏教の多くが大乗仏教です。大乗仏教では大きな乗り物に大勢の人を乗せるイメージで、「仏教を信仰している人の多くが救われる」という考え方をします。「出家した人だけでなく在家信者も救われる」「悟りを開いていなくても、修行をすれば救われる」のように多くの人々が「救い」の対象なのです。

上座部仏教(じょうざぶぶっきょう)

大乗仏教とは反対に、「出家をして厳しい修行を積んだ少数の人のみが救われる」という考えをするのが上座部仏教です。主に東南アジア・南アジアで信仰されており、小乗仏教やパーリ仏教、南伝仏教と呼ばれることもあります。

仏教が日本で広まったのは奈良時代です。時代ごとの出来事をまとめて知りたい方は「日本の時代を年表にして紹介!時代区分ごとに起こった出来事も解説」のコラムもあわせてご覧ください。

仏教の基本的な教え

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仏教は宗派によってさまざまな考え方がありますが、ここでは仏教の基本となる教えを紹介します。

苦しみから解放され安らかに生きるのが目的

仏教は「一切皆苦(いっさいかいく)」という考えが基本となっています。一切皆苦は文字通り、世界のすべては苦しみばかりという意味です。ここでいう苦しみとは、単に苦しいというだけでなく、思い通りにならないという意味も含まれています。そのため、一切皆苦とは、人生や世の中は思い通りにならないものという意味なのです。

仏教では、苦しみの構造や苦しみが生じる原因が説明されています。苦しみが生じる仕組みを知ることで、あらゆる事柄に一喜一憂することなく心が安定した状態になると説いているのが仏教の教えです。

仏教における「苦」とは?

仏教では、苦しみについて以下のような種類があると考えられています。

四苦(しく)

四苦(しく)とは、人が生きていくうえで必ず遭遇する根源的な4種類の苦しみのことを指します。四苦の内訳は「生老病死(しょうろうびょうし )」です。

  • 生:生まれることの苦しみ
  • 老:老いることの苦しみ
  • 病:病気による苦痛、苦しみ
  • 死:死ぬことへの恐怖や不安、苦しみ

四苦八苦(しくはっく)

四苦八苦(しくはっく)は、四苦のほかに、日常的に遭遇することの多い4種類の苦しみを追加して八苦としたものです。四苦八苦の内訳は、「愛別離苦(あいべつりく)」「怨憎会苦(おんぞうえく)」「求不得苦(ぐふとくく)」「五蘊盛苦(ごうんじょうく)」です。

  • 愛別離苦(あいべつりく):親や子ども、友人など、どんなに大切な人であってもいつかは別れなければならない苦しみ
  • 怨憎会苦(おんぞうえく):大嫌いな人、恨みや憎しみを抱いている相手と出会ってしまう苦しみ
  • 求不得苦(ぐふとくく):お金やモノ、名誉など、求めるものが手に入らない苦しみ
  • 五蘊盛苦(ごうんじょうく):心や体を思うように制御できない苦しみ


なお、四苦八苦は「ものごとがうまくいかず切羽詰まった様子」という意味の言葉として、一般的に用いられています。

苦しみを理解するのに必要な3つの真理

苦しみを理解して解決するには、お釈迦さまが説いた3つの真理「諸行無常・諸法無我・涅槃寂静」について知る必要があります。これら3つの理念は、あわせて「三法印(さんぼういん)」と呼ばれ、仏教の核となる教えとされています。

1.諸行無常(しょぎょうむじょう)

諸行無常とは、「すべては移り変わるもの」という意味の言葉です。世の中に不変のものはなく、絶えず変化し続けているという真理を表しています。
人は金銭・物・地位・名誉・人間関係などさまざまな物事に対して、変わらないよう願ったり「変わらないはずだ」と信じたりするものです。それが執着となり苦しむこともあります。しかし、「すべて変化するものだ」と考えれば、変化にともなう苦しみから解放されるという教えです。

2.諸法無我(しょほうむが)

諸法無我には、「すべては繋がっている」という意味があります。世の中に独立しているものはありません。あらゆる物事は、互いに何らかの影響を与えることによって存在しているという教えです。自分という存在も、すべての繋がりのなかで「生かされているのだ」と考えれば、苦しみから解放されるでしょう。

3.涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)

涅槃寂静は「悟りの境地」を表した言葉です。すべての煩悩と苦しみをなくし、安らぎの境地に辿り着くことを指します。人は不平不満を感じたとき、自分以外の存在に対して怒りを向けてしまうものです。しかし、仏教では、怒りは相手に対する疑念や誤解、プライド、欲望など自分の煩悩が原因だと考えます。悟りの境地に達するには、先述した「諸行無常」「諸法無我」の理解が必要です。そして、人生でどのようなことが起きても心乱されず、安らいだ状態を保てるよう修行を重ねて悟りの境地を目指します。そうすれば、誰もが苦しみから解放され、幸せに生きられるというのが仏教の教えです。

苦しみにも原因がある「縁起」という教え

仏教には、「縁起(えんぎ)」という教えがあります。縁起とは、あらゆる物事には原因や条件があり、それによって結果が生じるという因果論的な考えです。

縁起という考えに基づくと、人の苦しみにも必ず原因があることになります。つまり、苦しみが生じる原因を取り除くことができれば、苦しみから抜け出すことができるという考えなのです。

苦しみの原因を滅して克服する方法「四諦(したい)」

苦しみが生じるメカニズムを明らかにし、苦しみを取り除く方法を説明したのが「四諦(したい)」という教えです。四諦の内訳は「苦集滅道(くじゅうめつどう)」。それぞれの概要は以下のようになっています。

・苦諦(くたい):苦しみの真理
この世は思い通りにならないばかりで、人の生は苦しみであると理解する

・集諦(じったい):苦しみの原因
苦の原因は、煩悩や執着であると理解する

・滅諦(めったい):苦しみの原因の消滅
煩悩や執着が消滅すれば、苦しみがなくなる

・道諦(どうたい):苦しみの原因を消滅させるには
苦しみの原因を消滅させる方法、悟りに至るための修行・実践を行う

つまり、人の一生につきまとう苦しみは煩悩や執着が原因で、その原因を取り除くために仏教の修行や実践をしなさい、という教えなのです。

苦の原因を消滅させるための修行「八正道(はっしょうどう)」

苦しみの原因を取り除くための修行・実践の一つとして示されているのが、「八正道(はっしょうどう)」という修行法です。八正道は理想の境地に達するための、8種類の正しい生活態度のこと。八正道を実践すれば、苦の原因を取り除き、苦を克服できると考えられています。
八正道の内容は以下のとおりです。

  • 正見(しょうけん):正しいものの見方をすること
  • 正思惟(しょうしゆい):自己中心的な考えはせず、正しく考え判断すること
  • 正語(しょうご):嘘や悪口をいわず、正しい言葉遣いをすること
  • 正業(しょうごう):殺生や盗みをせず、正しい行いをすること
  • 正命(しょうみょう):人の迷惑になるようなことはせず、行儀よく規則正しい生活を送ること
  • 正精進(しょうしょうじん):正しく励み、努力すること
  • 正念(しょうねん):雑念をはらい、物事の事象にとらわれず真理を求めること
  • 正定(しょうじょう):心を安定させ、正しい心を保つこと


仏教は、修行や実践に関する基本的な考えに「中道(ちゅうどう)」というものがあります。中道は、苦楽・有無・断常など、対立する立場を離れ、偏りがない正しさを貫くことです。
仏教には、苦しすぎず楽過ぎない修行をすべきという考えがあります。八正道は、この苦楽中道を具体的にした修行方法なのです。

日本には仏教がもととなった行事があります。日本人が行う伝統行事については、「日本の伝統行事には何がある?年末年始の行事や通過儀礼についても紹介」のコラムで紹介しているので、あわせてご覧ください。

仏教におけるお釈迦さまの伝説

仏教におけるお釈迦さまの伝説の画像

お釈迦さまは実在の人物だと考えられています。ここでは、古くから語り継がれているお釈迦さまの生涯・伝説について紹介します。

誕生

紀元前5世紀~6世紀ごろ、ヒマラヤの麓にあるカピラ城のマーヤーさまから、お釈迦さまが誕生しました。お釈迦さまは誕生した直後に7歩歩き、右手で天を左手で地を指さし、「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」という言葉を話したといわれています。これは、「世界の人々は一人ひとり尊いものである=個々の尊厳を大切にする」と読み取れる一方、「この世に自分よりも尊いものはない=自分が1番」と解釈することもある言葉です。

出家

お釈迦さま誕生の7日後にマーヤーさまが亡くなりました。その後、お釈迦さまは19歳で結婚し城で順風満帆な生活を送っていましたが、修行の道を歩むことを決意します。あるときお釈迦さまは、東の門で腰の曲がった老人を、南の門で痩せ衰えた病人を、西の門では死者が運ばれる様子を見て、この世の苦しみからは逃れられないことを知りました。そして、北の門を出たときに見た、修行者の堂々とした姿に感銘を受けて出家を決めたのです。

苦行を経て悟りを得る

厳しい修行に励んでいたお釈迦さまは、6年後に「苦行は間違いだった」と気づきます。心身ともに衰弱したお釈迦さまを介抱したのは、村娘のスジャーターです。スジャーターに助けられたお釈迦さまは菩提樹の下で座禅を組み、「悟りを得るまでこの場所から動かない」と決意し座り続けました。そして、35歳のときに悟りを得たのです。

涅槃(ねはん)

お釈迦さまは45年間、インドの各地で仏教の教えを説きました。80歳のとき、釈迦さまは体調を崩し、サラソウジュの木の下で体を休めます。そして、「我が亡きあとは、我が教えを守り精進せよ」という言葉を残して涅槃になりました。
涅槃とは仏教における悟りの境地のことで、一般的には死を意味します。

日本は無宗教の人が多い?

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日本には熱心な仏教信者がいる一方、仏教を含め特定の宗教を信仰しない人も多くいます。しかし、神や仏の存在を信じていない訳ではありません。日本では古来から、「八百万(やおよろず)の神=多種多様な神」が信じられています。誰か1人を崇めるのではなく、山や森、海などさまざまな場所に神がいるという考え方です。

また、日本は外国の文化を受け入れることに対して、比較的寛容な傾向があります。お葬式や通夜、初詣などは仏教に基づいて行うものの、クリスマスやハロウィンといったキリスト教のイベントを楽しむ日本人も多いのです。

日本人の宗教や自然に対する考え方、文化については、「日本の文化をまとめて一覧で紹介!独自の価値観や海外との違いも解説」のコラムで詳しく紹介しています。

まとめ

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仏教は、紀元前5世紀~6世紀ごろにインドでお釈迦さまが開祖し、そのあと日本に伝わりました。日本をはじめ、多くの国や地域で信仰されている世界三大宗教の一つです。仏教について考えを深めることは、悩みや苦しみから抜け出す助けになるでしょう。

ライター

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生活・仕事・留学に関するお役立ち情報から、日本のディープな魅力を紹介するコラムまで、バラエティ豊かな記事をお届けします。

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