メディアでもよく使われる「Z世代」は、1996年ごろ~2012年ごろに生まれた若者を指す言葉です。Z世代はデジタル機器に囲まれて育ち、物心ついたころから不況や震災を経験してきました。そのため、ほかの世代にないような独自の価値観や消費傾向を有しているのが特徴です。このコラムで、Z世代の特徴について確認してみましょう。
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Z世代は1996年~2012年に生まれた世代
「Z世代」に明確な定義はありませんが、基本的には1996年ごろ~2012年ごろに生まれた若い世代を指す言葉です。前の世代が「ミレニアル世代」と呼ばれていることから、Z世代は「ポストミレニアル世代」と呼ばれることもあります。
Z世代に該当するのは、2023年時点で10代~20代半ばの若者たちです。これからの経済・社会を担っていく存在であり、消費の主役でもあるため企業からも注目を集めています。
Z世代という区分はそもそも消費世代の区分の一つです。消費の傾向で世代を分けるのは、アメリカで1960年中盤~1980年ごろに生まれた人が「Generation X(X世代)」と呼ぶようになったのがはじまり。それから生まれる世代をアルファベット順に並べ「Y世代」「Z世代」と呼ぶようになりました。
なお、X世代という名称は、ハンガリー人の有名写真家「ロバート・キャパ」が1950年代初頭に出した『Generation X』というフォトエッセイが由来。第二次世界大戦後の混乱を生きる若者がテーマで、「未知の新しい世代」という意味で名付けられたものとされています。
その後、カナダ人小説家「ダグラス・クープランド」の『ジェネレーションX-加速された文化のための物語たち』(1991年)がベストセラーになったことで世界にも広く知られるようになり、マーケティングにも使われるようになりました。
Z世代の3つの特徴
Z世代には以下の3つの特徴があります。
・デジタルネイティブ
・スマホネイティブ
・SNSネイティブ
ここでは、それぞれの意味を解説していきます。
デジタルネイティブ
Z世代は、物心つくころからIT製品に囲まれて育ってきた世代です。日常的にさまざまなインターネットサービスに触れていたため、情報リテラシーに優れ、デジタル機器を使いこなせます。
情報収集をするときもテレビや雑誌よりもインターネットを活用し、SNSを利用してデジタル上で交流するのも一般的です。
スマホネイティブ
Z世代は、基本的にスマートフォンを使用してきた世代です。はじめて使用した携帯がスマホで、ガラケー(ガラパゴス・ケータイ)を使ったことがないという人も少なくありません。スマホを使いこなしており、買い物やゲーム、仕事など、あらゆることをこなしています。
SNSネイティブ
SNSはスマホの普及とともに利用者が増加しました。Z世代はスマホネイティブであるとともにSNSネイティブでもあるのです。友人と交流するのに使うのはもちろん、情報収集するのにもSNSを使います。
また、SNSの炎上事例を数多く見てきているため、プライバシー保護やセキュリティー対策に関心が高いのも特徴です。
Z世代の特徴については「Z世代とは何歳まで?特徴や定義をわかりやすく解説」でも紹介しているので、ぜひご覧ください。
Z世代の価値観
Z世代には、時代背景によって形成された独特の価値観があります。ここではZ世代によく見られる価値観について紹介するので、チェックしてみましょう。
多様性を尊重している
Z世代は多様性を尊重する傾向にあり、自分とは異なる考えや価値観に対しても肯定的です。人間には個性や特性があり、性別や宗教、思想、人種などの違いがあって当然という前提を理解しています。また、多様性が尊重される社会を望んでいるのも特徴です。
着実志向
経済的に不況な時期に生まれたZ世代は、景気の良い時代を経験していません。また、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災、2020年ごろのコロナ禍など、シビアな社会環境を見て育ちました。
そのため、保守的に考える傾向にあり、安定志向・着実志向だとされています。夢を叶えるよりも安定した生活をおくることを重視する現実主義的な考え方です。
社会問題への関心が強い
Z世代は、環境問題や人種差別、労働問題といった社会問題への関心が強い世代です。若いころに東日本大震災や熊本地震などの大きな災害を経験し、さらに昨今のSDGs(持続可能な開発目標)に関する取り組みも日常的に目にしているため、社会問題について考える意味を理解しています。
日本の文化や価値観について知りたい方は「日本の文化をまとめて一覧で紹介!独自の価値観や海外との違いも解説」もぜひご覧ください。
Z世代の消費行動
「安定志向」「デジタルネイティブ」という特徴があるZ世代は、消費行動に以下のような特徴があります。
・オンラインでの買い物が多い
・SNSや動画共有サービスで情報収集
・コスパ・タムパを重視
・自分にとって価値があるものを購入
それぞれについて解説します。
オンラインでの買い物が多い
デジタルネイティブ、スマホネイティブであるZ世代はオンラインでの買い物が当たり前になっています。買いたい商品があればスマートフォンで情報を集め、十分調べてからできるだけ安くて良いものを買おうとする傾向が強いといえるでしょう。
SNSや動画共有サービスで情報収集
Z世代は情報収集する際、テレビや雑誌、新聞よりもSNSや動画共有サービスを活用する傾向にあります。検索エンジンを使うこともありますが、オンライン上のサービスを目的によって使い分けている人が多いのが特徴です。
トレンドを知りたいときは「Twitter」、何かを学びたいときは「YouTube」、飲食店を探すなら「Instagram」、スキマ時間に動画を見るときは「TikTok」と、それぞれのサービスがもつ特徴を活かして使い分けています。
コスパ・タムパ(タイパ)を重視
Z世代は、コストパフォーマンス(コスパ)だけでなくタイムパフォーマンス(タムパ/タイパ)も重視する傾向にあります。
コスパは「費用対効果」のことで、支払った費用に対してどのような効果があったか比較する言葉です。Z世代よりも前の世代である「ゆとり世代」で広く浸透した概念であり、「安いかどうか」だけでなく「中長期的に使ってみて得かどうか」に注目しているのが特徴といえます。
Z世代も同じくコスパを重視しますが、同等かそれ以上にタムパを重視する傾向があります。タムパ/タイパとは「時間対効果」のことで、費やす時間に対する満足度を指す言葉です。デジタル化によって効率化が進み、合理性を求める価値観が広まったとされています。その結果、「モノ消費」よりもタムパが高い「コト消費」「エモ消費」「ヒト消費」といった消費行動が広まっているのです。
自分にとって価値があるものを購入
社会が不安定な時期を生きてきたZ世代は、お金に対しても保守的です。そのため、ブランド品や有名商品にこだわりはなく、「自分にとって価値があるかどうか」を重視してお金を使う傾向にあります。買い物にも合理性を求めているため、「若者のクルマ離れ」などの現象が見られるようになりました。
Z世代以外の世代
Z世代には前後となる世代が存在します。各世代の特徴と年齢層について解説するので、チェックしてみてください。
X世代
X世代(ジェネレーションX)は、1960年~1980年前半に生まれ、2023年時点で40代~50代になる人たちのことです。生まれた時代は、ちょうど学生運動や高度経済成長が終わったころ。政治経済が沈静化した時期で、政治的関心が低い傾向にあるため「しらけ世代」と呼ばれることもあります。
X世代は自立心や個人主義的な考え方が強く、キャリアアップにも意欲的です。また、Z世代の親世代にあたり、経済力のある人が多い傾向にあります。
デジタルネイティブであるZ世代に対し、X世代は成人してからデジタル化が進みました。そのため、デジタルへの関心が高く、変化への適応力も持ち合わせているのが特徴です。
X世代とZ世代の大きな違いは、情報収集のツール。X世代はインターネットがあまり普及していない時代に生まれ育ったため、最新の情報を知りたいときは基本的にテレビを活用します。
Y世代・ミレニアル世代
Y世代は、1980年~1996年ごろに生まれ、2023年時点で20代後半~40代になる人たちのことです。「新千年紀(ミレニアム)」が到来した2000年以降に成人した世代なので、「ミレニアル世代」と呼ばれています。景気のいい時代を経験していることから、他の世代に比べ理想主義・楽観主義的な考え方をする傾向にあるのが特徴です。
X世代やその前のベビーブーム世代は、プライベートを犠牲にして仕事を優先するという価値観がありましたが、Y世代はワークライフバランス重視。効率よく働いて、残業や休日出勤はなるべくしないようにしています。
また、ミレニアル世代はZ世代と同様、物心ついたころにはインターネット環境が普及していたデジタルネイティブです。ただし、雑誌や新聞、テレビを使って情報収集する習慣も親世代から引き継いでおり、さまざまなツールをバランスよく使いこなす傾向にあります。
ミレニアル世代については「日本のミレニアル世代はアメリカと違う?外国人向けに特徴を解説!」でも紹介しているので、ぜひご覧ください。
Z世代
Z世代は1996年ごろ~2012年ごろに生まれた若者世代です。ここでは、Z世代とミレニアル世代の違いについて注目しつつ、Z世代の特徴を解説します。
テレビ離れが進んでいる
総務省の発表した「令和3年情報通信白書」のデータによれば、10代の休日のテレビ利用時間は平均93.9分、ネット利用時間は平均290.8分という結果が公表されています。つまり「テレビ離れ」が進んでいるのです。スマホネイティブのZ世代は、SNSや動画共有サービスから情報を得るのが一般的になっています。
一方、ミレニアル世代はデジタルネイティブであるものの、テレビ・雑誌・新聞などのマスメディアも利用します。SNSや動画共有サービスはコンテンツを楽しむために使い、信頼性の高い情報を得るには雑誌や書籍を利用するという使い分けをしている人が多いのが特徴です。
参照元 総務省「令和3年情報通信白書」
買い物は実用性重視
不況の時代を生きたZ世代は、現実主義的であり、コスパ・タムパに優れた実用的な商品を購入する傾向があります。
一方、理想主義的な考えのあるミレニアル世代は「かけがえのない顧客体験」を重んじます。商品購入の過程や、商品開発のストーリー、商品の個性に価値を感じるのが特徴です。
オンラインのコミュニケーションが当たり前になっている
Z世代は、学生のうちにコロナ禍を経験している人が多いという特徴があります。修学旅行や体育祭が中止になり、授業もオンラインでしか行えないという状況だったため、オンラインでコミュニケーションを取るのが一般的になっているのです。ミレニアル世代は対面のコミュニケーションが一般的だったため、コミュニケーションの仕方については大きな違いがあるといえます。
α世代
α世代は、Z世代の次の世代で、2010年~2020年ごろに生まれた人たちのことです。Zの次のアルファベットがないので、代わりにギリシャ文字の1文字目である「α(アルファ)」が使われています。ちょうどミレニアル世代の子供にあたり、2030年~2040年ごろには消費の中核を担う存在になる世代です。
α世代は、スマートフォンやタブレットに囲まれた環境で、プログラミング教育やオンライン授業を受けながら育ちます。Z世代よりもさらにデジタルとの親和性が高くなるため、ミレニアル世代やZ世代とは異なる価値観が生まれると予想されています。
まとめ
Z世代は、1996年ごろ~2012年ごろに生まれた若者たちで、これから社会を担っていく存在でもあります。スマホネイティブの環境に生まれたことから、若いうちからSNSや動画共有サービスを目的に応じて使い分けているのが特徴です。また、経済的には不況な時期を過ごしてきたため着実志向で、コスパやタムパを重視した買い物をします。
ただし、ここまで紹介してきたZ世代の特徴は、あくまで消費行動の特性をベースに考えた一般的な傾向に過ぎません。当然ながら、価値観という話になると、人それぞれ異なる考え方があり、また「Z世代」で一括りにすることに違和感を覚える人もいます。そのため、Z世代の特徴を決めつけすぎず、参考程度に捉えておきましょう。