「芸術の秋」は、文芸誌『新潮』に記載された「美術の秋」という言葉が由来です。秋は、紅葉で色彩が豊かになること、そして過ごしやすい気候になって芸術を楽しむ余裕ができることにより、芸術活動が盛んになるとされています。
このコラムでは「芸術の秋」だけでなく、「読書の秋」「スポーツの秋」「読書の秋」についても意味や由来を解説しているので、ぜひご覧ください。
目次
「芸術の秋」の言葉の由来
「芸術の秋」は、秋が芸術を楽しむのに適した季節であることを表した言葉です。
芸術の秋という言葉の由来は、文芸誌『新潮』だとされています。1918年に発行された号に「美術の秋」という記載があり、それが「芸術の秋」となって広まったと考えられているのです。
また、秋に美術展が多く開催されるのも「芸術の秋」といわれる所以となっています。日展、二科展、院展など、日本を代表する展覧会が集中しているのも秋です。
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秋に芸術活動が盛んになるのはなぜ?
秋に芸術活動が盛んになる理由の一つに、秋の気候が関係していると考えられています。秋は、暑い時期が過ぎ去り、過ごしやすくなる季節です。環境によるストレスが少なくなるので、心に芸術を楽しむゆとりが生まれます。そのため、音楽や美術などの芸術活動が盛んになるとされているのです。
また、秋といえば景色が美しくなる季節でもあります。作物が実をつけ、植物が紅葉をはじめる秋は、風景の色彩が豊かになる時期。美しい景色を絵や写真に残そうと、芸術に触れる機会が増えると考えられています。
日本の秋の魅力については「日本の秋は魅力がいっぱい!旬の食べ物や人気の観光地を紹介」で紹介しているので、興味のある方はぜひご覧ください。
芸術の秋のほかにも「△△の秋」の由来
「読書の秋」や「スポーツの秋」など、「△△の秋」という表現はさまざまあります。読書やスポーツなど、年中楽しめるような事柄であっても、秋が最適とされるのには理由があります。ここでは「△△の秋」の由来について紹介するので、チェックしてみましょう。
食欲の秋
「食欲の秋」という表現は、秋に美味しいものを食べる機会が増えることに由来します。昔は施設栽培が行われていなかったので、収穫した野菜は旬の時期にしか食べられませんでした。秋は収穫物が多い季節なので、食べ物が豊富で「食欲の秋」と呼ばれるようになったのです。
また、秋は食べ物が豊富なだけでなく、食欲が増す季節だとも考えられています。夏の暑い時期は夏バテで食欲が出ないという人も多いでしょう。その点、秋は涼しくなって食欲が回復してくるので、食欲が増すと感じられるのです。
そのほか、セロトニンの分泌が少なくなることも食欲が増す理由とされています。幸せホルモンとして知られるセロトニンには、食欲を抑える働きがあります。セロトニンは日に当たることによって分泌量が増えるので、日照時間の減る秋には分泌量が減ってしまうのです。そのため、食欲が増すと考えられています。
収穫の秋
「収穫の秋」は、秋に食べ物がたくさん収穫できることに由来する表現です。昔は施設栽培を行っていなかったので、季節によって収穫量がまばらでした。そして、収穫物が最も多い時期が秋だったのです。日本人の主食である米をはじめ、サツマイモやカボチャ、梨、柿など、秋にはさまざまな食材が収穫されます。
秋が旬の食べ物については「日本の季節の食べ物には何がある?春夏秋冬の旬の食材を一覧で紹介」で紹介しているので、ぜひご覧ください。
読書の秋
「読書の秋」という表現は、秋の夜が長く、読書をするのに適しているという考えに由来します。秋は、太陽が昇ってから沈むまでの時間が短く、夜が長い季節です。これを「秋の夜長(あきのよなが)」といいます。涼しくて長い秋の夜は、読書をするのに適しているという考えが広まったのです。
秋の夜は読書という考えは、「灯火(とうか)親しむべし」という詩の一節に由来します。この詩は中国・唐代の文人「韓愈(かんゆ)」が残したもので、「涼しい秋の夜長は、灯火のそばで読書をするのに適している」という意味です。もともとは韓愈が息子に読書の大切さを教えるために詠んだ詩でしたが、この内容に多くの人が納得し、現代まで言い伝えられるものとなりました。そして「読書の秋」といわれる所以となったのです。
スポーツの秋
「スポーツの秋」という表現は、秋が運動するのに適した気候であることに由来します。秋は、暑さで熱中症になることが少なく、また寒さで体が冷え込むこともありません。そのため、秋はスポーツをするのに最適だと考えられてきたのです。
「スポーツの秋」と盛んに言われるようになったのは、1964年に行われた「東京オリンピック」がきっかけだとされています。第18回オリンピック競技大会の開会式は、1964年10月10日に東京で開催されました。この10月10日は「体育の日」として国民の祝日に制定され、国民でスポーツを楽しむ日となったのです。体育の日を中心に、秋にスポーツを楽しむ風潮が生まれ、運動会・体育祭も秋に行うようになりました。そして、「スポーツの秋」とよばれるようになったのです。
なお、体育の日は、2000年から「スポーツの日」になり10月の第二月曜日に移動となりました。
「スポーツの秋」の由来については「スポーツの秋の由来を解説!運動・食欲・読書などおすすめの過ごし方も紹介」でも詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
秋を楽しむ代表的な3つの行事
日本の秋は、芸術を楽しんだりスポーツをしたりと「△△の秋」に代表されるような、秋らしい過ごし方をしてみるのがおすすめです。また、芸術や読書のほかにも、季節を感じられる有名な行事が複数あるので、秋らしい過ごし方をしたい方はぜひ行ってみましょう。
お月見
お月見は、1年のなかで空が最も澄み渡る旧暦の8月ごろに、美しい満月を眺めるという行事です。一般的に知られているのは、8月15日の「十五夜(じゅうごや)」で、このときの月は「中秋(ちゅうしゅう)の名月」ともよばれます。
なお、旧暦と新暦にはずれがあるため、十五夜の日付は毎年異なり、9月中旬~10月上旬ごろの行事となります。2024年の十五夜は9月17日(火)です。
お月見は月を眺める以外にも、月見団子を食べたり、ススキを飾ったりする風習があります。詳しくは「十五夜と十三夜はいつ?お月見の意味や食べ物を紹介!」で紹介しているので、ぜひご覧ください。
ハロウィン
10月31日に行われるハロウィンは、もとは11月1日に行われるキリスト教の祝日「諸聖人の日」「万聖節」の前夜祭となるお祭りです。内容は、秋の収穫を祝ったり、先祖の魂を迎えて悪霊を追い払ったりするというもの。ヨーロッパが発祥で、古代ケルト人の祭りに由来します。
日本では近年、ハロウィンは仮装をするイベントとして有名です。ハロウィン当日は仮装パレードやコンテストが行われ、魔女、お化け、アニメキャラクターなど個性豊かな仮装が楽しまれています。ハロウィンの仮装はもともと、悪霊の仲間に見せかけるため、もしくは悪霊を追い払うためにするものでした。ただ、日本では純粋に仮装を楽しむイベントとして浸透しています。
仮装のほかにも、ハロウィンの飾りつけを行ったり、ハロウィンパーティーを開いたりする楽しみ方が一般的です。ハロウィンといえば、仮装した子どもが「トリック・オア・トリート」と言いながら近所を回るというのが定番ですが、この風習は日本ではあまり定着していません。
ハロウィンについては「ハロウィンが日本に定着したのはいつ?起源や行事内容を紹介!」で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
酉の市(とりのいち)
酉の市(とりのいち)は、今年一年の無事を報告し、翌年の幸福を祈るお祭りです。毎年11月の酉の日(とりのひ)に、関東地方を中心に全国の神社・お寺で開催されます。縁起物として「熊手」を買い、新年の幸福や商売繁盛を願うのが定番の楽しみ方です。
酉の日は十二支の酉にあたる日のことなので、12日周期で巡ってきます。そのため、酉の市は1か月に2~3回開催され、それぞれ「一の酉」「二の酉」「三の酉」と呼ばれます。
日本の年間行事は「日本の年中行事や伝統行事を一覧で解説!特別な日の風習や行事食とは?」で紹介しているので、興味のある方はぜひご覧ください。
まとめ
「芸術の秋」は、芸術を楽しむのは秋が適しているという意味の言葉です。言葉の由来は、文芸誌『新潮』に記載された「美術の秋」だとされています。
秋に芸術活動が盛んになる理由は主に2つ。過ごしやすい気候で芸術を楽しむ心の余裕ができること、そして紅葉などの美しい景色が増えて創作意欲が増すことが理由だとされています。
また、「芸術の秋」以外にも「食欲の秋」「スポーツの秋」「読書の秋」など、「△△の秋」という表現はさまざまあります。どれも秋らしい過ごし方を表した言葉なので、「△△の秋」を参考に日本の秋の楽しみ方を考えてみましょう。