冬の季語は、初冬・仲冬・晩冬の3つに分けられ、三冬は冬全体を表します。季語とは、俳句に必ず入れる季節を表す言葉のことです。俳句は、5・7・5の合計17音で構成されます。このコラムでは、冬の季語を一覧で解説します。また、日本で有名な俳人と、冬の季語を使った俳句も紹介。このコラムを参考にして、美しい季語や表現を知り、実際に俳句を作ってみましょう。
目次
季語とは何か
季語(きご)とは、俳句(はいく)を作るうえで必要な語で、季節を表す言葉のことです。俳句は、基本的に5音・7音・5音の合計17音で構成され、季語を一つ入れるよう決められています。たとえば「雪下駄」と漢字3字で表記した場合でも、俳句では「ゆきげた(4音)」と読みの音数で数えるため、読みの音数に注意しましょう。季語は俳句に欠かせない語であり、俳句の季節を表す大切な要素です。季語を知ることで俳句をより楽しめます。
俳句のルールについて詳しく知りたい方は「外国人にも人気のある俳句とは?英語で詠むHAIKUのルールも解説」のコラムを参考にしてください。
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冬の季語が使える時期
冬の季語が使える時期は、11月の立冬(11月上旬頃)から2月の立春(2月上旬頃)の前日までといわれています。立冬や立春の日にちは年によって変わるため、冬の季語は主に11月から1月に使えると覚えておくと良いでしょう。
冬の季節は、「初冬(しょとう)」「仲冬(ちゅうとう)」「晩冬(ばんとう)」の3つに分けられます。また「三冬(さんとう)」は、初冬・仲冬・晩冬をまとめた冬全体を指す言葉です。冬の季語を知り、俳句作りに挑戦してみましょう。
三冬の季語一覧
三冬の季語は冬全体を表すため、いつでも使用して良いとされています。ここでは、三冬の季語を紹介するので、参考にしてください。
カテゴリー |
三冬(冬全体)の季語 |
生活 |
・千枚漬(せんまいづけ)・塩鮭(しおざけ)・塩鰹(しおかつお) |
行事 |
・冬安居(ふゆあんご/とうあんご)・雪祭り(ゆきまつり) |
動物 |
・冬の鹿(ふゆのしか)・狐(きつね)・狸(たぬき)・寒犬(かんけん) |
植物 |
・冬木の桜(ふゆぎのさくら)・冬牡丹(ふゆぼたん) |
天文・地理 |
・冬晴(ふゆばれ)・冬旱(ふゆひでり)・冬の星(ふゆのほし) |
初冬・仲冬・晩冬のどの時期か分かりにくい場合は、冬全体を表す三冬の季語を使用すると良いでしょう。
初冬の季語一覧
初冬は冬の始まりで、11月頃の時期のことです。ここでは、初冬に使われる季語を紹介します。
カテゴリー |
初冬(11月頃)の季語 |
生活 |
・蕎麦刈(そばかり)・風除(かざよけ)・蓮根掘る(はすねほる) |
行事 |
・十日夜(とおかんや)・神農祭(しんのうさい)・新嘗祭(にいなめさい) |
動物 |
・雪虫(ゆきむし)・雪蛍(ゆきぼたる)・雪婆(ゆきばんば) |
植物 |
・雪割茸(ゆきわりたけ) |
天文・地理 |
・初霜(はつしも)・初時雨(はつしぐれ)・時雨(しぐれ) |
初冬の季語は、秋の終わりを感じ冬に向かう季節の変化を表す際に使われます。冬のはじまりの情景を句に表したいときに使うと良いでしょう。
仲冬の季語一覧
仲冬は冬の半ばで、12月頃の時期のことです。ここでは、仲冬に使われる季語を紹介します。
カテゴリー |
仲冬(12月頃)の季語 |
生活 |
・冬休み(ふゆやすみ)・年忘れ(としわすれ)・畳替(たたみがえ) |
行事 |
・年守る(としまもる)・松迎え(まつむかえ)・暦の奏(こよみのそう) |
動物 |
・初鱈(はつたら)・初鰤(はつぶり)・落鱚(おちぎす) |
植物 |
・枇杷の花(びわのはな)・甘蔗の花(かんしょのはな)・ポインセチア |
天文・地理 |
・初雪(はつゆき)・名残の空(なごりのそら)・初氷(はつごおり) |
仲冬の季語は、年末やお正月に向けての様子などを表す際に使われます。クリスマスや大晦日、正月事始など12月を感じさせる季語を使うことで仲冬の雰囲気が感じられるでしょう。
晩冬の季語一覧
晩冬は冬の終わりで、1月頃の時期のことです。ここでは、晩冬に使われる季語を紹介します。
カテゴリー |
晩秋(1月頃)の季語 |
生活 |
・雪丸げ(ゆきまろげ)・寒稽古(かんげいこ)・寒天造る(かんてんつくる) |
行事 |
・厄落(やくおとし)・厄払(やくばらい)・厄塚(やくづか) |
動物 |
・白鳥(はくちょう)・寒雀(かんすずめ)・寒鴉(かんがらす) |
植物 |
・水仙(すいせん)・葉牡丹(はぼたん)・冬菫(ふゆすみれ) |
天文・地理 |
・吹雪(ふぶき)・雪時雨(ゆきしぐれ)・寒の雨(かんのあめ)・雪(ゆき) |
晩秋の季語は、冬の厳しい寒さに耐えながらも春の訪れを待つ様子を表す際に使われます。晩秋の季語には「寒」や「雪」という漢字が多く使われているのも特徴の一つです。
ほかの季節の季語について知りたい方は「夏の美しい季語を知りたい!爽やかさや涼しさを表現する言葉には何がある?」「【秋の季語一覧】美しい言葉やかっこいい表現を解説」のコラムを参考にしてください。
冬の季語が使われた有名な俳句
俳句は、江戸時代より日本人に親しまれてきた伝統的な日本文化の一つです。俳句を作る人のことを俳人といいます。ここでは、日本で有名な俳人と、冬の季語が使われた俳句を紹介するので、参考にしてください。
「いざ行かん雪見にころぶ所まで」
「いざ行かん雪見にころぶ所まで」は、松尾芭蕉(まつおばしょう)によって詠まれた句で、季語は「雪見(ゆきみ)」です。音で分けると「いざゆかん・ゆきみにころぶ・ところまで」となります。転んでしまうところまで雪を見に行こうという、高揚感のあふれる句です。
「寒月や門なき寺の天高し」
「寒月や門なき寺の天高し」は、与謝蕪村(よさぶそん)によって詠まれた句で、季語は「寒月」です。音で分けると「かんげつや・もんなきてらの・てんたかし」となります。寒い月が出ている夜、門のないお寺の上に澄み切った夜空が天高く広がっているという様子を詠んだ句です。
「木の影や我影動く冬の月」
「木の影や我影動く冬の月」は、正岡子規(まさおかしき)によって詠まれた句で、季語は「冬の月」です。音で分けると「きのかげや・われかげうごく・ふゆのつき」となります。冬の月の明かりに照らされ、木の陰と自分の影が動いている様子を表した句です。冬の寒空に浮かぶ美しい月と揺れ動く影が美しく表現された、趣ある俳句といえるでしょう。
「これがまあついの栖か雪五尺」
「これがまあついの栖か雪五尺」は、小林一茶(こばやしいっさ)によって詠まれた句で、季語は「雪」です。音で分けると「これがまあ・ついのすみかか・ゆきごしゃく」となります。「ついのすみか」は最後の家という意味です。雪が五尺(約150㎝)も積もるこの地が、自分にとって最後の家だと思うとため息が出るという、小林一茶の心情が表れています。
「霜やけの手をかくしけり袖の中」
「霜やけの手をかくしけり袖の中」は、高浜虚子(たかはまきょし)によって詠まれた句で、季語は「霜やけ」です。音で分けると「しもやけの・てをかくしけり・そでのなか」となります。冬の寒さで霜焼けとなった手を、袖で隠す瞬間を詠んだ句です。
「凩や海に夕日を吹き落す」
「凩や海に夕日を吹き落す」は夏目漱石(なつめそうせき)によって詠まれた句で、季語は「凩(こがらし)」です。音で分けると「こがらしや・うみにゆうひを・ふきおとす」となります。強く冷たい風(凩)が夕方に吹き、葉っぱだけでなく夕日までも海に落としているようだという感情を詠んだ句です。
「スケートのひもむすぶ間もはやりつつ」
「スケートのひもむすぶ間もはやりつつ」は山口誓子(やまぐちせいし)によって詠まれた句で、季語は「スケート」です。音で分けると「スケートの・ひもむすぶまも・はやりつつ」となります。スケート靴のひもを結び、滑る準備をしている間も早く滑りたい気持ちがあふれていて、心はすでに滑っているかのようだという意味です。スケートを楽しみにしている心情が俳句に表れています。
俳句のほかにも美しい響きの日本語について知りたい方は「美しい日本語を紹介!言葉の意味や使い方を覚えよう」のコラムを参考にしてください。
まとめ
冬の季語には情景や行事、寒さなどの感情を表した語が多くあります。俳句は、5音・7音・5音の中に日本の季節の情景や詠んだ人の喜怒哀楽が表されている日本文化の一つです。有名な俳人の句を詠んで季語を探してみたり、意味を考えたりすることは日本語学習にも役立ちます。美しい季語やかっこいい表現を使って俳句作りに挑戦し、冬の句を詠んでみましょう。