外国人留学生の中には、学校在学中に就職が決まらない方もいるでしょう。卒業後も継続して就職活動をするには、在留資格の変更が必要です。この記事では、就活時の在留資格に関する情報を詳しく解説。在留資格の変更に必要な書類も紹介していますので、ぜひご一読ください。日本での就活を無事に終え、スムーズに仕事に就けるようにしましょう。
目次
在留資格とは
在留資格は入管法上の法的な資格です。外国人が日本に在留し活動するのに必要な資格で、法務省に「在留資格取得許可申請」を出し、許可されることで得られます。正確に手続きをしないと、在留資格が許可されず、日本での活動が出来なくなってしまうので注意しましょう。
在留資格とビザについて
在留資格は、日本に滞在し活動するための資格ですが、ビザは日本に入国する際に必要なものです。ビザの有効期限は発給の翌月から数えて3カ月で、入国審査後に失効します。在留資格の有効期限は、各資格ごとに定められていますが、希望通りの年数が許可されるとは限りません。たとえば、中学校や高等学校で、語学を教える活動をする場合の在留資格は「教育」ですが、在留資格の有効期限は「5年、3年、1年または3月」とあり、初回はたいてい1年で許可されます。それ以上の在留を希望する際は「在留期間更新許可申請」の手続きを行い、在留資格の更新が必要です。
在留資格の期間更新に関する審査は、在留状況によって判断されます。税金の滞納や交通違反などをしていたり、申請と違う活動をしていたりすると在留状況が悪いと判断され、長期の滞在の許可が降りない可能性が高いです。もし、長い期間日本での活動を希望するのであれば、法令の厳守や、日本で定められているルールを守ることを心がけましょう。
在留資格の種類
在留資格は「活動類型資格」と「地位等類型資格」に分けられます。それぞれの資格によって就ける職業や行える活動に違いがありますので、注意しましょう。
<活動類型資格>
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習、文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在、特定活動
活動類型資格とは、外国人が日本で行う活動を分類化したもので、定められた在留資格と異なる活動はできません。
<地位等類型資格>
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者
地位型等類型資格は、身分や地位を分類化したものであり、仕事や活動に制限はありません。
参照 出入国在留管理庁 在留資格一覧表
新しい活動を行う前に変更が必要
在留資格にはそれぞれ定められた範囲があり、それを超えた活動をする際は在留資格の変更が必要になります。たとえば「興行」の分類の在留資格で就ける職業は、プロスポーツ選手や歌手、ダンサーです。その「興行」の在留資格に基づき、日本で活動している外国人が新たに語学教師の職に就くには、在留資格を「教育」に変更する必要があります。
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就活時の在留資格の種類
就職活動時の在留資格は、そのときの状況によって2つに分けられます。定められたものと違う在留資格で活動することは、日本の法律上認められていないので、間違いがないようにしましょう。
学校在学時は「留学」のまま就職活動をする
日本の就職活動は学校在学時から始まります。留学生の在留資格は「留学」ですが、学校在学中であれば、就職活動中も在留資格はそのままで差し支えありません。
卒業後も就活を続ける場合は「特定活動」に該当する
在学中に就職が決まらず、引き続き就職活動をする場合、在留資格の変更が必要です。就職活動は「特定活動」に分類され、申請書類を提出し、許可を受けることによって変更ができます。
在留資格「特定活動」とは?
特定活動とは、現状法律で定められている、在留資格に当てはまらない外国人の活動が増えてきたことから、法務大臣が指定した活動に限り、認められている在留資格です。特定活動の種類は「入管法規定の特定活動」「告知特定活動」「告知外特定活動」の3つに分けられています。
卒業後の就活は告示外特定活動にあたる
卒業後の就職活動は、特定活動のうち、告示外特定活動に該当します。告示外特定活動は、告知特定活動に含まれていない活動の中で、いままでに法務大臣が指定し、認めてきた活動のことです。就職活動のほかに、出国準備のための活動や、人身取引の被害者の在留活動などの際に認められることがあります。
変更の条件
卒業後に継続して就活を行うために、在留資格を「留学」から「特別活動」に変更するには、いくつか条件があります。
<変更の条件>
・在留の状況に問題がないこと
・大学や専門学校からの推薦
・卒業する前から就職活動を行っていること
以上の3点を満たしていることが条件です。なお、専門学校を卒業している場合は、専門学校で勉強したことが、在留資格の就労可能な分類のいずれかに関係していることが条件です。就労可能な分類とは、医療や教育、会計業務などが該当します。
在留の期限
就職活動のための在留資格「特定活動9」の在留期限は6カ月です。その期間で就職が決まらなければ、1回の延長申請が可能となり、最長で1年間の滞在ができます。なお、経済的に不安定な場合は、「資格外活動許可」を取得することにより、就職活動をしながらアルバイトをすることが可能です。
就職が決まったら在留資格を変更する
日本での就職が決まったら、在留資格を就労可能な資格へ変更します。たとえば、学校で介護を学んで介護福祉士の資格を取得し、就職が決まった場合は、在留資格を今までの「留学」もしくは「特定活動」から、就労が可能な「介護」に変更が必要です。日本での新卒入社は4月が一般的ですが、変更申請の審査には1~3カ月かかりますので、遅くとも1月中には申請を行うようにしましょう。
在学中に就職が決まったものの、就職先の入社日が9月で、卒業から入社までに期間が空いてしまうケースがあります。その際、在留資格は内定待機期間として「特定活動」に変更しなくてはなりません。変更の申請時に、内定先が発行する誓約書などの書類があるので、自分だけで手続きを進めるのではなく、内定先に協力してもらう必要があります。
「外国人留学生は就活後「就労ビザ」への変更が必要!手続き方法を解説」では、留学ビザから就労ビザに変更するために必要な書類や審査基準を紹介。ぜひ参考にして、スムーズに手続きを行いましょう。
在留資格の変更について
この項目では在学中に就職が決まらず、在留資格を特別活動に変更する場合に焦点を当てて説明します。手続きに不備があると在留資格の変更ができないため、気をつけましょう。
審査基準
在留資格変更の審査基準の項目は、出入国在留管理庁の資料によると、全部で8つです。
1.行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2.法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること
3.現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4.素行が不良でないこと
5.独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6.雇用・労働条件が適正であること
7.納税義務を履行していること
8.入管法に定める届出等の義務を履行していること
在留資格の範囲内で活動を行っているかという点や、今までの日本での生活が素行不良でなく、果たすべき義務を果たしていたかといった部分が審査されます。
参考元 出入国在留管理庁 在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン
必要書類
在留資格を申請する際に必要なものを以下に挙げています。日数に余裕を持って準備するようにしましょう。
1. 在留資格変更許可申請書
申請書は、地方出入国在留管理局の窓口で入手でき、法務省のWebサイトからダウンロードもできます。
2. 写真
3カ月以内に撮影した、縦4cm、横3cmの写真が1枚必要です。
3. 申請人の在留中の一切の経費の支弁能力を証する文書
在留中の生活費などの経費を支払えるかを証明する文書が必要です。たとえば、本国から仕送りを受けている場合は、送金通知書や通帳の1年分のコピーが該当します。
4. 在留カード及びパスポートの提示
なお、在留カードとみなされる外国人登録証明書も認められます。
5.継続して就職活動を行っていたことを証明する資料
企業の説明会のパンフレットや、面接通知のメールの写しなどを指します。
6. 大学もしくは専門学校の卒業証書、またはその写し
専門学校を卒業見込みの場合は、取得した専門士の称号の証明書が必要です。
7. 直前まで在籍していた学校からの就職活動継続に関しての推薦状
推薦状を発行する際に必要な書類に関しては、学校によって異なるため、通っている学校のキャリアセンターなどに確認を取りましょう。
なお、手続きを行うのが留学生本人ではなく代理人の場合は、留学生の身分を証明できる戸籍謄本や取次証明書も必要です。
参考元 出入国在留管理庁 在留資格許可申請 法務省 特定活動9
提出場所
地方出入国在留管理局や同支局、出張所に必要書類を提出します。
変更の際の注意点
在留資格の変更には注意点があります。たとえば、配偶者や子供がいる場合です。「留学」の在留資格で日本に滞在している留学生の家族は「家族滞在」の資格で日本に滞在しています。しかし、留学生が卒業後の就活のために在留資格を変更する場合は、家族も同じように在留資格を変更する必要があるので、申請漏れのないようにしましょう。
在留資格の変更については「在留資格はいつまでに変更する?外国人留学生の就活事情」や「外国人留学生が就労ビザへ変更するには?申請の流れや必要書類を紹介」のコラムでも紹介しているので、参考にしてみましょう。
まとめ
外国人留学生が日本で活動をするためには、自分に適した在留資格の取得が必要です。学校を卒業後も継続して就活をする場合は、在留資格を「留学」から「特定活動」へ変更します。申請には時間がかかるので、前もって書類などの準備をすることが大切です。
在留のルールを理解し、スムーズに在留資格の変更手続きを行いましょう。