在留資格「定住者」の外国人を雇用するポイントは?永住者との違いも解説

在留資格 2024.12.16
濵川恭一
濵川恭一
在留資格「定住者」の外国人を雇用するポイントは?永住者との違いも解説

「定住者」は外国人の身分に基づく在留資格の一種です。在留資格「永住者」と名前が似ており、どちらも就労制限が無い点は共通していますが、両者には様々な違いが存在します。

たとえば「定住者」には在留期間が存在するため、期限前に在留資格の更新を行わなければなりません。また、雇用後に外国人の身分が変わった場合、在留資格の要件を満たさなくなる可能性があります。

このように「定住者」は「永住者」よりも留意するポイントが多いため、両者を混同した状態で雇用していると、思わぬトラブルが発生する可能性があるのです。この記事では「定住者」とはどのような在留資格なのか雇用企業の担当者に向けて分かりやすく解説します。

目次

  1. 在留資格「定住者」とは
  2. 定住者は「告示定住者」と「告示外定住者」に分かれる
  3. 定住者と永住者の違いとは
  4. 定住者ビザはブラジル人とフィリピン人に多い
  5. 在留資格「定住者」の申請方法
  6. 在留資格「定住者」の更新
  7. 在留資格「定住者」の外国人を雇用する際のポイント
  8. 在留資格を「定住者」から「永住者」に変更する要件
  9. まとめ

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在留資格「定住者」とは

在留資格「定住者」は、法務大臣が特別な理由を考慮して日本在留を認めた外国人に付与されます。日系人や日本人と結婚した外国人の連れ子、第三国定住難民など対象者が幅広いのが特徴です。

在留期間は5年、3年、1年、6ヶ月のいずれかです。就労制限がないため、単純労働にも従事できます。

なお、名前を混同されやすい「永住者」は、日本への貢献が期待される外国人に与えられる在留資格です。したがって、永住者の方が取得要件が難しいですが、より安定して日本に住み続けることが可能です。両者の違いはのちほど詳しく解説します。

参照元
出入国在留管理庁「在留資格「定住者」

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定住者は「告示定住者」と「告示外定住者」に分かれる

定住者は「告示定住者」と「告示外定住者」の2種類に分かれます。

「告示定住者」は、あらかじめ法務省により定められた類型に該当する定住者です。主に日系人や第三国定住難民などが当てはまります。取得要件についても、比較的明確に公開されています。

「告示外定住者」は個々の事情をもとに許可を受けた定住者です。たとえば、日本人の配偶者と死別した人が取得できるケースがあります。

当然ですが、要件がわかりやすく定まっている告示定住者のほうが取得しやすいと言えます。

告示定住者の種類

法務省があらかじめ告示している条件にあてはまる外国人が「告示定住者」です。ここでは具体例として「日系人とその家族」「第三国定住難民」を解説します。

日系人とその家族

日本人の血を引く日系人やその家族も在留資格「定住者」を取得できます。

対象となる外国人は日系2世(元・日本人の子供※)と日系3世(日本人の孫)です。また、その配偶者も「定住者」を取得できる可能性があります。

日系4世(日本人のひ孫)も未成年かつ未婚の間は「定住者」の対象になる場合がありますが、成人または結婚した場合は他の在留資格に切り替えなければなりません。

※親が日本国籍を有している場合、その子供は「定住者」ではなく日本国籍や「日本人の配偶者等」を取得する方が一般的です。国籍を海外に移した元・日本人の子供は「定住者」を取得することになります。

第三国定住難民

第三国定住難民とは、特定の国に避難のため一時滞在しており、国際連合難民高等弁務官事務所が日本での保護を推薦した難民です。

このなかでも、日本社会に適応し職に就いて生計を立てられる外国人と、その家族などが在留資格「定住者」を取得できます。

ただ、実際に難民として認定され、定住者の在留資格を得られる人は、毎年数百人程度です。

告示外定住者の種類

「告示外定住者」は、個別の事情に応じて在留資格が与えられた定住者です。よくある事例をいくつか紹介します。

離婚定住や死別定住

「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」で在留していた外国人が、配偶者(日本人や永住者)と離婚・死別した際に「定住者」へ切り替えるケースです。

「生活できる資産や安定収入があること」「日本語能力があり、社会生活を送れること」「納税や健康保険加入などの公的義務を果たしていること」「日本で正常な夫婦関係がおおむね3年以上続いていたこと」といった条件を満たす必要があります。日本で正常な夫婦関係とは、原則として同居していることを指します。

また、DV被害等により婚姻が事実上破綻している場合も「定住者」が与えられることがあります。

幼少期から日本の学校に通っている「家族滞在」の外国人

「家族滞在」とは、日本で働く外国人の家族に与えられる在留資格です。

この在留資格では原則として就労が認められていません。日本で正社員として働くためには、就労ビザへの切り替えが必要です。しかし、ほとんどの就労ビザは大学や専門学校の卒業を取得要件としているため、基本的に家族滞在者は高卒で働くことができません。

ただし、小学校から日本の学校に通っている家族滞在者に限り、高校卒業と同時に「定住者」の在留資格を取得して働くことができます。

この場合、「入国時に18歳未満であること」「勤務先が決まっていること」「公的義務(納税など)を果たしていること」などの条件を満たす必要があります。

日本人の実子を監督・保護する外国人

日本人の実子を監督・保護する外国人も告示外定住者の事例の一つです。「日本人との間に生まれた実子の親権者であり、相当期間監督・保護していること」「生活できる資産や技能があること」といった要件を満たす場合に該当します。

参照元
出入国在留管理庁「○出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件(平成2年法務省告示第132号)
出入国在留管理庁「「家族滞在」の在留資格をもって在留し、高等学校卒業後に日本での就労を希望する方へ

定住者と永住者の違いとは

在留資格「永住者」は、日本への永住を認められた外国人に付与されるものです。在留資格「定住者」と名称が似ており、就労制限がない点も共通しています。

しかし、両者には多くの違いがあります。どちらも安定的に日本で働ける在留資格ではありますが、より制限が少ないのは永住者といえるでしょう。

ここでは、在留資格「定住者」「永住者」の違いについて解説します。

在留期限

在留資格「定住者」の在留期限は外国人によって異なり、先述のとおり5年・3年・1年・6ヶ月のうちいずれかです。5年を超えない範囲で法務大臣が個別に指定する場合もあります。

在留資格「永住者」はその名のとおり日本永住が許可されているため、在留期限はありません。犯罪を犯したり住所変更の届出を怠ったりなどの問題を起こさなければ、永続的に日本に在留できます。ただし、在留カードには有効期限があり、7年ごとに更新が必要です。

取得難易度

在留資格「定住者」と「永住者」では、取得難易度にも違いがあります。日本に永続的に在留できる「永住者」の在留資格は、簡単には取得できません。日本滞在歴や在留状況などが厳しく審査されます。

一方、「定住者」の在留資格は、条件に当てはまる身分や立場の外国人であれば、永住者よりも許可されやすいのが特徴です。

「永住者」を取得するための具体的な条件は下記の関連記事をご覧ください。

関連記事:永住者ビザとは|取得条件・「永住権」「帰化」との違い・ルールを解説

日本での暮らしやすさ

在留資格「永住者」を持つ外国人は、永続的な在住が保障されているため、社会的信用度が高いのが特徴です。

具体的なメリットとしては、住宅ローンの融資を受けやすいことが挙げられます。実際に、条件として「永住許可を受けていること」と記載する金融機関は少なくありません。そのため、在留資格「定住者」をはじめとした在留期限のある外国人は、「永住者」と比べて利用可能な金融機関が限られるでしょう。

そのため、在留資格「定住者」と「永住者」では、「永住者」のほうが日本で暮らしやすいといえます。

申請手続き

在留資格「定住者」と「永住者」は異なる在留資格なので、申請手続きに違いがあります。「永住者」の場合は「永住許可申請」を行います。在留資格「永住者」を得るには、原則として10年以上の日本居住歴が必要なため、初めて在留資格を得る外国人が永住許可申請を行うことはできません。

新しく日本に住む外国人が在留資格「定住者」を得る場合は、「在留資格認定証明書交付申請」を行います。ほかの在留資格から変更する際は、「在留資格変更許可申請」です。なお、日本での出生者や日本国籍の離脱者といった、入国手続きをせずに日本に滞在する外国人は「在留資格取得許可申請」を行います。

関連記事:「特別永住者とはどのような外国人か企業向けに解説!雇用上の注意点も紹介

参照元
出入国在留管理庁「永住許可申請
出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年6月10日改訂)

定住者ビザはブラジル人とフィリピン人に多い

日本で働く外国人の数を国籍別にみると、ベトナム、中国、フィリピンの順番になっていますが、定住者ビザに限るとそうではありません。

定住者ビザを持つ外国人の国籍を見ると、ブラジルが圧倒的に多く(約7万1000人)、次いでフィリピン(約5万9000人)となっています。この2カ国で定住者ビザ全体の半分以上を占めています。

日本に住む定住者のブラジル人やフィリピン人は、独自のコミュニティを持ち、強い絆があります。コミュニティにアクセスできれば、効果的な人材募集ができると思われます。

在留資格「定住者」の申請方法

先述のように、在留資格「定住者」の申請方法は「在留資格認定証明書交付申請」「在留資格変更許可申請」「在留資格取得許可申請」です。

ここでは、申請手続きの流れと必要書類について解説します。

手続きの流れ

ここでは、申請手続きの一般的な流れについて紹介します。

  1. 申請書類を作成する

  2. 地方出入国在留管理局に申請書類を提出する

  3. 申請書類が審査される

  4. 審査結果が通知される

「在留資格認定証明書交付申請」の場合は、居住予定地・受入機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理局に申請書類を提出します。在留資格認定証明書が交付されるので、日本の在外公館(大使館や総領事館)で在留資格認定証明書を掲示しビザを取得。入国時に日本の空港で在留カードを受け取ります。

「在留資格変更許可申請」「在留資格取得許可申請」の場合は、住居地を管轄する地方出入国在留管理局が申請書類の提出先です。申請が許可されたら在留カードを受け取ります。在留資格変更許可申請の場合は収入印紙で手数料4000円を納付しなければなりません。

必要書類

申請に必要な書類は、在留資格「定住者」の申請の種類や対象者ごとに定められているため、詳しくは出入国在留管理庁のWebサイトをご覧ください。

ここでは、日系2世の外国人の配偶者が、在留資格「定住者」の在留資格認定証明書交付申請を行う場合を例に挙げます。日系2世の外国人が会社に勤めているという条件での必要書類は、以下のとおりです。

  • 在留資格認定証明書交付申請書:1通

  • 写真:1葉

  • 返信用封筒:1通

  • 婚姻届出受理証明書:1通(日本の役所に届け出た場合のみ)

  • 日系2世の外国人の住民票(世帯全員の記載があるもの):1通

  • 日系2世の外国人の直近1年分の住民税の課税証明書(または非課税証明書)と納税証明書(1年間の総所得と納税状況が記載されたもの):各1通

  • 日系2世の外国人の在職証明書:1通

  • 身元保証書:1通

  • 配偶者の国の機関から発行された結婚証明書:1通

  • 質問書:1通

  • 夫婦間の交流が確認できる資料

  • 一定の日本語能力があることの証明書(在留期間5年を希望する場合)

日系2世の外国人の在職証明書は雇用する企業が発行する必要があります。

参照元
出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付申請
出入国在留管理庁「在留資格取得許可申請
出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請
出入国在留管理庁「在留資格「定住者」
出入国在留管理庁「日系2世の方が会社等に勤務している場合

在留資格「定住者」の更新

在留資格「定住者」は、「永住者」とは異なり在留期限があるため、期限が切れる前に更新が必要です。在留期間が6ヶ月以上ある場合、在留期間満了の3ヶ月前から「在留期間更新許可申請」を行えます。

更新の際に考慮される要素は、「今後行う活動が在留資格の範囲内であること」「告示定住者の場合は告示の要件を引き続き満たしていること」「素行が不良でないこと」「生活できる資産や技能を持っていること」などです。

参照元
出入国在留管理庁「在留期間更新許可申請
出入国在留管理庁「在留資格の変更,在留期間の更新許可のガイドライン

在留資格「定住者」の外国人を雇用する際のポイント

在留資格「定住者」の外国人は労働時間や仕事の内容などに関して就労制限がなく、日本人と同様に雇用が可能です。ただし、注意したいポイントもあります。

在留カードの確認を行う

外国人を雇用する際は、在留カード表面に記載された「在留資格」と「在留期間満了日」の欄をチェックしましょう。在留資格が本当に「定住者」かどうか確認し、就労が認められていない在留資格の外国人を雇用しないようにするためです。

なお、在留期間が切れていないかも忘れずに確認しましょう。就労が許可されていない在留資格を持つ人や在留期限が切れた外国人が働くと、不法就労に該当します。外国人を雇用した企業も不法就労助長罪に問われてしまうので、確認の徹底が必要です。

配偶者と離婚した場合は在留資格の変更が発生する

告示定住者のなかには、日系2世または3世の配偶者として在留資格を得ている外国人がいます。離婚により告示要件に該当しなくなった場合、原則、在留資格の更新ができません。在留期限が切れると日本に滞在できないため、従業員として雇用している場合は働き続けてもらえなくなるのです。

日系2世または3世の配偶者が離婚し告示定住者として更新ができなくなる場合、日本に在留するためには以下の選択肢が考えられます。

一つは、告示外である「離婚定住」への変更です。在留資格「定住者」を持つ配偶者の場合、許可される可能性は低いものの、検討は可能でしょう。

そのほか、就労可能な在留資格への変更も考えられます。ただし、学歴や実務経験などの要件が厳しく、単純労働が認められていない場合がほとんどです。外国人が在留資格変更の要件を満たしているか、自社で外国人に任せる業務が変更後の在留資格で禁じられている単純労働に該当しないかなど注意しなければなりません。

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在留資格を「定住者」から「永住者」に変更する要件

在留資格「定住者」には在留期限がありますが、「永住者」であれば在留資格の更新手続きが要りません。そのため、雇用主にとっては、安定して働き続けてもらいやすいのがメリットでしょう。

ここでは、外国人が在留資格「定住者」から在留資格「永住者」に変更する要件について解説します。

国益適合に関する要件

外国人が永住許可を得る場合、外国人の永住が日本の利益になることが求められます。具体的には、以下の要件が一例です。

  • 在留資格「定住者」の外国人は5年以上継続して日本に在留している

  • 罰金刑や懲役刑などを受けていない

  • 納税、公的年金と公的医療保険の保険料納付、出入国管理及び難民認定法に定められた届出などの義務を果たしている

  • 在留期間が5年を指定されている

  • 公衆衛生上、有害でない

独立生計に関する要件

自立して生活できる資産か技能があることが要件の一つです。日常生活で公共の負担にならないことが求められるため、生活保護を受けている場合は不許可になってしまうでしょう。年収の基準は公開されていませんが、独身で扶養者がいない場合、330万円以上が目安です。

なお、在留資格「定住者」のうち、第三国定住難民など要件を満たす必要がない外国人もいます。

素行に関する要件

法律を遵守し、住民として非難されない生活を送っていることも要件の一つです。法律に違反して禁錮刑や罰金刑などを受けていたり、違法行為を繰り返し行ったりしている外国人は条件を満たしません。罰金を科せられるような交通違反だけでなく、一時停止違反や駐車違反など反則金が発生する行為も繰り返すと素行善良要件の対象外です。

参照元
出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年6月10日改訂)

まとめ

在留資格「定住者」は告示定住者と告示外定住者に分かれ、それぞれの対象者がいます。在留資格「永住者」との大きな違いは、在留期限がある点です。就労制限がないため、在留資格「定住者」を持つ外国人を雇うこともあるでしょう。雇用の際は、在留カードの確認を忘れずに行うことが大切です。

濵川恭一

監修:濵川恭一

外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net