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外国人雇用にはメリットも多い一方で、雇用企業は「不法就労助長罪」に問われるリスクを常に抱えることになります。
外国人に「不法就労」をさせると、たとえ知らなかったとしても、入管法(出入国管理及び難民認定法)に定められた重い罰則が課せられてしまいます。
それでは、不法就労とは具体的にどのような場合を指すのでしょうか? この記事では、不法就労助長罪にあたる代表事例や、罪に問われないために企業が気を付けるべきポイントをできるだけ分かりやすく解説します。
目次
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ざっくり不法就労とは何か説明すると、「日本で働く資格を持たない人が働いたり、資格で認められていない仕事をすること」です。
厚生労働省は不法就労を次の2パターンで定義しています。
- 我が国に不法に入国・上陸したり、在留期間を超えて不法に残留したりするなどして、正規の在留資格を持たない外国人が行う収入を伴う活動
- 正規の在留資格を持っている外国人でも、許可を受けずに、与えられた在留資格以外の収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動
参考:厚生労働省
1番目は外国人が日本に不法滞在しているパターンです。偽造パスポートで不法入国してそのまま日本で就労したり、許可された在留期限を越えても帰国していなかったりと、そもそも日本に居ることが問題なので、当然ですが働くこともできません。
2番目はやや複雑で、日本に滞在すること自体は許可されているが、仕事の内容が問題になるパターン。簡潔に言えば「在留資格で認められない仕事」を行うと不法就労に該当します。
外国人が日本に滞在するためには、出入国在留管理庁が許可する「在留資格」が必要です。
在留資格には、介護施設で働ける「介護」、主にオフィスワーカーが取得する「技術・人文知識・国際業務」、日本の技術を学ぶことを目的とした「技能実習」などがあり、それぞれ就ける仕事が決まっています。
また、留学生や観光客が持っている在留資格は就労自体が認められていません(留学生は許可を申請することで週28時間までアルバイトが可能)。
具体的な事例は後ほど紹介しますが、不法就労にあたるかどうかは「外国人が実際に行っている業務」で細かく判断されます。たとえば「特定技能(介護)」は介護業界で就労可能な在留資格ですが、介護施設内での介護業務しか行えず、自宅を訪れての訪問介護は認められていません。
不法就労の実態は、法務省の資料「令和5年における入管法違反事件について」から読み取ることができます。
出典:法務省「令和5年における入管法違反事件について」
2023年に不法就労者と認定された外国人数は12,384人でした。そして注目すべきは不法就労を行っていた期間です。
不法就労者として退去強制処分(強制送還)された外国人の約半数は、不法就労期間が半年以下です。つまり、たった数カ月の不法就労であっても不法行為として罰せられるということになります。
「少しくらいなら見逃してもらえるだろう」などと甘く考えず、外国人を雇用する企業側も気を引き締めて不正就労を防止しましょう。
不法就労助長罪とは、入管法第73条の2で規定された「外国人に不法就労をさせる罪」のことです。不法就労を行った外国人本人の在留資格が取り消しになるだけでなく、企業側も重い罰を受けることになります。
前述した不法就労の定義を踏まえると、企業が不法就労助長罪に問われる行為は大きく以下のように分類できます。
不法就労助長罪の罰則は「3年以下の懲役」「300万円以下の罰金」のいずれかまたは両方です。
初犯でも重大な過失が認められれば、懲役刑に処されることもある重い刑罰です。実際に、飲食店などで外国人を不法に働かせたとして、初犯から執行猶予付きの懲役刑を受けた事業主も多くいます。
もしも不法就労助長罪に問われれば、たとえ不起訴であっても会社名や実名が報道されてしまいます。正しい知識に基づく健全な外国人雇用を行いましょう。
まず何より注意すべきは、不法就労だと知らなくても罪になるということ。言い換えれば「知らなかった」では済まされないのです。
意図せぬ不法就労を防ぐために、企業には外国人が持っている在留カードの確認が義務付けられています。確認内容の詳細は後述しますが、在留資格と仕事内容が合致しているか確かめたうえで、偽造カードにも注意しましょう。
また、直接雇用していなくても、仕事をあっせんしたり、名義貸しを行ったりするだけで罪になる可能性があります。不法就労に関わった人材紹介会社や個人が罪に問われる可能性もあるのです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
「知らなくても罪になる」とはどのような事か身近に捉えていただくために、以下のような状況を想像してみてください。
あなたはコンビニエンスストアの店長です。アルバイトの大学生が「友人も一緒に働けないか?」と同じ学校の外国人留学生を紹介してきました。
「信頼しているアルバイトの紹介だから問題ないだろう」と、あなたは在留カードを確認せず、日本人の大学生を雇用するのと同じ手順で外国人留学生を採用してしまいます。
実は留学生は就労が認められておらず、アルバイトを行うためには「資格外活動許可」を申請し、在留カードにスタンプを押してもらう必要があります。
もし、あなたが採用した留学生が資格外活動許可を申請していなかった場合、在留カードを確認しなかった過失により、不法就労助長罪になってしまう可能性が高いでしょう。
「在留カードの確認は行ったが、どこを見ればよいか分からなかった」という場合も過失とみなされます。インターネットで検索すれば、在留カードの見方を分かりやすく解説した記事や動画がたくさん見つかります。残念ながら「知らなかった」という言い訳は通用しないのです。
前項各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
上記は入管法で定められた条文です。知らないことは処罰を免れる理由にならないと明言されています。
ただし、過失がない場合は例外とも記されており、確認を徹底したにもかかわらず外国人の偽装行為が原因で不法就労を見抜けなかった場合は罪に問われません。
不法就労にあたる仕事を外国人に紹介したり、不法滞在者に仕事を紹介したりといった行為は、「不法就労のあっせん行為」として不法就労助長罪に問われる可能性があります。不法就労者を自宅に住まわせたり、宿舎を手配したりすることも同罪です。
そうとは知らずに行ったあっせん行為も罪になります。
不法就労に関わる名義貸しも不法就労助長罪です。不法就労助長罪になった有名な事例を1件紹介します。
とあるIT企業の経営者が知人の外国人に頼まれて、そのIT企業で働いていることにして就労ビザを取りました。当然、これは名義貸しにあたります。数年後に発覚し、その経営者は逮捕されました。
より身近なケースでいえば、不法就労者が携帯電話や預貯金口座を契約するために名前を貸すことも罪になります。不法就労助長罪に報酬を受け取ったかどうかは関係ありません。無報酬であっても罪に問われるため、親切心から犯罪に巻き込まれることのないよう気を付けましょう。
不法就労助長罪の検挙数は年間で400件程度。気をつけてニュースを見ていると、雇用企業の社長や人材会社の幹部社員、雇用に関わった弁護士や行政書士が毎日のように検挙されていることが分かります。
以下、この数年で発生した代表的な事例を3つ紹介します。
事例紹介・図版作成:つくばワールド行政書士事務所
まずは、企業が率先して不法就労を行わせていた悪辣な事例を紹介します。
工場の経営者が業者に偽造在留カードを発行させ、不法滞在の外国人を雇用していた事件がありました。
外国人雇用を取り巻く課題として、遵法意識の低い企業によって劣悪な労働環境で働かされている外国人労働者の存在があります。不法就労だけでなく、低賃金や時間外労働といった労働基準法違反も多発しています。これから外国人を雇用しようとお考えの皆様には、絶対に真似すべきではない反面教師としてぜひ覚えておいていただけますと幸いです。
2つ目の事例は、外国人が持っている在留資格では認められていない仕事をさせた事件です。こちらはどんな企業でも起こりうる身近な事例といえるでしょう。
ある工場では、通訳者として外国人を採用し、一定の専門知識を必要とする「技術・人文知識・国際業務」という在留資格で働くことが許可されました。
しかし、実際にその外国人が従事していた業務は、工場内での単純な流れ作業でした。通訳の要素が全くない仕事です。
この事件では、当該外国人を企業に紹介した人材会社の社長、在留資格申請を行った行政書士らが摘発され、大きなニュースになりました。
3つ目の事例は、ある離島で起こりました。本土から遠く離れた離島であるため、不法就労をさせた社長らは、「島なら大丈夫だと思った」と供述しているようです。
「島なら大丈夫」「田舎なら大丈夫」「同業他社もやっているから大丈夫」ということはありません。突然、何の前触れもなく当局の調査が入り検挙されてしまいます。
外国人雇用を安易に考えていると大変なことになることがよく分かる事例として紹介しました。
万が一、自社で雇用している外国人が不法就労にあたることが判明した場合、企業側が取るべき対応は2つあります。
まずは不法就労を解消すべく、速やかに解雇を行わなければなりません。
この際、企業側に過失が無ければ懲戒解雇を行えますが、企業側に過失があれば普通解雇の形式を取らなければならない可能性があります。弁護士や労働基準監督署、社会保険労務士といった労働関連法令の専門家に相談した方がよいでしょう。
そのうえで、外国人に対して出入国在留管理局への出頭を促してください。日本には、不法就労した外国人が自ら出頭することで罰則を軽減する「出国命令制度」があります。
摘発されてしまうと出国命令制度は適用されないため、外国人本人のためにも自分から出頭するよう勧めましょう。
企業が不法就労助長罪に問われないようにするには、できる限りの対策を取る必要があります。企業に過失がないと認められれば、罪に問われる可能性が少なくなるためです。
企業が不法就労助長罪に問われるのを防止する、具体的な方法を以下で紹介します。
この記事中にも何度か登場している「在留カード」とは、日本に3ヶ月以上滞在する外国人に発行される身分証明書です。出入国在留管理庁長官が発行し、本来パスポートが担う許可証としての役割も担います。
運転免許証やマイナンバーカードとほぼ同じサイズであり、外国人の国籍や在留資格、在留期間などが記載されています。確認すべき項目は以下の通りです。
近年、在留カードの偽造品を作る技術が向上し、一見すると正規品と見分けがつかないカードを提出される事態が増えています。
しかし、偽造品は偽変造防止対策を精巧に、そして完璧に再現できているわけではないため、注意深く確認すれば正規品と見分けることが可能です。
在留カードが提出されたら、まず色やホログラム、透かし文字などを目視で確かめましょう。(※出入国在留管理庁のWebサイト「Answer(Q80~Q149)」Q115参照)以下は、在留カードを目視で確認する際のポイントです。
在留カードの正規品は出入国在留管理庁のWebサイトに載っているため、あらかじめ確認しておくと色や書体の違いを見抜きやすくなります。
次に、在留カードの手触りを確かめましょう。在留カードの手触りは運転免許証やマイナンバーカードとそこまで変わりません。正規品の表面はつるつるしていますが、偽造品のなかにはざらざらした手触りのカードもあります。
感覚的なものなのであくまで参考情報ですが、在留カードを確認する際は手触りにも注意してみてください。
在留カードには偽造防止のためのICチップが埋め込まれており、カードに記載されているすべての項目、または一部が記録されています。このICチップに記録されている情報を読み取れるアプリケーションが、「在留カード等読取アプリケーション」です。このアプリケーションで読み取った情報とカードに記載されている内容、外国人本人を見比べることで、偽造の有無を確かめられます。
PCの場合はICカードリーダライタが必要ですが、スマホの場合はアプリケーションをダウンロードするだけで利用できます。一見面倒なようですが、費用も掛からず手軽に行えるため(約2秒で判読結果が出ます)、ぜひ活用して外国人の違法な雇用を防ぎましょう。
出入国在留管理庁のWebサイト「在留カード等番号失効情報照会」を利用すると、在留カードの番号が失効していないか調べられます。在留カードに記載されている以下の2つの情報を入力するだけなので簡単です。
2つの番号を在留カード等番号失効情報照会のWebサイトに入力し、「問い合わせ」ボタンを押しましょう。
ただし、在留カード等番号失効情報照会では在留カードの有効性は確認できません。そのため、次で紹介する「在留カード等読取アプリケーション」とあわせて利用しましょう。
経営陣や人事担当者だけが気を付けていても、外国人従業員が実際に働く現場にまで意識が浸透しなければ、気付かぬうちに不法就労が発生する可能性があります。
企業が不法就労助長罪に問われないためには、在留カードやパスポートの確認、入管法の正しい理解といった基本的な対策が重要です。対策を怠ると有罪判決を受け、業務や経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。
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監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net