特定技能「外食業」で可能な業務は?雇用ルールを各在留資格と比較

在留資格 2024.10.25
濵川恭一
濵川恭一
特定技能「外食業」で可能な業務は?雇用ルールを各在留資格と比較

新型コロナウイルスの影響を乗り越えた外食業界は、深刻な人手不足という新たな問題に直面しています。コロナ禍明けの需要急増に人材確保が追いついておらず、またインバウンドの増加に対応しきれていない企業もあるのが現状です。

このような状況のなか、外食業界では外国人雇用に注目が集まっています。なかでも特定技能「外食業」の在留資格を持つ外国人は、接客や調理、配膳など単純労働を含めた幅広い業務を行えるので、即戦力として期待できるでしょう。

この記事では、特定技能「外食業」で可能な業務や雇用の流れを解説。また、ほかの在留資格との違いも紹介します。

目次

  1. 外食業分野の人材不足と外国人労働者数について
  2. 特定技能「外食業」の概要
  3. 特定技能「外食業」で可能な業務
  4. 飲食業分野で働ける在留資格の比較
  5. 飲食業分野で就労可能なほかの在留資格との違い
  6. 特定技能「外食業」を受け入れる条件
  7. 外国人が特定技能「外食業」を取得する方法
  8. 技能実習からの移行も可能
  9. 特定技能「外食業」で外国人を雇用する流れ
  10. 特定技能「外食業」で外国人を雇用する際に気を付けること
  11. まとめ

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外食業分野の人材不足と外国人労働者数について

外食業界は、コロナ禍明けの急激な需要急増やインバウンド客の増加により、人手不足感が高まっています。厚生労働省の発表した「一般職業紹介状況(令和6年6月分)について」によると、2024年6月の飲食物調理従事者の有効求人倍率は2.67倍、接客・給仕職業従事者は2.89倍でした。職業全体の有効求人倍率が1.06倍なのを見ると、非常に高い水準であることがわかります。

このような状況のなか、人材不足の解決策として注目されているのが外国人雇用です。以下の表をご覧ください。

外食業分野の人材不足と外国人労働者数についての画像

引用:農林水産省「外食業分野における特定技能外国人制度について

2023年10月時点で外食業で働く外国人は約20万2000人にものぼります。すでに、外国人スタッフの存在なしでは営業が難しくなっている店舗も少なくありません。

少子高齢化が進み国内の労働人口が減っている一方で、外国人労働者は増加傾向にあります。現時点ではアルバイトやパートで働く人が半数以上を占めていますが、日本政府が外国人を積極的に受け入れる政策を打ち出しているため、今後は正社員の増加も期待できるでしょう。

関連記事:「外国人労働者を受け入れるメリット・デメリット|雇用の流れも解説

参照元
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年6月分)について」
農林水産省「外食業分野における特定技能外国人制度について

特定技能「外食業」の概要

特定技能「外食業」の概要の画像

外国人が日本で働くためには就労可能な在留資格を取得する必要があります。人手不足の業界で昨今注目されている在留資格が「特定技能」です。このうち、「外食業」の種類を取得している外国人は、飲食店やホテルのレストランで勤務できます。

外食業界の人手不足を解消するための在留資格

「特定技能」は、国内の人材だけでは労働力の確保に限界があると判断された人手不足が深刻な業界(特定産業分野)に限り許可される在留資格で、単純労働を含めたさまざまな業務が可能です。

特定産業分野は、2024年8月時点で16種類あります。このうち、レストランや飲食店で就労する外国人に許可される種類が、特定技能「外食業」です。

出入国在留管理庁の公表した2023年12月末のデータでは、1万3312人の外国人が特定技能の在留資格のもと外食業分野で働いていました。これは全分野のなかで6番目に多い人数で、全体の6.4%を占めています。

特定技能制度は2019年の改正入管法により創設されました。その後すぐに新型コロナウイルスの感染拡大があり、受け入れ人数が伸び悩んでいましたが、2022年以降からは順調に人数を増やしています。

特定技能「外食業」の在留資格で働ける期間

特定技能「外食業」の在留資格は1号と2号があり、1号で働けるのは最長で5年です

2号技能測定試験に合格し在留資格を特定技能2号に移行すれば、更新の制限なく日本に在留できます。

2号に移行した外国人は、配偶者や子どもを母国から呼び寄せられるうえ、いずれは永住権取得の道も見えてくるでしょう。

特定技能制度は、一時的な労働力確保に留まらない、長期的な雇用にも繋がる制度といえます。

参照元
出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況

特定技能「外食業」で可能な業務

特定技能「外食業」では、日本標準産業分類の「飲食店」および「持ち帰り・配達飲食サービス業」に該当する場所で働けます。具体例な例は、レストランや喫茶店、ファーストフード店、テイクアウト専門店などです。

ホテルのレストランでも働けますが、飲食業と関係のない業務はできません。たとえば、スタッフが足りなかったとしても、ベットメイキングやフロント業務などに入るのは禁止です。これらの業務を行ってほしい場合は、ホテルでこれらの業務を行うことが許可されている在留資格を持つ外国人を採用する必要があります。

特定技能「外食業」で許可されている業務は以下のとおりです。

飲食物調理業務

飲食物調理業務に該当するのは、客に提供する料理の仕込みや加熱・非加熱調理、味付け、盛り付けなどです。調理する料理の種類に制限はなく、母国料理はもちろん、和食店やファーストフード店での調理業務もできます。

接客業務

席への案内や注文伺い、配膳、レジ対応など、飲食店で通常発生する客の応対をする業務全般への従事も許可されています。

店舗管理業務

店舗管理業務には、衛生管理やシフト管理、従業員の指導、会計事務などが当てはまります。また、店舗を円滑に運営していくために必要な、メニューの企画やメニューブックの作成、食材や備品の補充なども可能です。

調理や接客業務が発生するデリバリー業務

コロナ禍をきっかけにデリバリーを始めた飲食店も多いのではないでしょうか。特定技能「外食業」を持つ外国人は、デリバリーやケータリング業務を行うことも許可されています。

ただし、必ず調理や接客業務が伴っていなければなりません。既製品やほかの人が作った料理を配達するだけの業務は禁止されています。

関連業務

上記で紹介した業務のほかに、飲食店で働く日本人が通常行うと想定される関連業務に就くこともできます。想定される関連業務は店で材料として使用する農林水産物の生産や、店のオリジナルグッズといった食べ物以外の物販の販売などです。

ただし、これらの関連業務だけを行わせるのは禁止されており、あくまでメインの業務の合間に行う程度の頻度に納める必要があります。

関連記事:「特定技能「宿泊」は多様な業務が可能!ホテルで就労できる他のビザも紹介

参照元
出入国在留管理庁「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領ー外食業分野の基準についてー

飲食業分野で働ける在留資格の比較

ここまでは、特定技能「飲食業」の特徴について見ていきました。飲食店で働ける在留資格はほかにもいくつかの種類があります。

以下はそれぞれの特徴をまとめた表です。さまざまな選択肢があることを知ったうえで、どの在留資格を持っている外国人を雇用するかを検討しましょう。

 

 

特定技能「外食業」

技術・人文知識・国際業務

身分に基づく在留資格

特定活動46号

技能

留学生アルバイト(資格外活動許可)

業務内容

・飲食物調理業務
・接客業務
・店舗管理業務など

・店舗管理業務
・通訳業務
・外国人向けのメニュー作成など

制限なし

・店舗管理業務
・通訳を兼ねた接客業務など

母国料理の調理業務

制限なし(風俗営業に関わる業務は不可)

労働時間

労働基準法に則る

労働基準法に則る

労働基準法に則る

労働基準法に則る

労働基準法に則る

・週28時間
・学校が定める長期休暇中は1日8時間、週40時間まで

働ける期間

・特定技能1号:最長5年
・特定技能2号:更新期限なし

更新期限なし

更新期限なし

更新期限なし

更新期限なし

教育機関を卒業するまで

取得要件

下記の両方の条件を満たすこと
・外食業特定技能1号技能測定に合格する
・日本語能力試験のN4もしくは国際交流基金日本語基礎テストに合格する

下記のいずれかの条件を満たすこと
・大学院や大学、短大を卒業
・日本の専門学校を卒業
・実務経験10年以上(通訳として申請する場合は3年以上)

希望する在留資格の身分や地位に相応しいと認められること

下記の両方の条件を満たすこと
・日本の大学、大学院、短大、高等専門学校のいずれかを卒業し学士の学位を取得すること
・日本語能力試験のN1もしくはBJTビジネス日本語能力テストで480点以上の合格していること(大学・大学院で日本語を専攻し卒業した場合は免除)

実務経験が10年以上あること(タイ料理の料理人の場合は5年以上)

下記のすべての条件を満たすこと
・「留学」の在留資格にふさわしい活動をおこなっていること
・アルバイト先が風俗営業に該当していないこと
・アルバイト先の活動が法令に違反していないこと

転職

制限なし

制限なし

制限なし

転職時は在留資格変更許可申請が必要

制限なし

制限なし

比較してみると、特定技能「飲食業」は取得しやすく、幅広い業務を任せられるバランスの良い在留資格であることが分かります。

飲食業分野で就労可能なほかの在留資格との違い

ここでは、飲食業界で働ける在留資格の概要および特定技能「飲食業」との違いを紹介します。それぞれできる仕事や取得条件が異なるので、応募対象をしっかり定めるために内容を把握しておきましょう。

技術・人文知識・国際業務

「技術・人文知識・国際業務」は、「技術」「人文知識」「国際業務」の3分野において、専門的な知識を要する業務や外国人ならではの感性を要する業務をする外国人に許可されます。

取得するには、「大学院や大学、短大を卒業」「日本の専門学校を卒業し専門士の学位を得ていること(業務に関連する分野を専攻していること)」「実務経験10年以上(国際業務は3年以上)」のいずれかを満たすことが必要です。

飲食業界で働く際は、以下のような職種が想定されます。

  • スーパーバイザー(SV)としての監督・管理業務

  • 飲食チェーン店を展開する企業の本部で行う業務(企画、経理、マーケティング、総務など)

  • 外国人客を対象とした通訳業務

上記のように、学術的素養が必要となる業務に従事できます。特定技能「外食業」とは違い、調理業務や接客業務などの単純労働に従事するのは禁止です

技術・人文知識・国際業務の画像

在留資格を申請する際、出入国在留管理庁に単純労働に従事する可能性があると判断されれば、審査は不許可になります。

たとえば、通訳業務を行うとして在留資格「技能・人文知識・国際業務」を申請しているのにも関わらず、外国人利用客がほとんどいなければ不許可になる可能性が高いでしょう。外国語メニューや店舗の外国語の案内文、外国語版のホームページ画面などを提出し、外国人利用客が多いことを証明しなければなりません。

身分に基づく在留資格

以下の4つの在留資格を、一般的に身分に基づく在留資格と呼びます。

  • 永住者:法務大臣に無期限の永住が認められた人

  • 日本人の配偶者等:日本人の妻や夫、子ども、特別養子

  • 永住者の配偶者等:永住者・特別永住者の妻や夫、日本で出生して引き続き住んでいる子ども

  • 定住者:法務大臣が特別な事情を考慮して居住を認めた人(日系3世や中国残留邦人など)

この4つに当てはまる外国人は、在留資格や在留カードの更新手続きは発生しますが、ほとんど日本人と同じように雇用できると考えて良いでしょう。

特定技能「外食業」よりも制限なく幅広い業務を任せられるうえ、在留資格の更新も無期限でできるのが特徴です

特定活動46号

在留資格「特定活動」は、行う活動によってそれぞれ種類が異なります。

そのうち特定活動46号は、留学生の就職支援を目的に作られた在留資格です。日本での留学生活を経て身に付けた高い日本語能力を活かした業務と一緒であれば、単純労働も行えるという特徴があります。飲食店での許可例は「店舗管理業務や通訳を兼ねた接客業務」です。なお、外国人利用客のみというわけではなく、日本人への接客も許可されています。

外国人留学生が特定活動46号の在留資格を得る要件は、以下のとおりです。

  • 日本の大学を卒業もしくは大学院を修了し学位を受けていること、もしくは日本の短期大学か高等専門学校を卒業し、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が行う審査に合格して、学士の学位を授与されていること

  • 日本語能力試験N1もしくはBJTビジネス日本語能力テストで480点以上を取得していること(日本や海外の大学・大学院で日本語を専攻し卒業した場合は免除)

  • 同じ仕事をする日本人と同等額以上の報酬を受けること

日本語能力試験のN1やBJTビジネス日本語能力テストで480点以上という水準は、いわゆるネイティブレベルです。かなり高い日本語能力を求められるため、取得難易度は高いといえるでしょう。

特定技能「飲食業」とは業務を行ううえでの単純労働の比率が異なります。特定活動46号でもレジや配膳などの業務が可能ですが、あくまでメインの業務は「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」や「日本の大学や大学院で培った応用的能力を必要とする業務」でなければなりません。単純労働のみに従事させることは不可です。また、留学生のみという要件が存在するのも、大きく異なる点です。

技能

在留資格「技能」は、特殊な分野で熟練した技能を要する業務を行う外国人に付与されます。具体例は、パイロットやスポーツ指導者、そして外国料理の調理師などです。

ただ料理を作るというだけでは取得できず、母国料理専門の調理人でなければなりません。つまり、ファーストフードや日本料理店、ラーメン専門店などで働く場合は、在留資格の申請が不許可になります。技能ビザが許可になりやすいのは、本格中国料理や本格インド料理店など、本格的な外国料理を提供している場合です。

また、専門的な調理技術を要する業務でなければならないので、母国料理であっても提供しているメニューが1品だけだったり調理が簡単過ぎたりすると、取得は難しいでしょう。さらにお店の席数も審査されます。カウンターだけのお店であったり、席数が少ない場合も、わざわざ専門調理人を雇用する必要性がないと判断されます。

外国人が料理人として「技能」の在留資格を得るには、実務経験が10年以上(タイ料理は5年以上)必要です。なお、海外で料理に関する専門学校に通っていた場合、その期間も加算されます。これらのことから、基本的には海外で料理人として働いていた経験のある外国人を中途採用するケースがほとんどです。

在留資格「技能」を持つ外国人が調理以外の業務をすることは禁止されています。この点が、調理業務とあわせて接客や店舗管理業務も行える特定技能「外食業」との大きな違いといえるでしょう。

留学(アルバイト)

日本の教育機関に通っている外国人留学生は、資格外活動許可を得ていればアルバイトができます。

アルバイトできる時間は学業に支障がない程度と決められており、原則週に28時間以内です。ただし、夏休みや春休みなど、学校が定めた休暇中は1日8時間、週5の勤務が認められています。

行える業務の制限はなく、接客や調理、レジ業務などあらゆる業務が可能です。

資格外活動許可は、外国人留学生があらかじめ入国時の空港やオンラインで申請している場合と、これから取得する場合があります。

資格外活動許可の有無は、在留カードの裏面で確認可能です。外国人留学生に了承を得たうえで、在留カードを見せてもらい、以下の部分を確認してみましょう。

留学(アルバイト)の画像
引用:出入国在留管理庁「在留カードとは?

在留カードの裏面下部の「資格外活動許可欄」に、「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」とあれば、すぐにアルバイト雇用が可能です

もし何も表記がなければ、資格外活動許可の手続きを本人にしてもらわなければなりません。住居地を管轄する地方出入国在留管理局で申請でき、早ければ数週間程度で審査が完了します。

資格外活動許可がでるまでは働くことはできないので、審査結果が出てから雇用手続きをするとスムーズです。

関連記事:「外国人労働者が多い職種ランキング!在留資格ごとの解説も

参照元
出入国在留管理庁「留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学等卒業者)についてのガイドライン」
出入国在留管理庁「在留資格「技能」」
農林水産省「外食業分野における外国人材の受け入れについて」
出入国在留管理庁「資格外活動許可について」
出入国在留管理庁「在留カードとは?

特定技能「外食業」を受け入れる条件

飲食業を営む企業が特定技能「外食業」を持つ外国人を雇用するには、以下の条件すべてを満たす必要があります。

対象の事業所に該当していること

特定技能「外食業」を持つ外国人は、以下に該当する事業所でのみ受け入れ可能です。

  • 飲食店(食堂、レストラン、喫茶店など)

  • 持ち帰り飲食サービス店(テイクアウト専門店)

  • 配達飲食サービス業(仕出し弁当店、デリバリー専門店、配食サービス事業所など)

  • 客の求める場所で調理した飲食料品の提供を行う飲食サービス業(ケータリングサービス店、給食事業所など)

いくら飲食物を調理し提供する事業所でも、職場が以上のいずれかに当てはまっていない場合は特定技能外国人を雇用できません。

外国人と適切な雇用契約を結んでいること

特定技能外国人を受け入れるためには、適切な雇用契約を結んでいることが求められます。たとえば、同じ仕事をする日本人と労働時間や報酬に差を付けるような雇用契約は、不適切と判断されるでしょう。

各種法令を守ったうえで、日本人労働者と同様の雇用契約を締結する必要があります。

機関自体が適切であること

労働関係法令を守れていない企業や過去に特定技能外国人の行方不明者を出している企業は、特定技能所属機関(特定技能外国人を雇用する機関)にはなれません。また、過去5年以内に技能実習受け入れ機関の認定の取り消しを受けた場合も、欠落事由に該当するとして、受け入れは不可とされます。

このほかにもさまざまな条件がありますが、基本的には法律を守って経営を行っていればクリアできると考えて差し支えありません。

適切な支援計画を策定すること

特定技能外国人を受ける企業は支援計画を策定し、在留資格に関する諸申請の際に提出する義務があります。支援計画とは、職業生活上や日常生活上、社会生活上の支援として必要であると省令で定められた10項目のことです。支援計画書には、具体的な実施方法や支援責任者の氏名・役職、委託する場合は委託先の情報などを記入します。

外国人の支援計画を確実に実施もしくは委託できること

特定技能外国人を受け入れる企業は、提出した支援計画を確実に実施する必要があります。支援計画での実施が求められるのは、以下の10項目です。

  1. 事前ガイダンス

  2. 出入国する際の送迎

  3. 住居確保・生活に必要な契約支援

  4. 生活オリエンテーション

  5. 公的手続などへの同行

  6. 日本語学習の機会の提供

  7. 相談・苦情への対応

  8. 日本人との交流促進

  9. 転職支援(人員整理などの場合)

  10. 定期的な面談・行政機関への通報

なお、確実な実施が難しい場合は、支援計画の全部もしくは一部を登録支援機関に委託することもできます。

食品産業特定技能協議会に加入すること

特定技能外国人を受け入れる企業は、各分野ごとに所轄官庁が設置した特定技能協議会に加入することが義務付けられています。外食業分野に該当する企業の場合は、飲食料品製造業分野と合同で設置された「食品産業特定技能協議会」への加入が必要です。

加入するタイミングは、在留資格の諸申請を行う前と定められています。協議会への加入審査には1ヶ月~2ヶ月程度かかるので、来日日程や業務開始の日時から逆算して、早めに加入手続きを行いましょう。

参照元
警視庁「風俗営業等業種一覧」
出入国在留管理庁「特定技能外国人の受入れに関する運用要領

外国人が特定技能「外食業」を取得する方法

ここでは、在留資格「特定技能」の取得方法を、1号と2号に分けて解説します。まず、すべての外国人が取得するのが特定技能1号の在留資格です。その後、管理者としての実務経験を2年以上積んだのち、特定技能2号技能測定試験に合格すると、特定技能2号の在留資格を取得できます。

特定技能1号

特定技能1号の在留資格を取得するには、「日本語能力試験(JLPT)のN4もしくは国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」と「外食業特定技能1号技能測定試験」に合格する必要があります。

2つの日本語能力を測る試験で求められているのは、いわゆる日常会話レベルです。日本で働くために最低限必要な日本語能力を有しているかがチェックされます。

技能測定試験は学科と実技の2科目です。「衛生管理」「飲食物調理」「接客全般」の知識や技能を測ります。技能測定試験の教本とサンプル問題は公開されています。

特定技能2号

特定技能2号を取得する外国人に求められるのは、自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる、または監督者として業務を統括しつつ、熟練した技能で業務を遂行できる水準の能力です。

特定技能2号を取得するには、「日本能力試験(JLPT)のN3」および「外食業特定技能2号技能測定試験」に合格する必要があります

JLPTのN3は「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる」レベルです。

「外食業特定技能2号技能測定試験」では、1号でも出題された項目に加え、「店舗運営」の技能や知識も問われます。

なお、特定技能2号の在留資格を得るには試験の合格に加え、食品衛生法の許可を受けた飲食店で、店舗管理を補助する者としての実務経験が2年以上必要です。具体的には、副店長やサブマネージャーとして、通常業務を行いつつも複数のアルバイト従業員や特定技能外国人を指導・監督する業務を経験していることが求められます。

雇用する外国人が、将来的に特定技能2号へ移行することを視野に入れている場合は、2年以上前から店舗管理業務も任せていく必要があるでしょう。

参照元
農林水産省「「外食業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領

技能実習からの移行も可能

技能実習2号(3年間)を良好に修了した技能実習生は、在留資格を特定技能に移行する際に全部もしくは一部の試験を免除されます

外食業と関連のある「医療・福祉施設給食製造」職種で技能実習を3年間行っていた場合、技能試験と日本語の試験の両方が免除となり、書類の手続きのみで在留資格の移行が可能です。

ほかの職種で技能実習を行っていた場合は、日本語能力を測る試験が免除されます。

特定技能「外食業」で外国人を雇用する流れ

特定技能「外食業」で外国人を雇用する基本的な流れは以下のとおりです。

  1. 人材を募集する

  2. 採用選考と雇用契約の締結を行う

  3. 支援計画を策定する

  4. 事前ガイダンスを実施する

  5. 必要に応じて在留資格の手続きを行う

  6. 外国人の状況に合わせて受け入れ体制を整える

  7. 支援計画に基づき雇用を開始する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.人材を募集する

特定技能外国人を募集する際はまず、国内から募集するのか、海外から募集するのかを決めましょう。

国内から募集する場合は、これから試験を受ける人を雇用するのか、それともすでに特定技能外国人として働いている人を中途採用するのかもしっかり決めておく必要があります。

海外から募集する場合は、送り出し機関を利用するとスムーズです。送り出し機関は、その国のなかで日本で働きたい外国人を募集し、企業と繋げる役割をしています。ベトナムやフィリピンなどの一部の国からは、送り出し機関を利用しないと特定技能外国人の受け入れはできません。

このほかにも、求人サイトへの掲載やSNSの活用などさまざまな募集方法があります。初めて特定技能外国人を受け入れる企業におすすめなのが、人材紹介会社の利用です

自社に合った人材の選定や紹介を行ってくれるため、採用にかかる工数を大幅に減らすことができます。外国人雇用を専門とする人材紹介会社のなかには、登録支援機関としての業務を行っているとこも少なくありません。そのような人材紹介会社を選ぶと、別に登録支援業務を委託する企業を探す必要がなく、各種連携もスムーズに進むでしょう。

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留学生の進路としても注目されている

近年、在学中に「特定技能」の試験を受ける留学生の数が増加しています。中でも人気の高い分野が「外食」です。

外食業は都市部に求人が多く、技能評価試験も比較的簡単に合格できるからです。加えて、特定技能2号へのハードルも他の業種と比べて高くありません。

留学生はすでに日本での生活に慣れているため、海外から受け入れるよりも最初の研修がスムーズに進みます。登録支援機関に依頼せずとも、自社だけで支援計画を立てやすいです。

留学生を「特定技能」で雇用するには、外国人生徒が多い専門学校に問い合わせる、アルバイトに試験の受験を提案するといった方法があります。

2.採用選考と雇用契約の締結を行う

応募が集まったら、採用選考を行います。書類選考では、自社が属する業務区分で働ける特定技能の在留資格を有しているか、もしくは在留資格を得る条件を満たしているかを必ず確認しましょう。

面接では日本語の会話能力の確認をするのをおすすめします。日本語能力を測る試験では、読む・聞く能力を測定するため、会話能力までは分かりません。出身地や母国の文化などの答えやすい質問で緊張をほぐしつつ、日本語でのコミュニケーション能力を確認してみましょう。

採用したい人材が決まったら、在留資格に関する手続きをする前に雇用契約を締結します。特定技能外国人を雇用する場合は、出入国在留管理庁のWebサイトでダウンロードできる雇用契約書や労働条件通知書を利用するのが一般的です。

なお、雇用契約は必ず外国人の理解できる言語で交わさなくてはなりません。出入国在留管理庁のWebサイトには10ヶ国語に翻訳された様式も掲載されているので、ふさわしい種類をダウンロードして、使用しましょう。

3.支援計画を策定する

在留資格の各種申請時に、支援計画書を提出します。雇用契約の締結が完了したら、すぐに作成に取り掛かりましょう。用紙は出入国在留管理庁のWebサイトで特定技能関連のページでダウンロードできます。

支援計画書には、企業の情報や支援業務を行う体制の概要、各支援を実施する担当者、登録支援機関の情報などを記入します。つまり、登録支援機関に業務を委託する場合、支援計画を策定するタイミングまでにはどこの企業と契約をするのか決めておく必要があるのです

スムーズに受け入れを進めるためにも、特定技能外国人を雇用すると決めた時点で、登録支援機関を探し始めておくと良いでしょう。

4.事前ガイダンスを実施する

事前ガイダンスは、支援計画により実施が義務付けられています。タイミングは、雇用契約締結後、在留資格の各種申請を行う前です。

労働条件や活動内容、入国手続き、保証金の有無などを対面やテレビ電話で特定技能外国人に説明します。

登録支援機関と支援委託契約を締結している場合は、代わりに行ってもらえます。

5.必要に応じて在留資格の手続きを行う

事前ガイダンスを終えたら、地方出入国在留管理局で在留資格の各種申請を行います。外国人の状況によって手続きの種類は異なり、主に以下の3種類です。

  • 海外から来日する:在留資格認定証明書交付申請

  • ほかの在留資格から変更する:在留資格変更許可申請

  • 在留資格を更新する:在留期間更新許可申請

「在留資格認定証明書交付申請」は、外国人が国内に居ないため、雇用する企業が代理で行うのが一般的です。

「在留資格変更許可申請」や「在留期間更新許可申請」は本人や依頼を受けた専門家が行いますが、企業のサポートは欠かせません。

6.外国人の状況に合わせて受け入れ体制を整える

在留資格の審査を待っている間に、外国人の状況に合わせて受け入れ体制を整えておきましょう。

たとえば、外国人が海外や遠方から来る場合は、社宅を用意したり部屋を借りる際の保証人になったりと、住居確保の支援が求められます。

7.支援計画に基づき雇用を開始する

在留資格の許可が降りたら、支援計画に基づき雇用を開始しましょう。

まず、外国人が入国する際は空港まで迎えにいき、事業所や住居まで送迎します。その後は、銀行口座や携帯電話、ライフライン、公的手続きの補助も適宜必要です。

業務を始める前に、「生活オリエンテーション」の実施も義務付けられています。生活オリエンテーションは、外国人が日本で安全かつ安定的に働き、生活するために必要な情報を提供する重要な機会です。内容は交通ルールや医療機関の利用方法、日本の法律や各種行政手続きの情報など多岐にわたります。

登録支援機関にすべて委託する場合でも、どのような支援が行われているか理解しておきましょう。

参照元
出入国在留管理庁「特定技能関係の申請・届出様式一覧」
出入国在留管理庁「在留資格「特定技能」

特定技能「外食業」で外国人を雇用する際に気を付けること

特定技能外国人は、風俗営業法で「風俗営業」および「性風俗関連特殊営業」に分類される事業所で働くことはできません。以下は風俗営業に分類される飲食店の例です。

  • 接待の伴う飲食店(例:スナック、キャバクラ、ホストクラブ)

  • 照度が10ルクス以下の喫茶店やバー

  • 午前0時~午前6時に営業するバーや居酒屋

  • 5㎡以下の個室や区画席がある飲食店

これらの場所では、いくら飲食物を作り提供する業務をするとしても、特定技能外国人は雇用できません。

参照元
出入国在留管理庁「資格外活動許可について」
警視庁「風俗営業等業種一覧

まとめ

在留資格「特定技能」は、人手不足を解消することを目的につくられました。そのため、ほかの就労に関する在留資格では禁止されている単純労働も許可されています。また、制限が少なく、調理や接客、店舗管理などの幅広い業務を任せられるのも特徴です。

支援計画の提出や実施など、ほかの在留資格を持つ外国人の雇用では発生しないプロセスが発生するため、複雑で大変そうと感じている企業の方も多いのではないでしょうか。

支援計画の実施が難しいようであれば、登録支援機関への委託も可能です。専門機関の力を借りつつ、無理なく受け入れを進めましょう。

濵川恭一

監修:濵川恭一

外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net