外国人雇用・採用の疑問を解消するメディア
外国人労働者に支払う賃金は、同じ職務を行う日本人の賃金水準と同じであることが原則です。日本人の賃金設定の基準となるのは最低賃金法であり、外国人労働者にも適用されます。外国人であることを理由に賃金を低く設定することは違法であり、在留資格が取得できない可能性もあるため注意が必要です。
この記事では、在留資格別の平均賃金に加え、外国人労働者に説明すべき税金や福利厚生についても詳しく解説しています。外国人労働者に選ばれるための企業の工夫も紹介しているので、ぜひご一読ください。
目次
外国人採用の疑問をプロに相談してみませんか?
制度や手続きが分かりにくい
コミュニケーション上の不安がある
効果的な募集方法を知りたい
WeXpats Bizを運営するレバレジーズ株式会社は
「技術・人文知識・国際業務」を中心とした人材紹介事業と
「特定技能」「技能実習」に特化した採用支援事業を展開しております。
外国人採用に関する疑問やお悩みをお持ちの方は
ぜひお気軽にご相談ください。
大前提として、外国人労働者の賃金も日本人と同様に最低賃金制度に則る必要があります。最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定めたものです。
最低賃金法は、国籍や雇用形態にかかわらず日本で働くすべての人に適用されます。外国人労働者だからといって最低賃金未満の給料で働かせた場合、厳しい罰則が科せられるため注意しましょう。
最低賃金法の第4条第1項においては「使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない」と定められています。
外国人の最低賃金に関するポイントは以下の3点です。それぞれ噛み砕いて解説していきます。
最低賃金は企業の所在地によって決まる
「同一労働同一賃金」も適用される
技能実習生でも最低賃金を下回る賃金設定は違法!
関連記事:「【行政書士監修】外国人採用まるわかりガイド|注意点・メリット・募集・雇用の流れ」
参照元 厚生労働省「最低賃金制度とは?」
最低賃金が都道府県によって異なることは皆さんご存知でしょう。
たとえば、東京都の最低賃金は1113円。沖縄県の最低賃金は896円です。これは時給換算した場合の金額であり、月給を労働時間で割った際に最低賃金を下回ると法律違反になります。
外国人雇用で注意が必要なのは、最低賃金は労働者が実際に働く場所ではなく、事業所の所在地で決まるという点です。
たとえば、東京都にある会社の社員が沖縄県でリモートワークをする場合、最低賃金は前者の1113円が適用されます。外国人従業員が何らかの事情で母国に帰ってリモートワークをすることになった場合も、最低賃金は相手の国ではなく事業所の所在地の金額が適用されると覚えておきましょう。
各都道府県の最低賃金は、原則、毎年10月1日に変更されます。厚生労働省のWebサイトで最新の情報を確認してください。直近10年間は、段階的に最低賃金が増えています。
引用:厚生労働省「最低賃金早見表|地域別最低賃金全国一覧」
技能実習生にも最低賃金法は適用されます。
技能実習の目的は、発展途上国からやってきた技能実習生に日本の技術を持ち帰ってもらうこと、すなわち国際貢献です。
そのため、技能実習生が行える業務の内容にはさまざまな制限があり、日本人と同じ仕事ができるとは限りません。しかし、だからといって最低賃金を下回る賃金で技能実習生を働かせることは禁止されています。
最低賃金法違反が発覚した場合、罰金や未払金の支払いを求められるうえ、技能実習生の受け入れが一定期間停止されます。法律を遵守し、最低賃金以上の給与を支払うことは企業の義務です。不正行為で処分を受けないよう、適切な賃金を支払いましょう。
同一労働同一賃金とは、文字通り「同じ仕事内容であれば同じ賃金を支払わなければならない」とする取り組みです。正規社員・非正規社員といった雇用形態による待遇の差を解消するための制度であり、当然ながら外国人労働者にも適用されます。
同一労働同一賃金は、差別的な理由による不合理な賃金格差も禁止しています。ほかの従業員と同じ仕事ができているにもかかわらず、「日本語が話せないから」「宗教上の理由でシフトが固定されているから」といった理由で給料に差をつけてはいけません。
もちろん、実際に行っている仕事の内容が異なれば賃金に差が生じても問題ありません。「日本語が話せないから」という理由だけで賃金を下げてはなりませんが、実際に行える業務が限定されている場合は、ほかの社員と賃金に差が生じる場合もあるでしょう。
同一労働同一賃金のガイドラインでは、賃金の差を認める基準について「企業の賃金決定の基準やルールといった明確な根拠に基づいた説明を行えるか」がポイントだと説明しています。主観的で抽象的な説明では、合理性が認められないので注意しましょう。
関連記事:「外国人労働者の雇用における問題を事例付きで解説!トラブル回避の方法とは」
参照元 厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」
外国人労働者は保有する在留資格によって働ける職種や雇用形態が異なります。在留資格区分別の平均賃金は以下の通りです。
引用:厚生労働省「在留資格区分別にみた賃金」
「令和5年賃金構造基本統計調査」によれば、外国人を含む日本の労働者全体の平均賃金は31万8300円です。年齢のボリューム層に差があるため一概に比較はできませんが、外国人労働者の待遇改善は国際社会における日本の課題といえるでしょう。
ここからは、在留資格区分別にみた外国人労働者の平均賃金について解説します。
「専門的・技術的分野」に該当する在留資格は、「高度専門職」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「技能」「教育」「教授」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」です。取得要件として高い知識や専門性が求められます。
就ける仕事もいわゆるホワイトカラーが主であり、原則として単純労働は認められていません。平均賃金は29万6700円であり、これは30代の労働者全体の平均賃金と遜色ない金額です。
特定技能は、人手不足が深刻な「特定産業分野」で働くために創設された在留資格です。
特定産業分野に該当する業種には、「介護」「ビルクリーニング」「工業製品製造業分野(旧:素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)」「建設」「造船・舶用工業」「自動車整備」「航空」「宿泊」「農業」「漁業」「飲食料品製造業」「外食業」などがあります。
特定技能の在留資格では単純労働が認められているため、製造業・宿泊業・飲食業・介護など幅広い職種で雇用が可能です。
特定技能外国人は原則として正社員雇用されているにもかかわらず、平均賃金は19万8000円とかなり低めになっています。
なお、この統計は主に特定技能1号の外国人を対象としたものです。今後、特定技能2号の外国人(熟練した技能を持つ外国人)が増えてくると、平均賃金も増えてくるでしょう。
先述のとおり、技能実習制度は発展途上国出身の外国人に日本の技能や技術を移転する「国際貢献」を目的に創設されました。農業や介護、建築業など技能実習生の受け入れが可能な職種は幅広く、2024年7月現在では90職種165作業にわたります。
技能実習生の平均賃金は18万1700円であり、ほぼ最低賃金での雇用となっているのが現状です。
技能実習生の多くは母国の「送り出し機関」に数十万円を支払って来日しており、費用を捻出するために借金をしているケースもめずらしくありません。失踪する技能実習生が後を絶たない背景には、期待していた待遇とのギャップが存在しています。
一方で、企業側に「3年~5年で母国に帰ってしまう技能実習生にそこまで投資できない」という苦しい事情があることも事実。
こうした事情を踏まえて、技能実習制度は2027年までに新制度「育成就労」へ移行します。「育成就労」の目的は、在留期間修了後も日本で引き続き活躍してくれる人材の育成であり、継続雇用を見据えた待遇改善に取り組む企業が増えることが期待されています。
身分に基づく在留資格は、「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の4種類です。これらの在留資格に職業に関する制限はありません。
平均賃金は26万4800円。「永住者」を取得するためには一定水準の年収やスキルが審査される一方で、「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の中にはアルバイトやパートタイムで働いている扶養家族も多く、実際に個々人がもらっている賃金にはばらつきが大きいと予想されます。
関連記事:「資格外活動許可とは?外国人を雇用する際のポイントを企業へ向けて解説」
外国人を雇用する際は、税金や厚生年金など、賃金に関わる日本独自の制度について誤解が生じないよう説明しましょう。特に意識すべきポイントは以下の3点です。
日本国内に住所がある外国人や、日本に1年以上居住している外国人は、日本人同様に税金が課されます。ワーキングホリデーやインターンシップなどで短期間滞在している外国人も同様です。
日本の企業では給与から税金(所得税、住民税)が天引きされます。こうした税金の支払い方法に関するルールは国ごとに異なるため、トラブルを避けるためにも、天引きされる税金の内容や金額に関する説明は丁寧に行いましょう。そして、可能であれば、母国語で要点を書いた資料があると分かりやすいです。多くの外国人にとって、手取りの金額は非常に重要です。本人が納得して働くためにも、きちんと説明しておきましょう。
厚生年金保険は、企業などに勤務している70歳未満の人が加入する保険です。日本で働く外国人労働者も原則として加入する必要があります。健康保険も同様です。
勤務時間や日数が短い場合や、日本が「社会保障協定」を結んでいる国の出身者は加入しなくてもよいケースもあります。ただし、ワーキングホリデーなどの非居住者扱いの外国人も、要件を満たしていれば厚生年金保険に加入しなければなりません。
一時的な日本滞在を目的とした外国人労働者の中には、厚生年金保険を納めるのに抵抗のある人もいるでしょう。年金の受給年齢よりも前に外国人が日本を離れる場合、「脱退一時金」の制度を利用することで支払った年金の一部が返還されます。
外国人の賃金は、在留資格の取得にも影響を及ぼします。特に、「特定技能」の在留資格取得の際には注意が必要です。
「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」では、特定技能の在留資格を持つ外国人の賃金について、以下のように定めています。
【「特定技能雇用契約の内容の基準」第一条】
三:外国人に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること
四:外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的な取扱いをしていないこと引用:電子政府の総合窓口e-Gov「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」
上記の定めにより、たとえ最低賃金を上回っていたとしても、日本人と比較して給与水準が低く設定されていた場合は、「特定技能」の在留資格が許可されない可能性があるため注意しましょう。
日本で働く外国人は年々増加し、2023年は200万人を超え過去最高となりました。優秀な外国人に長く働いてもらうためには、企業努力が必要不可欠です。
そのため、以下では外国人労働者から選ばれる企業になるために企業が尽力すべきポイントを解説します。
可処分所得とは、税金や社会保険料などを天引きした後に残る手取りの賃金のことです。自由に使える手取り額が労働者の希望に満たない場合、賃金設定に納得してもらえないこともあります。
可処分所得を上げるには、給与の総支給額を上げたり社宅を提供して手取りから発生する家賃を減らしたりするなどの企業の努力やサポートが必要です。
可処分所得のアップは、賃金設定における外国人労働者の満足度を上げることに繋がります。会社の制度を見直し、改善点を探してみましょう。
日本で働く外国人のなかには出稼ぎ労働者も多く、お金を稼ぐことに意欲的です。また、期限付きの滞在が目的の外国人は、年収よりも月収を重視する傾向があります。そのため、残業が可能な外国人を雇用する場合は、残業代についても明確に伝えておくことが必要です。さらに、求人にも見込み残業代を記載するなど、工夫してみましょう。
福利厚生は、法律で義務付けられた「法定福利厚生」と会社が独自に設けている「法定外福利厚生」があります。
健康保険や雇用保険、厚生年金保険などの法定福利厚生は、日本人社員同様に外国人従業員にも適用されます。会社が独自に設けている法定外福利厚生は、内容を充実させることで他社と差別化できるため効果的です。また、福利厚生の充実は、従業員の支出を減らし生活の質を向上することに繋がるため、外国人労働者にとっても魅力的な制度といえます。
一般的な福利厚生の例としては、通勤手当や住宅手当、健康診断の受診などがあります。ほかにも、多様な働き方を認める在宅制度や誕生日休暇制度などを導入している企業も多く見られます。
ユニークな福利厚生の例では、実家に帰省する費用を一部負担するゴーホーム制度や、勤務中の飲食を無料で支給する弁当・ドリンクフリー制度、15分程度のお昼寝を許可するパワーナップ制度などもあります。
これらの福利厚生にかかる費用は、経費になりますので、会社側にとってもメリットがあります。
日本人は、社会的な風習から給与額について質問するのを避ける傾向があります。また、企業も求人にはおおよその支給額や「▲▲円~▲▲▲円」など、幅を持たせた金額を記載しているところもあるため、「実際に働いたらいくらもらえるのか」が分かりにくい場合も。
そのため、「実際には月収いくらなのか」「どのくらい働いたら賃金が上がるのか」などを明示しておくことが大切です。
さらに、今後どのように働けば賃金アップに繋がるのかなど、入社後のキャリアプランもあわせて伝えておくと外国人労働者のモチベーションアップにも繋がります。
外国人労働者の賃金には、日本人と同じように労働基準法や最低賃金法といった法律が適用されます。外国人労働者を雇用する際は、本人のスキルに応じた賃金設定を行うと同時に、法律を遵守しているかどうかにも注意しましょう。
しかしながら、給与から天引きされる税金や保険料については、丁寧な説明が必要です。また、給与の決め方や待遇の差が「外国人だから差別している」と誤解されないよう、必ず会社の方針を伝えておきましょう。
外国人労働者に長く働いてもらうためには、企業側の努力が不可欠です。可処分所得を上げたり福利厚生を充実させたりするなどの工夫や改善に努めましょう。
外国人雇用や賃金設定に関するお悩みがある場合は、WeXpats Agentにご相談ください。初めての外国人採用でも安心してご利用いただけるよう、完全無料で一貫したサポートをご提供いたします。
WeXpats Agentには11か国語に対応可能な多数の外国人スタッフが在籍しており、求人者と求職者の双方の視点からミスマッチを防ぐ体制を整えています。長く働いてもらうために、互いのニーズをしっかりと吟味し、最適なご紹介を行うことを大切にしております。グローバルに活躍できる即戦力をお探しの場合も、ぜひ弊社をご活用ください。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net