在留資格「特定活動46号」の職種や要件!雇用のメリット・デメリットも

在留資格 2024.12.18
濵川恭一
濵川恭一
在留資格「特定活動46号」の職種や要件!雇用のメリット・デメリットも

在留資格「特定活動46号」は、日本の大学や大学院を卒業・修了した外国人に付与されます。メジャーな在留資格ではないため、自社で雇用できるか不安に思っている人も多いようです。

しかし、実際にはさまざまな業界で雇用でき、行える業務も幅広いという特徴があります。

この記事は、日本語能力の高い外国人やリーダー、マネージャー候補となる外国人を雇用したい方に向けて執筆しました。在留資格「特定活動46号」の職種や取得要件を知り、雇用時に役立ててください。

目次

  1. 特定活動46号とはどのような在留資格?
  2. 特定活動46号と技術・人文知識・国際業務の違いとは
  3. 在留資格「特定活動46号」で働ける場所と可能な業務
  4. 「特定活動46号」を取得するための能力や職種の要件
  5. 在留資格「特定活動46号」の申請に必要な書類
  6. 特定活動46号の外国人を雇用するメリット・デメリット
  7. 特定活動46号から他の在留資格への変更も可能
  8. まとめ

外国人採用疑問してみませんか?

  • 制度や手続きが分かりにくい

  • コミュニケーション上の不安がある

  • 効果的な募集方法を知りたい

 

WeXpats Bizを運営するレバレジーズ株式会社
「技術・人文知識・国際業務」を中心とした人材紹介事業と
「特定技能」「技能実習」に特化した採用支援事業を展開しております。

外国人採用に関する疑問やお悩みをお持ちの方は
ぜひお気軽にご相談ください。

特定活動46号とはどのような在留資格?

特定活動46号とは、日本の大学や大学院などを卒業し、高い日本語能力を持つ外国人に付与される在留資格です。特定活動にはさまざまな種類が存在し、「本邦大学卒業者」は46番目に告示されたことから通称「特定活動46号」と呼びます。

2019年に創設された比較的新しい在留資格なので、十分に理解しきれていないという声は少なくありません。ここでは、特定活動46号の概要と創設された背景を解説します。

在留資格「特定活動46号」のガイドライン

出入国在留管理庁は、在留資格「特定活動46号」の対象を以下のように定義しています。

本制度は、本邦大学等卒業者が本邦の公私の機関において、本邦の大学等(大学、大学院、短期大学、高等専門学校、短期大学等の専攻科及び認定専修学校専門課程をいう。以下同じ。)において修得した学修の成果等のほか、留学生としての経験を通じて得た高い日本語能力を活用することを要件として、幅広い業務に従事する活動を認めるものです。「技術・人文知識・国際業務」の在留資格においては、一般的なサービス業務や製造業務等が主たる活動となるものは認められませんが、本制度においては、上記諸要件が満たされれば、これらの活動も可能です。

参照元
出入国在留管理庁「留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学等卒業者)についてのガイドライン


在留資格「特定活動46号」では、高い日本語能力を活かす仕事を行いつつであれば、いわゆる単純労働も許可されます。高い日本語能力を活かす仕事とは、翻訳・通訳要素のある業務やほかの従業員の教育に関わる業務に加え、双方向のコミュニケーションを要する業務のことです。

在留資格「特定活動46号」が生まれた背景

在留資格「特定活動46号」が作られたのは、日本の大学や大学院などを卒業・修了した外国人の就職先を拡大するためです

これまで、日本の大学や大学院などを卒業・修了した外国人は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得して働くのが一般的でした。しかし、「技術・人文知識・国際業務」は単純労働が許可されておらず、職種も限定されています。留学生を採用したくても自社の業務に当てはまる在留資格がなく、断念している企業が多くありました。

このような状況を改善するため、大学や大学院などを卒業・修了した留学生の受け皿として在留資格「特定活動46号」が創設されたのです。

特定活動46号と技術・人文知識・国際業務の違いとは

在留資格「特定活動46号」と「技術・人文知識・国際業務」は似ている部分が多く、どう違うのか混乱するという声がよく聞かれます。以下の表で違う点と同じ点をまとめたので、制度を理解する際の参考にしてください。

 

 

技術・人文知識・国際業務

特定活動46号

学歴

下記のいずれかに該当

・国内外の大学院を修了
・国内外の大学卒業(短大含む)

・日本の専門学校卒業
 

下記のいずれかに該当
・日本の大学院を修了

・日本の大学を卒業
・日本の短期大学または高等専門学校を卒業したうえで学位を取得
・日本の専修学校を卒業し高度専門士を取得

日本語能力

明確な基準なし

下記のいずれかに該当
・日本語能力試験N1
・旧日本語能力試験1級
・BJT480点以上
・大学や大学院で日本語を専攻し、卒業または修了

単純労働

不可

転職

自由

在留資格変更許可申請が必要

雇用形態

派遣雇用も可能

派遣雇用は不可

家族の帯同

「技術・人文知識・国際業務」は海外の大学や大学院を卒業・修了していても取得可能です。日本語に関しては、業務を問題なく行えるだけの能力が求められますが、明確な基準はありません。

一方、「特定活動46号」は日本の大学や大学院などを卒業・修了していることが条件です。日本語能力に関しては、指定の資格を取得するか、専門的に学んでいる必要があります。

在留資格「特定活動46号」で働ける場所と可能な業務

ここでは、在留資格「特定活動46号」で就労可能な場所と業務を紹介します。

飲食店

飲食店で認められるのは、外国人客に対して行う通訳を兼ねた接客および日本人に対する接客です。フロアマネージャーやリーダーとして、ほかの外国人スタッフの指導・管理業務も認められています。

厨房での皿洗いや清掃業務のみに従事することは認められません。

ホテルや旅館

ホテルや旅館で通訳を兼ねた案内や接客業務が行えます。外国人はもちろん、日本人利用客の対応も可能です。

接客業務以外に、外国語のホームページ作成や更新作業、外国語でのSNS発信などの販促業務も認められています。

厨房での皿洗いや客室清掃業務のみに従事することは認められません。

関連記事:「ホテル・旅館で働ける就労ビザとは?可能業務一覧や「技術・人文知識・国際業務」の許可事例を解説

工場

工場では、日本人従業員から受けた指示を技能実習生やほかの外国人スタッフに伝達・指導する業務が許可されています。自らもライン作業を行えますが、日本語コミュニケーションを必要としない業務のみを行うのは禁止です。

また、仕様書や製造指示書などに基づいて作業を行う場合など、ある程度高度な日本語の読解力を必要とする仕事も行うことが可能です。

小売店の接客

スーパーやコンビニエンスストアといった小売店で、仕入れや商品企画、外国人客へ通訳を兼ねた接客販売業務を行えます。商品の陳列や店舗の清掃のみを行うことはできません。

タクシー会社

タクシードライバーとして、外国人客への通訳を兼ねた観光案内や接客が行えます。もちろん、通常のタクシードライバーの業務も可能です。

ドライバーのほかには、外国人観光客を集客するための企画立案も許可されています。

介護事業所

外国人従業員や技能実習生への指導をしつつ、自らも日本語を用いた介護業務に従事できます。ただし、施設内の清掃や衣服の洗濯のみを行うことは認められていません。

建設会社

日本人従業員から受けた指示を技能実習生やほかの外国人スタッフに伝達・指導する業務が許可されています。自らも建設作業を行えますが、日本語コミュニケーションを必要としない業務のみを行うのは禁止です。

保育園、学童保育

幼児や児童の保育、保護者との連絡、イベントの企画運営などの業務を行うことができます。ただし、まだ言葉を発しない乳児の世話のみを行うことはできません。

参照元
出入国在留管理庁「留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学等卒業者)についてのガイドライン

「特定活動46号」を取得するための能力や職種の要件

外国人が在留資格「特定活動46号」を取得するには、以下の要件を満たす必要があります。

雇用形態の要件

在留資格「特定活動46号」は、常勤の職員として働く場合にのみ許可されます。短期間のアルバイトやパート勤務では取得できません。また、派遣雇用も禁止です。

基本的には正社員雇用もしくはそれに準ずる雇用形態が想定されています。

学歴の要件

以下のいずれかの学歴要件を満たすことも取得の要件です。「特定活動46号」が創設された当初は、「日本の大学卒業者」「日本の大学院修了者」のみに対象者が限られていました。しかし、2023年6月16日の閣議決定「規制改革実施計画」により、以下のように対象が拡大されています。

  • 日本の大学を卒業

  • 日本の大学院を修了

  • 日本の短期大学を卒業し、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が行う審査に合格して学位を取得

  • 日本の高等専門学校を卒業し、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が行う審査に合格して学位を取得

  • 外国人留学生キャリア形成促進プログラムの認定を受けた日本の専修学校を卒業し、高度専門士を取得

なお、必ずしもこれらの学校を卒業してすぐに在留資格を申請する必要はありません。条件を満たしていれば、一度帰国していた外国人やほかの在留資格で就労していた外国人も取得できます

日本語能力の要件

在留資格「特定活動46号」では、日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務を行います。そのため、以下の日本語能力に関する要件のいずれかを満たさなくてはなりません。

  • 日本語能力試験N1の取得(日本語能力試験については旧試験制度の「1級」も対象)

  • BJTビジネス日本語能力テストで480点以上を取得

  • 大学または大学院において日本語を専攻して卒業・修了

日常的な会話はもちろんのこと、論理的でやや複雑な日本語を含めた幅広い言葉を理解できる、すなわちネイティブレベルの日本語能力が求められています

報酬の要件

外国人が在留資格「特定活動46号」を得るには、日本人と同等額以上の報酬を受けることが条件です。基本給だけでなく、各種手当についても同等である必要があります。

母国で実務経験がある場合は、その経験に応じた報酬が支払われていなければなりません。

職種の要件

さまざまな職種で就労できる在留資格「特定活動46号」ですが、共通して以下の要件を満たしている必要があります。

  • 日本語での円滑な意思疎通を要する業務である

  • 日本の大学や大学院などで学んだことを一定水準以上活かせる仕事である

  • 法律上資格を有する方が行うこととされている業務(いわゆる業務独占資格が必要なもの)や風俗関係業務でない

単純労働も可能ですが、日本語での意思疎通を必要とし、留学生活で学んだ内容を活かせる業務と組み合わせて行う必要があります。

外国人特化の人材紹介サービス「WeXpats」は、専門の知識を持ったキャリアアドバイザーが在籍しています。どの在留資格を持つ外国人を雇用できるのか分からない、または迷っている企業さまのご相談対応も可能です。

ぜひこちらからお問い合わせください。

参照元
出入国在留管理庁「外国人留学生の就職促進に向けた運用等の見直しについて」
出入国在留管理庁「留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学等卒業者)についてのガイドライン

在留資格「特定活動46号」の申請に必要な書類

ここでは、留学生が在留資格を「特定活動46号」に変更する際に必要な書類を紹介します。企業が作成する書類もあるので、内容を把握しておきましょう。

  • 在留資格変更許可申請書

  • 写真(縦4cm×横3cm)

  • パスポートおよび在留カード(提示)

  • 申請人の活動内容などを明らかにする資料

  • 雇用企業が作成した雇用理由書(業務内容から特定活動46号に該当することが明らかな場合は不要)

  • 申請人の学歴等を証明する文書(卒業証書や修了証書など)

  • 申請人の日本語能力を証明する文書(各資格の成績証明書の写しや日本語を専攻したことを証明できる卒業証書など)

  • 事業内容を明らかにする資料(勤務先の沿革や事業内容が書かれた案内書や登記事項証明書など)

理由書とは、申請人を雇用することに決めた理由を記した書類です。どのような仕事をするのか、またなぜその外国人が必要なのかを分かりやすくまとめる必要があります。

在留資格「特定活動46号」の該当性が明らかな場合は不要とされていますが、確実に許可を得るためにも作成し提出することをおすすめします。

参照元
出入国在留管理庁「別紙(提出資料)

特定活動46号の外国人を雇用するメリット・デメリット

ここまでは、特定活動46号で就労できる職種や取得要件を説明してきました。それらを踏まえ、ここからは雇用のメリット・デメリットを見ていきましょう。良い面・悪い面を両方知ったうえで検討することで、雇用後のミスマッチやトラブルを防げます。

特定活動46号の外国人を雇用するメリット

在留資格「特定活動46号」の外国人を雇用するメリットとしては以下の5点が考えられます。

  1. 単純労働を任せられる

  2. 留学生アルバイトを正社員雇用できる可能性がある

  3. 日本人と同じように採用・雇用管理ができる

  4. 日本の文化や習慣を理解している人材を雇用できる

  5. 長期的な雇用ができる

それぞれ、詳しく解説していきます。

単純労働を任せられる

在留資格「特定活動46号」は、「技術・人文知識・国際業務」では禁止されている単純労働が許可されています。単純労働だけを行わせることはできませんが、接客や指導業務をしつつ空いた時間に自分も作業に入っても問題ありません。業務の幅が広いと柔軟に人員配置ができ、雇用管理もしやすくなります。

留学生アルバイトを正社員雇用できる可能性がある

留学生アルバイトが在留資格「特定活動46号」を取得すると、そのまま正社員として雇用できます

これまでは、飲食店やスーパーで長く働いてくれた留学生アルバイトを正社員雇用したいと思っても、当てはまる在留資格がなく断念せざるを得ないケースがありました。しかし、在留資格「特定活動46号」ができたことで、フロアリーダーやほかの外国人の教育担当として留学生アルバイトを正社員雇用できる可能性がでてきたのです。

学歴や日本語能力が要件に当てはまるのが条件ではあるものの、業務に慣れていて信頼できる留学生をそのまま正社員雇用できるのは、企業にとっても大きなメリットといえるでしょう。

日本人と同じように採用・雇用管理ができる

特定活動46号の在留資格をもつ人材は、日本人と同様にハローワークや求人媒体で募集をして採用することができます。技能実習や特定技能の在留資格のように第三機関を通す必要がありません。

また、採用後も定期的な報告が必要なく、ほかの在留資格に比べて管理の手間が軽減されます。

日本の文化や習慣を理解している人材を雇用できる

特定活動46号の在留資格を持つ外国人は、日本の大学や大学院などを卒業・修了しています。

日本に一定期間居住し学習しているので、文化や習慣をよく理解している可能性が高く、日本企業に馴染みやすいでしょう。日本語能力もネイティブレベルなので、コミュニケーション上の問題も少ないと考えられます。

長期的な雇用ができる

特定活動の在留期間は5年、3年、1年、6ヶ月のいずれかで、更新の制限がありません。更新をし続ける限り日本に滞在でき、一定の条件を満たせば将来的には永住権の取得も検討できます。

特定活動46号の外国人を雇用するデメリット

特定活動46号の外国人の雇用にはデメリットともいえる以下の注意点が存在します。

  1. フルタイムの雇用に限られる

  2. 最初は長い在留期間が得られない

  3. 転職時には在留資格の変更が必要となる

これらの点は、事前に理解しておけば対応可能な事項です。

フルタイムの雇用に限られる

特定活動46号の在留資格は、高度な日本語能力を活かした専門的な業務への従事を想定しているため、常勤での就労が前提となっています。そのため、派遣やパート、アルバイトとしての雇用はできません。

短時間や短期間のみ雇用したい場合は、身分に基づく在留資格を持つ外国人や留学生アルバイトの雇用を検討しましょう。

最初は長い在留期間が得られない

在留資格「留学」から「特定活動46号」に移行する場合、原則として許可時と初回の更新では在留期間が1年しか許可されません。そのため、1年経過後に在留期間更新許可申請が再度必要です。

その後は、在留状況を見て問題なければ3年や5年の長期の在留期間が許可されることになります。

転職時には在留資格の変更が必要となる

在留資格「特定活動46号」を持つ外国人は、転職時に「在留資格変更許可申請」を行わなくてはなりません。

在留資格「特定活動」は、種類が多岐にわたりさまざまな活動が許可されているという特性上、「指定書」という書類で働く場所や業務などが細かく指定されています。転職により指定書に書かれている就労先や業務内容が変わる場合、在留資格の変更が必要となるのです

中途採用で特定活動46号を持つ外国人を雇用する場合は、たとえ職種が変わらなくても在留資格の変更が発生することに留意しておきましょう。

特定活動46号から他の在留資格への変更も可能

特定活動46号ビザは、外国人からは不人気のビザです。

最初は1年のビザしか許可されず、転職した場合、在留資格を取りなおさなければならないからです。

ただし、特定活動46号ビザから他の就労ビザへの変更が可能です。入社して数年間はこのビザで勤務し、数年後に高度な就労ビザである技術・人文知識・国際業務ビザなどに切り替えることも可能です。

まとめ

特定活動46号は、日本の大学や大学院などを卒業・修了し、高い日本語能力を身に付けた外国人に付与されます。能力を活かせる業務に付随するかたちなら、接客やライン作業などにも従事可能です。

今まで単純労働を伴う業務では外国人雇用ができなかった企業も、優秀な人材を確保できる可能性があります。幅広い業務を行える人材を求めている企業の採用担当者の方は、特定活動46号を持つ外国人の雇用を選択肢に加えてみてください。

濵川恭一

監修:濵川恭一

外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net