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初めて外国人を雇用する企業は、どのような法律に注意すれば良いのか気になるでしょう。外国人にも労働関係法令は適用されます。そのため、労働基準法や最低基準法などを守って雇用しましょう。また、外国人の出入国や在留を管理する入管法も非常に重要です。
このコラムでは、外国人雇用に関係する法律について解説します。内容を参考にして、外国人雇用を成功させましょう。
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働く人の雇用と人権を守る労働関係の法律は、外国人にも適用されます。「日本人ではないから関係ない」と考えずに、法律に則った雇用管理を心掛けましょう。代表的な労働関係の法律は以下のとおりです。
・労働基準法
・労働組合法
・労働関係調整法
・労働契約法
・職業安定法
・最低賃金法
・男女雇用機会均等法
・労働者派遣法
・パートタイム労働法
・職業安定法(外国人を派遣で雇用する場合)
このほかにも、「雇用保険法」や「健康保険法」「厚生年金保険法」など、社会保障制度に関わる法律も、外国人に適用されます。
関連記事:「外国人が日本で運転する場合の免許証は?取得方法や切替方法を解説!」
ここでは、「出入国管理及び難民認定法」について解説します。外国人本人のみならず、雇用する企業にとっても重要な法律なので、しっかり内容を把握しておきましょう。
出入国管理及び難民認定法(通称:入管法)は、日本人を含めた全ての人の出入国を管理する法律です。また、日本に在留する外国人や難民認定制度を管理する役割もあります。外国人は入管法のもと日本に入国したり仕事に就いたりしているため、雇用する企業にとって非常に縁の深い法律といえるでしょう。
入管法では、外国人の不法な就労を手助けした企業に対して「不法就労助長罪」という処罰が設けられています。罰則の内容は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方です。「オーバーステイの外国人を雇用する」「保有している在留資格外の仕事をさせる」などはすべて不法就労助長罪に該当するので、十分注意しましょう。
入管法では、29種類の在留資格を定めています。外国人はいずれかの在留資格を取得しなければ、日本に在留できません。在留資格の種類は以下のとおりです。
【就労資格】
外交/公用/教授/芸術/宗教/報道/高度専門職/経営・管理/法律・会計業務/医療/研究/教育/技術・人文知識・国際業務/企業内転勤/介護/興行/技能/特定技能/技能実習
【非就労資格】
文化活動/短期滞在/留学/研修/家族滞在
【居住資格】
永住者/日本人の配偶者等/永住者の配偶者等/定住者
このほかに、法務大臣が個別に活動を指定して許可する「特定活動」という在留資格もあります。
就労資格に分類される在留資格では就ける仕事やできる業務が決まっており、それ以外の活動は原則許可されていません。一方、居住資格に分類される在留資格は日本では行う活動に制限がないため、職業の選択は自由です。
入管法は時代に合わせて変更が行われています。2019年4月の改正入管法では、在留資格「特定技能」が創設されました。「特定技能」は日本の人手不足を解消することを目的に作られた在留資格で、外国人に今まで禁止されていた単純労働への従事を可能にしています。そのため、創設当時は「事実上移民の受け入れが解禁になるのでは」という議論が巻き起こりました。
在留資格に関しては「在留資格の種類を一覧で紹介!外国人を雇用する際の注意点も解説」、特定技能に関しては「特定技能とはどのような在留資格?技能実習との違いや雇用の注意点を解説」をご覧ください。
参照元 出入国在留管理庁「在留資格一覧表」
ここでは、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」、通称「労働施策総合推進法」について解説します。
労働施策総合推進法は、さまざまな働き方を認めて労働者の就業を安定させるための法律です。雇用対策法を前身としており、働き方改革の内容を盛り込んで2018年6月に施行されました。2020年6月に、パワーハラスメント防止対策を事業主に義務付ける改正法が施行されたため、「パワハラ防止法」という名でも知られています。
労働施策総合推進法第28条では、外国人の雇用・離職があった事業主に対し「外国人雇用状況の届出」を提出することを定めています。これは、厚生労働省が外国人の就職や離職の状況を把握し、雇用状況の改善や再就職支援に繋げるのが目的です。外国人雇用状況の届出は事業所の所在地を管轄するハローワークで行えるので、忘れずに行いましょう。なお、雇用保険に加入する外国人の場合は、雇用保険被保険者資格取得届と同時に手続きが可能です。
労働施策総合推進法第7条では雇用主に対し、外国人が職場に適用できるよう相応しい措置を講ずることを定めています。具体的な措置として、厚生労働省は「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」を発表しました。以下の各項目ごとに、行うべき措置を細かく示しています。
1.外国人労働者の募集及び採用の適正化
2.適正な労働条件の確保
3.安全衛生の確保
4.雇用保険、労災保険、健康保険及び厚生年金保険の適用
5.適切な人事管理、教育訓練、福利厚生など
6.解雇の予防および再就職の援助
あくまで努力義務なので、すべてが守れなくても罰則はありません。しかし、外国人を雇用する企業の責任として、示されている措置を取れるよう最大限対策をしましょう。
関連記事:「【企業向け】在留資格取り消しの事由や流れ~詳しい事例まで解説」
参照元 e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)」 厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」
労働基準法は、日本で働く外国人にも適用されます。外国人を長時間働かせたり不当に低い賃金で働かせたりせず、法律の範囲内で雇用しましょう。
労働基準法とは、労働者の健康で文化的な最低限度の生活をする権利を保証するため、労働時間や賃金、休暇などの最低条件を定めた法律です。健康を害する長時間に渡る勤務や、生活もままならない低賃金での労働を無くすために作られました。また、性別や国籍による労働条件の差別を禁止しているのも労働基準法です。
労働基準法では賃金や労働時間、休日など、さまざまな労働条件の最低基準を定めています。たとえば当たり前のように思える以下の内容は、すべて労働基準法があるからこそ守られているルールです。
・賃金は毎月1回以上、通貨で直接労働者に支払う
・原則1日8時間・週に40時間以上は労働させない(労働基準法36条に基づく労使協定を結んでいる場合は除く)
・労働時間が6時間を超えるときは45分、8時間を超えるときは1時間の休憩を取らせる
・週に1回以上の休日を設ける
・時間外労働や休日労働、深夜労働をさせたら割増賃金を支払う
・6ヶ月以上勤務した労働者には有給休暇を与える
外国人を雇用する企業は、あらためて労働基準法で定められている内容を確認しておきましょう。
労働基準法第3条では「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と定めています。これを均一待遇の原則といい、能力や業務内容ではなく「外国人である」という理由だけで労働条件を差別するのは禁止です。
参照元 e-Gov法令検索「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」
ここでは、最低賃金法の概要と「地域別最低賃金」「特定」最低賃金について解説します。
最低賃金法は、雇用者が支払う賃金の最低額を定め、労働者の生活を守るための法律です。外国人採用の現場では、技能実習生に対して時給300~400円といった明らかに最低賃金以下の賃金しか支払わない企業が後を絶たず、問題になっています。技能実習生であっても、最低賃金以下で働かせるのが違法であることには変わりありません。業績や利益がどのような状態であっても、最低賃金以上の金額を支払うのが雇用主の義務です。
地域別最低賃金とは、各都道府県ごとに決められている最低賃金です。都道府県の労働局長が地方最低賃金審議会に意見を聞き、毎年10月ごろに改定が行われます。近年の物価の上昇により、最低賃金の上げ幅も大きくなっています。雇用主は最低賃金の変更にあわせて、従業員の賃金も改定しなければなりません。
特定最低賃金は、地域別最低賃金よりも高い最低賃金が適切と判断された、特定の産業(製造業や小売業等)に対して設定されます。特定最低賃金は必ず地域別最低賃金を上回っていなければなりません。現在、約200の特定最低賃金が定められていますが、どの産業が該当するかは各都道府県によって異なります。
最低賃金については「外国人労働者の賃金はいくらが適正?最低賃金や平均金額を参考に解説」で詳しく触れています。
参照元 厚生労働省「最低賃金制度の概要」
労働基準法や最低賃金法などの労働関係の法律は、外国人にも適用されます。入管法とともに内容をしっかり理解し、法を厳守した雇用管理を心掛けましょう。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net