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外国人留学生は年々増加しており、現時点で30万人程度います。それに伴い卒業後も日本企業に就職するケースが増えてきました。自社で採用を検討する過程で「どう募集すればいいのか」「何に注意すればいいのか」といった疑問が生まれた方もいるのではないでしょうか。はじめは難しそうに感じますが、海外から外国人を呼び寄せて雇用するよりもプロセスは簡単です。
この記事は、優秀な人材の獲得や国際化の対応などのために、外国人留学生の採用を考えている企業に向けて執筆しました。募集のコツや採用時の注意点、手続きを紹介しています。
また、外国人留学生の新卒採用のほか、アルバイト採用についても解説。資格外活動許可や就労制限の概要をまとめています。
目次
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日本政府は高度人材を確保し国際競争力を高めるため、外国人留学生を積極的に受け入れる政策を打ち出しています。外国人留学生の増加に伴い、そのまま日本企業に就職するケースも増えている状況です。
ここでは、外国人留学生の採用状況を解説します。
出入国在留管理庁の「令和4年における留学生の日本企業等への就職状況について」の資料によると、2022年には、3万3415人の外国人留学生が日本企業への就職を目的に在留資格変更許可申請を行い、許可されました。この人数は、前年より15.3ポイント(4441人)増加しています。高等教育機関を卒業・修了した外国人留学生の約4割が、日本国内で就職している計算です。
日本で就職する外国人留学生の国籍は、中国(香港・マカオを除く)が最も多く30.5%を占めています。後にベトナム、ネパール、スリランカ、韓国と続き、アジア諸国で全体の95.7%を占めていました。
外国人留学生は企業に採用されたあと、在留資格を「留学」から「技術・人文知識・国際業務」に変更するのが一般的です。前述の出入国在留管理庁のデータによると、日本で就職する外国人留学生の86.3%が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得していました。
「技術・人文知識・国際業務」は、専門的で高度な知識・技能を要する職種で働く外国人に付与されます。「技術」「人文知識」「国際業務」と3つの分野が対象になっており、職種の例はエンジニアや通訳、語学教師、マーケティング、貿易関係などさまざまです。いわゆるホワイトカラーに分類される職種が当てはまります。
専門学校を卒業し、専門的な資格や技能を有する仕事に就く外国人留学生は、ほかの在留資格を取得することも。たとえば、介護士なら「介護」、調理師なら「特定技能(外食)」などです。
近年は、在留資格「特定技能」を取得できるよう、在学中に日本語の試験や技能試験を受ける外国人留学生も増えています。在留資格「特定技能」は、人手不足の業界で外国人雇用を促進させるために作られた在留資格で、単純労働が可能です。
これまでは、新規入国者や技能実習から移行する外国人が取得するケースが多かったのですが、滑り止めとして特定技能試験を受けておき、卒業後の選択肢を広げておく外国人留学生も増えてきました。また、卒業後の就職率を上げたい専門学校が、受験を推奨しているケースもあるようです。
飲食店での接客や調理業務に就ける特定技能「外食」は、就労先が見つけやすくなるため特に人気があります。
人手不足で特定技能外国人の雇用を考えている企業も、留学生採用が今後選択肢に入ってくるのではないでしょうか。
参照元: 出入国在留管理庁「令和4年における留学生の日本企業等への就職状況について」 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)「2022(令和4)年度外国人留学生進路状況調査結果」
外国人留学生の場合、すでに日本で数年生活していてある程度社会に適応しているため、雇用管理がしやすいというメリットがあります。また、企業のグローバル競争力が高まるのも魅力です。
外国人留学生は、海外から来日したばかりの外国人よりも日本語のレベルが高い傾向にあるため、採用しやすい人材です。もちろん、学んでいる内容や本人の能力、周囲の環境にも左右されるので全員が日本語が堪能とは限りません。しかし、数年は日本で生活しているため、日常生活に困らない程度の日本語能力を有している人が多くいます。
特に、4年制大学を卒業した外国人留学生は、ビジネスレベルの日本語能力を有していることが多いです。
初めて外国人を採用する企業でも、日本語能力が高い人材であれば負担感が少なくなります。
外国人留学生は日本で数年日本で暮らしているため、生活面のサポートは不要な場合がほとんどです。
海外から外国人を呼び寄せて雇用する場合、住居の確保や銀行口座の開設、日本で暮らすうえでのマナー指導など、あらゆる面でサポートを行う必要があります。一方で、外国人留学生はそれまでの経験から、自分で対応できるケースが多いでしょう。
在留資格を変更する手続きなどは企業のサポートが必要ですが、それでも海外から外国人を採用するより対応工数は少なくなります。
また、日本の文化や慣習に慣れているのも安心です。外国人のなかには、環境になかなか馴染めず悩みを抱えたり仕事に集中できなくなったりする人もいます。外国人留学生の場合はある程度適応した状態なので、スムーズに働ける可能性が高いのです。
外国人留学生は高い語学力と国際感覚を持ち合わせています。海外と取引のある企業や海外進出をする企業では、即戦力として活躍してくれるでしょう。
ただ外国語(母国語)を話せるだけでなく、文化や慣習まで理解したネイティブの社員がいることは、対海外ビジネスを成功させるうえで大きなアドバンテージになります。
関連記事:「外国人の採用面接で失敗しない方法!確認必須の質問&NG質問も【例文】」
ここでは、外国人留学生を新卒採用する際の手続きについて解説します。
外国人留学生が就職する際は、在留資格を「留学」から就労可能な種類に変更する「在留資格変更許可申請」が必要です。就職を目的とした在留資格の変更手続きは原則として本人が行います。
なお、本人が手続きを行えない場合は、申請取次者として認定を受けた行政書士などが書類提出を代わりに行うことも可能です。
申請を外国人留学生が行うとはいえ、企業のサポートは欠かせません。「留学」から就労系の在留資格に変更する際は、多くの書類の提出が求められます。企業が発行・作成する書類も多くあるので、速やかに用意し、外国人留学生に渡しましょう。
在留資格変更許可申請は、混み合う時期だと審査の結果が出るのに時間がかかるため、余裕を持った申請が大切です。
在留資格の各種申請を行う地方出入国在留管理局は、毎年2月~5月に混雑します。理由は、就職や進学、転職などで在留資格を取得・変更する人の申請が集中するためです。加えて、新型コロナウイルスの水際対策が撤廃されてからは申請者の数が急増しており、さらに審査に時間がかかっています。
外国人留学生を新卒採用する場合、4月入社に間に合わせるために11月から書類の準備をはじめ、12月1日の受付開始直後には申請するのが安全です。
混雑が解消されない現状では、申請が少し遅れると入社に間に合わなくなる可能性も十分あります。外国人留学生本人とよくコミュニケーションを取り、スピーディーに申請を行える体制を作っておきましょう。
関連記事:「外国人雇用状況届出を忘れずに!記入例や申請方法を解説【行政書士監修】」
外国人留学生の新卒採用には以下の注意点があります。
一つずつ詳しく見ていきましょう。
外国人留学生を採用する際は、トラブルを防ぐために在留カードや学校での専攻をしっかり確認するのが重要です。
在留カードを確認するのは、不法滞在者や在留資格を偽っている外国人を雇用するのを防ぐ目的があります。そのような外国人を雇用した場合、企業が不法就労助長罪で罰せられ、経営や業務に影響が出ることは避けられません。不法就労助長罪の罰則は、3年以下の懲役または300万以下の罰金もしくはその併科です。
外国人から了承を得たうえで在留カードを預かり、不審な点がないかよく確認します。精巧に作られた偽装カードを目視で見極めるのは困難なので、出入国在留管理庁が提供するアプリケーションを活用するのがおすすめです。
外国人留学生の学歴や専攻内容を確認するのも忘れてはいけません。就労系の在留資格を取得するには、活動内容に相応しい学歴や実務経験が求められます。特に最終学歴が専門学校の場合、専攻内容と職務内容には密接な関連性が必要です。この確認を怠った場合、せっかく採用しても在留資格の申請が不許可になり、働いてもらえないという事態になりかねません。
自社の業務に必要な在留資格および取得に必要な要件を把握したうえで、採用活動を行いましょう。
企業が人材を募集する際に、外国人留学生に限定した求人を出すことは禁止です。
職業安定法第3条には、以下の条文があります。
何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない。但し、労働組合法の規定によつて、雇用主と労働組合との間に締結された労働協約に別段の定のある場合は、この限りでない。
参照元:e-Gov法令検索「職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)」
「日本人以外はお断り」といった求人が禁じられているのと同じように、外国人留学生のみを対象とした求人も出すことはできません。
外国人留学生からの応募を集めたい場合は「日本語能力試験▲レベル以上」「▲語ネイティブレベル」といった、外国人が対象だと分かる条件を挙げて募集すると良いでしょう。
外国人留学生を新卒採用する際、日本人と待遇差を付けるのは禁止です。
労働基準法第3条では、国籍を理由に賃金や労働時間などの労働条件について差別的取扱いをすることを禁じています。
また、「技術・人文知識・国際業務」をはじめ、多くの在留資格は当該外国人が「日本人と同等以上の報酬を受け取ること」が条件の一つです。外国人であることだけを理由に、日本人と待遇差を付けると、在留資格の許可が降りず雇用できなくなります。
外国人留学生が入社する前に、働きやすい環境をしっかり整えておくことが採用を成功させるコツです。
日本で数年暮らしており日本語に問題ないケースが多いとはいえ、社会人として働くのは初めてなので、サポートが必要であることには変わりありません。教育担当やメンターをしっかり立て、悩みや困りごとを早い段階ですくい上げられるようにします。
また、外国人特有の事情への配慮も、外国人留学を採用する企業の重要な責務です。たとえば、宗教上の配慮が必要であれば、できる範囲で対応することが求められます。例えば、イスラム教徒である場合、お祈りができる場所の確保や社員食堂のメニューの追加など、入社までに必要な準備を進めましょう。
参照元: 出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション サポートページ」 e-Gov法令検索「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」
ここでは、外国人留学生の新卒採用をスムーズに進めるための求人の出し方を解説します。日本人学生の採用と同様の方法に加え、外国人向けの手段も検討してみましょう。
外国人留学生の多い大学や専門学校、日本語学校を通して求人を出すと、多くの応募を集めやすくなるでしょう。
外国人留学生は情報収集が難しく、自力で求人を探す難易度が日本人学生よりも高いため、学校求人から就職する人が多くいます。安心感があるので、応募が集まりやすいのがメリットです。
学校を通した新卒採用を成功させるには、就職課とのパイプ作りが必要となります。時間はかかりますが、長期的に見ると安定的に外国人留学生からの応募を集められるため、取り組む価値はあるでしょう。
外国人留学生向けの合同企業説明会にブースを出展するのも、効果的な方法です。
外国人留学生が増加するにつれ、専用の合同企業説明会を開催する求人サイトや大学、自治体が各地で増えてきました。実際に弊社WeXpatsも、地方自治体からの委託を受けて合同企業説明会を開催しています。
合同企業説明会への出展は、多くの外国人留学生に自社をアピールできるうえ、競合他社の動向を知る機会にもなるでしょう。
外国人専用の人材紹介会社や求人サイトを利用するのもおすすめです。
外国人専用の人材紹介会社は、在留資格の知識や外国人雇用に関するノウハウを持っているスタッフがいるため、募集から採用まで進みやすくなります。
外国人向けの求人サイトは、求職者が在留資格別や日本語のレベル別で求人を探せるので、希望とマッチした人材と巡り合える可能性が高いでしょう。
外国人採用に特化した人材紹介サービス、「WeXpats」には外国人留学生の登録も多数あります。企業さまに合った人材をご紹介できるだけでなく、採用後のアフターフォローも万全です。
自社の業務に合った在留資格が分からない場合や、手続きに不安がある場合も、専門の知識を持ったアドバイザーがサポートさせていただきます。
ぜひこちらからお問い合わせください。
外国人留学生の新卒採用で留意すべきなのは、新卒の就活スケジュールをこなせない人が一定数いる点です。
企業がその年ごとにまとめて新卒を一括採用するのも、在学中に一斉に就職活動が始まるのも日本独特の仕組み。海外では通年採用が多く、また卒業後に就活を始める人も少なくありません。日本独特のシステムに適応できず、就職が決まらないまま卒業を迎えてしまう外国人留学生もいます。
卒業後は在留資格を「留学」から「特定活動(継続就職活動)」に変えれば、最長で1年間就職活動をしながら日本に在留することが可能です。
そのため、通常の新卒一括採用だけにこだわらなくても、優秀な外国人留学生を獲得できるチャンスがあります。
実際に弊社「WeXpats」にも、卒業後に就職先を探している外国人の登録が多数あるので、さまざまな採用手法を検討してみましょう。
関連記事:「外国人雇用状況届出を忘れずに!記入例や申請方法を解説【行政書士監修】」
ここまでは、外国人留学生の新卒採用について解説していきました。ここからは、外国人留学生をアルバイトとして雇用したい企業に向けて、統計や注意点を紹介します。
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の「令和5年度私費外国人留学生生活実態調査概要」によると、外国人留学生の65.2%が何らかのアルバイトをしています。
職種別に見ると、39.2%が飲食店、28.4%が営業・販売(コンビニなど)で働いていました。店舗数も多く時間の都合も付けやすいため、外国人留学生に人気のアルバイト先です。
外国人留学生の持つ在留資格「留学」は就労が許可されていないため、アルバイトをするには「資格外活動許可」の申請が必要です。
資格外活動許可は、在留資格で認められていない活動をする外国人が自ら申請をします。もし、資格外許可を得てない外国人留学生を雇用した場合、企業が不法就労助長罪で罰せられるので注意しましょう。
資格外活動許可は、住居地を管轄する地方出入国在留管理局で申請します。また、上陸許可後に在留カードが交付される主要空港では、その場で資格外活動許可の申請・即時取得が可能です。入学後にアルバイトをすることを見越して、あらかじめ空港で申請している外国人留学生も多くいます。
外国人留学生を採用する際は、資格外活動許可の有無を確認し、なければ申請をしてもらうように促しましょう。資格外活動許可の有無は在留カードの裏面で確認でき、「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」とあれば、アルバイトが可能です。
資格外活動許可を得たうえでのアルバイトは、本来の活動に支障がでないよう時間の制限があります。
働ける時間の上限は週に28時間までです。どの曜日から数えても週に28時間になるように調節しなければなりません。また、アルバイトを掛け持ちしている場合も、すべての場所での労働時間を合計して28時間以内に納めます。
夏休みや春休みなど、学校で決められている長期休暇中は、例外として1日8時間、週40時間のアルバイトが可能です。
外国人留学生は、風営法で風俗営業に定められている場所でのアルバイトが禁止されています。風俗営業に直接関わらず、キッチンや清掃などの裏方として従事することもできません。例えば、パチンコ店で清掃業務のアルバイトをすることが禁止されています。
参照元:独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)「令和5年度私費外国人留学生生活実態調査概要」
外国人留学生は日本語が堪能な人が多く、日本の文化や生活様式にも慣れているため、採用しやすい人材といえます。通常の採用手法に加えて、外国人留学生向けの説明会への出展や人材紹介会社を利用すれば、効果的に応募を集めることが可能です。
外国人留学生をアルバイトで採用する際は、「資格外活動許可」の有無を必ず確認します。もしまだ取得していなければ、資格外活動許可を申請してもらい、許可が出てから雇用を開始しましょう。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net