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国内の深刻な人材不足にともない、外国人労働者の受け入れに踏み出す企業は増加傾向にあります。外国人雇用のメリットは人材を確保しやすくなることだけに留まりません。グローバル人材の確保や既存社員のモチベーションアップ、企業の多様化の促進などにも繋がります。
面倒でややこしいのではと思われがちですが、一度理解してしまえばフォーマット通りに進められるので、そう負担はかかりません。不安な場合は専門家のサポートを受けつつ進めるのも良いでしょう。
このコラムでは、外国人労働者を受け入れるメリット・デメリットを紹介します。入社までの流れもまとめているので、ぜひご一読ください。
目次
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日本で働く外国人労働者の数は増加の一途を辿っています。
深刻な少子高齢化が進む日本では、多くの業界で人材不足が発生しており、積極的な外国人採用に乗り出す企業が増えているからです。インバウンド市場や海外市場の拡大に伴い、グローバルな経験を活かして活躍できる人材の価値も今後ますます高まっていくでしょう。日本政府や地方自治体も、企業が外国人材を獲得しやすくなるようさまざまな施策を打ち出しています。
ここでは、厚生労働省の「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ」のデータをもとに、外国人労働者の人数や国籍、在留資格などを解説。現在の状況はもちろん、近年の動向を元にした今後の予測も紹介します。
2023年10月末、日本の外国人労働者の数は調査以来初めて200万人を超え、2,048,675人となりました。
引用:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和5年10月末時点)
外国人労働者の受け入れが本格的に拡大したのは2014年ごろ。東日本大震災の復興工事や東京オリンピックのインフラ整備で人手が必要となったタイミングです。
2020~2022年は新型コロナウイルスの影響で外国人労働者の来日が難しく、新規での受け入れがほぼストップしました。しかし、2023年には過去に類を見ない 225,950人もの外国人労働者が前年から増加(前年比106.9%)しています。
今後も外国人労働者の継続的な増加が期待されていますが、円安やアジア各国の経済発展によって外国人が日本を選ぶ理由が相対的に弱くなっており、早期に頭打ちになるのではないかという意見もあります。
産業の種類によっても受け入れ状況は異なります。 引用:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和5年10月末時点)
外国人労働者が最も多いのは「製造業」です。需要に対して人材が不足しているため、積極的に外国人材が採用されています。
また、前年からの増加率を見ると「建設業」(124.1%)・「医療、福祉」(122.2%)・「情報通信業」(112.4%)・「宿泊業、飲食サービス業」(111.9%)と、2022年から2023年にかけて大きく人数を増やしました。
建設業や介護は特に成り手不足が深刻な業界であり、前述の製造業とあわせて「技能実習制度」や「特定技能制度」を利用して外国人を受け入れている企業が多いのが特徴といえるでしょう。
ITエンジニアが含まれる情報通信業は、日本人からの人気も高い業界ではあるものの、社会の急速なIT化に人材の供給が追いついていない状態です。
宿泊業界や外食業界はコロナ禍の外出自粛で大打撃を受けたため、採用を一時的にストップしていた企業が多く、活気を取り戻した現在は人材獲得が急務となっています。
日本の外国人労働者はベトナム人が最も多く、全体の25.3%を占めています。
引用:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和5年10月末時点)
日本の外国人労働者は長らく中国人が最も多い状態が続いていました。しかし、「中国の奇跡」と呼ばれる中国国内の経済発展により来日する中国籍の労働者が減少。代わりに技能実習生として来日するベトナム人が増加し、2020年以降は数値が逆転したのです。
なお、2023年の前年比はインドネシア(156.0%)・ミャンマー(149.9%)・ネパール(123.2%)がTOP3となっており、弊社の人材紹介事業でも各国出身者と企業のマッチングを数多く実現させてきました。
インドネシアとネパールは、まさに就労先としての日本の人気が高まっている最中で、これから数年間は日本で働く人が増えていくでしょう。インドネシアは世界で最もイスラム教徒が多い国であり、雇用にあたっては文化の理解と配慮が求められますが、それだけに受け入れ態勢をしっかり整えている企業は良好な関係を築きやすい傾向があります。
ミャンマーも日本で働きたい若者の数は多いものの、軍のクーデターにより情勢が不安定です。2024年には徴兵制や渡航制限が始まり、就労のための来日が一時的に難しくなりました。今後の動向が読みにくい国ですが、渡航制限が解除されれば就労希望者が一気に日本に押し寄せる可能性もあり、注目度が高い国といえるでしょう。
在留資格とは、外国人に日本での活動を認める資格のことです。種類によってできる活動が異なります。 引用:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和5年10月末時点)
全体の30%を占める「身分に基づく在留資格」は、その名の通り外国人の身分を示すものであり、日本人と結婚した「日本人の配偶者等」、日本への貢献度によって与えられる「永住者」などが含まれます。就労に関する制限はなく、日本人と同じようにどんな仕事も行えます。
次に多い「専門的・技術的分野の在留資格」は、就労を目的に在留する外国人に与えられ類に応じて行える仕事が決まっています。代表的な在留資格は「技術・人文知識・国際業務」で、本人の学歴や職歴を活かした専門的な職業(通訳・ITエンジニア・マーケター・デザイナーなど)で就労可能です。また、人手不足の業界で採用人数が急増している「特定技能」もこちらに、種含まれます。
「身分に基づく在留資格」で働く人数は前年度比103.5%と緩やかに増えているのに対し、「専門的・技術的分野の在留資格」は124.2%もの増加を見せており、2024年には人数が逆転する可能性が高いです。
参照元 厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」
当然ですが、外国人労働者の人数が増えているのは、雇用する企業もさまざまなメリットを感じているからです。人材不足への対策が主ですが、それ以外にも目を向けるべき点があります。
以下で詳しく説明していきます。
「日本の外国人労働者の受け入れ状況」の解説で述べたように、日本の生産年齢人口(15~64歳)は減少を続けています。
厚生労働省の「一般職業紹介状況について」によると、2023年度の転職市場の有効求人倍率は1.29倍でした。すなわち求職者の数を求人数が大きく上回る売り手市場ということです。
その影響は全ての企業で一定ではなく、都会よりも地方、大企業よりも中小企業に顕著です。人気の業界とそうでない業界でも明暗が分かれています。
こうした状況が生まれた一因には、日本人の価値観の変化があります。IT社会は都会の情報へのアクセスを容易にし、東京をはじめとした都市部への人材流出が激化しました。また、長引く不況により企業の安定感、すなわち知名度や規模を重視する人が増えています。
一方で、外国人労働者の多くは「お金を稼ぎたい」「スキルを磨きたい」といった明確な目的意識を持って日本に来ています。そのため、条件や仕事内容が合っていれば、地方企業や中小企業であっても応募が比較的集まりやすいのです。
人材不足の業界においても「特定技能制度」で来日する外国人の数は2023年10月時点で13万8000人を突破しました。
外国人向けの福利厚生やサポート体制をしっかり整え、差別やハラスメントが起こらないよう社員の国際感覚を高めることで、外国人材の安定的な獲得に成功する企業が日本全国で増えています。
日本に来日する外国人労働者は20代~30代の若年層が多いので、若い人材の獲得に悩んでいる企業にも外国人採用は適しています。
少子高齢化のため、日本の若年層は減少していく一方です。将来の経営を担う若手社員が不足している企業や、現場で活躍する若い力を常に必要としている企業は、国内の人材とあわせて海外出身者にも積極的にアプローチしていくと良いでしょう。
外国人労働者の多くは「日本で目標を叶える」という大きな覚悟の末に、住み慣れた母国を離れることを選択しています。そのような人たちは、自身のキャリアアップやスキルアップに対して前向きです。
目標に近づける仕事内容と正当な評価基準を用意することで、人一倍に活躍してくれるでしょう。
ただし、こうした前向きな姿勢も、ストレスが多い職場ではなかなか発揮されません。文化の違いやコミュニケーションエラーなど、外国人従業員のやる気を下げうる要素については、後述の「外国人労働者を受け入れるデメリットと対策」であらためて解説します。
外国人労働者の語学力は、インバウンド事業や海外進出の大きな武器になります。
日本語から各国語への翻訳(通訳)は、翻訳先の言語のネイティブ話者が行わなければ、どうしても不自然な文章になってしまいます。みなさんも海外のサービスを使用していて、非ネイティブが翻訳した日本語に違和感を覚えた経験があるのではないでしょうか?
そして、翻訳の違和感はそのまま不信感につながります。外国人向けに事業を展開する場合、言語監修を任せられるスタッフが社内にいれば、安心して商品やサービスを世に送り出せるでしょう。
また、母国の文化的背景や価値観に関する知識も魅力的です。翻訳はもちろん、市場調査や接客でも経験や感覚を活かして活躍してくれます。
「人材不足対策」以外のメリットとして、日本の常識に対して新たな視点・価値観で疑問を投げかけてくれることが挙げられます。
日本企業に根強く残る文化の中には、外国人にとっては非効率で意味のないと感じられる作業が少なくありません。
事実として、弊社サービスをご活用いただいている企業の中には「なぜペーパーレス化しないのか?」「業務を効率化する方法はないか?」という外国人社員の意見に真摯に耳を傾けることで、業務効率化に成功した事例もあります。
また、社会規範は常に変化を続けており、数年前までは問題視されなかった行為がハラスメントや差別と認められるようになりました。従業員や経営層が上手く価値観をアップデートできず、大きな問題に発展してしまった企業の不祥事も頻繁に報道されています。
外国人を雇用するのであれば、ハラスメントや差別に対する感度の強化は必須です。外国人社員がもたらす変化をポジティブに捉えることで、企業内に潜むさまざまなリスクが炙り出され、これからの時代にふさわしい国際感覚が磨かれていくでしょう。
外国人労働者の雇用は、企業のダイバーシティの推進に直結します。
人材不足が加速する日本で安定的な経営を行っていくためには、年齢・性別・国籍・宗教・身体的特徴などの属性に左右されず、あらゆる人が活躍できる環境を作っていかなければなりません。
外国人採用もそのひとつ。たとえば、礼拝や食事制限の戒律に従うムスリム(イスラム教徒)の社員を採用することは、企業にとって挑戦かもしれません。しかし、全く異なる文化圏の仲間が自分らしく生き生きと活躍できる環境を作り上げた経験があれば、日本人採用における対象範囲を広げていくことも可能でしょう。
また、日本で働く外国人の国籍割合は年々変化していますが、採用に関するノウハウは国籍に関わらず大部分が共通しています。ベトナム人雇用に力を入れている企業であれば、近年増加しているフィリピン人やネパール人の受け入れもスムーズに行いやすいということです。
当然ですが、外国人の受け入れはメリットばかりではありません。
とはいえ、これから紹介する5項目は「デメリット」というよりも「外国人を雇用するうえで企業が乗り越えるべきハードル」に近いといえます。原因を理解して対策を講じれば恐れることはありませんが、放置したままでは企業も外国人材も互いに悲しい思いをするでしょう。
「問題が生じる原因」「具体的な対策例」もあわせて解説するので、自社で実現可能かどうか検討してください。
外国人に日本での活動を認める「在留資格」にはさまざまな種類があり、その多くは就労可能な業務に制限を設けています。
外国人材を採用する場合は(1)自社の業務で就労可能な在留資格を既に持っている人を募集するか、(2)自社の業務で就労可能な在留資格の取得をサポートする必要があるのです。
関連記事:就労ビザ(在留資格)は難しくない!全19種類のうち外国人採用に関わるビザはどれ?
このうち特に注意すべきは(2)です。留学生を新卒で採用する場合や、海外在住の人材を採用する場合が該当します。在留資格の取得(変更)申請は必ず許可されるわけではないため、内定を出してから就労ビザが不許可になってしまうと、それまでにかけた時間やコストが無駄になりかねません。
(1)の場合でも、外国人が在留資格で認められない業務を行うと、企業が「不法就労助長罪」に問われてしまいます。たとえば、ホテルの通訳スタッフとして「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で採用した人材が客室清掃を行うのはNGです。
初めて外国人を雇用する企業は、必ず外部の専門家を頼ることをおすすめします。
自社の業務で雇用できる在留資格を知りたい場合、まずはビザ業務を専門とする行政書士に相談しましょう。企業の採用活動に関係する在留資格は数種類しかありません。最初に専門家の力を借りて採用フローやチェックリストを構築してしまえば、その後は社内で判断可能な範囲が拡大します。
採用したい在留資格が決まったなら、外国人に特化した人材紹介サービスが活躍します。
たとえば、弊社が運営する「WeXpats Agent」では、幅広い経験を持つ「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「身分系ビザ」の人材を中心にご紹介しています。行政書士事務所と提携しており、採用計画を立てる段階から一貫したサポートが可能です。
外国人採用を行う際に課題になるのが言語の壁です。思いもよらない場面でミスコミュニケーションによる人間関係のトラブルが起きる可能性があります。
日本人同士ならお互いの表情や雰囲気、身振り手振り、前後の発言などから察してもらえる話も、外国人相手だとうまく通じないこともあるでしょう。また、日本人としては特に意識していない言動も、外国人にとっては不快に思うケースもあるのです。
業務上の指示が正確に伝わらないことも問題です。場合によっては一つの誤認が重大なミスにつながりかねません。
上記のようなリスクを最小化するために、外国人を採用した段階で、従業員にコミュニケーションの注意点を周知しておくことをおすすめします。お互いに円滑に業務を進められるよう、分かりやすく簡単な日本語での説明を心掛けるよう指示しましょう。
社内のルールや環境が変わることに対して、既存の社員が不安や不満を感じる場合があるため、なぜ外国人社員の力が必要なのか説明する機会を設けることも大切です。社内の担当者が実施するのが難しい場合は、外部から講師を招く手もあります。
募集をかける時点で日本語能力の基準を設けておくことも重要です。最も一般的な目安であり、受験している外国人の数が多い「日本語能力試験(JLPT)」を基準にする場合、日常的会話ができれば十分ならN3レベル、日本語でのビジネス会話が必要ならN2レベル、ネイティブに近い自然な会話やライティングの能力を求めるならN1レベルで採用すると良いでしょう。
ただし、外国人材が全員JLPTを受験しているわけではないため、資格を重視しすぎても優秀な人材を逃す可能性があります。また、JLPTの試験は筆記とリスニングのみで構成されているため、実際の会話場面でのコミュニケーション能力とは異なる場合がある点にも注意してください。
関連記事:「日本語能力試験(JLPT)とは?N1~N5レベルの難易度と可能な業務」
国籍や業界を押しなべて見れば、外国人労働者の離職率は高い傾向があると言わざるを得ません。
その背景にたしかに国民性の違いは存在します。たとえば、ベトナムでは日本よりも転職活動が簡単で、履歴書1枚と面接1回で即採用というケースが一般的です。「不満があれば転職すればいい」という考え方の人は日本より多いでしょう。
しかし、外国人労働者も転職をしたくて転職するわけではありません。むしろ在留資格による就労制限がある人は、本来ならできるだけ同じ会社で長く働きたいと考えています。
外国人材に長く働いてもらうためには、以下のような対策が可能です。
離職が発生する最大の要因は「そもそも企業に合わない人を採用してしまう」こと。外国人採用に慣れていない企業は、在留資格や日本語能力にばかり気を取られ、スキルや人柄が合っていない人材を採用してしまいがちです。
弊社が運営する「WeXpats Agent」では、外国人材に特有の条件と国籍とは無関係な採用基準を両方満たす人材だけを紹介するため、普段の採用活動と近い感覚で選考を進めていただけます。採用に不安を感じているご担当者様は、リンク先の無料相談をぜひご活用ください。
たとえば、イスラム教徒の女性は肌や髪を隠すためにヒジャブと呼ばれる布を身に着けるべきとされています。宗教はその人のアイデンティティと密接に関わるもの。社内の服装規定にそぐわないからといって、着用を禁止することは本来できません。
ある介護施設では、インドネシアの人材を採用するうえで、施設のロゴが入ったオリジナルのヒジャブを作成して配布しました。自由なヒジャブの着用が規則違反にあたるのであれば、ヒジャブも制服にしてしまえばいいという柔軟な発想です。これにより一体感や帰属意識を高めることに成功しています。
文化の壁は離職の原因になりえますが、その壁を乗り越えられた企業はむしろ外国人従業員に長く働いてもらいやすくなるのです。
外国人労働者の受け入れ時に在留資格の取得や変更、または海外からの引っ越しなどが必要な場合、すぐに雇用することはできません。そのため、スピーディーに人材を確保するのは難しいといえます。
また、外国人の採用が決まったら、受け入れるための環境を整備しなくてはなりません。準備をしないまま外国人を雇用すると、職場に適応できずに早期退職やトラブルにつながる可能性があります。
在留資格の手続きや職場の環境整備を間に合わせるためには、外国人雇用をすると決まった時点で動き出すのが重要です。人材を選考する前からある程度準備を進めておけば、受け入れまでの時間を短縮できるでしょう。
参照元 厚生労働省「外国人従業員とのコミュニケーションのコツ(コミュコツ)」
外国人労働者を受け入れる基本の流れは、以下のとおりです。
以下で具体的に説明します。
まずは、自社で雇用可能な在留資格の種類を確認しましょう。在留資格は全29種類ありますが、そのうち一般企業で採用する可能性がある在留資格はわずか数種類しかありません。
一般企業のオフィスで働く職種で外国人を雇用する場合、多くは「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が該当します。具体的には、ITエンジニア、デザイナー、マーケター、営業職、通訳者などの専門的な知識を必要とする仕事です。清掃や調理のような単純作業に該当する業務は行えません。
単純労働を含めたさまざまな業務に従事できるのが「特定技能」の在留資格。ただし、就労が認められるのは以下の業種に限られます。
また、2024年以降、「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野も追加されます。
特定技能は1号と2号に分かれており、1号では最長5年、2号に移行すれば事実上無期限で日本に在留可能です。
「技能実習」の対象職種に当てはまる業種では、技能実習生を受け入れることが可能です。
技能実習生は、最長で5年間の受け入れが可能で、期間満了後も前述した特定技能の在留資格に移行すれば引き続き雇用できます。
なお、2027年ごろには技能実習制度は廃止され、前述した特定技能への移行を前提とした「育成就労制度」に変わることが決定しています。
専門的な資格や特別な経験が必要な職種は、その仕事に特化した在留資格を取得する必要があります。たとえば、介護福祉士であれば「介護」、学校教師であれば「教育」などです。
「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」は、身分に基づいて許可される在留資格です。業務内容に制限が無いため、日本人と近い感覚で就労できます。
「留学」のように就労が禁止されている在留資格であっても、出入国在留管理官署で「資格外活動許可」を得ていれば、決められた範囲内(原則、週28時間以内)でアルバイトとして働けます。
外国人雇用では、募集方法も重要になってきます。外国人に合った方法で募集をかけるようにしましょう。
自社で採用ページを作る際は、やさしい日本語や英語を用いた外国人向けページを作るのが効果的です。ただ翻訳して言語を変えるだけでなく、内容も外国人労働者向けにしましょう。海外の求人では業務内容を事細かに記載するのが一般的です。日本の募集要項の書き方では、どのような職場なのかイメージできず、外国人が応募をためらってしてしまうことがあります。
外国人労働者は外国人専用の求人サイトを活用しています。多言語に変換できたり日本語レベルごとに求人を探せたりするので、使い勝手が良いためです。ただし、通常の求人サイトをチェックしている人も多いので、両方に求人を出すとより効果的に応募を集められるでしょう。
新卒採用では、大学や専門学校、日本語学校といった教育機関に求人を出すのが基本です。外国人の場合は特に、情報が得やすく安心して応募できる学校経由の求人から興味のある企業を探していく傾向があります。
自社に適した人材の紹介を受けたい場合は、「人材紹介会社(転職エージェント)」を使うのも良い方法です。仕事を探している人と人材を求めている人を繋ぐプロの手を借りれば、企業のみで採用活動を行うよりもスムーズに応募を集められます。
外国人から応募が来たら、履歴書や職務経歴書などで自社で就労できる人材なのかを確認しましょう。特に重要なのは、自社で就労可能な在留資格を持っているか、もしくはこれから取得できるかです。
たとえば「技術・人文知識・国際業務」を新たに取得する場合、大学もしくは日本の専門学校を卒業しているか、10年(国際業務の場合は3年)以上の実務経験が必要です。
これらの点をクリアしているか確認してから、志望動機や自己PRを見るようにしましょう。
採用選考の面接では、まず実際の日本語能力に注目します。日本語の試験の結果や学歴だけでは、コミュニケーション能力は判断できません。日本で働く理由や日本で働きたい期間といった必要な質問をしつつ、どの程度スムーズに受け答えができているか確認しましょう。
なお、海外と日本では履歴書の書き方が異なります。海外では自分をアピールする機会と捉えられているため、本人が経歴を誇張して書いている可能性もゼロではありません。事実の確認もあわせて行いましょう。
外国人と雇用契約を結ぶ前に在留カードの確認を必ず行いましょう。コピーではなく、現物を触って確認します。書体やホログラムのチェックも重要です。偽装のカードだった場合、雇用してしまうと企業が不法就労助長罪に問われます。刑罰の内容は3年以下の懲役か300万円以下の罰金もしくはその両方です。
問題がないと確認できてから、雇用契約を結びましょう。
本人が内容を理解していない状態で雇用契約を結ぶと無効になる可能性があります。そのため、雇用契約書や労働条件通知書を作成する際は、できれば翻訳文を添えることが望ましいでしょう。
厚生労働省は「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」を公開しています。ぜひ活用してください。
必要に応じて外国人の在留資格の手続きを行います。申請の種類は以下の3つのいずれかです。
在留資格の新規取得:在留資格認定証明書交付申請(海外から呼び寄せる場合)
在留資格の変更:在留資格変更許可申請(留学生などを採用する場合)
在留期限の更新:在留期間更新許可申請(もともと就労ビザを持っている人の更新手続)
外国人が海外にいる場合は、雇用する企業や依頼を受けた申請取次者などが手続きを行います。本人が日本にいる場合、自ら手続きをしてもらうのが一般的ですが、企業が用意する書類も存在します。
関連記事:「外国人を雇用するには?入社前・入社後の手続きと必要書類」
採用が決まったら、入社までに受け入れ体制を整えましょう。
初めて外国人を雇用する場合、コミュニケーションエラーやハラスメントの対策として、既存の社員向けに研修を行うのが理想です。また、業務上必要なマニュアルも採用する外国人の日本語レベルに合わせて作成し直す必要があります。
さらに、海外から招へいした外国人労働者に長く安心して働いてもらうには、業務面のサポートだけでは不十分です。たとえば、日本語に不慣れな状態で住居や各種インフラの契約を行うのは非常に難易度が高いといえます。安心して仕事を始められる環境を企業が率先して作りましょう。
外国人雇用特有の手続きとして、入社後の「外国人雇用状況の届け出」があります。外国人を採用した企業は、ハローワークを通して厚生労働省に国籍や在留資格などの情報を届け出なくてはなりません。
外国人が雇用保険に加入する際は「雇用保険被保険者資格取得届」を使って届け出をします。加入しない場合は「外国人雇用状況届出書」の提出が必要です。
書類は厚生労働省のWebサイトからダウンロードできます。また、電子申請も可能です。
関連記事:「外国人雇用状況届出を忘れずに!記入例や申請方法を解説【行政書士監修】」
参照元 厚生労働省「外国人労働者向けモデル労働条件通知書(入力可能)」
特定技能の職種に該当する企業は、育成就労制度の創設により今後さらに外国人労働者を受け入れやすくなるでしょう。
技能実習制度の代わりとなる育成就労制度は特定技能制度への移行を前提としており、職種も特定技能の対象職種にあわせて編成される見込みです。育成就労制度では、3年の育成期間のうちに外国人労働者の技能や知識、日本語能力を、特定技能1号の水準まで持っていくことを目指します。
特定技能1号では5年、2号では事実上無期限で外国人労働者を雇用可能です。育成就労制度で外国人労働者を受け入れていずれ在留資格を特定技能に変更すれば、長く働いてもらえます。また、単純労働への従事も可能なので、企業としても業務を任せやすいでしょう。
技能実習制度では5年の研修期間を終えたら帰国せざるを得なかった人材も多くいました。しかし、育成就労制度がスタートすれば、そのまま特定技能に移行し、日本に留まる人材が増えると考えられています。
外国人労働者の受け入れを考えている企業は、特定技能制度の利用も視野に入れてみてください。
関連記事:「特定技能の14業種を解説!法務省の資料をもとに受け入れ状況も紹介」
外国人労働者の受け入れは、企業にとって多くのメリットがあります。入社手続きやコミュニケーションの取り方で注意点すべき点はありますが、多様な人材が働ける環境の構築は、日本人雇用の幅を広げることにもつながります。綿密な受け入れ準備でリスクを最小化し、外国人雇用を成功させましょう!
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net