人手不足のホテル・旅館で外国人雇用が進む理由は?可能な業務や採用方法

濵川恭一
濵川恭一
人手不足のホテル・旅館で外国人雇用が進む理由は?可能な業務や採用方法

コロナ禍で一時的に利用客が減少した宿泊業界は、インバウンド需要の拡大により、瞬く間に活気を取り戻しました。しかし、急激な需要の変化は深刻な人手不足を生み、人材確保や多言語対応を目的として多くの宿泊施設が外国人の雇用を開始しています。

本記事では、ホテルや旅館で発生している人手不足問題の現状をおさらいした後、その対策として多くのホテルや旅館が外国人雇用を選んでいる理由を解説します。

外国人を雇用する流れや在留資格、任せられる業務も合わせて紹介するので、外国人雇用をお考えの方はぜひご一読ください。

目次

  1. 宿泊業界(ホテル・旅館)における人手不足の現状と原因
  2. なぜホテルや旅館には人が集まらないのか?
  3. 人手不足対策として外国人雇用が進む理由
  4. 外国人を雇用するには? 8つのステップ
  5. 宿泊業界で雇用できる在留資格と業務内容
  6. 宿泊業界で外国人を雇用する際の注意点
  7. まとめ

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宿泊業界(ホテル・旅館)における人手不足の現状と原因

少子高齢化により生産年齢人口(15歳~64歳の働き手世代)が減少しており、日本では多くの業界で労働者が足りていません。

なかでも宿泊業界の人手不足は深刻であり、帝国データバンクの2024年の調査によると、対象となったホテルや旅館のうち71.1%が人手不足を訴えています。

この数値は、同じく働き手が足りていないとされる「医療・福祉・保健衛生」「飲食業」「建設」を上回るほどで、いまや宿泊業は日本で最も機能不全が顕在化している業種のひとつとなっています。

業界関係者の方には説明するまでもありませんが、現在の危機的状況を引き起こした最大の要因はコロナ禍とインバウンド需要の急増です。

コロナ禍に宿泊業の需要が落ち込んだ

コロナ禍に宿泊業の需要が落ち込んだの画像
引用:経済産業省「コロナ禍における観光関連産業の動きを見る

新型コロナウイルス感染症が流行した2019年、渡航制限や外出自粛の影響により、宿泊業の産業活動指数は110以上から20未満に急降下しました。産業活動指数とは、経済産業省が発表している各業界の景気動向を捉えるための指数であり、直滑降に近いグラフの角度が宿泊業が受けた打撃の大きさを物語っています。

多くのホテルや旅館は既存の従業員の生活を守ることに力を注ぎ、新規採用はストップすることとなりました。

円安によるインバウンド客の急増

こうした“人手過多”から人手不足に転じた背景には、円安によるインバウンド需要の急激な拡大が存在します。

2023年、日本全国の外国人宿泊者数は約1億1775万人に達しました。前年の外国人宿泊者数は約1650万人ですから、たった1年で約7倍に増えたという異例の事態です。

コロナ禍で流出した人材を取り戻せないまま利用客が急増したことで、急激な労働者不足が発生しました。

そもそも外国人観光客が増加する以前から、外出自粛を終えた日本人のリベンジ旅行にてんやわんやだったホテルや旅館も多く、そこにインバウンド客の増加がさらなる負担をかけた形です。

なぜホテルや旅館には人が集まらないのか?

ここまで説明したように、宿泊業界が人手不足に陥っている理由は、観光需要の急激な増減という外的要因が大きいといえます。

しかし、求人に対して応募が集まらない問題はまた別の話。宿泊業界の人気を落としている内的要因、すなわち労働環境への悪いイメージが存在します。

賃金が低い

賃金が低いの画像
引用:厚生労働省「令和5年 賃金構造基本統計調査

令和5年 賃金構造基本統計調査」によると、「宿泊業・飲食サービス業」で働く正社員の平均年収は284.1万円と全業種の中で最低です。

インバウンド需要の拡大により売上増が見込まれる現在、従業員の年収の改善は急務といえるでしょう。

シフトが不規則

ホテルや旅館などの宿泊業界は、労働時間が非常に変則的です。長時間労働に加え、夜勤や早朝勤務も存在するため、従業員はシフトに応じて柔軟に働く必要があります。

シフトが不規則の画像
引用:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査

また、労働時間そのものも他業界と比較して長く、「令和5年就労条件総合調査」では「宿泊業、飲食サービス業」の所定労働時間が最も多い結果となりました。

休みが少ない

休みが少ないの画像
 引用:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査

ホテルや旅館での仕事には、土日祝日に休みを取りにくい業界特有の事情があります。ゴールデンウィークやお盆などの大型連休と繁忙期が重なることもあり、自由に休みを取りにくいイメージは否めません。

事実、「宿泊業・飲食サービス業」の有給休暇の平均取得日数は年間6.7日であり、調査全体の平均である10.9日を大きく下回っています。

関連記事「人手不足の原因と6つの解決策|深刻な業界で外国人雇用が進む理由

人手不足対策として外国人雇用が進む理由 

人手不足対策として外国人雇用が進む理由の画像

人手不足の宿泊業界で注目を集めているのが外国人スタッフです

少子高齢化が進む日本とは逆に、東南アジアや中央アジアでは人口が増加しており、高い目的意識を持った若手人材が次々と日本に押し寄せています。言語スキルや国際感覚を活かしてインバウンド需要に対応できるスタッフとしても活躍が期待できるでしょう。

2023年10月時点で、宿泊業で働く外国人の数は3万2403人(前年比132.9%)、外国人を雇用している事業所数は5184所(前年比110.6%)。日本政府はさまざまな制度で外国人雇用を後押ししており、宿泊業界で働く外国人の数は増えていく見込みです。

また、フロント業務ははデジタル技術による業務効率化と相性が良く、知らず知らずのうちに外国人が働きやすい環境が整っている事業所もあります。たとえばセルフチェックインを導入している宿泊施設は、フロント業務に必要な日本語能力のハードルが下がり、外国人が活躍しやすいでしょう。

ここからは、人手不足対策として外国人雇用が進む理由を詳しく見ていきます。

地方のホテルや旅館も若手人材を確保しやすい

仕事を目的に来日する外国人のボリューム層は20代~30代であり、「母国を離れて日本で働く」という大きな覚悟と選択の末に日本に来ている若者が多くを占めています。

目的意識が明確であり、「世界的に有名な日本のホスピタリティを学びたい」というのも外国人労働者が来日する主要な理由のひとつです。募集ポジションと本人の理想のキャリアが合致する人材を雇用することで、人一倍に活躍してくれるでしょう

また、地方のホテルや旅館でも人材を獲得しやすいという点も日本人とは異なります。

理由の一つは、後述する「特定技能制度」「技能実習制度」を活用すれば、海外から直接人材を雇用できること。これらの制度で日本にやってくる外国人材は、出稼ぎや社会経験を目的としている人がほとんどで、都会と地方を区別せずに入社してくれる傾向があります。

そして理由がもう一つ。東南アジアの出身者と話すと「東京は怖い」「日本の田舎は地元と似ていて落ち着く」という話をたまに聞きます。日本の若者の都会志向が年々高くなっている一方で、地方に住むことをポジティブに捉えている人は海外にはまだまだ多いのです。

雇用のハードルが下がっている

「外国人雇用」について、覚えなければならない知識が多く、参入ハードルが高いというイメージを抱いているかもしれません。

現在は外国人に特化した人材紹介サービスや行政書士事務所が増え、外部機関に頼りやすい状況ができあがっています。

また、たしかに「外国人雇用」全般に関連する制度や法令は複雑ですが、「ホテルや旅館の外国人雇用」に限定すれば、覚えるべき知識はぐっと少なくなります。最初に専門家を頼って一通りの手続きを経験すれば、二人目の採用からはスムーズに行えるでしょう。

弊社レバレジーズが運営するWeXpats Agentには、外国人雇用労務士の資格を持つスタッフが5人(2024年4月時点)所属しているほか、行政書士と提携した法律面のサポートもご提供しています。まずは無料のご相談からお受けしているので、お気軽にお問い合わせください。

関連記事:「外国人特化の人材紹介会社を比較!日本人採用と同じ選び方はNG

DXのような他の人材不足対策と相性が良い

近年、セルフチェックインやチャットボットのようなデジタル技術を導入することで、業務効率化と顧客満足度向上を試みる宿泊施設が増えてきました。いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ばれる施策です。

人手不足対策として人気のDXですが、実は外国人雇用を始める上でも有利に働くのです

前述のセルフチェックインやチャットボットは、日本語でのコミュニケーションの一部を代替し、外国人従業員の負担を低減します。また、各種システムやマニュアルが電子化されている場合、難しい日本語が登場しても機械翻訳に頼ることができるため、教える側・教わる側ともに研修の負担が減るでしょう。

また、労働環境の改善に取り組んでいる企業も、日本人以上に外国人から人気が高まる場合があります。

たとえば、有給の取りやすさを気にする外国人は少なくありません。外国人が母国に帰省しようとすると、移動だけで丸二日以上かかってしまうことがざらにあります。家族との絆を大切にする倫理規範が根付いている国も多く、一時帰国のしやすさはアピールポイントになるでしょう。

訪日外国人に対応可能なグローバルな人材を採用できる

インバウンド需要の拡大により、多国語を話せるグローバル人材の活躍機会が広がりました。「人手不足対策」だけでなく、英語や中国語を話せるスタッフの確保を目的として外国人採用に乗り出す企業も増えています。

フロントやレストランでの接客対応はもちろん、マーケティングや営業といった事務系の職種でも採用が盛んです。「今月は春節があるから中国や台湾からの観光客が増えるかもしれない」「○号室はイスラム教徒のお客様だから礼拝用のマットをご用意しよう」など、各国の文化的背景に基づく提案を行うことで、ホスピタリティの質を向上させてくれる可能性があります。

また、外国人向けのSNS発信業務を任せられる点もマーケティング上の大きなメリットであり、中には投稿への反響に応じた「SNS手当金」を出している企業もあるほどです。

関連記事:「外国人労働者を受け入れるメリット・デメリット|雇用の流れも解説

外国人を雇用するには? 8つのステップ

外国人を雇用するには? 8つのステップの画像

外国人雇用の流れは、大きく8つのステップに分かれます。

  1. 自社で採用可能な在留資格(後述)を把握する
  2. 人材紹介や求人サイト等で募集をかける
  3. 書類選考を行う
  4. 面接を行う
  5. 雇用契約を締結する
  6. 在留資格に関する手続きを行う
  7. 受け入れ態勢を整える
  8. 雇用を開始する

上記の8ステップについては「【行政書士監修】外国人採用まるわかりガイド|注意点・メリット・募集・雇用の流れ」の記事で体系的に解説しているので、あわせてご確認ください。

以降は、ホテルや旅館で外国人を雇用する場合に知っておくことに絞って解説していきます。

宿泊業界で雇用できる在留資格と業務内容

在留資格」とは、外国人が日本で活動するために必要な資格のこと。就労可能な在留資格とそうでない在留資格があり、前者の中でも種類に応じて行える業務が異なります。

外国人を雇用するためには、「任せたい業務を行える在留資格」を最初に把握する必要があります。宿泊業界における業務と在留資格の対応表は以下の通りです。

宿泊業界で雇用できる在留資格と業務内容の画像

技術・人文知識・国際業務

「技術・人文知識・国際業務」は通称「技人国(ギジンコク)」と呼ばれ、これまでのキャリアや学歴と関連性のある業務に従事可能な在留資格です。

宿泊業においては、フロントスタッフや企画・広報・営業として従事できます。しかし、単純労働は認められていないため、清掃やベッドメイキングなどの業務は許可されません

また、小規模なホテルや旅館の場合、フロントや企画広報などの「専従者」として、十分な仕事量があるのかという観点でも審査がされます。例えば、フロントに従事することは間違いないが、その割合はごく一部であり、仕事の大半は清掃やベッドメイキングといった場合、技人国は許可されません。

技術・人文知識・国際業務の外国人を雇用するメリットは、何よりもその受け入れやすさです

人材紹介サービスを活用すれば、日本人の採用と同じ感覚で求職者を探せるほか、留学生が多い大学や専門学校に求人を出すこともできます。また、次に説明する「特定技能」の在留資格とは異なり、外国人に対して何らかの支援義務が発生することもありません。

業種別の単純労働の例の画像

技術・人文知識・国際業務の外国人を採用する主な方法

関連記事:「「技術・人文知識・国際業務」で採用可能な職種一覧は? 申請方法や不許可事例も紹介

特定技能「宿泊」「外食」「ビルクリーニング」

特定技能は日本の人手不足解消を目的に作られた在留資格です。

宿泊」「外食」「ビルクリーニング」といった12分野に分かれており、外国人がこの在留資格を取得するためには、分野毎に設けられた技能試験に合格する必要があります。

そのため、企業にとっては業務内容に関して最初からある程度の知識を有した人材を雇用できる点がメリットです。

また、「技術・人文知識・国際業務」では行えない単純業務への従事が可能であり、清掃や調理のスタッフが不足している場合は基本的に特定技能を検討することになるでしょう。

ただし、特定技能外国人を受け入れる企業は、外国人に対して支援を行うことが法律で義務付けられています。また、特定技能「ビルクリーニング」で外国人を雇用する場合、「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」の登録が必要となります。

特定技能の外国人を採用する主な方法

宿泊業における特定技能受け入れについては、こちらの関連記事で詳しく解説しています。

身分に基づく在留資格(「永住者」等)

在留資格「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4種類は、外国人の身分に基づいて与えられる在留資格であり、就労できる業務内容に制限がありません。

身分に基づく在留資格の外国人を採用する主な方法

その他の在留資格

上記以外にもホテルで雇用できる在留資格はあります。

特定活動46号

「特定活動46号」は外国人留学生の卒業後の進路を拡大するために作られた在留資格であり、接客や調理といった単純労働を行うことが可能です。ただし、円滑な日本語での会話が必要な業務に限ります。ベッドメイキングのような、ほとんど日本語を使わなくてもできる仕事は該当しません。留学生の新卒採用を検討している場合は頭に留めておきましょう。円滑な日本語についての判断基準については、法務省からガイドラインが出ています。

技能実習(育成就労)

技能実習」は、日本の技術や技能を学ぶために来日した外国人に付与される在留資格です。技能実習生は企業と雇用契約を結び、報酬を受け取りながら実習を行います。

ホテルや旅館といった宿泊施設でも技能実習生の受け入れは行われており、フロント業務を中心とした様々な業務に携わってもらうことが可能です。ただし、在留期間には制限があり、期間修了後も継続して雇用するためには「特定技能」への切り替えが必要となります。

なお、現行の技能実習制度は2027年に廃止され、新たに「育成就労制度」に移行します。

技能

「技能」は外国人シェフやパティシエが取得する在留資格です。

ただし「技能」を取得できるのは、その外国人の母国料理を専門とする場合に限られます。また、料理人としての長期の実務経験が必要であり、その内容も「職人的な技能を要する業務」でなければなりません。

留学生をアルバイト雇用することも可能

留学生の在留資格「留学」では就労が禁止されていますが、一定の条件を満たせばアルバイトでの雇用が可能です。

留学生がアルバイトとして働くためには、本人が「資格外活動許可」の申請を行わなければなりません。また、労働時間は週28時間までと決まっています。なお、長期休暇期間は1日8時間、合計週40時間までのアルバイトが可能となるため、夏休みや冬休みのような繁忙期にも活躍が期待できます。

1年以内の短期間でよければワーキングホリデーなども活用できる

宿泊業界で雇用できる在留資格には、上記の他にも、ワーキングホリデー(特定活動5号)、海外大学生のインターンシップ(特定活動9号)があります。

いずれも、原則として1年以内限定となりますが、本採用前のお試し採用や、繁忙期だけ働いてほしいといった場合に活用できます。

宿泊業界で外国人を雇用する際の注意点

外国人採用では職務経歴書や面接で判断すべき事項が多く、要点を把握して選考に臨まなければ「採用してみたら想像していた人物と違った」「スキル不足で業務を任せられなかった」のようなギャップが生じかねません。

また、そうした落差を感じるのは外国人側も同じです。入社した外国人に働きにくさを感じさせず、高いモチベーションで働いてもらうために、受け入れ環境をしっかり整えましょう。

以下は具体的な注意点を紹介していきます。

【選考時】実際の日本語スキルを確認する

外国人の日本語能力を判断する指標としては、日本語能力試験(JLPT)の結果が最も一般的です。

日本語能力試験(JLPT)の目安の画像

関連記事:「日本語能力試験(JLPT)とは?N1~N5レベルの難易度と可能な業務

JLPTは、最も難しいN1レベルから初学者向けのN5レベルまで5段階に分かれており、業務内容によっておおよその採用基準が存在します。

たとえば、フロント業務や接客業務は日本人の宿泊客と接する機会も多く、N3~N2程度の日本語能力が必要です

ただし、セルフチェックインや自動精算機によりフロント業務を効率化しているホテルであれば、求められる日本語能力の基準は下がります。逆に最上級の接客が求められるラグジュアリーホテルであれば、丁寧な敬語表現まで習得しているN1以上の人材が望ましいでしょう。

また、N4はもちろんN3やN2に合格していても漢字が苦手な人は多いので、接客時にうっかり宿泊客の名前を読み間違えないような工夫が必要です。

他には、日本語で文書を作成する機会が多いマーケティング職や営業職はN1~N2、簡単な指示を理解できれば業務可能なベッドメイキングはN4を目安に採用している企業が多いといえます。

しかし、あくまで目安は目安。実際の日本語能力は面接でしっかり確認してください。

JLPTの試験内容は全て選択問題であり、「書く力」や「話す力」までは正確に測定できません。また、合格ラインがそれほど高くなく、半分近く正解できれば合格できるため、同じレベルの合格者の間でも知識量に差がある点にも注意が必要です。

そもそも全ての外国人がJLPTを受けているわけではないため、経験や人柄にピンとくる人がいたら、できるだけ面接で話してみることをおすすめします。それが難しい場合は、外国人に特化した人材紹介サービスを活用することで、日本語能力の見極めを外部に委託でき、採用にかかる工数を削減可能です。

【選考時】所持している在留カードが本物か確認する

外国人を雇用する際は、身元や在留資格を確かめるために、外国人が携帯している在留カードを確認します。ただし、近年は在留カードの偽造が増えているため、注意が必要です。

偽装された在留カードは、本物とは手触りが違います。本物の在留カードは、表面がつるつるしていますが、偽造した在留カードカードはざらざらとした触感で、印字の重なりや書体の違和感が見つかる場合も。とはいえ、初見で偽物と見抜くのは難しいでしょう。

出入国管理庁は対策として「在留カード等読取アプリケーション」を配布しており、ICチップの情報を照会することで偽造の有無を確かめられます。

なお、選考に不要な個人情報の収集を避けるため、なるべく面接時に在留カードの提出を求めるべきではないとされています。しかし、面接時以外に在留カードを確認できるタイミングが無い場合も多いでしょう。その場合は、同意を取ったうえで面接の前後に在留カードを確認しても問題ありません。

採用後のトラブルを避けるためにも、在留カードが本物かどうかは必ず確認しておきましょう。

【入社後】雇用する外国人に不法就労をさせない

ホテルの業務は多岐にわたるため、ついさまざまな業務を任せてしまいがちです。しかし、在留資格ごとに可能な業務は決まっているため、範囲外の業務を行わせた場合は「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。「知らなかった」では済まされないため、雇用する側も注意が必要です。

たとえば、ベッドメイキングの人手が足りないからといって、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で雇用している外国人が清掃のような単純労働を行うわけにはいきません。意図せぬトラブルが発生しないよう、外国人が所属する部門の上司や同僚にも周知を徹底しましょう。

【入社後】外国人の雇用条件は日本人と同等以上にする

外国人労働者の給料や待遇には、同じ条件で働く日本人と差を付けてはいけません。

就労にまつわる在留資格の大半では、「日本人と同等以上の報酬を受け取ること」が取得条件の一つに定められています。そのため、正当な理由なく給料を日本人よりも低く設定した場合、甚大なトラブルに発展する可能性も。労働基準法でも、国籍で報酬を区別することは禁じられています。福利厚生や勤務時間も同様です。

【入社後】外国人が働きやすいホテル・旅館に変えていく

今まさに外国人を雇用したい企業ほど人手不足に困っており、多様性の促進に取り組むのは難易度が高いと感じるかもしれません。しかし、外国人を「日本人の代替人材」と捉えて採用することは、雇用主にとっても外国人スタッフにとっても不幸な結果を生む元凶です。

言語の違いによるコミュニケーションエラーや、文化の違いによるすれ違いはどうしても発生します。そんな時、「ここは日本だから」と一方的に都合を押し付けてしまっては、せっかく雇用した外国人スタッフが離れる原因になります。そのようなホテルや旅館が増えると、業界全体の人手不足もますます深刻になりかねません。

長期的に有用な手段としては「常に外国人のリーダーがいるサイクルを作る」ことが理想的です。

まずは将来のリーダーになり得るモチベーションの高い外国人材を採用し、本人にも「何年以内にあなたをリーダーにしたい」と伝えます。そのために必要なスキルセットや、リーダーになった場合の昇給幅なども併せて提示してください。

そして、そのスタッフが無事にリーダーになったら、後輩の外国人スタッフの教育係として活躍してもらいましょう。リーダーが帰国する前に新しいリーダーを育てるサイクルが完成することで、外国人スタッフの間で目標が共有され、離職率の低下や帰属意識の向上が期待できます。

また、社内に外国人スタッフのコミュニティができることで、会社への不満を言いやすくなり、日本人の視点では気付きにくい労働環境の改善点を把握できるメリットもあります。もちろん不満をそのままにしてしまっては離職リスクにつながりますので、リーダーと相談しながら改善に取り組みましょう。

まとめ

ホテル・旅館などの宿泊業界では、「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「永住者」など、さまざまな在留資格を持つ外国人を雇用できます。ただし、ほとんどの外国人は日本人と違って就労制限があるので、雇用形態や業務内容に注意しなければなりません。

外国人労働者は、人手不足が深刻な宿泊業において貴重な人材です。外国人雇用のメリットや注意点を把握し、外国人が働きやすい環境を整えたうえで採用を行いましょう。

はじめての外国人雇用で不安を抱えている企業の採用担当者様は、「WeXpats Agent」にぜひご相談ください。人材募集や雇用手続き等、専門のアドバイザーが丁寧にサポートいたします。 

濵川恭一

監修:濵川恭一

外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net