送り出し機関とは?不要な場合もある?失敗しない選び方【技能実習・特定技能】

濵川恭一
濵川恭一
送り出し機関とは?不要な場合もある?失敗しない選び方【技能実習・特定技能】

送り出し機関は、企業の要望に 合った技能実習生や特定技能外国人の候補を集め、必要な教育や手続きを行う重要な役割を持っています。しかし、なかには外国人に法外な手数料を請求したり監理団体にマージンを渡したりする機関があるのも事実です。責務を果たしている送り出し機関と繋がることが、外国人採用を成功させる秘訣といえるでしょう。

この記事は、優良な送り出し機関の選び方に不安を感じている採用担当者さまに向けて執筆しました。見分けるポイントをまとめているので、ぜひご一読ください。

目次

  1. 悪質な送り出し機関に注意!
  2. 技能実習制度における送り出し機関とは
  3. 在留資格「特定活動46号」で働ける場所と可能な業務
  4. 良い送り出し機関はどこで判断する?見分けるポイント
  5. 日本企業が悪質な送り出し機関を利用するとどうなる?
  6. 送り出し機関の二国間取り決めとは
  7. 送り出し機関に払う費用について
  8. まとめ

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悪質な送り出し機関に注意!

外国人採用に関する報道で、悪質な送り出し機関の存在を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

送り出し機関とは、日本で働きたい外国人を集めて日本企業に斡旋する機関のことです。基本的には技能実習制度特定技能制度を利用して外国人を雇用するときに関わります。

多くの送り出し機関は適切に役割を果たしていますが、なかには外国人から多額の金銭を徴収したり自分達の利益だけを優先させたりする機関があるのも事実です。そのような送り出し機関を利用すると、さまざまなトラブルが起きやすくなるでしょう。

外国人の人権を尊重しつつ雇用を成功させるためには、悪質な送り出し機関と関わらないようにする必要があります。

技能実習制度における送り出し機関とは

技能実習制度における送り出し機関は、以下のように定義されています。

外国の送出機関は、技能実習生が国籍又は住所を有する国又は地域の所属機関や団体監理型技能実習生になろうとする者からの団体監理型技能実習に係る求職の申込みを本邦の監理団体に取り次ぐ者をいいます。

参照元:OTIT外国人技能実習機構「制度説明

技能実習制度における送り出し機関は、日本での技能実習を希望する外国人を現地で集め、日本の技能実習監理団体に取り次ぎます。監理団体とは、日本で働きたい技能実習生と技能実習生を受け入れたい企業をサポートする非営利団体のことです。

日本企業が技能実習生を受け入れる際、基本的には監理団体を通す「団体監理型」方式を選択します。団体監理型では、監理団体が送り出し機関を選んでやり取りを行うため、実際のところ企業に選ぶ権限はありません。

つまり、「優良な送り出し機関と契約している監理団体」を選ぶことが重要です。

技能実習制度で送り出し機関が行う業務

技能実習制度において、送り出し機関は以下の役割を担います。

  • 企業に合った技能実習生の募集・選定をする

  • 技能実習生を日本に送り出す際の手続きをする

  • 入国前に必要な教育を行う

  • 技能実習生をサポートする

  • 技能実習生の帰国を支援する

技能実習を開始するときはもちろん、技能実習中や帰国時にも重要な役割を担っているのです。

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

企業に合った技能実習生の募集・選定をする

企業はまず、監理団体に年齢や職種などといった技能実習生に求める条件を伝えます。そして、送り出し機関は監理団体から聞いた条件に合った人材を現地で集めるのが役割です。職種にもよりますが、平均して採用人数の3倍程度の人数を集めます。

企業の要望に合致しているだけでは技能実習生にはなれません。「帰国後修得等をした技能を要する仕事に就くことが予定されている」「同種の業務に従事した経験がある、または技能実習に従事することを必要とする特別な事情がある」などの要件にも該当している必要があります。

監理団体はさまざまな点を考慮しつつ、技能実習生候補を集めるのです。

技能実習生を日本に送り出す際の手続きをする

企業の面接などを経て技能実習生として日本にいく外国人が決まったら、送り出し機関が日本へ入国するのに必要な手続きを行います。具体的には、入国に必要な書類の作成やビザ(査証)の手続きなどです。

また、健康診断を受診させることも重要な役割の一つ。そして、日本で問題なく技能実習を行える健康状態であるかを確認し、結果を監理団体に報告します。

入国前に必要な教育を行う

送り出し機関は、技能実習生の入国前に3ヶ月から半年をかけて技能実習を円滑に行うために必要な教育を行います。送り出し機関によって教育する内容は多少異なりますが、基本的な日本語や技能実習制度の仕組み、日本の生活習慣、マナーなどが一般的です。

なお、入国前に送り出し機関により1ヶ月以上かけて160時間を超える講習が行われた場合、入国後に監理団体が実施する講習の時間が短縮されます。それにより、技能実習生はより早く実務に就くことができるのです。

技能実習生をサポートする

技能実習生が技能実習を開始したあとのサポートも送り出し機関の役割です。技能実習を行うなかで生まれた技能実習生の疑問や要望を聞き、回答します。また、受け入れ企業や監理団体に代わり、トラブルが起きた際の対応をすることもあるでしょう。

技能実習生の帰国を支援する

技能実習を修了した際は、技能実習生が帰国するための手続きや帰国後の進路相談を行います。なお、帰国後に日本で受給できなかった年金の一部返還を請求する「脱退一時金制度」の手続きは、技能実習生だけで行うのは難しいため、送り出し機関がサポートするケースもあるようです。

送り出し機関の認定を受ける要件

厚生労働省によると、送り出し機関としての業務は以下の要件に適合した組織に許可されます。

  1. 所在する国の公的機関から技能実習の申込みを適切に日本の監理団体に取り次ぐことができるものとして推薦を受けていること

  2. 制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者のみを適切に選定して、日本への送出しを行うこと

  3. 技能実習生等から徴収する手数料その他の費用について、算出基準を明確に定めて公表するとともに、当該費用について技能実習生等に対して明示し、十分に理解をさせること

  4. 技能実習を修了して帰国した者が、修得した技能を適切に活用できるよう、就職先のあっせんその他の必要な支援を行うこと

  5. フォローアップ調査への協力等、法務大臣、厚生労働大臣、外国人技能実習機構からの要請に応じること

  6. 当該機関又はその役員が、日本又は所在する国の法令に違反して、禁錮以上の刑又はこれに相当する外国の法令による刑に処せられ、刑の執行の終了等から5年を経過しない者でないこと

  7. 所在する国又は地域の法令に従って事業を行うこと

  8. 保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、技能実習生の日本への送出しに関連して、技能実習生又はその家族等の金銭又はその他の財産を管理しないこと

  9. 技能実習に係る契約不履行について、違約金を定める契約や不当に金銭その他の財産の移転をする契約を締結しないこと

  10. 技能実習生又はその家族等に対して(8)(9)の行為が行われていないことを技能実習生から確認すること

  11. 過去5年以内に偽造・変造された文書の使用などの行為を行っていないこと

  12. その他、技能実習の申込みを適切に日本の監理団体に取り次ぐために必要な能力を有すること

参照元:厚生労働省「外国人技能実習制度について(令和6年10月1日一部改正 技能実習法・主務省令等の周知資料)

適切に技能実習生の送り出しが行われるように、技能実習法の第25条により上記のように細かい条件が定められています。

関連記事:「ゼロから分かる育成就労!技能実習との違い&施行までの流れを解説

参照元:e-Gov法令検索「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則

特定技能制度における送り出し機関とは

特定技能制度の場合、技能実習制度とは違い送り出し機関の利用は必須ではありません。ただし、一部の国から特定技能外国人を受け入れる場合は、必ず送り出し機関を通す必要があります。

特定技能制度は送り出し機関の利用が不要な場合もある

特定技能制度で外国人を雇用する際も、効率よく募集や選考を行うために送り出し機関が使われます。ただし、利用が義務付けられているわけではありません。直接海外に行き、採用活動を行う企業もあります。また、国内で働いている特定技能外国人を雇用する際も、送り出し機関の利用は不要です。

国によっては送り出し機関の利用が必須

外国人を雇用する国によっては、送り出し機関の利用が義務付けられていることもあります。特定技能外国人の出身国の上位を占めるインドネシアやフィリピン、ベトナムミャンマーなどから雇用する際も、利用が必須です

また、各国ごとに定められたルールも。たとえば、フィリピンから外国人を利用する場合、フィリピン海外雇用庁であるDMW(旧POEA)に認定された送り出し機関の利用が必須です。そのうえで、POLO(フィリピン海外労働事務所)に書類を提出し、企業の代表者が面接を受ける必要があります。

初めて外国人を雇用する際は、その国特有のルールをよく確認すると良いでしょう。

関連記事:「登録支援機関の役割とは?特定技能制度のとの関係や要件を解説

送り出し機関の数も国ごとに大きく異なる

外国人技能実習機構(OTIT)では、国ごとに送り出し機関の情報を公開しています。

例えば、ベトナムは政府認定送り出し機関が447社ありますが(2024年12月現在)、ラオスは27社です。

OTITの公式サイトでは、各送り出し機関について、設立年、代表者名、連絡先などの情報を公開していますので、ぜひ参考にしてください。

良い送り出し機関はどこで判断する?見分けるポイント

ここまで、適切な送り出し機関の選択が技能実習生や特定技能外国人の受け入れを成功させるうえでいかに重要かを説明してきました。では、優良な送り出し機関はどう探せば良いのでしょうか。

ここでは、良い送り出し機関を見分けるポイントを解説します。技能実習生の雇用時に監理団体と契約する際は、以下の条件を満たした送り出し機関と連携しているかを必ずチェックしましょう。

各国政府の認定を受けているか

各国政府の認定を受けている送り出し機関を利用すると、トラブルが起きるリスクを減らすことができます

国によっては、政府の公認がなくても送り出し機関としての活動が可能です。そのような機関は、公的機関の監督が及ばないため、技能実習生に多額の金銭を要求したり必要な教育を行わなかったりする可能性があります。

政府認定の技能実習生送り出し機関は、外国人技能実習機構のWebサイトに国ごとの一覧があるので、チェックしてみてください。

教育の内容は充実しているか

入国前講習がきちんと行われているかも重要なチェック事項です。

前述したとおり、技能実習生は来日前に送り出し機関による講習を受けます。入国前講習の内容が充実していればいるほど、技能実習がスムーズに進められるでしょう。入国前講習の時間や内容は定められていますが、送り出し機関によって教育の質は異なるのが現状です。

監理団体に、提携する送り出し機関でどのような教育カリキュラムを組んでいるか確認してみましょう。

過去に十分な実績があるか

今まで外国人を送り出した実績のない送り出し機関は、ノウハウや経験不足からトラブルが発生する可能性が高いため、注意が必要です。事業を始めてからの年数が長く送り出した人数が多ければ、問題なく送り出し業務を行っていると判断できます。

また、多くの送り出し機関は日本以外の国にも人材を送り出しています。特に日本への送り出し実績があるかを確認しましょう。

なお、そのような送り出し機関と繋がるためには、十分な実績のある監理団体を利用するのが重要です

拠点が日本にあるか

技能実習生を受け入れる場合、送り出し機関の営業所や事務所が日本にあると安心です。拠点が日本にあれば、監理団体との連携もスムーズにでき、技能実習生も相談しやすくなります。日本人スタッフが在籍(できれば常勤)していると、より良いでしょう。

利用金額の設定は適切か

外国人から受け取っている金額が相場よりも高すぎる送り出し機関は要注意です。

出入国在留管理庁の「技能実習生の支払い費用に関する実態調査について(結果の概要)」の2024年調査によると、技能実習生が来日前に送り出し機関に支払っている金額は平均して52万1065円でした。フィリピンは9万4191円、ベトナムは65万6014円と国によって大きな違いはあるものの、平均より高すぎる金額を受け取っている場合は、技能実習生より利益を優先させている可能性があります。

なお、送り出し機関だけでなく監理団体の利用金額(初期費用や月額管理費)が高すぎたり安すぎたりする場合も要注意です。特にほかの監理団体と比べて料金が安すぎる場合は、送り出し機関からキックバックを受け取っている可能性もあります。

外国人特化の人材紹介サービス「WeXpats」では、技能実習生や特定技能外国人の紹介も可能です。信頼できる監理団体と提携しているので、初めての外国人雇用で不安に思っている方もご安心ください。疑問点があれば、専門の知識を持ったアドバイザーが返答させていただきます。

ぜひこちらからお問い合わせください。

参照元:OTIT外国人技能実習機構「外国政府認定送出機関一覧

日本企業が悪質な送り出し機関を利用するとどうなる?

悪質な送り出し機関を通して技能実習生を雇用すると、さまざまなトラブルに見舞われやすくなります。

能力が不足している技能実習生を雇用することになる

送り出し機関から適切な入国前教育を受けていない技能実習生は、実習に必要な最低限の日本語や技能を身に付けていない可能性があります。適切なコミュニケーションが取れず、実習がスムーズに進まなくなるでしょう。

実習を進めつつ教育をしなければならず、現場の負担になることも考えられます。

トラブルや失踪に繋がりやすくなる

悪質な送り出し機関から技能実習生を雇用した場合、トラブルや失踪が起きる可能性が高まります。

利益を優先させる送り出し機関は、技能実習生の希望や能力を考慮せずに企業とのマッチングを行ったり虚偽の情報を伝えたりする場合もあるのです。

例えば、給与について虚偽の情報を伝えているためトラブルになることがあります。より多くの技能実習生を集めるため、残業を想定した総額の給料を伝えているケースも多いですね。実際には残業が少なく税金や社会保険などが控除されるため、技能実習生にとっては、想定していた給与と大きく違うということになるのです。

そのような状態で来日した技能実習生が、モチベーション高く実習に取り組むのは難しいでしょう。トラブルが起きやすくなり、最悪の場合耐えられずに失踪してしまう可能性もあります

送り出し機関の二国間取り決めとは

二国間取り決めとは、日本と送り出し国で交わしている二国間協力覚書のことです。二国間取り決めに基づいて、政府が認定した送り出し機関を「認定送り出し機関」といいます。技能実習生の受け入れは、認定送り出し機関を通して行うことが推奨されているのです。

ここでは、最大の送り出し国であるベトナムとの協力覚書の内容を紹介します。

【日本側が守るべきこと】

  • 技能実習法に基づき、監理団体の許可事務・技能実習計画の認定事務を適切に行う

  • 監理団体の許可取消や技能実習計画の認定取消等の行政処分を行った場合は、ベトナム側に情報を提供する

  • ベトナム側から不適切な監理団体・実習実施者の情報が提供された場合は、調査を行い適切に対処する(結果をベトナム側に通知する)

【ベトナム側が守るべきこと】

  • 今回の覚書の基準に基づき、送出機関の認定事務を適切に行う

  • 送出機関の認定取消等の処分について、日本側に情報を提供する

  • 日本側から不適切な送出機関についての情報が提供された場合は、調査を行い適切に対処する。また、その結果を日本側に通知する

以上の条件のほかに、「技能実習制度の運用について定期的な意見交換を行う」といった共通の取り決めも存在します。

日本が技能実習に関する二国間取り決めを交わしているのは、ベトナムを含めた16ヶ国です(2024年11月時点)。日本と各送り出し国は二国間取り決めをもとに連携を図りながら、技能実習制度を運用しています。

参照元:
厚生労働省「技能実習に関する二国間取決め(協力覚書)」
厚生労働省「ベトナムとの協力覚書

送り出し機関に払う費用について

弊社調べによると、技能実習生の受け入れ時に一般的に企業が送り出し機関に支払う金額の相場は20万~50万程度です。ただし、送り出し国や送り出し機関によって大きく異なります。

そして、受入後に支払う金額の相場は、1名あたり月額3万円前後です。これも、送り出し国や送り出し機関によって異なります。

「安ければ良い」「高ければ良い」というものではありません。特に技能実習生を雇用する際は、監理団体とコミュニケーションを取り、適切な送り出し機関と繋がれるよう下調べをしっかり行いましょう。

まとめ

送り出し機関は、技能実習生や特定技能外国人を海外から雇用する際に関わることになります。人材選定や教育にも関わってくるため、どの送り出し機関を選ぶかは企業にとって非常に重要な事柄です。

技能実習生の雇用の場合は、優良な送り出し機関の条件を知っておくことで、加入する技能実習監理団体を選ぶ際のヒントになるでしょう。

濵川恭一

監修:濵川恭一

外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net