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永住者ビザが与えられるのは、在留資格「永住者」を取得した外国人です。永住者には就労に関する制限がないため、日本人と同じ感覚で雇用できます。
また、就労以外の面でも様々なメリットがあるため、雇用している外国人従業員から「永住者ビザを取得したい」と相談されることがあるかもしれません。
この記事では、「永住者」「帰化」「定住者」などの違いについて詳しく解説します。また、永住者ビザの取得に必要な条件や申請の流れも紹介しますので、ぜひご一読ください。
目次
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日本で暮らしている外国人の在留資格で最も多いのが「永住者」です。2023年6月時点の人数は89万1569人であり、前年に比べ2万7633人増加しました。
外国人が「永住者」を取得すると、在留期限や就労制限がなくなり、社会的信用も向上して住宅ローンなどの審査が通りやすくなるメリットがあります。日本で働くうえで、永住者ビザの取得をひとつの目標としている外国人労働者は多く、今後もその数は増加していくでしょう。
また、詳細は後述しますが、外国人を雇用している企業、従業員が「永住者」になることは様々なメリットをもたらします。
なお、実務上は「永住権」という言葉もよく使われています。永住権も永住者ビザも実質的にはほぼ同じ意味なのですが、正確に説明すると、現行の法律上では、外国人には日本に永住する権利は認められていません。あくまで、「永住者」という在留資格を持っていれば、在留資格の更新が不要となるという扱いになっています。
引用:出入国在留管理庁「令和5年末現在における在留外国人数について」
関連記事:「ホテル・旅館で就労可能なビザとは?知識を身につけて外国人雇用を始めよう」
永住者ビザと似た概念として、「特別永住者」や「帰化」という制度があります。以下では、それぞれの違いについて解説するので、混同しないようご確認ください。
「特別永住者」とは、1991年11月1日に施行された「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(入管特例法)」により定められた在留資格です。
「特別永住者」を取得できるのは、歴史的な背景を理由に日本への永住を認められた人に限られます。基本的に新規の取得はできません。
「永住者」と「特別永住者」の違いは、在留カードの有無にあります。永住者には在留カードが交付されますが、特別永住者には交付されません。特別永住者には、在留カードの代わりに「特別永住者証明書」が交付されるので、確認の際は注意しましょう。
「帰化」とは、外国人が日本の国籍(戸籍)を取得することです。帰化後は日本人として生活し、参政権を得たり日本語の氏名を名乗ったりできます。
「帰化」は在留資格の名称ではなく、日本人になるための制度です。日本では法律上、二重国籍が認められていないため、帰化する際には元の国籍を放棄しなければなりません。さらに、帰化した後に元の国籍に戻すことも容易ではないため、十分検討したうえで申請を行う必要があります。
在留資格「永住者」を取得するには、以下の3つの基本条件を満たす必要があります。
素行が善良であるかどうかは、法令違反の有無で判断されます。特に交通違反には注意しましょう。駐車違反などの軽微な違反でも、積み重なれば不許可となる可能性があるため注意が必要です。
永住者ビザは、申請者が日本で自活できることを前提に認められます。したがって、日本で生計を維持していくための安定収入や資産を持っていなければ、不許可となる可能性が高いでしょう。
自活可能と判断される年収の目安は、2024年現時点では、300~350万円以上とされています。ただし、扶養家族がいる場合は基準が引き上げられたり、共働きの場合は夫婦の収入の合計額で計算できる場合もあるなど、細かいルールがあるため留意が必要です。
申請者が永住することで、日本に利益がもたらされるかも判断の材料となります。ガイドラインに示された具体的なポイントは以下の4項目です。
【国益と認められるポイント】
原則として10年以上日本に継続して在留していること。そのうち5年以上は就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く)又は居住資格をもって在留していること
日本に長く住んでおり、実際に「就労」という形で社会に貢献していたかどうかが判断されます。通算の在留期間が10年以上であれば、在留資格が途中で変更されても問題ありません。
罰金や懲役、税金の滞納などがないこと
税金の納付といった公的義務を適正に履行していることも重要です。逆に罰金や懲役がある場合は不利になります。永住者ビザの審査で特に重要な税金は、所得税と住民税です。これらの税金に未納や納付遅れがあると、不許可になる可能性が高いです。
永住者ビザを取得した後も、これらの要素には気を付けて生活する必要があります。というのも、2024年2月に出入国在留管理庁は、罰金や懲役、税金の滞納などがあった場合は永住許可を取り消すか、ほかの資格に変更できるよう在留資格制度を見直す方針を固めたからです。地方自治体によるチェック体制も強化されています。
現に有している在留資格で、最長の在留期間をもって在留していること
同じ「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持っている外国人の中でも、5年間の在留を認められている人もいれば、3カ月間しか在留期間が無い人もいます。
最初は短い在留期間しか認められず、更新のたびに1年、3年、5年と長くなっていくケースが一般的です。「最長の在留期間をもって在留している」とは、在留資格ごとに定められた最長の在留期間が認められている状態を表します。
ただし、2024年10月現在は在留資格の種類にかかわらず一律で3年の在留期間が認められていれば問題ありません。これは5年の在留期間が新設されたばかりである点を考慮しての暫定措置であり、いずれ制度が変更される可能性があります。
公衆衛生上で有害となるおそれがないこと
公衆衛生上の有害事由には、明確な規定はありません。しかし、感染症を患ったり、ゴミや騒音で近隣に迷惑をかけたりすると許可が下りない可能性があるため注意が必要です。
参照元
出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年6月10日改訂)1.法律上の要件」
永住者ビザの取得には、滞在期間や在留資格に基づく特別な措置もあります。
特例として、日本人・永住者・特別永住者の配偶者か子どもが申請を行う場合、以下(1)(2)の要件を満たす必要はないとされています。ただし、無収入でも問題ないということではありません。日本で暮らしていけるだけの普通程度の収入があれば問題ないということです。平均世帯年収と比べて明らかに所得が低い場合などは、永住申請は許可されません。
(1)素行が善良であること
(2)独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
また、難民認定を受けている場合も、上記(2)の要件を満たす必要はありません。
在留資格「永住者」を取得するには、原則10年以上日本に在留している必要があります。
原則10年の条件において海外在住は認められず、日本に一定期間住所を有していなければ申請はできません。しかし、特例として日本と結びつきが強いと認められる外国人は、10年以上日本に在留していなくても永住者の申請が可能です。
以下では、原則10年在留の特例について、企業が把握しておくべき代表的な項目を詳しく解説します。
(1)日本人、永住者及び特別永住者の配偶者の場合、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上本邦に在留していること。その実子等の場合は1年以上本邦に継続して在留していること
日本人の配偶者を持ち、日本で働いている外国人は多くいます。したがって、上記の条件を満たせば、10年間の在留がなくても「永住者」の申請が可能です。
(2)「定住者」の在留資格で5年以上継続して本邦に在留していること
「定住者」の在留資格には、法務大臣が個別に設定した在留期限があります。無期限に日本に滞在できる永住者とは異なり、「定住者」の在留資格は一定期間ごとに在留期限の更新審査が必要です。
(3)難民の認定又は補完的保護対象者の認定を受けた者の場合、認定後5年以上継続して本邦に在留していること
「補完的保護対象者」とは、難民条約上の難民以外の人が対象です。具体的には、難民の要件のうち迫害を受けるおそれがある理由が人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であることや、政治的意見であること以外の要件を満たす必要があります。
(4)外交、社会、経済、文化等の分野において我が国への貢献があると認められる者で、5年以上本邦に在留していること
「我が国への貢献があると認められる者」についての例は、以下のとおりです。
日本の上場企業や日本国内の企業の管理職に5年以上従事し、日本の経済や産業の発展に貢献した人物
国際的規模で開催されるスポーツ競技会などにおいての上位入賞者。または、監督、指導者等としてその入賞に多大な貢献があった人物。3年以上日本でスポーツ等の指導や振興に係る活動を行っている人物
日本国内の企業の経営に3年以上従事した実績があり、その間に継続して1億円以上の投資を行い経済や産業の発展に貢献のあった人物
(5)出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令(以下「高度専門職省令」という。) に規定するポイント計算を行った場合に70点以上を有している者であって、次のいずれかに該当するもの
ア:「高度人材外国人」として必要な点数を維持して3年以上継続して本邦に在留していること
イ:永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められ、3年以上継続して70点以上の点数を有し本邦に在留していること
高度人材(高度外国人材)とは、日本の産業や経済に寄与する専門的な技術や知識を持つ外国人を指します。高度人材と認められた外国人には、在留資格「高度専門職」が付与され、「高度専門職1号」では以下、さまざまな優遇措置のもと日本在留が可能です。
複合的な在留活動の許容
在留期間「5年」の付与
在留歴に係る永住許可要件の緩和
配偶者の就労
一定の条件の下での親の帯同
一定の条件の下での家事使用人の帯同
入国・在留手続の優先処理
(6)高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有している者であって、次のいずれかに該当するもの
ア:「高度人材外国人」として必要な点数を維持して1年以上継続して本邦に在留していること
イ:永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められ、1年以上継続して80点以上の点数を有し本邦に在留していること
高度人材は「国内の資本・労働とは補完関係にあり、代替することができない良質な人材」であり、在留資格の審査においても高く評価されます。「高度専門職1号」で3年以上活動を行った場合は「高度専門職2号」の在留資格が認められ、さらに以下の優遇措置が受けられます。
「高度専門職1号」の活動に加えて、ほぼ全ての就労資格の活動を行うことができる
在留期間が無期限となる
「高度専門職1号」に与えられる1~6の優遇措置が受けられる
参照元
出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年6月10日改訂)2.原則10年在留に関する特例」
出入国在留管理庁「補完的保護対象者認定制度」
一般的な就労資格には、就労可能な職務や業務内容に一定の制限があり、たとえば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格でホテルに勤務する場合、グローバル人材ならではの働き方が求められるため、ベッドメイキングや接客といった単純業務は行うことができません。
しかし、永住者は日本での業務内容に制限がありません。日本人と同様に自由に就労が可能で、幅広い業務を任せられるほか、在留期限を気にせず長く働いてもらえる点が大きなメリットといえます。
関連記事:「【行政書士監修】外国人採用まるわかりガイド|注意点・メリット・募集・雇用の流れ」
永住権の申請は、原則として本人が行います。しかし、事情により本人が行えない場合は、法定代理人や取次者、申請人から依頼を受けた弁護士、行政書士が代理で申請可能です。永住申請は難易度が高いため、数万円の費用を支払ってでも専門行政書士を頼る人が珍しくありません。
また、申請にあたって企業が負担すべき費用はありません。以下では、永住申請の流れについて解説します。
永住者(在留資格「永住者」)を申請するには、以下のどちらのパターンに該当するか確認してください。
現在の在留資格を永住者の在留資格へ変更する場合
日本国内での出生等により永住者の在留資格の取得を希望する場合
永住申請は、現在保有している在留期間の満了する日までに行うのが原則です。申請費用は、許可された場合に収入印紙代として、8000円を支払います。
永住許可申請中に現在保有している在留資格の期間が過ぎてしまう場合は、別途「在留期間更新許可申請」の申請が必要です。
父母のいずれかが「永住者」であり、出生によって子どもの永住申請をする際は、出生から30日以内に申請を行います。31日ではなく、「30日」であることに注意してください。出生から30日を過ぎた場合、「永住者」の取得は原則許可されません。「永住者」が不許可となった場合は、「永住者の配偶者等」の在留資格が付与されます。
「永住者」と「永住者の配偶者等」では、大きな違いがありますので、この期間には十分に注意してください。
さらに、60日を経過すると退去強制事由(不法残留)に該当するため、申請期限には十分注意しましょう。
外国人が永住許可申請をするには、身元保証人が必要です。身元保証人は、日本人または永住者ビザを持つ外国人に限られます。友人や働いている企業の上司に身元保証人を依頼するのが一般的です。なお、借金の連帯保証人とは異なり法的責任は発生せず、あくまで道義的な責任のみ発生します。
永住許可申請に必要な書類は、外国人が現在有している在留資格によって異なります。どの在留資格の場合も必要なのは、「永住許可申請書」「身元保証書」「了解書」です。また、永住許可申請の際は在留カードの提示も求められます。
企業が準備する書類は、「在職証明書」です。また、最近では、「今後1年間の年収見込証明書」を求められることが多いです。外国人従業員から依頼があった場合は、速やかに準備を進めましょう。
その他、共通して必要な書類としては、「永住理由書」があります。永住理由書には、これまでの経歴や現在の仕事内容、永住したい理由、身元保証人との関係、今後の予定や希望などを具体的に書きます。目安として2000字~3000字の文章になることが多いです。当然ですが、全て日本語で書く必要がありますので、必要に応じて、企業側でも作成をサポートしてあげるとよいかもしれません。
詳しい必要書類は出入国在留管理庁のWebサイトにまとめられているので、参考にしてください。
永住許可申請に必要な書類は、外国人の住居地を管轄する出入国在留管理局に提出します。提出書類に少しでも不備があると、申請が通らない可能性が高くなるので注意が必要です。また、申請手続きで不安な点がある場合は、「外国人在留総合インフォメーションセンター」に相談してみましょう。多言語対応のほか、電話やメールでも問い合わせが可能です。
永住許可の審査は厳しく、標準処理期間は4~6ヶ月です。しかし、場合によっては1年以上かかることもあります。また、現在有している在留資格の有効期限が来た場合、永住許可申請中でも更新の手続きが必要です。在留期間の更新を怠ると、現在の在留資格を失ってしまいます。
在留資格を喪失したあとも日本に在留していると不法滞在者として退去強制となり、日本を出国しなければならなくなるので注意が必要です。万が一不法滞在者となった場合、その後の永住許可申請はおろか、日本への再入国も難しくなります。
参照元
出入国在留管理庁「永住許可申請」
もし永住許可申請に落ちたとしても特にペナルティはありません。間隔を空けずに何度でも再申請が可能です。
ただし、やみくもに再申請を行っても同じ結果になってしまいます。
出入国在留管理局から送られてくる不許可通知書に不許可理由が記載されているほか、永住許可申請を行った地方出入国在留管理局へ問い合わせも可能です。自分が落ちた原因を把握し、対策したうえで再申請を行わなければなりません。
なお、不許可理由は「○○法▲▲条××項に適合するとは認められない」といった形で伝えられます。関連法令に関する知識が必要となるため、理由を正確に知りたい場合は行政書士に確認を依頼するとよいでしょう。
なお、永住申請の許可率は約50%ほど。申請しても約半分の方が不許可になります。不許可になる理由は、収入が低い、税金の未納、健康保険や年金の未納、出国日数が多いなどです。
経験上、永住者ビザの要件を自分に都合よく解釈している場合もあります。従業員が永住申請を希望している場合、基本要件を満たしているかどうか企業側も確認してあげるとよいかもしれません。
永住者の在留資格は、日本人と同様に就労可能です。しかし、あくまでも「在留資格」であるため、外国人を雇用する企業が注意すべき点もあります。
在留資格「永住者」は、就労や在留期限に制限はありません。しかし、たとえ採用した外国人が永住者であっても、「外国人雇用状況の届出」の提出が必要です。
また、犯罪など永住にふさわしくない行動をした場合は、永住権の在留資格を取り消される可能性があります。企業としても社員が犯罪に巻き込まれないよう、注意喚起を行うことが重要です。
在留カードの確認が必要な理由は、以下の2点です。
雇用予定の外国人の在留資格と在留期限を確認するため
在留カードの期限が切れていないか確認するため
「永住者」であっても在留カードの更新は必要です。在留カードの更新を怠ると、在留資格が取り消される可能性が高いため注意しましょう。
在留カードの更新は、期限満了日の2か月前から行えます。更新時に素行や収入の審査が行われるため、余裕を持った手続きを行いましょう。
永住者ビザの取得を希望する外国人は、在留年数の申請要件を満たすため日本で働くことを重視し、海外転勤を断る場合もあります。
外国人が長期出張や転勤を理由に日本を長期出国する場合、在留資格の返納と同時にこれまでの在留年数もリセットされるため、永住者ビザの取得を希望する外国人従業員にとって海外転勤は大きなリスクとなります。そのため、断られる可能性があることも企業は理解しておきましょう。
永住者ビザは、日本で長期間滞在する外国人の多くが取得を目指すものです。永住者は日本人と同じように就労可能で、在留期限もありません。企業にとっても「永住者は長く働いてもらえる可能性が高い」というメリットがあり、戦力として期待できます。外国人従業員が永住許可申請を行いたいと相談してきた際は、積極的な支援を心掛けましょう。
永住者ビザを持つ外国人を雇用したい、日本語が話せる即戦力となる人材を採用したいとお考えの場合は、WeXpats Agentにご相談ください。
WeXpats Agentは採用が決定するまで費用が発生しない成果報酬型サービスです。はじめて外国人雇用をお考えの採用担当者様も、お気軽にお問い合わせください。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net