国内人口増加中!インドネシア人の特徴や仕事観【職場に必要な宗教の配慮】

濵川恭一
濵川恭一
国内人口増加中!インドネシア人の特徴や仕事観【職場に必要な宗教の配慮】

「日本で働く外国人に多い国籍」といえば、ベトナムや中国、フィリピンを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。たしかに人数比でいえばこれらの国が上位を占めている一方で、増加率が目立っているのはインドネシアです。

この記事では、インドネシア人の性格に根付いている文化や社会通念を解説。また、イスラム教徒が多いインドネシア人を雇用するうえで欠かせない、宗教上の配慮や注意点も紹介します。

インドネシアの国民性に関するリアルな情報をお届けできるよう、弊社のインドネシア人スタッフ監修の元で執筆しています。採用活動やマネジメントにお役立てください。

※WeXpatsは偏見と差別の排除を理念の一つに掲げて活動しています。本稿にも「人種」や「国籍」といった特定の属性に対するイメージを単純化する意図はありません。本稿の内容は、あくまでインドネシアの文化や社会通念を紹介するものであり、個々人の性格は多種多様であるという点を踏まえてご覧ください。

目次

  1. インドネシア人労働者が日本企業に増えている理由は?
  2. インドネシアはどんな国?基本情報
  3. インドネシア人の性格の特徴とは
  4. インドネシア人から見た日本人の特徴も知っておこう
  5. ムスリムにとって働きやすい企業とは
  6. インドネシア人の仕事観
  7. インドネシア人と働くうえで意識したいこと
  8. まとめ

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インドネシア人労働者が日本企業に増えている理由は?

厚生労働省が発表した「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)」によれば、2024年6月末時点の日本で働くインドネシア人は16万9,539人でした。

外国人労働者全体の7.4%と、人数だけで見るとあまり多く感じられないかもしれません。しかし、対前年増加率は39.5%(4万8032人)と、ミャンマーに次いで2番目に大きい数字です。前年の2023年の同調査では、インドネシアの対前年増加率が56%(4万3618人)と、最も増加率の多い国となっていました。

つまり、インドネシア人労働者は今後さらに増加が見込まれる人材といえるでしょう。

ここでは、インドネシア人労働者が増えている理由を解説していきます。

インドネシアの人口が増加傾向で推移している

インドネシア中央統計庁」の発表によると、2024年のインドネシアの人口は約2億8160万人でした。世界第4位の人口の多さで、徐々に増加率は穏やかになるものの、2045年には3億2400万人にまで増加するとの見通しがあります

面積も広くもともとの人口も多いですが、子どもを多く持つのが良いとの考えがあったこと、またその人口を支える食料が生産できる環境があるのが着実に人口を増やしている理由です。

インドネシアは経済が成長途中の新興国であり、人口をカバーできるほどの雇用の受け皿がありません。そのため、就労のため海外にわたる国民が多く、そのうちの候補の一つとして日本が選ばれているのだと考えられます。

インドネシア人にとって日本は「行きやすい国」

インドネシア人にとって、同じアジアのなかでも給与水準の高い日本は就労先として魅力的。そのうえ、特定技能技能実習の制度を活用すれば在留資格を取得しやすいため、就労希望者が右肩上がりに増えています。

これまで、技能実習生や特定技能外国人が多かったのは中国やベトナムです。しかし、経済発展や物価上昇でこれらの国から人材を集めるのが難しくなっており、新たにインドネシア人の採用に乗り出す企業が増えているという事情もあります。

さらに、インドネシア語と日本語は文法が似ているため、他の非漢字圏の国に比べて日本語の上達スピードが速いという点もポイント。国際交流基金の「2021年度 海外日本語教育機関調査」によると、日本語学習者数は中国に次いで世界第2位でした。インドネシア人にとって日本語が習得しやすい言語であるのも、日本が就労先に選ばれやすい要因の一つです

インドネシア人には英語を話せる人材が多い

インドネシア人労働者が増えている理由には、英語を話せる人材が比較的多いことも関係しています。

インドネシアの公用語はインドネシア語ですが、各民族のコミュニティのなかではそれぞれの言語を使用するのが一般的です。

そんな多言語国家であるインドネシアのビジネスシーンでは、英語が話せる人材が豊富。小学校から英語教育が義務化されており、都市部や観光地であれば英語を話せる人が珍しくありません。

学歴や出身地域によってレベルに差はありますが、海外で就労するような人材は、ある程度英語でコミュニケーションが取れるケースが多いと考えて良いでしょう。

以上のことから、マネジメントのしやすさに加えて、グローバルな活躍を期待してインドネシア人を雇用する企業が増えているのです。

参照元:
厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)」
厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」
Badan Pusat Statistik「Mid Year Population (Thousand People), 2022-2024」
国際交流基金「2021年度 海外日本語教育機関調査

インドネシアはどんな国?基本情報

インドネシア人を雇用する前に、出身国の基本情報を把握しておきましょう。インドネシアは日本と同じ島国で、さまざまな文化や人種が共存する多民族・多宗教国家なのが特徴です。また、若く活気のある国で、経済的にも世界中から注目されています。

国家が1万7500個以上の島から構成されている

インドネシアは1万7500個を超える島からなる、世界最大の群島国家です。そのうち約300の島に人が居住しています。

国土面積は190万㎢と日本の約5倍ほど。首都のジャカルタを有するジャワ島に、人口の半分以上が住んでいます。バリ島やロンボク島、スマトラ島は観光地として世界的に有名です。

インドネシアでは各島に異なる民族があり、その数は約300以上、より細かく分類すると約1300以上になるといわれています。さまざまな民族が異なる文化や宗教、言語を持ち生活しているのがインドネシアの特徴です

平均年齢が若い

インドネシアの平均年齢は30.4歳と、世界的にみても非常に若い国です。医療や健康状態の改善が進み、少しずつ平均年齢が上がってきているとはいえ、未だ人口ボーナス期の真っ最中。人口の年齢分布を表す人口ピラミッドは、高齢者が少なく子どもの人口が多い「富士山型」と、高齢者が少なくそれ以外の年代の人口が安定している「つりがね型」の中間に位置しています。

豊富な労働力があり内需も活発な、勢いのある国といえるでしょう。

給与水準は日本の約10分の1以下

インドネシア中央統計庁」の発表によると、2023年2月時点のインドネシアの平均月収は約294万ルピアでした。円にすると約2万5,000円(1ルピアを0.008円で計算)と、日本の月収の10分の1以下の水準です。地域によって格差は大きいものの、決して高いとはいえません。

そのうえ、国内の失業率も高く給料の良い仕事に就くのは難しいため、多くのインドネシア人労働者が台湾やマレーシア、そして日本などにわたり就労しています。

食文化が似ているところがある

インドネシアの主食は日本と同じお米です。日本以上にお米の消費量が多く、おかずも白米に合うものが日常的に食べられています。味付けは違いますが、使われている食材はある程度一緒です。そのため、インドネシア人の日本の食文化への適応は比較的早いといえるでしょう。

多宗教だがイスラム教徒の割合が多い

インドネシアでは、法律により必ず何らかの宗教に属さなければなりません。約86%はイスラム教徒ですが、国教というわけではなく、カトリック・プロテスタント・ヒンドゥー教・仏教・儒教も国家公認宗教として認められています。

参照元:Worldmeter「Indonesia Population

インドネシア人の性格の特徴とは

インドネシア人の働きやすい環境を整えてより良い関係を築くためには、性格の特徴や日本人との違い、共通点を把握しておくことが大切です。

「インドネシア人はこんな性格」とひとくくりに語ることはできませんが、インドネシアという国を形成する歴史や文化を知ることは、個々人の気質や考え方を理解する一助になるでしょう。

民族や地域による違いを尊重できる

300もの民族からなるインドネシア人は、「バリ島の人は活発」「ジャワ島の人はゆったり」などの異なる特徴があるといわれており、文化や生活様式、信仰する宗教も多種多様です。

そのような環境で互いを尊重しながら平和を保ってきていたという背景があり、「違うことが当たり前」であり、自分の価値観を押し付けるような言動をしない人がほとんどといえます。さまざまな国籍や立場の人が働く企業でも、周囲とうまく溶け込みながら働いてくれるでしょう。

なお、先ほど紹介した「▲▲島出身者は××」という説は、日本に置き換えれば「大阪府民はせっかち」「福岡県民は情に厚い」に近い観念です。インドネシアでは昔から共有されてきたイメージですが、昨今は「島ごとで性格をカテゴライズするのはステレオタイプ的な考え」とする意見も増えてきました。

また、若者はSNSで都心部の文化に容易に触れられるため、民族特有の特徴が薄れてきているともいわれています。

おおらかなでマイペ-スな人が多い

インドネシアは世界で最もイスラム教徒が多い国であり、イスラム教の「怒ることは悪いこと」という教えが広く浸透しています。声を荒げたり感情を高ぶらせたりすることは忌避されるため、物腰穏やかで温厚な振舞いをする人が多いようです

また、インドネシアの首都であるジャカルタは、世界で最も渋滞が深刻な都市とされています。自動車の交通量だけなら東京も負けていませんが、ジャカルタは地下鉄のような代替手段が未発達であり、数kmの移動に1時間以上かかってしまうことも珍しくありません。時間を厳守したくても自分の力ではどうしようもできないので、いちいち狼狽えていてはストレスが溜まるでしょう。

通年を通して穏やかな気候なのも相まって、あくせくした人が少ないのがインドネシア人の特徴といえます。

「ゴム時間」という独特の時間感覚がある

インドネシア人のマイペ-スな時間感覚を表す「Jam Karet(直訳でゴム時間)」という言葉があります。これは、インドネシア人にとっての時間はゴムのように伸び縮みするものという意味です。全体的に締め切りや時間を守るという意識が薄く、遅刻や遅延が起きやすいという特徴があります。

悪気はないのですが、「待ち合わせ時間や締め切りは守らないといけない」という意識が薄いといえるでしょう。

もちろん、日本の価値観を学び、しっかり時間を守る人もたくさんいます。しかし、時間にルーズな国民性があるという一面を知っておくだけでも、インドネシア人と接するうえでの助けになるでしょう。

言葉ではっきり伝える傾向にある

インドネシア人は大らかに見える人が多いと述べましたが、意見はイエス・ノーではっきりしており、本音と建前を使い分けることはあまりしない傾向にあります。そのため、日本人特有の曖昧な言い回しや表現を理解するのに苦労するようです。

ただし、年長者を大切に敬う文化があるため、相手が年上の場合は礼儀として意見をはっきり伝えるのを控える一面もあります。

人との繋がりを大切にする

人との関わりを大切にしているのもインドネシア人によく見られる特徴の一つ。さまざまなバックグラウンドを持つ多民族が共存する環境は、コミュニケーション能力が育ちやすいのだと考えられます。

仕事中の休憩も、一人で過ごさず大勢で取るのが一般的です。皆で一緒に食事や運動をして、仲間との親睦を深めることを好む傾向にあります。日本の職場でよく見られる、休憩中に自分の机で黙々と昼食を取ったりスマートフォンを見たりする姿は、インドネシア人からすると寂しく感じられるようです。

インドネシア人の精神を表すのが「Gotong Royong(ゴトング・ロヨング)」という言葉。これは、インドネシア語で「一緒に担う」という意味の表現です。コミュニティーで困っている人がいたら皆で協力し、苦労を一緒に担います。

寄付やチャリティーも盛んで、困っている人がいたら助けるのが当たり前という価値観が根付いているのです。

信仰心がある

先述したとおり、インドネシア人はイスラム教をはじめ何らかの宗教に必ず属しているため、信仰心のもと生活をしています。

さまざまな宗教の信者がいるので、人により異なる信仰を持っていることになりますが、自分の考えの押し付けはしません。お互いを認め合いながらうまく共存しているのがインドネシア人の特徴です。

宗教との向き合い方は人によって異なる

インドネシアは世界で最も多くのイスラム教徒を有する国ですが、宗教との向き合い方は人それぞれです。もちろん、敬虔なイスラム教徒もいますが、さまざまな宗教が共存するという背景も相まって、ほかのイスラム教国家と比較するとある程度寛容な雰囲気があります。個人の考えのほか、家庭の方針や住んでいる地域によっても変わってくるようです。

たとえば、宗教上禁止されているお酒は、たまに嗜む程度ならOKと考えている人もいます。また、女性が頭や体を覆うために被るヒジャブも、使わない人やオフィシャルの場面以外では外すという人もいるようです。

企業として宗教上の配慮をする場合は、「イスラム教徒だから」「インドネシア人だから」と決め付けず、本人のヒアリングを行い、個人の宗教観を尊重するように心掛けましょう。

インドネシア人から見た日本人の特徴も知っておこう

インドネシア人と交流していくためには、日本人に対してどのような印象を持っているのかを知るのも重要です。そのうえで、接し方に気を配りましょう。

日本人に対して良い印象を持っている人が多い

インドネシア人は、日本にポジティブな印象を持っている人が多いといえます。外務省の下記資料によると、調査対象のインドネシア人の96%が、日本に対して「とても信頼している」もしくは「どちらかというと信頼できる」と答えていました

日本人に対して良い印象を持っている人が多いの画像

参照元:外務省「令和5年度ASEANにおける対日世論調査結果

インドネシア人が日本を信頼できると答えた理由では、「友好関係」「経済的結びつき(日本の投資、良好な貿易関係)」「世界経済の安定と発展への貢献」と答えた人が多い結果でした(複数回答)。

日本とインドネシアは友好的な国交が60年以上続いています。また、日本はインドネシアの最大の援助国でもあるため、親しみや感謝の気持ちを持っている人が多いのだと考えられるでしょう。

さらに、日本の漫画やアニメの人気もポジティブなイメージの要因の一つ。インドネシアの書店には、翻訳された日本の漫画本がたくさん並んでいます。日本語学習者が世界第2位になった理由の一つには「日本語を理解してサブカルチャーを楽しみたい」という動機もあるのではないでしょうか

ルールを重んじるイメージがある

インドネシア人は、日本人に対してルールを厳格に守るというイメージを持っているようです。時間を守る意識がそこまで高くないインドネシア人からすると、「遅刻は厳禁」「1分でも遅れたら遅刻になる」という日本人の考えは、ルールに忠実だと映るのでしょう。

また、日本の街が清潔で秩序が保たれているのも、日本人が公共のルールやマナーをしっかり守っているからだと考えています。

冷たいという印象を持つ人も

インドネシア人のなかには、感情が読みにくく大人しい印象のある日本人を冷たいと感じてしまう人もいるようです。インドネシア人のコミュニケーションの取り方や人との接し方と比較すると、確かに日本人は個人主義の側面があり、冷たく感じられる可能性があるでしょう。

日本人に対するステレオタイプのイメージをそのままにしておくと「冷たくされるかもしれない」とインドネシア人が警戒してしまい、なかなか適切なコミュニケーションを取れないという事態にもなりかねません。

良い関係を築くためにも、「頻繫に声をかける」「困っていたら率先して助ける」などの行動を心掛け、少しずつ距離を縮めていきましょう。

参照元:外務省「令和5年度ASEANにおける対日世論調査結果

ムスリムにとって働きやすい企業とは

前述したとおり、インドネシアはイスラム教徒(ムスリム)が多い国です。イスラム教によって定められた戒律への理解や配慮は、働きやすさに直結します。信仰心が強い人の場合、定められた戒律を守れない職場では働き続けられません。

逆にいえば、信仰に対する理解や配慮を示せれば、長く働いてもらえる可能性が高くなります。先進的な企業が行っている具体的な施策を見ていきましょう。

なお、前述したとおりムスリムでも戒律をどこまで守るかは人によって異なります。また、戒律を厳格に守らないからといって、信仰心が弱いとも限りません。

配慮の内容を勝手に企業側が決めるのではなく、本人にヒアリングをしてできる限り寄り添うようにしましょう。

お祈りができる

ムスリムは1日5回、イスラム教の聖地であるメッカの方向に向かってお祈りをしなければなりません。正確な時間は国や季節によって毎日変わりますが、基本的には早朝・正午過ぎ・午後・日没後・夜です。

戒律を守れるよう、業務中のお祈りおよびスペースの使用を許可することで、ムスリムも信仰心を守りつつ働けるでしょう。1回のお祈りは5分~10分ほどで済みます。また、礼拝室を用意するのが難しくても、空いている会議室や休憩室、パーテーションで区切ったスペースがあればお祈りは可能です。

なお、このお祈りの回数や時間については、宗派によって柔軟に対応できる場合もあります。絶対に決められた時間に1日5回行うことを希望する方もいますが、勤務終了後にまとめてお祈りをしてもよいという人もいるようです。

後者の場合は、お祈りは全て自宅で行うので、仕事への影響は少ないでしょう。この点についても、面接時に確認しておくのをおすすめします。

ハラルへの理解がある

ハラル(ハラール)とは、イスラム教によって許可された行動や食べても良い食材などを指します。これらへの理解があると、ムスリムが不便を感じずに働けるでしょう。

イスラム教の戒律では、豚肉やアルコールを口にしたり触れたりすることが禁止されています。どこまでをOKとするかは個人の判断に委ねられていますが、厳格には調味料や原材料としてこれらが使われているもの、同じ調理器具を使ったものの飲食も禁止です。

外国人社員が増えてきたことから、社員食堂でハラルメニューやベジタリアンメニューを提供する企業が増えています。なかには、ハラル認定を取得して専用食器の利用や戒律に沿った調理法を徹底し、食事を提供する企業も。社員食堂の利用は福利厚生の一つです。それを利用できないのは従業員の不利益になるので、できる限りの対応が求められます。

パーティや会食をセッティングする際も、ムスリムが食事とその時間を楽しめるような配慮があると喜ばれるでしょう。材料を変えれば食事ができる場合もあるので、飲食店に対応の可否を問い合わせてみるのも良い方法です。

食べるだけではなく、豚肉や酒類の製造や販売などに関わる職業に就くことも避けるべきとされています。万が一新たなビジネスとして豚肉や酒類を取り扱うことになった場合、十分な説明と配慮が求められるでしょう。

ヒジャブの着用が可能

業務中にヒジャブの着用を認めると、ムスリム女性からの応募を集めやすくなるでしょう。イスラム教徒の女性は、肌や髪を隠すためにヒジャブと呼ばれる布を身に着けるべきとされています。ムスリム女性にとって、ヒジャブは眼鏡のように生活するうえで欠かせないものです

近年はオフィスワークだけでなく、接客業でもヒジャブの着用を可能とする日本企業が増えています。社名入りのヒジャブを作り、制服化した企業もあるほどです。ヒジャブの着用を認めることは、ムスリム社員の帰属意識を高めるほか、外部へのダイバーシティ経営のアピールにもなります。

外国人を雇用すると決まった時点で、ムスリムが入社する未来も想定して社内の服装規定を改定しておくとスムーズです。

宗教上の祝日に休暇が取れる

インドネシア人のイスラム教徒にとって最も大切な祝日は、断食明けの大祭「レバラン」です。家族で集まってごちそうを食べ、モスクで礼拝やお墓参りをします。

レバランの日程は毎年インドネシア政府が発表しており、たいていは3月下旬~5月ごろです。レバランの祝日自体は2日~4日間ですが、その前後の数日は政府により有給休暇奨励日とされており、インドネシア国内の公的機関や銀行などは約1週間営業をしません。

インドネシアを出て働くムスリムの中には、レバランに合わせて家族で休暇を取ったり、一時帰国したりする人が少なくありません。インドネシア人社員から希望があった場合には、この時期にまとまって有給を消化できるよう調節を行いましょう。

国籍に関わらず「長期休暇の取りやすさ」は外国人にとって重要なポイント。日本から遠い国の出身者は、帰省しようとすると移動だけで相当な時間がかかるからです。外国人には長期休暇を欲しいときは定められた期日までに余裕を持って相談するように伝え、できる限り希望を叶えられるように調整を行いましょう。

インドネシア人の仕事観

ここまでは、インドネシア人の特徴や宗教上の戒律について説明しました。それらを踏まえたうえで、マネジメントに直結する仕事観について見ていきましょう。

世代によって仕事に対する考え方が異なる

インドネシア人の仕事観は、世代によって傾向が異なります。

年配の人は、仕事とプライベートをはっきりと分けない人が多いようです。一方で、20代の若者は仕事とプライベートの線引きをしっかりと行い、ワークライフバランスを重視している傾向があります。このあたりは、日本人の世代ごとの違いとも通じるところがあるでしょう。

就労を目的に来日するインドネシア人は20代から30代の若年層が中心です。人によって仕事との向き合い方は異なるので一概にはいえませんが、世代ごとの特徴を知っておくだけでも教育やマネジメントの助けになるでしょう。

親孝行のために働いている

ほかのアジア各国と同じように、インドネシア人も「親を大事にすべき」という価値観を持っています。働いて得た給料を両親に仕送りする人は決して珍しくありません。特に、「技能実習」や「特定技能」の在留資格で日本に来ている人にはその傾向が強い印象です。

雇用するインドネシア人が安心して働けるように、社長や上司が実家を訪問して両親に挨拶したという企業も何社か知っています。

関連記事:「特定技能「宿泊」は多様な業務が可能!ホテルで就労できる他のビザも紹介

堅苦しい職場の雰囲気は好まない

インドネシアの職場は、仕事中におしゃべりをしたりスマートフォンを弄ったりしても問題ないという雰囲気があります。なかには、業務時間内にプライベートの買い物やお茶をしにいく人も。堅苦しい職場は好まれず、和気あいあいと楽しく働こうという空気があるようです。

そのため、日本で働き始めたばかりの人は、緊張感が感じられない行動やいわゆる「サボり」とも取れる行動をしてしまう可能性があります。時間を守るという意識が価値観があまりない気質も相まって、日本の常識では良しとされない業務態度を取ってしまう人も。

大抵の場合は本人が不真面目なわけではなく、インドネシアの仕事観や職場の雰囲気がそうさせるという点を理解しなければなりません。そのうえで、日本の職場ではどのように振る舞うべきかを教えましょう。

転職のハードルが低い

インドネシア人は転職のハードルが低く、入社して1年程度でキャリアアップのために転職することが珍しくありません。採用コストが日本ほどかからないため、雇用する企業側が無理に引き留めたり難色を示したりすることもあまりないようです。

終身雇用の考えも希薄で、会社に尽くして長く勤めるという考えよりも、「自分自身のために働く」「特定の仲間のために働く」という考えのほうが強いといえます。

インドネシア人の転職を防ぐためには、希望のキャリアにつながる仕事や、居心地の良い環境を用意することが大切です。特にムスリムが働きやすい職場はまだまだ日本に多くないため、宗教への配慮を隅々まで行き届かせることで、帰属意識を高めてもらえる可能性があります。

外国人特化の人材紹介サービス「WeXpats Agent」では、インドネシア出身者を含むさまざまな背景のグローバル人材をご紹介しています。外国人採用の課題である「離職率の高さ」「採用後のミスマッチ発覚」を防止するために、国際感覚に優れたスタッフが求職者と密な面談を重ね、スキルと人柄の両面に基づくマッチングを行います。ぜひ、こちらからお気軽にお問い合わせください。

関連記事:「特定技能「介護」の雇用方法とメリット|ほかの在留資格との違いを比較

インドネシア人と働くうえで意識したいこと

インドネシア人と同じ職場で働く際の、「すべきこと」「NG行動」をそれぞれ紹介します。文化の違いによるギャップを取り払うために、以下の点を意識してみましょう。

アットホームな雰囲気を作る

インドネシアにはアットホームな職場が多く、誕生日会や食事会、レクリエーションが頻繁に行われます。それだけ同僚との関係性を大切にする文化ということです。

インドネシア出身者が息苦しさや孤独感を感じないように、チームや部署で気軽に会話ができる雰囲気を作りましょう

地域との繋がりが深い企業であれば、その輪の中にインドネシア人が自然に入り込める機会を作るのも効果的です。地域のお祭りやマラソン大会、ボランティア活動に参加して地元住民と交流することで、社外にも外国人従業員の居場所ができ、長期定着に繋がります。

インドネシア人は日本人は黙々と忙しく働くというイメージを持っている人も多いので、なおさら意識して雰囲気を明るくすることが重要といえるでしょう。

日本のマナーや働き方の教育を丁寧に行う

インドネシア人を雇用したら、業務に関することだけでなく、日本のマナーや働き方についても教育を行いましょう。

先述したとおり、インドネシアの職場と日本の職場では雰囲気や働き方のスタンスが異なります。そのため、雇用後適切なフォローがないと、うまく適応できずトラブルや早期退職に繋がる可能性もあるのです。意図せぬコミュニケーションエラーを防ぐために、日本の職場ではどのように振る舞えば周囲の人に信頼され、よい関係を築けるのかを分かってもらう必要があります。

日本で働く外国人が増えたことから、外国人社員向けの研修教育事業を行う企業も増えてきました。日頃のサポートは常に意識しつつ、専門の研修やセミナーの利用も検討してみてください。

人前で感情的な批判はしない

誰に対してもそうですが、とりわけインドネシア人を感情的に批判するのは百害あって一利なしです。特に、人前で叱責してはいけません。

インドネシア人の多くが信仰するイスラム教の教えでは、怒ることは感情がコントロールできない恥ずかしい行為とされています。また、元々の気質として温厚な人が多いので、誰かに怒られることに慣れていない人も多いのです。人前で批判されると、恥をかかされた、大変な侮辱を受けたと感じてしまいかねません。

インドネシア人に感情的に注意をしても効果は薄く、そればかりかモチベーションを低下させ業務に影響が出る恐れがあります。日本人からすると少し指摘した程度のことでも、インドネシア人からすると「強く怒られた」と感じることも。

何か注意をしなければならないときは、ほかの人がいない個室で理論的に何がダメだったのか、今後どうしていくべきなのかを話しましょう。

頭に触れることは控える

インドネシアで広く信仰されているイスラム教では、頭は魂が宿る場所と考えられているため、勝手に触るのは控えましょう。日本人は親しみを持って頭に触れるときがありますが、インドネシア人はとても不快に感じます。談笑しているときに冗談のつもりで小突くのも、もちろん禁止です。

イスラム教国家のほか、仏教やヒンドゥー教が信仰されている国でも頭に触ることはタブーとされています。国籍に関わらず、「外国人の頭にはむやみに触ってはいけない」という認識を全体に周知していくとトラブルを防げるでしょう。

握手や食べ物の受け渡しは右手で行う

イスラム教では右手は聖浄な手、左手は不浄な手という考えがあるので、握手や食べ物の受け渡しは右手で行うよう心掛けましょう

イスラム教ではない人に戒律を守ることを強制するような人は多くありません。しかし、左手を使われるたびに不快に思っている可能性があります。コミュニケーションのときにはできるだけ右手を使うように意識すると、信頼の構築がしやすくなるでしょう。

オーバーワークにならないよう管理する

インドネシア人が必要以上に働きすぎていないか、よく様子を見守って管理をしましょう。

インドネシア人は日本人に対して「残業が多い」「働きすぎ」といったイメージを持っています。そのため、日本で働くからには無理して仕事をしないといけないのではと考えている人も。また、多くの賃金を稼ぐために進んで残業をしたがる人もいます

適宜業務量を調整し、長く健康的に働いてもらえるようにしましょう。

インドネシアの文化や言葉を知ろうとする

対等なコミュニケーションの基本は相互理解です。インドネシア人従業員に日本の文化を押し付けるのではなく、日本人従業員がインドネシアの文化や言葉を勉強する姿勢は、互いの距離をぐっと近くしてくれます。

たとえば以下の3語を覚えるだけでも、日常のちょっとしたやり取りで仲良くなるきっかけが生まれるでしょう。

  • ありがとう:「Terima kasih」(テレマカシ)
  • こんにちは「Selamat siang」(セゥラマット シアン)※英語の「Halo」も気軽に使われるあいさつ
  • おいしい「Enak」(エナック)※最後のクはほぼ発音しない

関連記事:「日本に住む外国人が増加している理由は?

まとめ

近年増加傾向にあるインドネシア人労働者は、明るく大らかという特徴を持ち、職場の雰囲気を明るくしてくれる人材です。人間関係を大切にしている人々なので、信頼を得られれば長く働いて企業に貢献してくれるでしょう。

信頼を得るためには、信仰している宗教への理解や配慮は必要不可欠です。インドネシア人の多くが信仰しているイスラム教の食事やお祈り、服装の戒律について学び、自社としてできることを考えてみましょう。

濵川恭一

監修:濵川恭一

外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net