身分系ビザとは?在留資格の種類や各種要件【雇用の注意点も】

WeXpats
WeXpats
身分系ビザとは?在留資格の種類や各種要件【雇用の注意点も】

身分系ビザは、外国人の身分や地位に対して付与されます。何となく名前は知っていても、種類や就労ビザとの違いまでは分からないという人も多いのではないでしょうか。

身分系ビザを持つ外国人は外国人労働者全体の約3割を占めます。外国人雇用を始めた場合、採用に至る可能性は十分高いでしょう。身分系ビザの種類や特徴を知っておけば、いざというときに慌てません。

この記事では、4つの身分系の種類やそれぞれの特徴、雇用のメリットを解説します。

目次

  1. 身分系ビザ(身分に基づく在留資格)とは
  2. 身分系ビザ4種の特徴と対象の外国人について
  3. 身分系ビザを持つ外国人が企業にとって雇用しやすい理由
  4. 身分系ビザを持つ外国人の雇用で気を付けること
  5. まとめ

外国人採用疑問してみませんか?

  • 制度や手続きが分かりにくい

  • コミュニケーション上の不安がある

  • 効果的な募集方法を知りたい

 

こんな悩みをお持ちの方はお気軽にご相談ください。

身分系ビザ(身分に基づく在留資格)とは

身分系のビザとは、「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の身分に基づく在留資格を指す言葉です。

身分系ビザ(身分に基づく在留資格)とはの画像

参照元:出入国在留管理庁「令和6年6月末現在における在留外国人数について

2024年6月末時点で、4つの身分系ビザをもつ外国人は日本に132万6215人います。在留外国人の総数358万8956人のうち3割以上を占めており、在留期間も長い人が多いため身近な存在といえるでしょう。

ここでは、身分系ビザの概要を解説します。

外国人の身分や地位に対して付与される在留資格

外国人が日本で活動するうえで必要となる資格が在留資格です。会話や文章のなかで在留資格は「ビザ」と呼ばれることが多くあり、このうち外国人の身分や地位に対して付与される種類をまとめて「身分系ビザ」と呼びます。

身分系ビザに分類されるのは「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の4つの在留資格です。

また、「入管特例法」により元々日本国籍を持っていた人やその子孫に付与される「特別永住者」の在留資格も、身分系ビザに分類されるでしょう。

この記事では分かりやすさを優先し、「入管法」によって定められている4つの在留資格を身分系ビザとして紹介していきます。

身分系ビザには仕事の制限がない

身分系ビザには仕事の制限がありません。理由は、「永住権の取得者」や「日本人の妻や夫」など、外国人の身分や日本での地位に付与されているからです。そのため、身分系ビザを持つ外国人は、日本人のように自由に仕事を選択できます。

専門的・技術的分野の在留資格との違いとは

専門的・技術分野の在留資格は「就労ビザ」とも呼ばれ、専門的な能力を活かした職業や高度な知識を要する職業に就く外国人に付与されます。

就労ビザは身分系ビザとは違い、職種ごとに活動内容が細かく決められているのが特徴です。たとえば、ホテルのフロントで働く外国人は、外国語を用いたフロント業務や施設案内業務をするために在「技術・人文知識・国際業務」ビザを許可されています。

たとえ同じホテルの客室清掃係の人手が足りなくても、ベットメイキングや掃除といった業務を「技術・人文知識・国際業務」ビザを持つ外国人が行うことは禁止です。一方、身分系ビザを持つ外国人は活動内容に制限がないため、臨機応変にどのような業務にも対応できます。

就労ビザは日本で働くことを目的としたビザなので、仕事に就いていなければ取り消しの対象です。一方、身分系ビザは日本で暮らすことを目的に付与されているので、働いていなくても在留し続けられます。

関連記事:「外国人エンジニアの採用ノウハウ!日本語レベルの目安や離職を防ぐ工夫

参照元:出入国在留管理庁「令和6年6月末現在における在留外国人数について

身分系ビザ4種の特徴と対象の外国人について

ここでは、「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の身分系ビザ4種の概要と対象の外国人について解説します。

永住者

「永住者」は、日本への永住が許可されている外国人に付与されるビザです。身分系ビザを持つ外国人のなかで最も人数が多く、子どもから高齢者まで幅広い年齢層の人がいます。

永住者の概要

「永住者」は、法務大臣が日本への永住を認めた外国人に付与されます。在留期限がないため、ビザ更新の必要がありません。日本国籍はないものの、ほとんど日本人と同じように生活できます。日本に永続的に在住できるため、審査はほかのビザよりもはるかに厳しいのが特徴です。

永住者の取得要件

永住者の許可を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 素行が善良であること(法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること)

  2. 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること(日常生活において公共の負担にならず、その有する資産または技能などから見て将来において安定した生活が見込まれること)

  3. その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(以下のア・イ・ウ・エのすべてに当てはまること)

(ア)原則として引き続き10年以上日本に在留していること(在留資格「技能実習」「特定技能1号」を除く)、または居住資格をもって引き続き5年以上在留していること

(イ)罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。年金や健康保険料の納付、入管法の届け出義務を適正に履行していること

(ウ)現在持っている在留資格で許可されている最長の在留期間で在留していること

(エ)公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと(伝染病の患者や薬物中毒者でないこと)

永住者の子どもとして日本で生まれた子どもは、生後30日以内に申請すれば永住者ビザを得られます。また、日本人や永住者、特別永住者の配偶者や子ども、難民認定を受けている人などは、すべての要件を満たしていなくても永住申請が可能です。

永住者の取得要件の特例

就労ビザを持つ外国人が永住者になるには、原則10年以上日本に在留していなくてはなりません。しかし、以下の条件に当てはまる場合は、特例として10年が経過していなくても永住許可を受けられます。

  • 日本人、永住者及び特別永住者の配偶者の場合、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留していること。その実子などの場合は1年以上日本に継続して在留していること

  • 「定住者」の在留資格で5年以上継続して日本に在留していること

  • 難民の認定または補完的保護対象者の認定を受けた者の場合、認定後5年以上継続して日本に在留していること

  • 外交、社会、経済、文化などの分野において我が国への貢献があると認められる者で、5年以上日本に在留していること

  • 地域再生計画の区画内に所在する公私の機関において、特定活動36号・37号の活動を行い、地域再生に貢献したと認められる者で3年以上継続して日本に在留していること

  • 高度人材ポイント表で70点以上を有している者で、下記のいずれかに該当していること

    1. 高度人材外国人として必要な点数を維持して3年以上継続して日本に在留していること

    2. 永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められ、3年以上継続して70点以上の点数を有し日本にに在留していること

  • 高度人材ポイント表で80点以上を有している者で、下記のいずれかに該当していること

    1. 高度人材外国人として必要な点数を維持して1年以上継続して日本に在留していること

    2. 永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められ、1年以上継続して80点以上の点数を有し日本に在留していること

  • 特別高度人材に該当する者で、下記のいずれかに該当していること

    1. 特別高度人材として1年以上継続して日本に在留していること

    2. 1年以上継続して日本に在留している者で、永住許可申請日から1年前の時点を基準として特別高度人材省令に規定する基準に該当することが認められること

3番~8番に当てはまる外国人はそう多くありません。しかし、1番~2番の日本人や永住の配偶者と子ども、定住者ビザを持つ外国人が永住申請をするケースがよくあります。

参照元:出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日改訂)

定住者

「定住者」とは、法務大臣により個別に日本への在留を許可された外国人に付与される身分系ビザです。さまざまなバックグラウンドを持つ人が日本社会で暮らしていくためのビザで、日系人や難民など、さまざまなケースが該当します。

定住者の概要

定住者は、人道的に日本への在留が必要な外国人に対して、一定の在留期間を指定して許可される身分系ビザです。在留期間は5年、3年、1年、6ヶ月または法務大臣が個々に5年を超えない範囲で指定し、審査のうえ許可されたら更新もできます。

あらかじめ告示されている「告示定住者」と告示はないものの例外的に許可されている「告知外定住者」があり、主なケースは以下のとおりです。

【告示定住者として認められる例】

  • 日系人(二世、三世および未成年者で未婚の四世)

  • 第三国定住難民

  • 永住者、定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、特別永住者のいずれかの扶養を受けて生活する未成年者で未婚の実子

  • 日本人、永住者、定住者、特別永住者の6歳未満の養子

  • 中国残留法人(戦後中国に留まった人やその家族)

【告示外定住者として認められる例】

  • 日本人や永住者と離婚や死別後も引き続き日本への在留を望む者

  • 家族滞在ビザで義務教育から高校卒業まで日本に在留していた者

告示外定住者は、このほかの理由で許可されることもあります。

定住者の取得要件

定住者ビザは、状況ごとに申請要件が異なるのが特徴です。この記事では、比較的申請者の多い、「離婚定住」の要件に焦点をあてて解説します。

日本人や永住者と離婚した場合、外国人は配偶者ビザ(日本人の配偶者等、永住者の配偶者等)のまま日本に在留し続けることはできません。6ヶ月以内に在留資格の変更もしくは帰国が必要です。

この際、以下の要件をすべて満たしていれば、定住者ビザを取得できる可能性があります。

  • 離婚に至るまで、客観的に見て正常な婚姻生活を3年以上送っていたこと

  • 日本で今度安定して生活できるだけの収入や資金力があること

  • 公的義務を履行していること

  • 意思の疎通が取れる程度の日本語能力を有していること

  • 未成年の子どもの養育など、在留を希望する合理的な理由があること

ただし、告示外定住者は例外的なケースであるため、個々に判断された結果、申請が不許可になることもあるようです。

参照元:
出入国在留管理庁「在留資格「定住者」」
出入国在留管理庁「「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」から「定住者」への在留資格変更許可が認められた事例及び認められなかった事例について

日本人の配偶者等

在留資格「日本人の配偶者等」は、一般的に配偶者ビザや結婚ビザと呼ばれています。

日本人の配偶者等の概要

配偶者ビザは、日本人の夫や妻、実子、特別養子に許可されます。在留期間は5年、3年、1年、6ヶ月のいずれかで、更新も可能です。家族滞在ビザのように、配偶者の扶養に入る必要はありません。

先述したように、日本人と離婚や死別した場合は、配偶者ビザの該当性を失います。

日本人の配偶者等の取得要件

夫や妻として配偶者ビザを取得する場合、「日本で問題なく生活できるか」「偽装結婚ではないか」が重点的に審査されます。主な審査項目は以下のとおりです。

  • 日本と外国人の母国の両方で法律上の結婚手続きが完了していること

  • 婚姻の実態があると証明できること

  • オーバーステイや犯罪歴など、在留状況が不良と判断される項目に該当していないこと

  • 日本で安定して暮らせるだけの経済力があること

婚姻実態は、交際中の写真やメールやLINEでの交流記録などで判断されます。極端に交際期間が短い場合や日本人側に外国人との離婚歴がある場合は、許可を得るのが難しくなるようです。

参照元:出入国在留管理庁「在留資格「日本人の配偶者等」

永住者の配偶者等

永住者の配偶者も、身分系ビザを取得し日本に在留することができます。

永住者の配偶者等の概要

「永住者の配偶者等」は、永住者や特別永住者の妻や夫、永住者の子どもとして日本で生まれ、その後も引き続き暮らしている者に許可されるビザです。5年、3年、1年、6ヶ月の在留期間があり、更新もできます。

永住者の配偶者等の取得要件

永住者の妻や夫の場合、条件は基本的に「日本人の配偶者等」と一緒です。

実子の場合、出生前後の状況によってビザの申請ができるかが異なります。生まれた場所が海外の場合は、「永住者の配偶者等」のビザは取得できません。また、両親が永住ビザを取得したのが出生後の場合も、取得は不可です。

参照元:出入国在留管理庁「在留資格「永住者の配偶者等」

身分系ビザを持つ外国人が企業にとって雇用しやすい理由

身分系ビザを持つ外国人は日本人と同じように働けるため、企業にとって雇用しやすい存在です。特に、職種の制限がないのは採用するメリットの一つといえます。

さまざまな業務を任せられる

身分系ビザは就労ビザとは異なり、日本での活動に制限はありません。そのため、さまざまな業務を行えます。多くの就労ビザでは禁止されている単純労働が行えるので、任せられる業務の幅が一気に広がるでしょう。

たとえば、小売店の場合数年店舗スタッフとして経験を積んだのち、本社配属といった柔軟な対応が可能です。外国人雇用の場合は簡単には難しい部署移動も容易なので、雇用管理がしやすくなります。

長期的な雇用が期待できる

身分系ビザを取得する外国人の多くは、日本で長く暮らすことを想定しているため、長期的に雇用できる可能性が高いでしょう。

在留期限のない永住者はもちろん、配偶者ビザや定住者ビザを持つ外国人も、ビザの性質上日本に生活基盤を持っている人が多い傾向にあります。

せっかく教育コストをかけて育てた外国人人材が、数年で母国に帰ってしまうのは企業にとって大きな損失です。長く働いてくれる身分系ビザを持つ人の雇用は、外国人雇用における懸念を一つ払拭できる策なのではないでしょうか。

ビザ関連の手続きが少ない

永住者はビザの更新手続きが必要ありません。そのため、更新の度に企業が書類を用意する手間がなくなります。7年に一度在留カードの更新は必要ですが、ビザの更新と比べたら非常に簡単な手続きです。

ほかの身分系ビザも、身分や地位に対して許可されるという特性上、普通に生活していれば更新が不許可になるのは稀といえます。「更新できないかも」「帰国してしまうかも」といった懸念がないので、長期的なプロジェクトや重要な仕事を任せやすくなるでしょう。

外国人採用に特化した人材紹介サービス、「WeXpats」身分系ビザをはじめ、さまざまなビザを持つ外国人人材の紹介が可能です。

在留資格や入管法の知識が豊富なアドバイザーが在籍しているので、募集時から雇用後に至るまで疑問点を相談できます。

ぜひこちらからお問い合わせください。

身分系ビザを持つ外国人の雇用で気を付けること

身分系ビザを持つ外国人を雇用する際は、在留カードをしっかり確認してからにしましょう。また、身分が変わる可能性がある点にも注意が必要です。

在留資格をよく確認する

身分系ビザを持つ外国人を雇用する際は、在留カードをしっかり確認しましょう。理由は、就労制限がないことから、偽造の対象になりやすい現状があるためです。

雇用契約前に許可を得て在留カードを預かり、在留資格の種類や就労制限の有無を確認します。なお、近年は透かし文字やホログラムまで精巧に真似た偽造カードが出回っているため、初めて在留カードを見る人が本物かどうかを見分けるのは困難です。

不安な場合は、出入国在留管理庁の提供する「在留カード等読取アプリケーション」での確認をおすすめします。

プライベートの変化で身分系ビザを失う可能性がある

外国人はプライベートの変化によって身分系ビザを失う可能性があります。

身分系ビザは日本での身分や地位に対して付与されているため、就労ビザよりも安定したビザといえるでしょう。しかし、配偶者ビザの場合は、離婚や死別によって該当性を失うケースがあります。

前述したとおりほかのビザに変更する道もありますが、定められた条件を満たす必要があり簡単なことではありません。帰国しなくてはならないケースも十分あります。

「身分系ビザだから大丈夫」と安心せず、定期的にヒアリングや面談を行い、ビザの状況を確認しましょう。

参照元:出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション サポートページ

まとめ

身分系ビザは「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」を指します。それぞれ就労制限がなく、ほとんど日本人と同じように雇用できるのがメリットです。

雇用管理がしやすいため、初めて外国人雇用をする企業も無理なく採用できるでしょう。

WeXpats

執筆:WeXpats

WeXpats専属ライターが執筆しています。WeXpatsは「海外へ挑戦する人々を後押しし世界中の就労に関わる問題を解決する」をミッションに掲げてメディア運営をしています。実際に、株式会社レバレジーズとして外国人労働者を雇用する実績のある企業からためになる情報をお届けします。 https://we-xpats.com/ja/destination/as/jp/