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人手不足の解消や、優秀な人材の獲得を目的として、積極的に外国人を雇用する企業が増えています。そうした状況で、文化や言葉の違いを意識した教育・マネジメントの重要性が高まっています。
適切な教育は、仕事の正しいやり方を習得させるだけでなく、モチベーションの向上にもつながります。また、異なる文化のメンバーが相互理解を深め、良好な人間関係を築くためには、上司やリーダーのマネジメントスキルが欠かせません。
この記事では、外国人スタッフのオンボーディングを成功させる具体的な方法を紹介します。企業のビジョン・日本語・ビジネスマナーといった内容まで教育に盛り込むことで、理解不足による早期離職やトラブルを防止しましょう。
目次
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コンビニやホテルを利用すると、外国人スタッフが働いている姿をよく目にします。日本に住んで働いている外国人が年々増えていることを実感している人も多いでしょう。
実際にどのぐらい増えているかは、厚生労働省が発表している「外国人雇用状況」によって確認できます。2008年10月に発表された第1回の資料では、日本で働く外国人の数は48万6398人でした。その後、外国人の数は年々増え続け、2023年10月時点で日本で働く外国人労働者数は過去最高の204万8675人となりました。
外国人労働者の在留資格では「技術・人文知識・国際業務」を含む「専門的・技術的分野の在留資格」の増加率が最も大きく、前年同月と比較して11万5955人もの人が増えています。
外国人スタッフが増えている大きな理由の一つが深刻な人手不足です。近年、人材不足が顕著な業界には、ITや介護、物流、ホテル、建設、飲食業界などがあります。これらの業界では、今後ますます外国人の雇用が増えていくでしょう。
関連記事:「外国人労働者を受け入れるメリット・デメリット|雇用の流れも解説」
関連記事:「【行政書士監修】外国人採用まるわかりガイド|注意点・メリット・募集・雇用の流れ」
参照元 厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成20年10月末時点)」 厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成28年10月末時点)」 厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」
日本で就労している外国人の国籍は、ベトナムやフィリピン、インドネシア、ミャンマーなどさまざまです。多様な国籍の人々と一緒に働いていると、言語や文化面のさまざまな課題が生まれてきます。
雇用企業からよく聞く悩みとして、「外国人スタッフの日本語能力が不足している」「日本人スタッフとのコミュニケーションが上手くいっていない」といった課題が挙げられます。
ほかにも、以下のような課題感を抱えている企業が多いようです。
外国人スタッフのみに課題があるかというとそうではありません。外国人スタッフを雇用する企業のほうにも、改善すべき点は存在します。
たとえば、外国人スタッフの日本語能力を課題として挙げる企業が多いことは前述しました。しかし、その改善策として、日本語研修を実施している企業は少ないという現状があります。
以下の項目は企業側の改善が求められる課題です。
これらの現状と課題が改善されないままでいると、外国人スタッフに不安や不満が溜まっていくでしょう。最悪の場合、外国人スタッフの離職を招く恐れがあります。
それでは、外国人スタッフの不安や不満を防ぐためにはどのような対策が必要なのでしょうか。その答えの一つとして、外国人スタッフへの計画的で丁寧な教育が挙げられます。
そもそも、外国人スタッフへ教育を行う目的は、彼らの持つ技術を最大限に発揮させ、企業の目標を達成することです。そのためにまず必要なのが、外国人スタッフに対する企業の理念や文化、目標のマインドセットといえます。基礎となる企業の考え方をしっかりと理解してもらえれば、やりがいが生まれるでしょう。提示されたビジョンに沿って外国人スタッフ自身が考えて動くことで、自発的な成長も期待できます。
さらに、ビジネスに必要な日本語やマナーの教育によって、日本人スタッフとのコミュニケーションが円滑になり、業務をよりスムーズに進められるようになると考えられます。外国人スタッフが職場で疎外感を抱く状況が少なくなり、企業への帰属意識も高まるでしょう。しっかりとした教育は、外国人スタッフに企業に定着し活躍してもらうために必要不可欠です。
外国人スタッフへの教育の必要性を把握したところで、実際に行うべき内容を見ていきましょう。
外国人スタッフへ教育を行う際は、順番も重要です。まずは、会社が目指すビジョンや目標、理想とする人物像を提示します。
その後、企業が目指すビジョンや求める人物像に近づくために必要だと説明してから、日本語やビジネスマナーの教育を実施しましょう。
最後に実際の職場を見学すると働いている自分をイメージできて、スムーズに配属先に移行できると考えられます。
外国人スタッフが「何のために学んでいるのか」「この講義は不要なのでは」と感じないように、系統立てた教育を行いましょう。
入社してすぐの外国人スタッフには、まず会社が目指すビジョンや目標、理想とする人物像の提示を行いましょう。
自分たちが働く企業が社会でどのような役割を担っているのか伝えることで、やりがいが生まれます。また、企業全体、もしくは外国人スタッフ本人の目標を具体的に提示することも、モチベーションを高めるのに有効です。
会社が目指すビジョンや目標を伝える際は、ただ言葉で言うのでは不十分です。もともと、外国人スタッフは日本人と異なる言語や価値観を持っています。そのため、誤解を防ぐためには、具体的な数字の提示や論理的な説明が必要です。「このようなビジョンがあり、それには△△の利益を達成する必要がある」といったように具体的に説明すると伝わりやすいでしょう。
さらに、企業文化のように言語化しにくい内容についても教育が必要です。日本人であれば働いているうちに自然と理解できますが、外国人の場合は入社後に明確に伝えたほうが後々のトラブルが防げるでしょう。あらかじめ、企業文化を伝えておくと、外国人スタッフが職場に馴染みやすくなります。
日本の企業でスムーズに業務を行うためには日本語が不可欠です。しかし、日本での就労を希望する外国人の多くが、ビジネスレベルの日本語を使えるとはいえません。そのため、入社後の日本語教育が必要になります。
外国人のなかには、専門的な教育を受けていて日本語での専門用語の読み書きはできても、自然な敬語を話せない人がいます。一方、日本語での会話はできても、ビジネス文書の作成に必要な読み書き能力が足りていない人も少なくありません。
企業は採用した外国人の様子を見て、どのような日本語教育が効果的であるか考える必要があります。日本語の単語やよく使うフレーズをただ教えるだけでなく、ロールプレイングやビジネス文書の作成・添削を通して、実践的な語学力を身に付けられる教育が必要です。
さらに、日本人特有の「すべてを言葉にしない」「相手に察してもらおうとする」コミュニケーション方法についても教育しましょう(このようなハイコンテクストなコミュニケーションを社内から減らしていくことも大切です)。
なお、技能実習や特定技能の在留資格には、取得要件として一定以上の日本語能力が含まれています。しかし、いきなり流暢に会話できる人材はまれであり、入社後に基礎的な日本語教育から始めなければならないことも珍しくありません。
日本に住んで長い外国人を雇用する場合であっても、完璧な日本語を求めてしまうとすれ違いが生じる原因になるでしょう。外国人雇用において、日本語の教育や、日本語の誤りの許容を避けて通ることはできないとお考え下さい。
また、日本語でのパソコン操作ができるかどうかも確認が必要です。日本語での会話については問題ない場合でも、仕事のメールが読めなかったり、日本語キーボードでのパソコン操作ができなかったりする場合、仕事に支障が出るかもしれません。
名刺交換や席次といったビジネスマナーの教育も重要です。日本には特有のビジネスマナーが多く、多くの外国人スタッフにとって馴染みがありません。顧客や取引先とのトラブルを防ぐため、マナーの教育は入念に行いましょう。
また、仕事の進め方や社内の人間関係におけるマナーも理解してもらう必要があります。
たとえば、日本で一般的な「報告・連絡・相談(報連相)」の徹底は、海外にはない概念だといわれています。そのため、外国人スタッフに「報連相」を求めると、自分が信用されていないと感じて不満に思う人がいるのです。このような事態にならないように、あらかじめ「日本ではこまめに報告や連絡、相談をしたほうが良いとされている」と教育する必要があります。
また、日本には、同じ役職でも年上や自分より先に入社した人を「先輩(目上の人)」として敬う文化があることも伝えましょう。
表面的なビジネスマナーだけでなく、日本人に根付いている習慣や概念も伝えると、外国人スタッフが職場に馴染みやすくなるでしょう。
教育課程の最後に、外国人スタッフが実際に配属される職場の見学を行いましょう。あらかじめ、一緒に作業を行うスタッフや使っている設備を見ることで、実際に働いている自分をイメージしやすくなります。その結果、外国人スタッフが足りないと感じた知識を配属前までに勉強できたり不安が取り除かれたりするでしょう。見学のルートや内容は、外国人スタッフの目線になって知りたいことや見たいことを考えて決めるようにします。
外国人スタッフの教育係となる社員も、準備や心構えが必要です。外国人スタッフの教育の効果を高めるために、8つのポイントを押さえておきましょう。
外国人スタッフの教育において重要なのは、日本の「常識」に捉われないという点です。
多くの場合、「常識」とは同じ価値観を共有する集団でしか通用しない考え方です。万人に通用する「常識」は存在せず、日本の常識とされている価値観が、世界では非常識とみなされる場合も少なくありません。
たとえば、日本人の多くは、指示をすべて言葉にしなくても意図を理解し仕事を行います。いわゆる空気を読んで判断するという文化があります。しかし、これは日本における常識であり、海外では一般的でありません。
外国人スタッフを教育する際は、指示の内容や意図を明確に言語化する必要があります。例として、提出物を依頼する際は「時間があるときに対応して」「なるべく早く対応して」ではなく、「△月△日まで出して」と具体的な締め切りを伝えることが重要です。
「常識的に分かるだろう」と高を括って外国人スタッフの教育を行っていると、意思の疎通が上手くいかずトラブルになる可能性も。問題が生じた際は自分が当たり前と思っている価値観を通すのではなく、「前提となる考え方が異なっているのでは」と疑う姿勢を持ちましょう。
外国人スタッフの教育係となる社員は、自分の感情や思考に向き合い冷静な判断をしなければなりません。相手に対して気になる点がある場合、自分の主張を伝える前にまず自身の感情と思考を言語化してみましょう。それから、気になる理由が「自分が所属する集団(国・企業など)の文化」と「自分自身の感情や状況」のどちらから生じているのかを考えてみる必要があります。
たとえば、「手が空いた外国人スタッフがほかの人を手伝わないのが気になる」という状況を想像してみてください。
まず、教育係という立場から「業務時間中に何もしていないのは問題外だ」と考えるでしょう。日本には「賃金が発生している就業中は手を動かすのが当たり前」という考え方があるからです。また、「一緒に働くスタッフから反感を買ってしまうのではないか」と心配する人がいてもおかしくありません。「自分の業務が終わったらまだ終わっていない人の仕事を手伝う」という考え方が一般的に浸透しているからです(=所属する集団の文化)。
一方、もし自分が忙しくて大変な思いをしている場合、「自分がこんなに忙しいのに暇そうにしていてうらやましい」と考える人もいるでしょう。(=自分自身の感情や状況)。この場合、自分の感情面から相手の行動を批判しても、納得しにくいと考えられます。
外国人スタッフの教育を行う際に気になる点がある場合、企業の規則や価値観、業務の効率という観点から説明するのがおすすめです。この場合であれば「お互いに助け合って業務を早く終わらせると目標を達成しやすくなる」といったメリットを伝えると納得しやすいでしょう。
ただし、日本人の価値観や習慣の一方的な押し付けはしてはいけません。日本に馴染みのない外国人スタッフにとって、理解しがたい日本特有の価値観や習慣も存在します。
外国人スタッフに理解してもらうためには、日本の文化や価値観を説明することは大切です。しかし、説明しても相手が受け入れられない場合もあります。文化や価値観を認め合いながら仕事ができるように、お互いの意見を交わしながら歩み寄る姿勢が重要です。
外国人スタッフを教育する際は、言語や文化、価値観といった背景の調査が必要です。採用した外国人スタッフの出身国や文化圏には、どのような習慣や宗教的な文化、仕事観があるのか、事前に詳しく調べておきましょう。
たとえば、その国に関する書籍を読む、国民性について説明した動画を見るといった方法があります。
外国人スタッフの傾向を分析する際に、国ごとの価値観や考え方を示した指標を利用するのも一つの手です。各国の傾向を分かりやすく示した指標に、オランダの社会心理学者ホフステードが作った「ホフステードの6次元モデル」があります。このモデルで分かるのは、以下の6つの傾向です。
外国人スタッフの出身国でどのような価値観や考え方が一般的か分かるので、相手を理解する際に役立つでしょう。ただし、指標はあくまでも参考として見る必要があります。調べた情報に固執しすぎると、実際の相手と乖離した人物像を膨らませる事態に繋がりかねません。
外国人スタッフの教育を行う際は、事前に社内のルールを明確にし、暗黙の了解を無くすのが重要です。たとえば、「始業の△分前に来て作業着に着替えておく」「休憩は決められた時刻に取る」などのルールを明確にまとめて、マニュアルにしておくとよいでしょう。共通言語や指示命令系統、トラブルが起きたときの報告の仕方などもまとめておくのがおすすめです。
外国人スタッフを教育していくなかで、ルールの変更が必要になる場合も考えられます。その際は、問題が起きた都度、ルールを改善し周知していくようにしましょう。
また、マニュアルに関しては日本語だけでなく英語のマニュアルも準備しておきましょう。ある一定の言語圏から受け入れたスタッフが多い場合は、その地域で使われている言語のマニュアルを作成すると、理解度が上がり認識の齟齬を減らせます。
外国人スタッフを教育する上司には、相手の背景や価値観に理解し適切なフォローを行い、成長を促す指導力の高さが求められます。相手の気持ちを汲み取るコミュニケーション能力の高さも欠かせません。また、多国籍な人材がいるチームをまとめ、課題解決やプロジェクト成功に導く能力も必要です。
外国人スタッフを指導する上司はセミナーや本を利用して積極的に学びを深め、自身のマネジメント力を高めるようにしましょう。外国人雇用管理士や外国人雇用管理主任者といった外国人雇用に関する知識を取得できる資格試験を受験するのも一つの手です。
外国人スタッフを教育する際は、相手の様子をよく観察して気持ちや心理状態を考慮するのが重要です。特に、日本語での意思疎通が十分でない場合には、相手の反応を見て指示の理解度を確認する必要があります。
外国人スタッフの気持ちや理解度を確認する際に有用なのが、表情やジェスチャーです。なお、ジェスチャーは国によって異なります。「はい」「いいえ」など、外国人スタッフの出身国の簡単なジェスチャーを知っておくと、相手を理解する際に有用です。
教育を担当している外国人スタッフから質問を受けた際は、理由を論理的に説明する必要があります。たとえば、「この作業はどうして必要なのか?」と質問され、「そういうルールだから」と答えても、外国人スタッフは納得しにくいでしょう。作業の必要性やメリットなどを説明すると、相手の理解を得やすくなります。
なお、「ほかの人に迷惑がかかる」という理由は、外国人スタッフに対してあまり説得力がありません。外国人スタッフの評価や企業の利益に関わるといった観点から説明できると良いでしょう。
外国人スタッフが悩みやトラブルを抱えた際に気軽に相談できる相手を決めておくのも、おすすめです。外国人スタッフが入社すると、仕事のやり方や社員同士のやりとりで問題が起きる場合が想定されます。そこで、メンターがすぐにがフォローやアドバイスを行える体制を構築しておくと、外国人スタッフが職場に馴染みやすくなるでしょう。
メンターは、外国人スタッフと同じ言語を話せる人が適任です。外国人の母国語が話せる上司や同じ国籍の先輩が相談に乗れると、安心して話しやすいでしょう。
こうした安心感の醸成は入社前から行っておくことが理想です。入社前からメンターと話せる機会を設けたり、あらためて不安や要望をヒアリングしたり、安心して入社できるよう準備を進めましょう。
外国人スタッフと自社の間に入って上手く調節してくれる人が欲しい場合、人材派遣会社を通じて雇用するのも一つの手です。
外国人スタッフの教育が成功すれば、以下のような成果が期待できます。
ほかにも、「モチベーションが上がる」「人間関係が円滑になる」「イノベーションが起きる」といった成果が考えられます。
人間はただ闇雲に「がんばれ」と言われるより、はっきりとした目標があったほうが努力しやすい生き物です。外国人スタッフへ企業のビジョンや理想とする人物像の教育を実施することにより、明確な目標が分かりモチベーションが上がるでしょう。
外国人スタッフの意欲が向上すれば、一緒に働く日本人社員にも好影響を与えるでしょう。職場全体の士気が向上し、活気が生まれることを期待できます。
外国人スタッフが日本の企業で働くうえでもっとも障害になるのが言語の違いです。日本語が話せないため、コミュニケーションが取れず仕事に支障をきたす場合も少なくありません。言い換えると、日本語教育によって、外国人スタッフがビジネスレベルの会話・読み書き能力を得られれば、大変働きやすくなると期待できます。
さらにビジネスマナーの教育によって、同じ企業のスタッフや顧客に対しての適切な振る舞いを学ぶことができ、人間関係が円滑になる効果も。人間関係が円滑で風通しの良い職場は安心して働けるため、外国人スタッフも成長しやすいでしょう。
外国人スタッフの強みは、なんといっても日本人と異なる言語や文化、価値観などを持っている点です。日本人スタッフとは異なる視点からの意見やアイディアを得られる場合も少なくありません。
たとえば、効率的な作業動線や不要な業務の発見などが挙げられます。日本人スタッフにとって当たり前だった作業でも、外国人からの質問によって改善点に気付く場合があるでしょう。
ほかにも、海外向けの商品の企画や日本を訪れる外国人向けのサービスの開発をする際に、外国人スタッフのアイディアが生きる場合もあります。お互いの文化や知識をすり合わせると、イノベーションが起きると期待できるでしょう。
外国人スタッフの教育は必ずしも上手くいくとは限りません。ここからは、外国人スタッフの教育が不十分な場合に想定される問題を紹介します。教育が上手くいかなかった場合の例を知ることで、どのような対策をとったら良いか考える手掛かりになるでしょう。
ほかにも、「文化や習慣の違いから齟齬が生じる」「言語が異なるためにコミュニケーション不足が起きる」「外国人スタッフが職場で孤立する」「キャリアに対する考え方の違いから離職が起きる」といった事態が考えられます。
外国人スタッフの教育が上手くいかないと、仕事や休暇に対する考え方、上司に対する姿勢などから大きな祖語が生じる可能性があります。
たとえば、外国人スタッフと日本人では仕事の範囲の捉え方が異なります。外国人は契約内容を重視するため、採用時に雇用契約書で定められた範囲以外の業務は行いません。そのため、前述したような「手が空いた外国人スタッフがほかの人の手伝いをしない」といった状況が起きるのです。この場合、もし仕事を明確に振り分けずに手の空いた人が業務を引き受けると決めていたら、締め切りに間に合わなくなる可能性があります。最初は小さな齟齬でも大きなトラブルに発展する可能性があるので、注意しましょう。
外国人スタッフを教育する際に大きな壁となるのが、言語が異なるために起きるコミュニケーション不足です。言葉が通じないためにコミュニケーションが不足すると、相手の理解度を把握しにくくなります。実際に実務を行う段階で必要な知識が頭に入っていなかったという事態も容易に考えられるのです。
もし、外国人スタッフ自身が理解不足を認識していても、日ごろからコミュニケーションが少ないと疑問点を質問しにくい環境になりがちです。トラブルが起きた際に相談しにくいというリスクもあります。日ごろから積極的に会話を行い、質問や相談をしやすい環境づくりを心がけましょう。
文化や習慣、言葉の違いから生じる外国人スタッフの職場での孤立も、よく起きる問題です。たとえば、現場の流れを読んで動く習慣がない外国人が協調性がないと判断され、ほかの社員との間に溝が生じるケースがあります。
上手く信頼関係が築けず孤立する期間が長くなると、外国人スタッフの離職に繋がる場合も。外国人スタッフが職場に馴染むためにも、ビジネスマナーや日本人の考え方に関する教育は重要です。
キャリアに対する日本独自の考え方についても、外国人スタッフにしっかりと教育する必要があります。なぜなら、日本的なキャリアの積み方を知らず、不信感を感じた結果、離職する外国人スタッフがいるからです。
海外では、日本のように多岐にわたる業務を経験しながらキャリアアップを図る方法は一般的ではありません。前述したとおり、採用時に厳密に配属や業務内容が決められており、契約した内容から外れる事態を良しとしないのです。そのため、外国人スタッフが納得していない配属の変更や業務の追加があれば不満に感じ、離職に繋がる可能性があります。
キャリアに対する考え方の違いによる離職を防ぐためには、あらかじめ日本企業で一般的な経験の積み方を説明し理解を得るのが重要です。
外国人スタッフが企業に定着してもらうには、企業のビジョン・目標のマインドセットや日本語、ビジネスマナーなどの教育が必要です。企業側は異なる背景を受け入れ、外国人スタッフの価値観や意向を尊重し、適切な指導やフォローを行いましょう。相手の理解度や状況に応じた教育は齟齬やトラブルを防ぎ、外国人スタッフの離職を防ぎます。
丁寧に教育を行い多様な背景を持つ人材を適切にマネジメントできると、外国人採用の安定化ができます。さらに、企業のグローバル化や人材不足の解消に繋がるでしょう。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net