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外国人を採用する企業の多くが、応募者の日本語レベルを知るために「日本語能力試験(JLPT)」の結果を確認しています。日本語能力試験は、外国人が日本で活動するために必要な「在留資格」の取得要件にも組み込まれており、受験者数が非常に多い試験です。
この記事では、N1~N5の各レベルでそれぞれどの程度の業務が任せられるか、どのくらい日本語を理解できているのかなどをわかりやすくまとめています。また、日本語能力試験の結果と実際の会話力との差についての注意点も解説しているので、ぜひご一読ください。
目次
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日本語能力試験(JLPT)は、日本語を母語としない人の日本語能力を認定する試験として1984年に創設されました。現在では世界最大規模の日本語の試験です。
「日本語能力試験」という名称に加え、「Japanese-Language Proficiency Test」の頭文字を取って通称「JLPT」とも呼ばれています。
日本語能力試験は、外国人の日本語能力を示す指標として最も一般的な試験です。そのため、入学や就職、昇給などのさまざまな場面で日本語能力試験の合格レベルが判断材料として使われています。
2023年の日本語能力試験の応募者数は約148万人で過去最高を記録しました。このうち海外在住の応募者数は100万人を突破しており、国内・海外ともに受験者が増加傾向にあります。
日本語能力試験(JLPT)には、以下の4つの特徴があります。
試験は、「言語知識」「読解」「聴解」の3つの科目で行われます。各科目にそれぞれ基準点が設けられ、ほかの科目が合格点に達していた場合でも、基準点に満たなかった科目が1科目でもあれば不合格です。
参照元 日本語能力試験(JLPT)「過去の試験データ」 日本語能力試験(JLPT)「4つの特徴」
日本語能力試験で測れるのは、「言語知識」「読解」「聴解」の能力です。
試験はマークシート方式で、選択肢の中から正しいものを選んで解答します。記述問題やスピーキング能力を測る会話の試験はありません。
日本語能力試験は、国内では年に2回行われます。2024年の日本語能力試験の実施日は、第1回が7月7日(日)、第2回が12月1日(日)です。試験日程や詳細情報は、「日本語能力試験」または「日本国際教育支援協会」の公式Webサイトで発表されます。
参照元 日本国際教育支援協会「試験実施案内」
日本語能力試験は、5段階のレベルで評価されます。N5が最も易しいレベルで、N1が最も難易度の高いレベルです。自分で受験レベルを選択できるため、たとえばN2レベルに合格していなくてもN1レベルに挑戦できます。
2023年第2回(12月)の各レベルの合格率は以下のとおりです。
N1:27.8%(国内)32.7%(海外)30.9%(国内・海外合計)
N2:33.7%(国内)42.2%(海外)38.7%(国内・海外合計)
N3:32.0%(国内)37.6%(海外)35.1%(国内・海外合計)
N4:33.0%(国内)31.0%(海外)31.6%(国内・海外合計)
N5:55.9%(国内)46.0%(海外)46.7%(国内・海外合計)
難易度が最高レベルのN1の合格率が、全レベルの中で最も低い結果となっています。また、日本語能力試験のすべてのレベルを合計した国内外の合格率は35.5%でした。
参照元 日本語能力試験(JLPT)「過去の試験データ」
日本語能力試験では、レベルが上がるにつれて表現や文法が複雑になります。最も難しいN1レベルは、日本語ネイティブでも頭を悩ませる問題が出題されるほどの難易度です。
ただし、前述のように日本語能力試験の問題は「言語知識」「読解」「聴解」のみであり、実際のコミュニケーションにおいて重要な“話す能力”は判断できません。また、回答は全て選択式であるため、自分自身で文章を作成するライティングスキルの指標とするにはやや不安が残ります。
そこでここからは、外国人専門の人材紹介サービス「WeXpats Agent」を運営する弊社の主観も交え、N1からN5までの各レベルの日本語能力を採用担当者向けに解説します。
最上級であるN1レベルの難易度は相当のものであり、日本人であっても満点を取れない可能性があります。単に知識があれば回答できるわけではなく、高度な読解力を試される文章問題も出題されるからです。N1に合格できる日本語能力があれば、ネイティブとほぼ同等のコミュニケーションが取れると考えて問題ありません。
__の言葉の読み方として最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
彼は今、新薬の研究開発に挑んでいる。
1.はげんで 2.のぞんで 3.からんで 4.いどんで
高度な会話はもちろん、日本語のプレゼン資料や企画書の作成も任せられるでしょう。高い日本語能力を活かして、業務で必要な資格の取得に挑戦してもらうことも可能です。実際、弊社が知る限りでも、キャリアコンサルタント、衛生管理者、宅地建物取引士、旅行業務取扱管理者などに合格している外国人がいます。
また、在留資格に関する申請で有利に働きやすい場合もあります。
総じてN1合格者は、企業にとって即戦力となる魅力的な人材であり、日本人同様に幅広い職種での活躍が期待できます。
ただし、それだけに人材側が求める条件も高く、募集をかけてもなかなか人が集まらないケースもありえます。安易にN1合格を採用基準にせず、以下に続くN2レベルやN3レベルの解説にも目を通したうえで、本当にN1レベルの日本語能力が必須かどうかよく検討しましょう。
【N1レベルの読解力】
複雑な評論や抽象的な小説など、ある程度難しい文章であっても構成や内容を理解できます。
【N1レベルのリスニング力】
日本語ネイティブの日本人が自然に感じられるスピードの会話をある程度正確に聞き取れます。専門性の高いニュースや講義であっても理解可能です。
N2は「ネイティブレベル(N1)」と「日常会話レベル(N3)」の中間、「ビジネスレベル」といわれることが多い難易度です。日常的な会話であればネイティブに近い自然なスピードで行え、畏まった敬語表現もかなり高い水準で理解できます。
日本語を用いたアウトプットの表現力や正確性はN1合格者に劣りますが、会話や読解の能力だけでいえばN2で十分なケースがほとんどです。
()内の言葉に意味が最も近いものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
田中さんは(単なる)友人です。
1.大切な 2.一生の 3.ただの 4.唯一の
N2合格者が一般企業のオフィスワーカーとして働く場合、取引先への商談やプレゼンを行う営業職はやや難易度が高いかもしれませんが、自社の社員とのやり取りが中心の職種であれば基本的に問題ないでしょう。
ただし、JLPTの問題は選択式であり、文章を書く問題はありません。日本語の文書や資料の作成を依頼する際はサポートが必要です。
接客業においては十分以上の日本語能力を有しているため、マニュアル通りの接客にとどまらない業務、たとえば外国人アルバイトの教育係やメニューの翻訳作業なども任せられます。
外国人特化の人材紹介サービスを運営する弊社の所感を述べるなら、競争率の高いN1に絞って募集するよりも、採用基準をN2に落としてサポート体制を充実させる方が、人材が継続的に集まりやすくなります。特に人手不足解消を目的に外国人を採用する場合はご一考ください。
【N2レベルの読解力】
雑誌・新聞・ネットニュースなど、一般的な話題に関する平易な文章を読んで内容を理解できます。
【N2レベルのリスニング力】
日本語ネイティブの日本人が自然に感じられるスピードの会話をほぼ正確に聞き取り、話の流れや要旨を把握できます。
N3は受験者数が最も多い「日常会話レベル」です。N3に合格できる語彙があれば、流暢な会話は難しくとも、意志の疎通が取れずに困ることは無いでしょう。
つぎの文の()に入れるのに最もよいものを、1・2・3・4から一つえらびなさい。
父が短気なの()、母の方は気が長い。
1.において 2.に対して 3.について 4.によって
よく使用する敬語表現や定型文をマニュアル化すれば、接客業でも問題なく採用できます。文法の基礎は完成しているため、難しいフレーズであっても教えればすぐに使いこなせるでしょう。
ただし、常用漢字約2000字のうちN3で習得する漢字は約600字にとどまります。600字というと、小学4年生終了時に学んでいる漢字の数よりやや少ない程度です。業務で漢字の読み書きが多発する場合、常に周囲の日本人がフォローできる環境を整えたり、フリガナを振ったりといった工夫が必要となります。
N3は資格保持者が多い分、本人の経験による日本語能力の差が大きいレベル帯ともいえます。コンビニや飲食店でのアルバイト経験がある人であれば、接客を通じてN2やN1相当の自然な日本語を扱えるようになっていることも珍しくありません。雇用する際は実際のスキル感をしっかり面接で確認し、十分なサポート体制を整えましょう。
【N3レベルの読解力】
日常的な話題について書かれた文章を読んで、おおよその内容を理解できます。専門用語や難しい漢字が多い文章は、言い換え表現が与えられれば要旨を理解可能です。
【N3レベルのリスニング力】
やや自然に近いスピードの会話を聞き、話の流れや要旨をおおむね把握できます。
N4は「特定技能」や「技能実習」の在留資格の要件になっており、「最低限これくらいの日本語が使えれば日本で生活できる」という目安になる日本語レベルです。ただし、試験の問題文はひらがなが中心であり、リスニング問題のスピードもゆったりしています。
()に 何を 入れますか。1・2・3・4から いちばん いい ものを 一つ えらんで ください。
A「わたしの けしゴム、見ませんでしたか。」
B「あ、つくえの 下に()よ。」
1.おちています 2.おちていません 3.おちます 4.おちません
N4レベルの話者と会話する際は、日本語特有の遠回しな表現は使用せず、伝えたいことをシンプルに話す必要があります。また、こちらの言っていることは大体理解できていても、自分の意見を日本語で伝えられない人も少なくありません。コミュニケーションを取る際は、どこまで内容を理解できているか細かく確認しましょう。
日本語をあまり使用しない単純労働を任せる分には、N4を採用基準としても差し支えないでしょう。しかし、日本語での指示が通らない可能性もあるため、翻訳アプリを介して説明を行うなどのフォローアップが必要です。また、漢字はごく簡単なものしか分からないため、たとえばマニュアルを作成する際は必ずフリガナを振ってください。
接客業は難易度が高いものの、セルフレジやタッチパネルを用いた業務効率化が進んでいる店舗であれば、N4レベルでも働ける可能性があります。
関連記事:【企業紹介】猫ロボットが実現させた「JLPT N4で働けるファミレス」 ガストやジョナサンのバイトが外国人に選ばれる理由
【N4レベルの読解力】
基本的な語彙や漢字を使って書かれた、身近な話題の文章を読んで理解できます。
【N4レベルのリスニング力】
日常的な場面でゆっくりと話される会話であれば、内容をほぼ理解できます。
N5はJLPTの初級であり、日常会話でよく使われる表現や挨拶などを理解し、ごく簡単なコミュニケーションがとれる程度の日本語レベルです。
()に 何を 入れますか。1・2・3・4から いちばん いい ものを 一つ えらんで ください。
弟は へや() そうじを しました。
1.が 2.を 3.に 4.の
合格者には日本語の学習を始めて間もない人も多いため、語彙力が少なく日本語のみの会話は難しいといえます。N5を採用基準とする場合は、社内研修で日本語教育を行うなど、トレーニングの時間を十分に確保しましょう。
単純労働であっても、業務内容を日本語の説明のみで理解してもらうことは難しいため、通訳が可能なスタッフを別途雇用した方がよいでしょう。
【N5レベルの読解力】
ひらがなやカタカナ、ごく基本的な漢字で書かれた文章を読んで理解できます。
【N5レベルのリスニング力】
日常的な場面でゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聞き取れます。
参照元 日本語能力試験(JLPT)「N1~N5:認定の目安」 日本語能力試験(JLPT)「日本語能力試験のメリット」
実際に外国人の採用を検討している担当者の中には、より直接的に「N1~N5のどのレベルであれば自社の業務で採用できるのか」を知りたい方もいるでしょう。ここからは、職種ごとに必要とされる日本語能力試験のレベルを解説します。
外国人エンジニアの求人で一般的な日本語能力はN2~N3レベルです。
日本語でスラスラと仕様書を読んだり、社外の顧客と円滑にコミュニケーションを取ったりするためには、N2程度の日本語能力が望ましいといえます。
しかし「仕様書は翻訳ツールを補助的に使って読めればよい」「社外とのやりとりは周囲の社員がサポートすればよい」といった環境であれば、N3レベルも採用圏内に入ります。
ITエンジニアは外国人材から人気の高い職種であり、その背景には「日本語能力よりもスキルや成果を評価してくれそう」「外国人でも馴染みやすい先進的な社風の会社が多そう」といった期待があります。スキル重視の採用を行う場合、そのスキルが発揮しやすい環境を整えることも重要です。
介護業務で求められる外国人の日本語能力は、在留資格によって異なります。
たとえば、「技能実習」や「特定技能」の在留資格の日本語能力要件は「N4レベル相当」ですが、N4は日常会話にも難があるレベルであり、いきなり円滑なコミュニケーションは取れません。介護を必要とするお年寄りの中には方言で話す方も多いため、教科書で勉強した日本語と全く違って戸惑うケースもあります。
利用者の日本語を聞き取り、基本的な会話や介護記録の読み書きを行うには、N3レベル以上が望ましいといえます。ただし、入浴の介助や施設の清掃など、日本語をあまり使用しない業務であれば、N4レベルでも従事可能です。
採用後は介護現場でよく使用する日本語の研修をしっかりと行い、N3レベルの日本語を習得できるようサポートしましょう。
なお「介護」の在留資格に日本語要件はありませんが、介護福祉士の国家試験に合格する必要があるため、難しい問題文をスラスラと読み取れるN2以上の日本語能力は有していると考えて問題ありません。
ホテルや旅館の業務には「フロント業務」「接客業務(レストランサービスを含む)」「清掃」「ベッドメイキング」「調理補助」などがあります。
フロント業務や接客業務は日本人の宿泊客と接する機会も多く、N3程度の日本語能力は欲しいところです。技能実習生や特定技能外国人は、基本的にN4相当の日本語レベルで入国するため、すぐにフロントに立つのは難しいとお考えください。
ただし、セルフチェックインや自動精算機によりフロント業務を効率化しているホテルであれば、求められる日本語能力の基準は下がります。逆に最上級の接客が求められるラグジュアリーホテルであれば、丁寧な敬語表現まで習得しているN2以上の人材が望ましいでしょう。
また、N4はもちろんN3やN2でも漢字が苦手な人は多いので、接客時にうっかり宿泊客の名前を読み間違えないような工夫が必要です。
なお、清掃・ベッドメイキング・調理補助など単純作業の業務においては、N4レベルでも支障なく働けます。営業や広報といったオフィスワークについては、「営業・広報・マーケティング業務」の項目をご確認ください。
近年はコンビニで外国人スタッフを多く見かけるようになりました。コンビニは外国人からもアルバイト先として人気の高い職場ですが、実際に働くためには、日常会話は問題なくこなせる程度のコミュニケーション能力が求められます。
単にコンビニのレジに立つだけでも、支払方法の確認やホットスナックの注文など、利用客との会話が繰り返し発生します。公共料金の手続きや宅配便の配送といった複雑なやりとりまでスムーズに覚えてもらいたいのであれば、N3レベルを採用基準にするとよいでしょう。
なお、同じ販売業務でも専門的もしくは高価な品物を扱う店舗(家電量販店やハイブランドファッションなど)で働く場合は、接客時に使用する日本語も専門用語を使用するため、より高い日本語能力が求められます。
また、近年はアルバイトではなく店長候補や幹部候補として外国人材を雇用する企業も増えました。文書作成やメールのやりとりを円滑に行うためにはN2以上の日本語能力が必要です。
特に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で働いてもらう場合は、問題なくオフィスワークが可能な人材であると出入国在留管理庁にアピールする意味でも、JLPTの成績が重要になります。
飲食店での接客業務は定型的な会話が中心になるので、日常会話レベルのN3程度が目安とされています。ただし、よく使用する敬語表現や定型文をマニュアル化するなど、研修体制をしっかり整えましょう。
近年ではセルフレジや注文用タッチパネルの導入店が増えており、高度な日本語能力を必要としないケースも少なくありません。こうしたデジタル技術の導入に積極的な店舗であれば、N4でホールに立つことも可能です。
調理業務の場合でも、日本語での指示を的確に聞き取って臨機応変に作業するためには、同じくN3程度の日本語能力が必要です。こちらもマニュアルのデジタル化や多言語対応が完了している店舗では求められる日本語能力の基準が下がります。
なお、上記はアルバイトの例であり、店長候補や幹部候補の正社員として雇用する場合は文書やメールの作成を問題なく行えるN2程度の日本語能力が必要です。
通訳として働くには、日本語能力試験N1の取得は必須です。
とはいえ、通訳業務では日本語能力試験では測れない「話す能力」が非常に重要となるため、N1を持っていても業務が可能とは言い切れません。面接時の質疑応答以外にも、長めの会話をする機会を設けるなどして、通訳者に相応しい能力を総合的に判断しましょう。
文章の翻訳業務(日本語から母国語)を行う場合、日本語能力よりむしろ母国語の能力が必要といえます。
翻訳業務における「日本語を読み取る」→「母国語で表現する」という2つのステップのうち、前者は周囲の日本人やAIによるサポートが可能ですが、後者は外国人本人の知識やセンスに頼るほかありません。
翻訳業務における最重要事項は翻訳語の文章のクオリティです。単に「日本語が話せるから」と採用するのではなく、母国語に関する資格や専門性を持った人材を採用するようにしましょう。
総合職で外国人材を採用する場合、どのような部署に配属させるかで必要な日本語能力は異なります。
コミュニケーションが社内で完結するタイプの職種であれば、少しくらい日本語を間違えても問題になりにくいため、N2レベルから採用を検討してもよいでしょう。
一方で、取引先と関わる機会が多い営業や、広告物を制作する広報として働く場合、N1相当の日本語を扱えないと本人も周囲も苦労するかもしれません。マーケティング職であっても、社外に向けたWebサイトやコンテンツをディレクションするならばネイティブレベルの日本語を扱えるのが理想です。
清掃や製造などの単純作業であれば、高い日本語能力は必要ありません。ゆったりとしたスピードの簡単な日本語が理解できるN4レベル以上で従事可能です。
ただし、ケガや事故のリスクを伴う業務を行うのは、咄嗟の指示を聞き取れるくらい日本語に慣れてからがよいでしょう。また、専門用語が多い現場では、やさしい日本語で書かれた用語集を用意するといったサポートが必要になります。
関連記事:「外国人労働者を取り巻く現状と問題を企業に向け解説!解決策も紹介」
外国人が日本で就労するためには、その業務を行うことが認められた「在留資格」が必要です。在留資格の中には、取得要件に日本語能力が含まれるものがあります。
そもそも在留資格とは何か詳しく知りたい方はこちらの関連記事をご覧ください。
技能実習制度とは、発展途上国の人材育成を目的とするインターン制度。技能実習の在留資格で来日する外国人を「技能実習生」と呼び、2024年6月時点では78職種での受け入れが可能です。
外国人が在留資格「技能実習」を取得するには、事前講習でN4相当の日本語能力の習得が必要です。ただし、日本語能力試験の受験の有無は問われません。
なお、技能実習制度は複数の問題点が指摘されており、新制度「育成就労」の創設にあわせて技能実習は廃止される予定です。
関連記事:「外国人技能実習制度の概要を企業向けに解説!技能実習生の受け入れ方も紹介」
「特定技能」は人手不足の業界で即戦力として活躍できる人材の誘致が目的の在留資格であるため、日本語能力試験N4以上の合格(または国際交流基金日本語基礎テストで200点以上)が取得要件に含まれます。
なお、技能実習から特定技能への移行も可能であり、その場合は日本語能力に関する試験は免除されます。
関連記事:「特定技能の14業種を解説!法務省の資料をもとに受け入れ状況も紹介」
「技術・人文知識・国際業務」は外国人が専門的な知識や経験を活かせる業務で働くための在留資格です。いわゆる総合職と呼ばれるさまざまな業務に従事できる一方で、清掃や製造といった単純労働は基本的に行えません。
海外に住んでいる外国人が技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得する場合、日本語能力試験N2以上に相当する日本語能力が必要とされています。
「留学」や「家族滞在」など、ほかの在留資格から変更する際は明確な基準がありません。業務の内容を考慮して柔軟に審査が行われます。
関連記事:「「技術・人文知識・国際業務」で採用可能な職種一覧は? 申請方法や不許可事例も紹介」
在留資格「特定活動46号」は、日本の大学や大学院を卒業し、習得した知識や技能、高い日本語能力を活かして働く外国人に付与されます。求められる日本語能力は非常に高く、下記のいずれかに該当していなければなりません。
特定活動46号では、日本語能力を活かした業務内容であれば単純労働も可能です。ただし、仕事でほとんど日本語を必要としない反復継続的な作業は認められません。
関連記事:「在留資格「特定活動46号」とは?就ける仕事や雇用するメリットを解説!」
外国人材を採用するうえで、日本語能力試験の結果が重要な目安になることは間違いありません。
しかし、高いレベルの合格者に条件を絞って募集したり、試験の結果だけを見て総合的な能力まで判断したりすると、採用活動の難航や思わぬミスマッチを生むおそれがあります。
また、日本語能力試験の試験形式に対する理解も必要です。合格ラインが45%~55%と低く、そのうえ書く能力や話す能力を測る設問はありません。
ここでは日本語能力試験の結果を選考に取り入れる際に覚えておくべきポイントを解説します。
当然ですが、どの企業も日本語レベルが高い人材を採用できるに越したことはないため、N1合格者の競争率はかなり高めです。
N1限定の求人を出して応募が集まらなかった場合は、採用基準の引き下げも検討しましょう。会話能力だけでいえば、N1とN2にそこまでの違いはなく、むしろ本人の経験や素養の方が大きく影響します。例えば、N2やN3でも接客業の経験が豊富で敬語に慣れている人は多いですし、そもそも会話が苦手な性格で片言気味に話すN1合格者もいます(ただし、正確な文法や漢字を用いたライティングの能力はN1とN2で明確な差がある印象です)。
また、外国人材の多くは「母国を離れて日本で働く」という大きな覚悟と選択の末に来日しており、自身のスキルアップに対してポジティブです。仕事に対するモチベーションが高い人材を採用することで、入社してから日本語能力が飛躍的に伸びる可能性もあります。
「自社の業務には最低限どの程度の日本語能力が必要なのか」と「将来的にどの程度の日本語能力までレベルアップしてほしいのか」を分けて考え、採用した人材が後者に到達できるような研修体制を整えることができれば、日本語レベルの条件が緩和され、しだいに応募も増えていくでしょう。
日本語能力試験の試験内容にスピーキングの問題は含まれません。また、回答はマークシート式であり、自分で文章を考えたり、実際に漢字を書いたりできるかどうかは正確に分からないのです。
そのため、N3レベル以上の合格者であっても、「読めるけど書けない」「聞き取れるけど伝えられない」など、試験の成績と実践的な日本語能力にギャップが存在する場合があります。
出身国による差も大きく、たとえば中国や台湾など漢字圏の出身者の場合、漢字の読み書きが得意である一方で、文法構造(品詞の順番)の違いにより発話には一定の慣れが必要です。
高度なライティングやスピーキングが求められる職種では、選考に小論文やスピーチを取り入れ、さまざまな角度から実際の日本語能力を確認しましょう。
日本語能力試験に合格した際は、「日本語能力試験認定結果及び成績に関する証明書」が発行されます。証明書には試験の得点が明記されており、結果の詳細を確認可能です。
日本語能力試験の合格ラインはN5が180点満点中80点、N4からN2が180点満点中90点、N1が180点満点中100点であり、半分近く正確できれば合格できてしまいます。
そのため、ギリギリで合格できた人と満点近く取れた人では、日本語能力にかなりの差があると考えられます。また、「言語知識」「読解」「聴解」のそれぞれのセクションの点数を確認することで本人の得意・不得意が把握できるため実用的です。
外国人採用を担当していると、ついつい日本語の堪能さにばかり気を取られてしまいますが、日本語の能力と仕事の能力はイコールではありません。
日本語が上手だからといって、業務上必要な経験やスキルを有しているとは限りませんし、人柄や志向性が会社とマッチしていないケースも存在します。採用してから「こんなはずじゃ……」とならないよう気を付けましょう。
逆のケースもありえます。専門領域で活躍できる十分な能力があり、コミュニケーション上の問題も無いにもかかわらず、N1を持っていないために門前払いされた経験を持つ求職者は弊社サービスにも多くいます。
日本語能力試験の結果に、外国人の実力がすべて反映されているわけではありません。日本人の選考と同じく、応募者がどのような人物であるか総合的に判断しましょう。
なお、採用時にミスマッチを防ぐためには、外国人特化の人材紹介サービスを利用するのもおすすめです。弊社が運営するWeXpats Agentでは、求職者と入念な面談を行い、実際の日本語能力や人物像を把握したうえでマッチングを行っています。
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多くの外国人が日本語能力試験を受験する理由は、在留上の優遇措置が受けられたり、就職活動に有利になったりするなどのメリットがあるからです。日本語能力試験に合格して、以下のメリットを享受するために毎年多くの外国人が日本語能力試験に挑戦しています。
上記のうち「高度人材ポイント制」とは、さまざまな項目を満たすと得られるポイントが70点に達すると、優遇措置を与えられた在留資格「高度専門職」へ切り替えられる制度です。日本語能力試験の合格も項目のひとつであり、N1合格で15点、N2合格で10点が加算されます。
ここでは、日本語能力試験に関するよくある疑問にわかりやすく回答します。
対象となる受験者が異なります。
日本語能力試験のレベルの認定に、有効期限はありません。
ただし、あまりに昔に取った認定だと現在の実力が疑問視されるケースもあるため、「取得後2年以内の資格を記載」など、独自に期限を設けている企業や学校もあります。
一般的に、N2レベルが「ビジネスレベル」とされています。
N2レベルは、接客などで使われる敬語表現を理解し幅広いシーンで使われる日本語が理解できるレベルです。
日本語能力試験は、日本で受験する場合と海外で受験する場合とでは申し込み方法が異なります。
試験結果は、9月(第1回7月実施分)と2月(第2回12月実施分)に通知されます。
参照元 日本国際教育支援協会「My JLPTの取得」 日本語能力試験「海外で受験する」
最もメジャーな方法は、日本語学習のオンライン講座を無料で受けられるような福利厚生です。ここでは詳しく触れませんが、様々なサービスが存在するので、ぜひ比較検討してみてください。
また、言語スキル上達の近道は「もっと仲良くなりたい」というモチベーションです。周囲の同僚や先輩社員と話しやすい雰囲気を作りましょう。
たとえば、ある企業では就業時間終了後に毎日30分、外国人社員の希望者が集まり、有志の日本人社員とフリートークする場を設けています。日本語能力試験対策をしたり、仕事の悩み相談をしたりと会話の内容は様々ですが、日本語学習のモチベーションになっているようです。
また、当然ですがJLPTは地方の方言には対応していないため、訛りが強い地域に外国人を招致する場合は方言に関する講座を行いましょう。
日本語能力試験(JLPT)は、国内・海外で日本語を母語としない人が受験する最も認知度の高い試験です。在留上の優遇措置が受けられたり、日本での就職で有利になったりするため受験者が増えており、企業も外国人の日本語能力を判断する目安の一つとして重視しています。
日本語能力試験では会話や記述問題がないため、実際の実力とは乖離している場合もあります。採用時は、日本語能力試験の結果だけで判断せずに、スキルやコミュニケーション能力も注視したうえで総合的に能力を見極めるのがポイントです。
「必要な日本語能力の人材がなかなか見つからない」とお悩みの場合は、ぜひ外国人専門のエージェントをご利用ください。
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監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net