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人手不足の解消やグローバル化などを目的に、外国人の正社員雇用を検討する企業が増えています。しかし、いざ調べてみると手続きや関連法令が多く、躊躇している企業の採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
たしかに複雑な部分もありますが、必要な情報だけを体系的に理解すれば外国人採用はそう難しくありません。
この記事では、外国人雇用で重要な「在留資格」の確認方法や関連手続き、効果的な採用の流れなど、外国人の正社員雇用で必要な知識を順序立てて解説します。
関連記事:【行政書士監修】外国人採用まるわかりガイド|注意点・メリット・募集・雇用の流れ
目次
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「在留資格」とは、外国人に日本での活動を認める資格のこと。
ほとんどの在留資格は就ける職種や行える業務が細かく決められています。そのため外国人を正社員雇用する際は、就労が許可されている在留資格を持っているか、もしくはこれから取得可能かを確認しなければなりません。
難しく感じるかもしれませんが、全部で29種類ある在留資格のうち、正社員雇用に関連する在留資格はわずか数種類。採用担当者が知っておきたい主な在留資格は以下のとおりです。
「技術・人文知識・国際業務」は、一般的なオフィスワークをする外国人の多くが取得する在留資格です。実務上は「技人国」(ぎじんこく)とも呼ばれています。
「技術」「人文知識」「国際業務」の3分野に分かれており、企業の総合職のほか、エンジニアやホテルのフロント、語学教室の講師など幅広い職業が該当します。
日本の大学や専門学校などを卒業し、そのまま日本で就職する外国人留学生の9割が取得するといわれている在留資格です。「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で行えるのは、学術上素養を背景とした一定水準以上の業務と定められています。いわゆる単純労働に該当する業務は行えません。
取得の条件は「大学(短大含む)を卒業している」「日本の専門学校を卒業して専門士の学位を得ている」「10年以上の実務経験がある(国際業務は3年以上)」のいずれかを満たすことです。
業務が類似している在留資格には「特定活動」や「高度専門職1号」があります。「特定活動」は指定書の内容によって行える活動が変わります(例:特定活動46号)。「高度専門職1号」は高い知識や技能を有する外国人(高度人材)に付与される在留資格です。
「特定技能」は、人手不足が深刻な業界のために作られた在留資格で、単純労働を含めた幅広い業務に従事できます。人手不足に悩んでいる企業からの注目度が高く、受け入れ人数が増加している在留資格です。特定技能外国人は、以下の分野で雇用できます。
ビルクリーニング
工業製品製造業分野(旧:素形材・産業機械製造電気・電子情報関連産業分野)
建設
造船・舶用工業
自動車整備
航空
農業
漁業
飲食料品製造業
鉄道
林業
木材産業
特定技能の在留資格は1号と2号の種類があります。1号で働けるのは最長5年ですが、技能試験を受けて2号に移行すれば、無期限で在留資格を更新可能です(移行ができない分野もあり)。
関連記事:「登録支援機関の役割は?要件や申請方法を企業に向けて解説」
身分に基づく在留資格とは、「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」のことです。これらは身分や地位に対して付与されているため、日本で就く仕事や行う活動に制限がありません。社内のどのような仕事も任せられ転勤や異動にも対応できるため、雇用管理がしやすいでしょう。
2023年10月時点では、61万5934人の身分に基づく在留資格を持つ外国人が日本で働いていました。これは全外国人労働者数の約30%を占めます。
特殊な技能が求められる仕事をする外国人が取得する在留資格も存在します。
たとえば、介護士のための在留資格は「介護」です。介護福祉士の国家資格に合格すれば取得でき、夜勤や在宅介護などの業務も行えます。
外国料理のコックやスポーツ指導者、貴金属加工技師などに付与されるのが在留資格「技能」です。取得するには熟練した技能が必要で、たとえば外国料理のコックの場合は10年以上(タイ料理は5年)の実務経験が求められます。
自社の業務が特殊な技能を要する場合は、専門的な在留資格が当てはまらないか確認してみましょう。
関連記事:「外国人人材のマネジメントについて解説!起こりやすい問題や注意点とは?」
参照元 厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」
外国人の正社員雇用を成功させるには、効果的な募集方法を選ぶ必要があります。日本人と同じ人材紹介会社や求人サイトを利用する外国人も多いので、併行して自社の求める条件に合った外国人からの応募を集めましょう。
外国人に特化した人材紹介会社を利用すると、募集に関するサポートを受けられます。
人材紹介会社の役割は、求職者のスキルや人柄を把握したうえで企業に推薦することです。また、企業の魅力を応募者にプレゼンし、応募意向の向上を働きかける場合もあります。さらに、求人票の作成や面接日程の調整などの対応が可能です。
外国人特化の人材紹介会社を利用すると、外国人雇用で発生する不安を解消できるメリットもあります。雇用前に日本語能力を正しく見極めてもらえたり、特有の法律や制度の相談にのってもらえたりするので、初めての外国人雇用でも安心感があるでしょう。
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求人サイトで仕事を探す外国人も日本人同様多数います。外国人専用の求人サイトは「日本語レベルごとに求人を探せる」「サイトが多言語に翻訳できる」などのメリットがあるので、より効果的に外国人からの応募を集められるでしょう。
なお、通常の求人サイトを見ている外国人も多いので、できれば両方に求人を出すのをおすすめします。
留学生を新卒採用したい場合は、教育機関と連携して求人を出すのも効果的です。日本語学校や外国人留学生が多い大学、専門学校に求人を出すとスムーズに応募を集められるでしょう。
外国人の多い学校は外国人向けのキャリア支援や就職ガイダンスが充実しています。また、外国人留学生の場合は自力で企業の情報を集めるハードルが高いので、学校経由で求人を頼りにするケースも多いのです。
なお、最近では、専門学校などと提携して、奨学金制度を作り、採用につなげている企業もあります。また、学校内で企業説明会を開いたり、一日就労体験会を開いたりして、留学生の応募につなげることもできます。
海外では、Linkedln(リンクトイン)やFacebookなどのSNSを活用した採用活動が、日本よりも盛んです。日本で働きたいと考えている外国人の多くもSNSで求人を探しています。高度人材を募集する場合はLinkedln、特定技能で働きたい方や留学生を探す場合はFacebookといったように使い分けると良いでしょう。
ただ、SNSを使っていきなりスカウトメールを送っても反響は期待できませんので、企業の採用サイトなどとリンクして、企業の情報、採用情報、代表者のメッセージなどを継続して発信していると、応募につながるかもしれません。
企業主導で動く部分が多く運用工数は掛かりますが、低コストで人材を募集できる方法です。
関連記事:「外国人を人材派遣で雇える?企業に向けてメリット・デメリットを解説」
ここでは、外国人を正社員雇用する際に必要な入社前の手続きを紹介します。外国人雇用の場合は在留資格の申請という非常に重要な手続きがあるので、手続きの方法や必要書類を確認しておきましょう。
採用選考では、在留資格についての確認や面接での日本語能力のチェックを重点的に行いましょう。
「正社員雇用できる外国人の「在留資格」」の見出しでも説明したとおり、自社の業務に相応しい在留資格を持っている、もしくは取得可能な外国人でなければ雇用できません。
すでに在留資格を持っている外国人を雇用する際は、在留カードの確認をしっかり行いましょう。特に重要な項目は「在留資格」「氏名・顔写真」「就労制限の有無」「在留期間満了日」そして「偽造の有無」です。
在留カードを確認したいときは、なぜ見せてほしいかの理由を説明し、了承を得ましょう。在留カードには本人の能力や人柄とは関係ない個人情報が複数記載されており、それらを見たうえで選考されると「就職差別をされるのでは?」と不安に思う外国人もいるためです。
ほとんどの外国人は、抵抗なく在留カードを見せてくれるはずです。もし、過度に見せることを躊躇する外国人がいた場合、その外国人の持つ在留カードは偽造である、もしくは他人のものである可能性もあります。日本人採用では考えにくいことが起きるのが外国人採用です。
留学生や海外在住の外国人を雇用する際は、在留資格を取得可能かの確認が重要です。留学生の場合は成績証明書や卒業見込み証明書を確認し、自社の業務を行うのに必要な学歴があるかを確認しましょう。海外在住の外国人の場合は学歴のほか、職務経歴書を見て実務経験を確認します。
外国人を正社員雇用する際の面接では、志望動機や自己PRなどの一般的な質問のほか「日本で働きたいと思った理由」や「日本の印象」なども聞いてみましょう。モチベーションの高さや異文化への対応能力を測れます。
会話のやり取りをしながら実際の日本語能力をチェックするのも非常に重要です。日本での就職に向けて日本語能力試験(JLPT)を受けている外国人は多いですが、試験の性質上、会話能力までは測れません。日本語能力試験の取得レベルが高くてもコミュニケーションがスムーズにいかない人もいれば、取得レベルが低くてもネイティブレベルに話せる人もいます。日本語能力試験の成績は参考程度に捉え、実際のコミュニケーションでどの程度スムーズに話せるかチェックしましょう。
採用したい人材が決まったら、在留資格の申請を行い雇用契約を締結します。なお、雇用契約は必ず外国人の理解できる言語で交わさなくてはなりません。本人が理解していない状態で交わされた雇用契約は無効になります。
厚生労働省のWebサイトに、外国人向けの労働条件通知書のモデルも掲載されているので、ぜひ参考にしてください。
在留資格の申請方法や必要書類は、外国人の立場や取得する在留資格、企業のカテゴリーによって異なります。
在留管理上、外国人を雇用する企業は経営規模や事業の安定性によって4つのカテゴリーに分けられます。
上場企業や公共団体などはカテゴリー1、上場しておらず前年の合計源泉徴収税額が1,000万円以上の企業はカテゴリー2、1,000万円未満の企業はカテゴリー3、それ以外の企業はカテゴリー4です。
カテゴリー1や2の企業は、事業経営に安定性・持続性があると認められ、書類が少なくて済みます。一方、カテゴリー3や4の企業は審査が入念に行われ、より多くの書類を提出しなければなりません。
在留資格の申請は本人が国内にいる場合は、原則として自分で行ってもらいます。しかし、企業が発行する書類も多く、本人が日本語での手続きに不慣れな場合もあるので、サポートは欠かせません。
以下では一例として、カテゴリー3の企業に入社する外国人が在留資格「技術・人文知識・国際業務」を申請する方法をケース別(中途採用/新卒採用/海外から採用)に紹介します。
詳細は厚生労働省のWebサイト内にある各在留資格のページをご確認ください。
中途採用の場合、在留資格の変更が必要な場合と不要なケースがあります。
転職によって在留資格の変更が必要な場合は、住居地を管轄する地方出入国在留管理局にて「在留資格変更許可申請」が必要です。
【必要書類】「技術・人文知識・国際業務」を取得し、カテゴリー3の企業で働く場合
在留資格変更許可申請書
指定の規格を満たした写真
パスポート及び在留カード(提示)
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
専門学校を卒業し、専門士又は高度専門士の称号を付与された者については、専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書(外国人留学生キャリア形成促進プログラムとして認定を受けた学科を修了した者については、認定学科修了証明書)
労働条件通知書などの申請人の派遣先での活動内容を明らかにする資料(派遣雇用の場合)
労働基準法第15条第1項および同法施行規則第5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書
申請人の学歴および職歴その他経歴などを証明する文書
(1)申請に係る技術または知識を要する職務に従事した機関および内容並びに期間を明示した履歴書
(2)学歴または職歴等を証明する文書
a.大学などの卒業証明書またはこれと同等以上の教育を受けたことを証明する文書。なお、DOEACC制度の資格保有者の場合は、DOEACC資格の認定証(レベル「A」、「B」または「C」に限る)
b.在職証明書などで、関連する業務に従事した期間を証明する文書(大学、高等専門学校、高等学校又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に係る科目を専攻した期間の記載された当該学校からの証明書を含む)
c.IT技術者については、法務大臣が特例告示をもって定める「情報処理技術」に関する試験又は資格の合格証書または資格証書
d.外国の文化に基盤を有する思考または感受性を必要とする業務に従事する場合(大学を卒業した者が翻訳・通訳又は語学の指導に従事する場合を除く)は、関連する業務について3年以上の実務経験を証明する文書
登記事項証明書
事業内容を明らかにする次のいずれかの資料
(1)勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む)などが詳細に記載された案内書
(2)その他の勤務先等の作成した上記(1)に準ずる文書
直近の年度の決算文書の写し。新規事業の場合は事業計画書
上記の書類を用意し、本人が住居地を管轄をする地方出入国在留管理局で申請をします。また、外国人がマイナンバーカードやパソコン、ICカードリーダライタを持っていれば、オンライン申請も可能です。
同じ職種からの転職の場合は、基本的に在留資格の変更は必要ありません。ただし、少しでも業務内容が変わると在留資格で許可されている範囲から外れてしまう可能性もあるので、本人に「就労資格証明書交付申請」を行ってもらうことをおすすめします。就労資格証明書は外国人の就労資格を証明する書類です。審査のうえ発行されれば、転職後の業務も従事可能であることを証明できます。
留学生が新卒で日本企業に就職するには、在留資格を「留学」から就労可能な種類に変更する必要があります。
【必要書類】「技術・人文知識・国際業務」を取得し、カテゴリー3の企業で働く場合
在留資格変更許可申請書
指定の規格を満たした写真
パスポート及び在留カード(提示)
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
専門学校を卒業し、専門士または高度専門士の称号を付与された者については、専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書(外国人留学生キャリア形成促進プログラムとして認定を受けた学科を修了した者については、認定学科修了証明書)
労働条件通知書などの申請人の派遣先での活動内容を明らかにする資料(派遣雇用の場合)
労働基準法第15条第1項および同法施行規則第5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書
申請人の学歴および職歴その他経歴などを証明する文書
(1)専門学校を卒業し、専門士または高度専門士の称号を付与された者については、専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書
(2)学歴を証明する文書
a.大学などの卒業証明書またはこれと同等以上の教育を受けたことを証明する文書。なお、DOEACC制度の資格保有者の場合は、DOEACC資格の認定証(レベル「A」、「B」または「C」に限る)
登記事項証明書
事業内容を明らかにする次のいずれかの資料
(1)勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む)などが詳細に記載された案内書
(2)その他の勤務先等の作成した上記(1)に準ずる文書
直近の年度の決算文書の写し。新規事業の場合は事業計画書
基本の手続きは中途採用のときと変わりませんが、留学生の新卒採用のときは大学や専門学校での専攻内容や学歴が、在留資格と関連しているかが厳しくチェックされます。不足なく書類を用意する必要があるので、本人とコミュニケーションを取りながら準備を進めましょう。
海外にいる外国人を雇用する場合、新しく在留資格を取得する「在留資格認定証明書交付申請」を行います。この申請は、外国人を雇用する企業の担当者が行うのが一般的です。
【必要書類】「技術・人文知識・国際業務」を取得し、カテゴリー3の企業で働く場合
在留資格認定証明書交付申請書
指定の規格を満たした写真
返信用封筒
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
専門学校を卒業し、専門士又は高度専門士の称号を付与された者については、専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書(外国人留学生キャリア形成促進プログラムとして認定を受けた学科を修了した者については、認定学科修了証明書)
労働条件通知書などの申請人の派遣先での活動内容を明らかにする資料(派遣雇用の場合)
労働基準法第15条第1項および同法施行規則第5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書
申請人の学歴および職歴その他経歴などを証明する文書
(1)専門学校を卒業し、専門士または高度専門士の称号を付与された者については、専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書
(2)学歴または職歴等を証明する文書
a.大学などの卒業証明書またはこれと同等以上の教育を受けたことを証明する文書。なお、DOEACC制度の資格保有者の場合は、DOEACC資格の認定証(レベル「A」、「B」または「C」に限る)
b.在職証明書などで、関連する業務に従事した期間を証明する文書(大学、高等専門学校、高等学校又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に係る科目を専攻した期間の記載された当該学校からの証明書を含む)
c.IT技術者については、法務大臣が特例告示をもって定める「情報処理技術」に関する試験又は資格の合格証書または資格証書
d.外国の文化に基盤を有する思考または感受性を必要とする業務に従事する場合(大学を卒業した者が翻訳・通訳又は語学の指導に従事する場合を除く)は、関連する業務について3年以上の実務経験を証明する文書
登記事項証明書
事業内容を明らかにする次のいずれかの資料
(1)勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)などが詳細に記載された案内書
(2)その他の勤務先等の作成した上記(1)に準ずる文書
直近の年度の決算文書の写し。新規事業の場合は事業計画書
在留資格認定証明書が交付されたら、原本を外国人に郵送で送付します。オンライン申請を行った場合は、電子メールで送られてくるのでそのまま転送可能です。
外国人は在留資格認定証明書を用いて、自国の日本国大使館や総領事館でビザ(入国査証)を申請します。在留資格認定証明書が発行されているということは、事前審査が完了しているということです。そのため、通常よりもビザの発給が迅速に進み、1~2週間程度で日本に入国できるようになります。
在留資格の審査は2ヶ月~3ヶ月程度掛かるので、その間に外国人の入社準備を整えます。
海外から呼び寄せて雇用する場合は、寮や社宅、借り上げ住居を準備するのが望ましいでしょう。外国人が一人で物件を探し契約をするのは容易ではありません。寮や社宅の準備が難しい場合でも、可能な限り企業が介入することで、スムーズに住居探しが進みます。
初めて外国人を雇用する企業は、この期間に社内環境の整備も進めましょう。具体的にはマニュアルや社内標識の多言語化、メンターの選出などです。
外国人と働くうえでのポイントや注意点を共有するために職員説明会を開いておくと、受け入れがスムーズに進められます。
関連記事:「外国人労働者を受け入れるメリット・デメリット|雇用の流れも解説」
特定技能制度では、雇用した外国人を「支援計画」に基づいてサポートしていく決まりがあります。そのため、支援計画書という誰がどのように支援を行うかを記した書類の提出が必要です。なお、支援業務は登録支援機関に委託もできるので、必要な場合は在留資格の手続きをする前に決めておきましょう。
以下は、飲食料品製造業分野の企業が海外から外国人を雇用する場合に必要な書類です。
<申請人に関する必要書類>
返信用封筒(定形封筒に宛名及び宛先を明記のうえ、必要な額の郵便切手(簡易書留用)を貼付したもの)
特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧表
在留資格認定証明書交付申請書
特定技能外国人の報酬に関する説明書(賃金規定に基づき報酬を決定した場合には賃金規定を添付)
特定技能雇用契約書の写し
雇用条件書の写し(1年単位の変形労働時間制を採用している場合は申請人が十分に理解できる言語が併記された年間カレンダーの写しと1年単位の変形労働時間制に関する協定書の写しも添付)
賃金の支払
雇用の経緯に係る説明書(雇用契約の成立をあっせんする者がある場合には、職業紹介事業者に関する「人材サービス総合サイト」(厚生労働省職業安定局ホームページ)の画面を印刷したものを添付)
徴収費用の説明書
健康診断個人票
受診者の申告書
1号特定技能外国人支援計画書
登録支援機関との支援委託契約に関する説明書(支援計画の実施の全部を登録支援機関に委託する場合に限り提出が必要)
二国間取決めにおいて定められた遵守すべき手続に係る書類(特定の国籍のみ提出が必要)
<所属機関(法人)に関する必要書類>
特定技能所属機関概要書
登記事項証明書
業務執行に関与する役員の住民票の写し(マイナンバーの記載がなく、本籍地の記載があるものに限る)
特定技能所属機関の役員に関する誓約書(特定技能外国人の受入れに関する業務執行に関与しない役員がいる場合のみ)
労働保険料等納付証明書(未納なし証明)
社会保険料納入状況回答票または健康保険・厚生年金保険料領収証書の写し(申請の日の属する月の前々月までの24ヶ月分が必要)
税務署発行の納税証明書(その3)、税目は「1.源泉所得税及び復興特別所得税」「2.法人税」「3.消費税及び地方消費税」1.について、「申告所得税」ではなく「源泉所得税」
法人住民税の市町村発行の納税証明書(直近1年度分が必要)
公的義務履行に関する説明書
<飲食料品製造業分野に関する必要書類>
飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験の合格証明書の写し
日本語能力試験(N4以上)の合格証明書の写し、または国際交流基金日本語基礎テストの合格証明書判定結果通知の写し
飲食料品製造業分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書(特定技能所属機関)
協議会の構成員であることの証明書(特定技能所属機関)※特定技能外国人の初回の受入れから4ヶ月以上経過している場合に必要
飲食料品製造業分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書(登録支援機関)※登録支援機関に委託する場合
協議会の構成員であることの証明書(登録支援機関)※飲食料品製造業分野に関し、初めて1号特定技能外国人支援計画の実施の委託を受けて支援を開始してから4ヶ月以上経過している場合に必要
在留資格認定証明書交付申請の方法は、通常の海外からの雇用とおおむね同じです。
なお、特定技能外国人を雇用する際は、支援業務として在留資格の手続き前に事前ガイダンスが義務付けられています。対面やテレビ電話で労働条件や活動内容、入国手続き、保証金徴収の有無などを説明する必要があるので、忘れずに対応しましょう。事前ガイダンスも、登録支援機関へ委託可能です。
参照元 厚生労働省「労働基準関係リーフレット」 出入国在留管理庁「在留資格「技術・人文知識・国際業務」」 出入国在留管理庁「提出写真の規格」 出入国在留管理庁「在留申請のオンライン手続」 出入国在留管理庁「就労資格証明書交付申請」 出入国在留管理庁「在留資格「特定技能」」
外国人を正社員雇用する際の、入社後の手続きを紹介します。日本人の雇用と同様の手続きに加えて外国人特有の手続きもあるので、確認して漏れのないようにしましょう。
外国人の雇入れや離職があった企業は、ハローワークを通じて厚生労働省に外国人の氏名や在留資格などの情報を届け出る義務があります。この手続きが「外国人雇用状況の届出」です。
外国人が雇用保険に加入する場合、「雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号)」を提出すれば、外国人雇用状況の届け出をしたことになります。
雇用保険被保険者資格取得届出の17欄~27欄の以下の項目が、外国人雇用状況の届出に関わる部分です。
(17)被保険者氏名(ローマ字)
(18)在留カードの番号
(19)在留期間
(20)資格外活動許可の有無
(21)派遣・請負就労区分
(22)国籍・地域
(23)在留資格
(24)取得時被保険者種類
(25)番号複数取得チェック不要
(26)国籍・地域コード
(27)在留資格コード
日本人の雇用では空欄にする項目なので、記入忘れのないようにしてください。
提出期限は、雇入れた月の翌月10日までです。オンライン申請も可能ですが、過去に一度でも外国人雇用状況の届出を行ったことがある企業は、外国人雇用状況電子届出切替・変更申請書の提出が必要となります。
転職や就職で外国人の活動する機関に変更があった場合は、出入国在留管理庁へ届け出る必要があります。この手続きが「所属機関等の届出」です。これは原則として本人が行います。
外国人が前にしていた活動によって「所属(活動)機関に関する届出」か「所属(契約)期間に関する届出」かが異なります。
たとえば、留学生が就職する場合は「所属(活動)機関に関する届出」です。外国人本人が、就職後14日以内に住居地を管轄する地方出入国在留管理局の窓口やインターネット、郵送のいずれかの方法で「活動機関からの離脱と移籍の届出」を提出します。
企業が行うことはありませんが、手続きを忘れると外国人が罰則を受けたり在留諸申請で不利になったりするので、本人にリマインドしましょう。
外国人も正社員雇用したら健康保険・厚生年金保険に加入してもらう必要があります。日本人と同様、雇用後5日以内に「被保険者資格取得届」を日本年金機構へ提出しましょう。
なお、初めて日本で就労する外国人のなかには、社会保険制度についての知識がない人も少なくありません。説明が不十分だと、給料から控除されたときの不安や不満に繋がる可能性があります。
日本年金機構のWebサイトには、英語やタガログ語、ベトナム語など14ヶ国語に翻訳された社会保険制度の説明パンフレットが掲載されているので、印刷して説明に活用してみてください。
関連記事:「外国人人材のマネジメントについて解説!起こりやすい問題や注意点とは?」
参照元 厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」 ハローワークインターネットサービス「雇用保険被保険者資格取得届」 e-Gov電子申請「e-Gov電子申請とは」 出入国在留管理庁「所属(活動)機関に関する届出(教授、高度専門職1号ハ、高度専門職2号(ハ)、経営・管理、法律・会計業務、医療、教育、企業内転勤、技能実習、留学、研修)」 日本年金機構「外国人従業員を雇用したときの手続き」
外国人の正社員雇用は、日本人の雇用とは異なる手続きがあります。初めは在留資格の確認や提出書類の多さなどに戸惑うかもしれません。しかし、外国人に行わせる業務が変わらなければ基本的には同じ手続きなので、慣れてくれば負担感も減っていくでしょう。
外国人雇用は人手不足解消や企業のイノベーション化など多くのメリットがあります。記事を参考にして、ぜひ受け入れを検討してみてください。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net