外国人技能実習制度の概要を企業向けに解説!技能実習生の受け入れ方も紹介

在留資格 2022.03.18
井上通夫
井上通夫
外国人技能実習制度の概要を企業向けに解説!技能実習生の受け入れ方も紹介

外国人の受け入れを検討している企業のなかには、外国人技能実習制度に興味を持っているところもあるでしょう。外国人技能実習制度は、主に開発途上国の外国人に技能移転を行い、経済発展に役立ててもらうことを目的としています。

この記事では、外国人技能実習制度のメリットや注意点、技能実習生の受け入れが可能な職種などを紹介。技能実習生を受け入れる際の流れも解説しているので、気になる企業はチェックしてみましょう。

 

目次

  1. 外国人技能実習制度とは
  2. 技能実習生の受け入れが可能な職種
  3. 企業が技能実習を実施するメリット
  4. 技能実習を行う際の注意点
  5. 企業が技能実習生を受け入れる方法
  6. 団体監理型で技能実習を実施する際の流れ
  7. まとめ

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外国人技能実習制度とは

外国人技能実習制度とはの画像

外国人技能実習制度は、日本の技能や技術、知識を開発途上国・地域に移転するため1993年に創設されました。当該国・地域の経済発展を担う人材を育成することを目的としており、労働力の需給のために外国人技能実習制度を利用することは禁止されています。技能実習生の受け入れを検討している企業は、制度の目的を念頭において正しく制度を活用しましょう。

外国人技能実習制度の現状

2021年6月末時点で、在留資格「技能実習」を持つ外国人は354,104人です。発展途上国・地域の経済発展を担う「人づくり」を目的とする外国人技能実習制度ですが、正しい運用が行われず技能実習生に対する不当な扱いが問題になることもあります。そのような背景から、技能実習生を保護し適切な技能実習の実施体制の強化するため、2017年の「技能実習法」施行とともに外国人技能実習機構が設立されました。

長時間労働や賃金未払い、人権侵害行為などは相手が技能実習生だからといって許されることではありません。技能実習生の受け入れを取り消される場合もあるので、企業は法律や技能実習に係るルールの遵守を心掛けましょう。

関連記事:「日本で働く外国人はどのくらい?国籍や在留資格は?企業に向け詳しく解説

外国人技能実習制度が抱える課題

技能実習生の失踪や犯罪行為など、外国人技能実習制度はいくつかの課題を抱えています。実際に、2021年の上半期だけで3,332人の技能実習生が失踪している状況です。毎年、技能実習生全体の約2%が失踪しており、受け入れ企業や外国人技能実習機構はその対応や再発防止対策に追われています。技能実習生が失踪したり犯罪を犯したりする背景として、劣悪な労働環境や低賃金、ハラスメント行為などが挙げられるでしょう。技能実習生が失踪した場合、受け入れ企業は技能実習の実施を一定期間停止されます。技能実習生を受け入れる企業は、失踪や犯罪行為が発生しないように労働環境を整え技能実習生のフォローを行うのが大切です。

外国人技能実習生の国籍の推移

2021年6月末時点で技能実習生の国籍で最も多いのはベトナムです。ベトナム人技能実習生は202,365人で、全体の約57%を占めています。ベトナムより日本のほうが賃金が高く、生活環境が整っていることが技能実習生が多い理由として挙げられるでしょう。なお、技能実習生の国籍で2番目に多いのは中国で55,522人です。以前は中国籍の技能実習生が最も多かったのですが、中国がめざましい経済発展を遂げているため、来日する必要性が薄れ総数が減少しています。

ベトナム人のほかにも外国人人材の多様な文化や価値観について理解を深めたい方は、以下の記事を参考にしてください。
・「ミャンマー人の特徴を紹介!採用時の企業が注意することとは?
・「インドネシア人の国民性を解説!雇用時に気をつけるポイントとは?
・「フィリピン人の国民性とは?ともに仕事をする際に気をつける点を解説

参照元
厚生労働省
「外国人技能実習制度について」
出入国在留管理庁
「令和3年6月末現在における在留外国人数について」
「技能実習生の失踪者数

技能実習生の受け入れが可能な職種

技能実習生の受け入れが可能な職種の画像

外国人技能実習制度で技能実習生の受け入れが認められているのは、2021年3月時点で85職種156作業です。なお、同一作業の反復によって習得できる単純な技能は、技能実習生の受け入れ可能な職種には含まれません。

技能実習生の在留資格には、入国年数や技能の習熟度に応じて1号・2号・3号と区分があります。技能実習生が2号・3号に移行できない職種・作業もあるので注意しましょう。受け入れが可能な職種・作業は不定期に更新されるため、最新情報が知りたい方は厚生労働省が公表している「移行対象職種・作業一覧」を確認してください。

関連記事:「技能実習から特定技能へ変更は可能?手続きやメリット・デメリットを解説

参照元
厚生労働省「移行対象職種・作業一覧

企業が技能実習を実施するメリット

企業が技能実習を実施するメリットの画像

外国人技能実習制度は国際協力を目的とした制度ですが、技能実習生を受け入れる企業にもメリットがあります。技能実習の実施を検討している企業は、どのようなメリットがあるのかチェックしてみましょう。

日本人従業員の意識向上

技能実習生を受け入れるメリットとして、同じ職場で働いている日本人従業員の意識向上が挙げられます。技能実習を行う企業は「技能実習計画」を作成する必要があるため、その過程で社内規定や業務マニュアルの見直しが必要です。今まで規定やマニュアルがなかった業務も新たに策定が必要になるので、結果的に労働環境が整備されて働きやすくなり、従業員の意識向上が期待できます。また、技能実習生という新たな人材の投入によって職場の環境が変化し、従業員にとって良い刺激となることもあるようです。

企業内のグローバル化

日本人の従業員しかいない企業で技能実習生を受け入れる場合、企業内のグローバル化を促進できるといったメリットがあります。同じ職場に外国人がいることで、異なる文化や価値観、言語を身近に感じられるでしょう。日本では少子高齢化が進んでいることもあり、事業拡大や労働力確保のために多くの企業が積極的に外国人雇用を行っています。今後、日本社会全体でグローバル化が進む可能性は高いでしょう。技能実習生を受け入れておけば、早い段階からグローバル化の基盤を整えられます。

海外進出の足がかり

企業が技能実習生を受け入れることで、将来的な外国人雇用の機会の創出や海外進出のきっかけになります。外国人労働者の受け入れにはさまざまなルールや注意点があるため、日本人の雇用と同じようにはいきません。そこで、技能実習生を受け入れた経験があれば、外国人雇用にも知識を活かせます。社内にもグローバル化の土壌や風土ができているため、日本人の従業員の協力も得やすくなるでしょう。また、技能実習生の受け入れを定期的に行っていた場合、実績をもとに送り出し機関がある国との信頼関係を構築できます。強固な信頼関係を築ければ、該当国での事業展開や出身者の雇用時に有利に働くでしょう。

技能実習を行う際の注意点

技能実習を行う際の注意点の画像

企業にとってメリットが多い外国人技能実習制度ですが、技能実習生の受け入れにあたって注意点も把握しておかなければなりません。技能実習において不正行為を行ったり問題が起きたりした場合、受け入れ企業はペナルティを受けます。技能実習生の受け入れを停止されることもあるので、注意点をしっかり確認し、正しい制度運用を心掛けましょう。

受け入れる際は日本の法律を遵守する

技能実習生にも最低賃金法や労働基準法などが適用されるため、受け入れ企業は日本の法律を遵守することを求められます。技能実習生だからといって最低賃金未満の給与にしたり、休みなく働かせたりするのは違法です。同じ業務を行う日本人の従業員を参考に、同等以上の賃金や待遇を設定しましょう。また、技能実習生に日本の法律を遵守させるのも受け入れ企業の義務です。本人が気づかないうちに犯罪を犯したり危険な目に遭ったりしないよう、しっかり教育を行いましょう。

在留期間に上限がある

技能実習生が持つ在留資格「技能実習」には、在留期間が定められており5年が上限です。在留資格「技能実習」には1号・2号・3号といった区分があり、入国年数と技能の習熟度で区別されています。第2号機能実習や第3号技能実習に移行するには所定の試験に合格する必要があるため、不合格となった場合は在留期間が5年未満でも帰国させなければなりません。在留期間を超過した技能実習生を受け入れていると、不法就労助長罪に問われるので注意しましょう。なお、在留期間を満了した技能実習生を継続して受け入れたい場合、業務内容に応じた在留資格や「特定技能」に変更すれば引き続き雇用が認められます。

特定技能については、「【2024年6月最新】特定技能とは?制度や採用方法をわかりやすく解説」「特定技能の14業種を解説!法務省の資料をもとに受け入れ状況も紹介」の記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。

仕事や生活に必要なサポートを行う

技能実習生を受け入れる企業は、技能実習生が日本で働き生活するうえで必要なサポートを行う義務があります。技能実習生のサポートは技能実習を実施する要件の一つなので、履行できない場合は受け入れ機関として認められなくなる可能性が高いでしょう。従業員のなかから生活指導員や技能実習指導員を選出し、技能実習生が実習に励める環境を整えることが求められます。また、サポートを行うなかで問題や疑問が生じた際は、加入している監理団体を頼るのも一つの方法です。監理団体の業務には技能実習生の相談対応も含まれています。監理団体に間に入ってもらうことで、問題が解決することもあるでしょう。

労働力確保に利用しない

技能実習生を労働力確保のために利用するのは、外国人技能実習制度の目的や趣旨と異なるため禁止されています。労働力となる外国人を受け入れたい企業は、ほかの就労可能な在留資格を持つ人を雇用しましょう。なお、労働力の需給調整を目的に外国人技能実習制度を利用した場合、不正行為を行ったとして技能実習生の受け入れが停止されます。

関連記事:「【企業向け】在留資格取り消しの事由や流れ~詳しい事例まで解説

企業が技能実習生を受け入れる方法

企業が技能実習生を受け入れる方法の画像

技能実習生の受け入れ方式には、「企業単独型」と「団体監理型」があります。ここではそれぞれの受け入れ方式の特徴を紹介するので、技能実習を実施する際に活かしてみましょう。

企業単独型

海外の現地法人や合併企業、取引先の従業員を受け入れて技能実習を行う場合、企業単独型に該当します。日本の公私の機関の海外支店や子会社、合併企業、1年以上に渡って国際取引の実績がある企業などから、技能実習生として従業員を受け入れるのが特徴です。ただし、技能実習生の受け入れに複雑な手続きを伴ううえ海外企業との関係性が必要なため、企業単独型の受け入れ方式を利用できる企業は多くありません。

団体監理型

団体監理型は、多くの企業が利用している技能実習生の受け入れ方式です。企業は、商工会や事業協同組合などの非営利団体が運営する「監理団体」を通して技能実習生を受け入れます。団体監理型で技能実習生を受け入れる場合、送り出し機関とのやり取りや在留資格の取得手続きなども監理団体のサポートを受けられるため初めて技能実習を行う企業でも安心です。

関連記事:「外国人を雇用するには?入社前・入社後の手続きと必要書類

団体監理型で技能実習を実施する際の流れ

団体監理型で技能実習を実施する際の流れの画像

ここでは主な技能実習生の受け入れ方法である、団体監理型でどのように技能実習を実施するかを解説します。団体監理型での技能実習を検討している企業は参考にしてください。

技能実習計画の認定申請を行う

技能実習生を受け入れたい企業は、まず初めに「技能実習計画」を作成し、外国人技能実習機構の認定を受ける必要があります。技能実習計画に記載する必要事項や添付書類は、技能実習法や関係法令で定められているので確認しましょう。なお、団体監理型で技能実習を実施する場合は、監理団体が技能実習計画の作成指導を行ってくれます。技能実習を実施する際は、認定を受けた技能実習計画をきちんと実施しましょう。技能実習を行っている間は監理団体によって定期的な監査が行われるため、違反があった場合は改善命令や技能実習の停止処分が下されます。また、初めて技能実習計画の認定を受けた企業は、「実習実施者届出書」も提出する必要があるので忘れずに行いましょう。

在留資格認定証明書の交付申請を行う

技能実習の実習実施者として認められた企業は、技能実習生を受け入れるために在留資格認定証明書交付申請を行う必要があります。在留資格認定証明書は、外国人が日本に入国するために必要な書類です。申請は企業の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署で行えます。申請の処理に1ヶ月から3ヶ月ほど掛かるので、技能実習生の受け入れが決定したら早めに申請するのが大切です。在留資格認定証明書が交付されたら、査証申請を行ってもらうため現地の送り出し機関に送付します。なお、団体監理型では、監理団体が在留資格認定証明書の手続きを行うのが一般的です。

来日した外国人技能実習生に講習を受けさせる

在留資格「技能実習」を取得した外国人技能実習生は、技能実習を行う前に必ず入国後講習を受けなければなりません。技能実習生は入国後講習として、日本語や日本での生活に必要な一般常識、就労に関する情報などを学びます。なお、技能実習生の在留資格の区分や入国前の研修状況によって、入国後講習の実施時間は異なるようです。

必要最低限の教育や知識の提供は入国後講習で行われますが、言語や文化の違いについては実際に経験しないと上手く理解できないこともあります。受け入れ企業は技能実習生が不安なく技能実習を行えるよう、日本人従業員との交流の機会を設けたり積極的に相談に乗ったりすることを心掛けましょう。

指定の作業に従事させる

入国後講習を終えたら技能実習がスタートします。指定の作業に技能実習生を従事させ、技能移転を行いましょう。なお、先述したように技能実習生が従事できる職種・作業は限られています。専門的な知識・技術などを習得できない単純労働に技能実習生を従事させることはできません。また、在留資格の区分によっても従事できる作業の範囲が異なるので、受け入れ企業は業務を割り振る際に注意が必要です。

関連記事:「育成就労制度の対象職種は?特定技能制度との関係も解説

参照元
地方出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付申請

監理団体についてさらに詳しく知りたい方は「東京都の技能実習監理団体を企業に向けてまとめて解説!」の記事も参考にしてください。

まとめ

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外国人技能実習制度は、開発途上国の外国人に専門的な技術や知識、技能を移転し経済発展に役立ててもらうことを目的としています。労働力確保のために利用することはできませんが、社内のグローバル化や海外進出の足掛かりなど、企業にとって十分なメリットがある制度です。技能実習生の受け入れを検討している企業は、団体監理型の受け入れ方式で監理団体のサポートを受けつつ、技能実習を実施することをおすすめします。

井上通夫

執筆:井上通夫 行政書士井上法務事務所

熊本県出身。福岡大学法学部法律学科(憲法・行政法専攻)卒。大学卒業後、日本信販株式会社(現三菱UFJニコス)入社。その後、福岡の大手学習塾勤務(国語・英語担当)。平成18年度行政書士試験合格。平成20年7月に福岡市内で行政書士事務所開業。現在、相続・遺言、民事法務(内容証明、契約書・離婚協議書作成等)から公益法人(財団・社団法人)業務まで幅広く担当。 http://gs-inoue.com/